2011年08月

2011王位戦第六局 広瀬王位vs羽生二冠

王位戦中継サイト

角交換の相振りの乱戦から、羽生が早々に決断して△6四角と角を手放した。羽生本人によると手得をいかそうという意図だったそうである。
しかし、広瀬の対応が巧みで、それほど大きな成果はあげられなかった。特に▲7五歩と突いていったのが、塚田九段も指摘していたように振り飛車らしいセンスのある手で、羽生の角打ちに自然に対応しながら羽生に△7三歩と打たせて、せっかく打った角の進路をふさがせることに成功した。
本シリーズを通じて、広瀬は終盤だけでなく序中盤にも非凡なものがあると感じさせられる。特に穴熊のスペシャリストだけれども、他の戦形も慣れれば十分指しこなすのだろう。第四局のように、経験値の不足が、まだたまに露呈することがあるけれども。
一方の羽生も、せっかく打った角が眠ったままでは勝負にならないので、必死に角を活用して、結果的に盤面全体を角が縦横無尽に(いや角だから斜行無尽にか)動き回ることになった。銀杏記者の名実況によるとこうなる。さりげないダジャレが、まだ若いのに老成を感じさせる。
それにしても、この角は18手目△6四角が8二〜9三〜6六〜3三〜2四と動いてきたもの。44手目△7三歩の局面を思えば大出世した。これを波乱盤上というのだろうか。
とは言っても、広瀬が意表の遠見の角の▲7八角から馬をつくったあたりでは、さすがに先手が良いという評判だったが、意外に馬による押さえこみがうまくいかず、羽生が広瀬の玉頭から殺到して来たあたりではまた難しいかむしろ羽生がいいかという評価に変わった。
それにしても羽生の露骨な攻めは凄くて、本家ガジガジ流の藤井猛も真っ青という勢いで広瀬玉に食いついていったが、さすがにやりすぎだったようで▲2九玉と逃げ込んだあたりでは、後手も戦力不足ではやい攻めも見当たらず、今度は広瀬にチャンスがめぐってきた。
ここで広瀬が▲5一とから▲4六角という凝ったかっこいい順で攻めたのだが、それが結果的にどうだったのか。感想コメントにはなかったが、普通に▲3一飛と打つとどうなったのだろう。広瀬も勿論その普通の手から考えるだろうから、何かイヤな順があったのか、あるいは本譜の芸術的な順に惚れてしまったのか。
ちなみに、GPSとponanzaが本局を解析していたが、羽生が攻めすぎたあたりでは広瀬がよくなったという評価だったが、この広瀬の手順を見てほぼ互角という評価に変わっていた。その評価が正しいかを私に判断する力はないが、何となく正確な形勢評価だったという気がするがどうだろう。
とは言っても、まだ難しくて▲2六角では▲7五角としておけば先手勝ちもあったと感想戦で羽生が指摘したそうである。ここで端を狙うという羽生らしい気がつきにくい柔軟な発想である。但し、解説の高野によると後手も△5三金ととすればまだまだ難解ということなので、やはり互角に近い終盤戦が続いていたのかもしれない。
多分プロでも▲7五角はすごく気付きにくそうだから、広瀬が▲2六角と打ったのは仕方なかったのかもしれないが、結果的にはこの一手で将棋がハッキリしてしまったようである。△5六金として羽生も勝ちを確信したそうである。ちなみにponanzaも「え。。。2六角打はさすがにおかしいよ」とハッキリこの手に悪手の烙印を押していた。ソフトの特に終盤力には本当に恐ろしいものがある。
そのソフトには不評だった、広瀬の▲5一とから▲4六角だが、決まっていれば見事な芸術的順で人間的なイマジネーションを感じさせただろう。そういう非凡な順が浮かぶ広瀬はやはりすごいのだ。しかし、それが非情で非ロマンティックなソフトに否定されていたあたりに、何とも言えない複雑なものを感じずにいられなかった。
念のために書き添えておくと、ソフトの言っていることが絶対正しいという意味ではない。▲7五角があるとしてもそれでもまだ難しいという高野説を受け入れておくけれども、もしよく調べて先手勝ちが明確に判明したら、勿論▲5一とから▲4六角は正解だったということになる。
また、もし▲7五角があるにしても現段階ではハッキリしないなら、そもそも遡って素朴に▲3一飛と打ったらどうかと疑問に思っているだけで、▲3一飛だと何か先手にまずい順があるのかもしれないし、それならば広瀬のひねり出した順がベストということになる。その辺を私は分からずに書いているので、「専門誌の解説を待つ」しかない状態である。
これでフルセット。本局は形勢が恐らく二転三転したのだろうが、大変見応えのある将棋だった。ここ数局は残念ながらつまらない将棋が続いていたが、最終局もこのような熱戦を期待したいものである。

2011王位戦第五局 広瀬王位vs羽生二冠

王位戦中継サイト

広瀬の相穴熊における練達職人ぶりばかりが目につく将棋になってしまった。
羽生は、事前に当然広瀬の四間飛車穴熊を予想して十分に研究してきたのだろう。▲1六歩と端歩を突いておいて▲2四桂と仕掛け、▲1七桂とする順。但し、後手もすぐに先手が成った馬を捕獲して、先手も思ったほどの戦果はあげられなかったようだ。羽生も定跡をつくるくらいの勢いの研究で臨んだのだろうが、広瀬穴熊の懐もなかなか深い。
広瀬が封じ手時刻前に、△5二同飛と堂々と取った手が羽生の感覚を若干狂わせたのか。▲4三成銀の飛角両取りが見えているが、いざやってこなさいと言われるとやりにくいところもあるのではないだろうか。結局、羽生は封じ手時刻を過ぎても少し考えて迷った末に▲3三ととしたが、結果的にはこれが敗着になってしまった。
羽生が敢えてひねった封じ手にしたのは、と金と成り銀をじっくり寄せているのが有効という大局観だったようで、普通はこういう羽生の大局観がよい結果を残すのだが、広瀬が▲3三とを緩手にする穴熊テクニックが抜群だった。
ちなみに、▲4三成銀でも後手が指せるという意見もあったようだが、対局者は難しいと、特に広瀬は千日手に出来れば上々くらいに考えていたようである。どこまで正直に言っているのかは分からないが。
さて、広瀬は5筋につくったと金を生かして△6七角以下角金交換に持ち込んで、スピーディーに先手の穴熊を弱体化させる。穴熊戦では、角より金が大切、と金が重要というセオリー通りである。感覚が普通の将棋とは明らかに違うのだ。
その結果、先手の穴熊だけ薄くなり、後手の穴熊はしっかりしたまま、さらに羽生がゆっくり寄せて活用するはずだった成り銀が完全に遊び駒にされてしまった。本当に穴熊戦の感覚が秀逸で、棋譜だけ見ていると普通に後手がよくなったように見えるが、多分プロでも誰もがこのように指せるということはないのだと思う。
その後も、一回△6九龍をきかすテクニックなども抜け目なく危なげなく手勝ちを読みきって完勝した。
ちなみに、当然かもしれないが△6一歩と受けたのも手堅くて、生で観戦して例えば△7二金左なら先手も負けずと角をきってへばりついたら苦しいながらもなんとかなるのではと考えていたが、しっかり底歩を受けられると本当にゲンナリする。結局、最後の寄せ合いの部分でも手数計算が実に分かりやすくなってしまった。
最後は他のプロも後手の一手勝ちを明快に読みきっていたようで、よくあることだが相穴熊は一度差がつくと大差になって逆転の余地が少なくなってしまう。最後の羽生玉には、死刑宣告を早々に受けていながら、どうすることもできないような切なさがあった。
というわけで、広瀬が相穴熊王者ぶりを遺憾なく発揮して、羽生さへも吹っ飛ばした―というよりは蹂躙したという感じの将棋だった。
羽生は作戦にも問題があって完敗だったので、後に引きずることはないだろう。羽生が、また広瀬穴熊が出た場合にどういう対策を取るのかにも注目したい。

藤井vs三浦 兄弟弟子の仁義なき戦い―東急将棋祭編 

今更で恐縮だが、恒例の渋谷東急将棋祭りの一幕を。今年はニコニコ動画さんが、全三日間フル中継されて将棋ファンには本当にありがたかった。生中継以外にもタイムシフト予約というのがあって、事前に予約しておくと一定期間録画を視聴可能で、最近私は思い出してみてみて、改めて大笑いしたのである。
他にも、加藤一二三先生の講演会とかもあって、その一人語りは、まるで桂文楽や古今亭志ん生といった落語の巨匠たちにも勝るとも劣らない至芸であった。この場合、名キリスト教伝道師の名前を出して彼らに比してもしてもいいのかもしれないが、さすがにそれは趣味の悪いジョークになりそうなのでやめておこう・・。
さて、二日目の特選対局は郷田真隆vs三浦弘行、そして解説は藤井猛であった。以下の再現は、藤井と三浦が、西村門下の仲のいい兄弟弟子であること知らなければ、涙なくしては読めないことをあらかじめお断りしておく。
聞き手は遊びに来ていた井道千尋女流がつとめて軽快なトークで盛り上げていたが、予定があって時間切れで途中から山口恵梨子女流に交代した。
局面は緊迫した終盤に差し掛かっている。藤井も「もう変なことはいえませんね。真面目にやります。」とのたもうたが、当然これは藤井劇場開幕の周到な前フリに過ぎなかった。
藤井「先ほど、山口さんと三浦八段、控室で記念撮影していましたよね。」
山口(カンベンしてくださいという様子で苦笑)
藤井「いや、普通に控室で見た光景を離しているだけなんですけれども。」
山口「藤井九段に頼まれたんじゃないですか。先生、それが言いたくて私は待たされていたんですか?」
藤井「そうですね。その話をしたくって・・。三浦八段の携帯の待ち受け画面にするという・・。」
山口(腹をおさえて苦爆笑)
カメラが絶妙のタイミングで対局中の三浦に切り替えられると、三浦が「カンベンしてください」という実に人のいい憎めない笑顔をみせるのであった。
藤井「あっ、違いました?それは間違いでした。ごめんなさいね。」
山口「すごい盤外戦術ですね。」
説明しよう。私もこれが書きたくてわざわざこの記事を立てたようなものである。藤井も本当にひどい。自分で仕込んで三浦と山口に記念撮影されておいて、この大盤解説でとっておきのネタに使ったわけである。そして、「携帯画面」のところまで、多分藤井は往年の藤井システムのように研究済、想定済だったのだろう。藤井の周到きわまりない事前研究の恐ろしさを改めて思い知らされた瞬間であった。最近の藤井も将棋の方の研究もこれくらい入念にやればもっと勝てるのにという憎まれ口をたたくのはやめておこう。
藤井「この郷田さんの△5六銀はかっこいいですね。群馬はこういう手じゃなくて、すぐ駒を取っちゃうんですよ。」
山口「先生、ニコニコ動画で群馬の方もご覧になっていると思うんですけれど。」
藤井「いや、省略して言っているんですよ。群馬出身の棋士という意味です。」
山口「じゃあ、山田久美さんが聞いていたら?」
藤井(苦笑)「分かりました。じゃあ私や三浦クンと訂正しておきます。」
藤井は井道女流にも何度も形勢を聞かれて「まだ分かりません」と慎重に何度も逃げていた。
藤井「どうも、ボクが形勢を言うと形勢が入れ替わるんですよ。」
山口「じゃあ、藤井九段が形勢判断をし続けたら永遠に終わらないですね。」
藤井「永遠に終わらないんですよ。」
説明しよう。藤井と三浦は西村門下で、ともに群馬出身である。その地方出身であるハンディを二人とも独自の単独研究にいかしてプラスに変えてきたところも似ている。というのは真面目な話である。ちなみに、二人の姉弟子の山田久美女流も群馬出身で、藤井もさすがに気を遣わずをえず、そこをすかさず突いてきた山口女流はなかなかなのである。
そして、藤井が形勢判断をすると形勢が逆になるというのはネット上では一種の伝説であって、初期は藤井もどんどん形勢をすぐ言うタイプだったのだが、この発言からそういう噂も藤井の耳に届いてしまっているということである。そして、山口は実は結構ひどいことを言っていて、さすがの藤井も反応しきれていない。
この二つの例からも分かるように、山口女流はオットリしている感じだが、なかなかのお笑いセンスがあり、将棋と同じくらいお笑いを愛している私はひそかに感心したのである。(どんな分析だ。
将棋は結局郷田が鋭い寄せで快勝。対局者二人が大盤に呼ばれた。
郷田はすぐ来たが、三浦の様子がおかしい。どうも対局に集中しすぎて足がしびれてしまったようである。
藤井「まったく、もう。修行が足りないんだよ、キミ。」
そして、足を引きずりながら歩く三浦。三浦らしく、本当に対局しきっていたようで、なおかつ負けたのが悔しかった様子で、藤井が話をふっても頭の中で駒が猛烈に動いている様子で生返事。マイクも使わずに、藤井に注意される始末。実に盤上没我の三浦らしい。
重ねて敗着や問題手を藤井にただされた三浦が最後に万感の思いをこめるかのように、三浦らしく素朴に言い放った一言がハイライトであった。
三浦「まぁ、やはり藤井さんの解説ですよ。」
場内爆笑
藤井(苦笑)「えぇ、結論が出たところで特選対局終わりにしたいと思います。」
全盛期の笑点でも、こうはうまくいかないだろうというキレイすぎるオチなのだった。


2011王位戦第四局 広瀬王位vs羽生二冠

王位戦中継サイト

今回の対局は誰が書いたって似たようなことになってしまう。「現代将棋の定跡・研究・データのこわさ」である。昨年の順位戦B級1組の▲畠山鎮vs△井上と延々と同一手順を辿り、その将棋でも後手が勝った順に近い形で、後手の羽生善治が勝ってしまったのだ。
先手広瀬章人で横歩取りの将棋になり、▲5八玉が早めのタイミングだった。広瀬の感想コメントによると、後手の形を限定したかったそうである。横歩取りは従来先手は一つだけ作戦を決めればよくて、後手はあらゆる形の対策が必要だったが、△5二玉型が出現して△4一玉との二択、さらに飛車を引く位置も△8五と△8四の二通りあって後手の作戦にも幅が出てきて、そのような事情があっての広瀬の工夫だったのかもしれない。
そんな駆け引きの末に結局、横歩取りで、ややクラシカルな形に落ち着いた。渡辺明が森内俊之から竜王を奪取したシリーズの第四局もこの形で、本譜の66手目で△8六龍で渡辺は△8五龍だったところまで同一手順である。結局、その将棋は渡辺に△3七歩という妙手が出て勝った。当然羽生もこの形は経験豊富である。少し古い形なので広瀬は実戦経験は少ない。
高橋道雄「最新の8五飛戦法」によると、28手目の△2五歩が重要な分岐点で、△7三桂と活用しておくのも有力である。むしろ、高橋は後者を本筋と考えていて、この△2五歩以下の順は「後手の勝率高し。ただし右桂が残るので本道とは言えず、目先を変える変化球的なスタンスだ」と述べている。確かに右桂をじっくりと活用するのは重厚な高橋らしいが、羽生は△2五歩以下の順を得意にしており、その辺は各棋士の棋風によって評価が異なるところなのかもしれない。
さて、以下延々と畠山鎮vs井上を辿るわけだが、69手目で▲4五桂で高橋本は▲7八銀と一度逃げる手を紹介している。▲4五桂も「かなり際どい」と述べているが。本譜のように▲4五桂とするとより一直線の攻めになるので、広瀬はこの辺りでは当然ある程度成算があって踏み込んだのだろう。
ちなみに、広瀬も畠山vs井上は知っていたようである。名人戦棋譜速報の掲示板を見ると当日は広瀬自身も対局があり、対局後にも検討に加わったのかもしれない。だから、結局後手の井上が攻め勝った順も知っていたが、きわどくて先手も何とかなると思っていた可能性がある。但し、広瀬の場合は、純粋居飛車党ではないし、いわゆる現代風なガチガチの研究家ではないので、ハッキリ先手がやれる順を見つけていたというよりは、大まかにこれなら指せそうと考えていたというのが実際のところなのではないだろうか。そもそも、広瀬得意の四間飛車穴熊も終盤でなんとかするという大らかなところがあるのだ。
ところが、今回はなんとかならなかった。結局、95手目の▲5三香まで同一手順で進んでしまった。既に先手陣は△4九銀と打たれて火がついている。相当難しいにしても、厳密に調べれば勝負が決まっていても―この場合は多分後手の羽生勝ち―おかしくない。
羽生がここで手を変えたが、これも井上が△6一玉と逃げたのが疑問で本譜のように△5三銀ととっても詰まないと当時の棋譜コメントにも書かれている。羽生の感想コメントを見ると、明らかにその将棋の感想コメントまで覚えていたようだ。つまり、手が変わりはしたが、羽生は前例でベストとされる順をさらに辿り続けたわけである。
以下、広瀬にも▲3五銀とするハッとする勝負手が出てその後も猛烈に最後まで粘ったが、冷静に羽生が勝ちきった。勿論、我々アマチュアレベルからすると本当にギリギリの僅差の終盤だけれども、この二人の対局者のレベルだと、ギリギリながらも後手勝ちの順を確認したようなものである。指している時は羽生といえども大変なのは当然だけれども。
要するに結果的には畠山vs井上の棋譜と感想の結果通りになってしまったわけである。棋士によっては、広瀬は事前に▲3五銀で勝ちと思ってしまったのではないかという意見もあったそうだが、その局面はあまりに進みすぎていて、事前に大雑把に勝ちかもしれないと思ったとしても、対局で深く読むと先手負けだと広瀬レベルなら理解するはずなので、その前のどこかで変化するはずだろう。
だから、私としては、やはり広瀬が事前に何か先手が勝ちの具体的手順を想定していたというよりは、なんとかなるだろうという大局観で踏み込んでしまって修正がきかなくなったのだと解釈している。勿論、本当のところは広瀬本人に聞いてみないと分からない。
先日の順位戦の郷田vs渡辺でも角換わりの将棋で、先手の郷田が研究で負けとされている順に飛び込んでそのまま負けたことがあった。その場合、郷田は本当に研究手順を知らなかったそうである。今回、広瀬は前例を知っていたにもかかわらず修正がきかなくなってしまったようである。現在の研究の恐ろしさをより感じさせる一局になってしまった。
そうなった理由には、やはり広瀬がもともとは振り飛車党で、現代の研究派居飛車党ではないというもあるのかもしれない。というわけで、そろそろ次局ではいよいよ伝家の宝刀を抜いて、四間飛車穴熊登場となるのではないだろうか。

2011王位戦第三局 広瀬王位vs羽生二冠

王位戦中継サイト

私はちょっと憤慨しているのである。今日ツイッターである方に、「今日はにやにやしながらブログ書くんですか?」とか言われてしまったのである。羽生ファンであることを全然隠していない私がいけないのだが、一応公平無私に神の目でタイトル戦を語るのを理想としているのに、いかんいかん。誰ですか、そんなに弱いのに神の目もへったくれもあったもんじゃないだろうとか言っているのは。
というわけで、結局私はゴキゲン中飛車なう、なのである。我ながら困ったものである。
それと、やはりツイッターでちょっと話題になっていたのは、色々各自応援する棋士がいるけれど、反目したりせずに各自好きな棋士を応援して盛り上がっていればいいじゃんということである。全くそうだ。でも、全ての世界でなかなかそういうわけにはいかない。
例えば、やはり私が愛するプロ野球の世界で巨人阪神戦があった場合に、巨人ファンの私はどんなに気心が知れた相手であっても阪神ファンと喋る場合には相当気を遣う。というか、なるべくそのことについては触れないようにするのが賢明だというのが私の痛切な経験則である。
しかし、将棋の世界はそれと比べると相当平和だ。羽生オタの私も、渡辺オタの人間と軽口を叩きあえる雰囲気である。たまたま現在のトップ棋士たちが、殺伐としていない人間性の持ち主ばかりだというという幸運もあるだろうし、なんとなく将棋ファンにはそういう平和的な人が多いのだという気もする。勿論、いろいろな人が世の中にはいるので一概には言えないけれども。
とにかく、私はそういう現在の平和な将棋界が結構気に入っている。それでいいのだ。
さて、それではニヤニヤしながら、失礼間違いました、公平中立に王位戦第三局の感想でも綴ることにしよう。(出来るかな?


後手広瀬が採用したのはゴキゲン中飛車。戦前に注目されていた広瀬のノーマル四間飛車穴熊はまだ出現していない。色々解釈可能だろうが、連勝している広瀬の余裕も少しはあるだろう。
羽生が▲3七銀超速から▲7八玉とする、チャット解説の遠山によると「遅速」と呼ばれる最新形に。渡辺明ブログでも解説されているが、お互いに狙いを外そうとする駆け引きの末に、広瀬だけが穴熊に囲う形になった。
当然、穴熊に暴れられたら困るので特に羽生のほうが神経をつかうわけだが、初日は先手も仕掛けそうで仕掛けず、後手も先手の仕掛けを警戒して高度な神経戦の様相を呈した。
羽生の指し方は当然として、広瀬も今回の王位戦を通じて序盤の神経も相当細かくて敏感だといういう気がする。広瀬は驚異的な終盤力がクローズアップされがちだが、そもそも他の人があんまり勝てない四間飛車穴熊でほとんどただ一人結果を残しているのも、やはり序盤のきめ細かさがあるからこそなのだろう。
今回の王位戦をみていて一番感じるのは、初日で広瀬が羽生相手に序盤の構想力で負けていないということである。今回も様々な評価はあっても、まずまず互角に近い形で初日を終えることに広瀬は成功したのではないだろうか。

二日目に入って羽生も穴熊に組み替えたが、その間に広瀬も銀を穴熊に引き寄せて金銀三枚の穴熊を完成させた。一方の羽生は金二枚の穴熊で7七に角もいて▲7六歩も突いてしまっているので堅さでは劣りそうだ。
従って、羽生は互角の分れではダメで何か成果を出さないといけない。実際、広瀬が△3三桂と振り飛車が重視する左桂を活用しにかかったところでは、羽生はむしろ自分がよくないと考えていたそうである。一方の広瀬も、感覚的には△3三桂にはある程度手ごたえを感じそうなところだが、結果的にはその手が問題だったというのだから将棋は分からない。
以下、羽生が普通にごくアッサリと一直線にせめて▲5二金と相手の飛車を押さえ込んだ。羽生もこの手順に自信があったわけではないそうだが、実はこの手順で後手が困ってしまっていた。
以下飛車を取って、▲7五香を一度きかせて後手に△7三歩と打つのを余儀なくさせて、後手の馬筋をとめると共に、先手の穴熊の弱点の△7七歩の叩きも消してしまう。そうしておいて、サッと▲5六飛とまわって二枚飛車の攻めをみせたところは、素人目にもいかにも気持ちよさそうで、実際かなり先手が優勢になったそうで、以下羽生が順調におしきった。
というわけで、傍目だと単なる羽生の快勝に思えたのだが、△3三桂馬あたりの両対局者の感覚だと振り飛車も指せそうということで、先手が簡単に良くなったのが少し不思議なところのある将棋だったようである。
しかし、立会人の元祖穴熊党総裁大内先生はさすがだった。52手目で△7一銀と穴熊にひきつけて、振り飛車が手ごたえを感じそうにも思える局面でこのように言われている。
「これは広瀬さん少し苦しいね。一歩損で、4三の金が負担になっている。仕掛ける順もありそうだったけど、見送って辛抱辛抱だ」(大内九段)
結局この大局観が全く正しかった。羽生広瀬より正しく局面を把握していたと言えそうである。
羽生快勝だったが、羽生の対局後の表情が意外に厳しかったのは、自分で狙ったとおりに良くしたわけではなかったのも関係しているのかもしれない。先述したように、広瀬は序盤の組み立てもなかなか巧妙である。次局以降も、終盤だけでなく初日の序盤でどういう模様になるのかが、存外重要なポイントを占めるシリーズになるような気もする。






コメントを承認制にさせていただいています。反映まで時間がかかりますが、お気軽にどうぞ。
Recent Comments
「最新トラックバック」は提供を終了しました。
  • ライブドアブログ