2012年05月

2012王位戦挑決 藤井猛九段が挑戦者に

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棋譜

注目の渡辺竜王と藤井九段の挑戦者決定戦。振り駒で渡辺先手に。後手の藤井は最近多用している角交換四間飛車かとも思われたが、四手目△4四歩にネットで観戦している人間からどよめきが起きた。
というのは大袈裟だけれども、藤井システムを採用するだけで、これだけファンを魅了する棋士など滅多にいない。特に藤井システムは精緻極まりないので先手後手の一手の差がきわめて大きいのだ。
先手の渡辺の作戦が注目されたが▲5五角からせの急戦をみせつつ結局▲6六歩と止めての持久戦模様に。
今回、この記事を書くに当たって勝又清和「最新戦法の話」の後手藤井システムの章を復習したのだが、とにかくシステムは一手の違い微妙な形の違いが大切で一筋縄ではいかない。例えば今回の渡辺の▲5五角にしても▲3六歩△6二玉を先に入れるケースも多く残念ながら二人の深い駆け引きが私にはよく分からなかった。
ただ、とにかく渡辺が有力とされている居飛車穴熊に一直線に囲う形や普通の▲5五角急戦にせずにこの持久戦にしたのに二人の深いの研究を感じたとしか言いようがない。
とにかく、後手システムとしては一番の課題とされる急戦や居飛車穴熊を避けてまずまずかとも思えたのだが、渡辺のその後の指し回しも重厚そのもので、これで居飛車が指せるという研究、大局観だったのかもしれない。
僅差ながら先手が指しやすいのではないかとも言われる局面から藤井が角切りから飛車を捌きに行った。一目やや強引で、こうするのはやはり普通に指すと苦しいという藤井の判断があったのだろうか。感想がないのでよく分からないが。
それに対する渡辺の▲3四歩として△4四角と打たせ、さらに△6九銀のひっかけを無視しての▲5二とと最強の手順で対抗する。実に竜王らしい強気な決断で、これで一手勝ちならさすがということになる。現在の竜王の充実振りを考えると誰もが先手の勝ちと考えただろう。
しかし、ここからの藤井の受けが実にしぶとかった。まずは△4一歩。渡辺も攻め合いなら勝ちと多分読んでいたところでの手筋。こういう歩の小細工は渡辺の得意とするところだ。
さらに▲3二飛に対して、じっと△6二金引!
この手を見た渡辺がさかんに首をかしげる。感想コメントによると藤井はこれで手ごたえを感じたそうである。先手の一直線な攻めをいなす老練な藤井のテクニックだった。
そして、先手が受けに回ったのを待って、お得意のガジガジ流の食いつき。
気がつくと後手陣は鉄壁、先手玉のみ食いつかれてしまっている。これこそが「藤井システム」の恐ろしさだ。
プロ的には振り飛車必勝の局面になったようだが、しかしこの後は藤井らしく、といったら怒られるが藤井は何度も決め手を逃してしまう。渡辺も最善を尽くして何やら局面はあやしげに。ツイッターでも各所で悲鳴があがったのは言うまでもない。
ついに後手玉にも手がつきだして、あぁこれは予定調和の結末かと思った瞬間、▲2七金の受けに対して△3五桂の痛打が決まって以下あっという間に先手玉は受けなしに。後手玉は全然詰まない。
渡辺にも怪しく粘る順があったようだが、本当に珍しくそれを逃してしまう。最後まで見るものを魅了してやまない藤井将棋だった。

それにしても、挑戦者決定戦なのに、タイトル戦にも負けぬ・・、というよりは並のタイトル戦なとど凌駕する将棋ファンの熱狂振りであった。
勿論、私もその一人である。
でも、フト羽生ファンの私は我に返った。これは、羽生vs藤井の本番は一体どんなことになるのだろうか・・。
考えただけでも恐ろしい。

最後に藤井ファンのためにお宝写真を紹介しておこう。この中継ブログ記事の一番下の写真をご覧いただきたい。
撮影した八雲記者によると、「藤井先生は遠くを見るような、ちょっと切ない感じの表情をすることがあるのですが、今日はその瞬間が撮れました。」(ご本人のツイッターでのつぶやきより)ということだそうである。

王位戦中継ブログ 対局準備

宮田利男の指導法

一ヶ月前のNHKの番組なのですが、こちらでまだフル動画が見られます。未見の方は、とにかくまずご一見を。

NHKカラフル もっと強くなるために。

プロ棋士を目指す小学四年生、伊藤匠クンのドキュメンタリー番組。三軒茶屋将棋クラブで彼を指導する宮田利男七段とのやりとりが抜群に面白い。

宮田
「もう一回やるか?」
匠クン
「もういい・・。」
宮田(笑って)
「もういいかっ。」
宮田
「ちょっと甘い。もう一回やるか泣いて帰るかどっちかにしなさい。」
(何ともいえない悔しそうな表情をする匠クン)

匠クン
「(宮田先生は)強くなろうとする人にはきびしいけれど、そういう気のない人には厳しくない。」
(匠クンは厳しいのと厳しくないのとどちらがいいの?)
「厳しい方がいいです。」

宮田
「ヘボ。勝ちたいっていうことよりも、強くなりたいと言うことを考えなさい。なっ。」

匠クン
「(宮田先生を)負かしたいっていえば負かしたいんですけれども。ボロクソ言われるのがイヤなんで。強くなっているのを認めて欲しい。強くなっているかわからないんですが。」

宮田
「さすがだね、匠くんは。」
匠クン
「どういう意味?」
宮田
「ほめてるんだよ。」
匠クン
「おせじじゃないの?」
宮田
「(笑って)おせじじゃないよ、半分負けかけているんだから。」
宮田
「銀出たの?へぇーーー。天才か、もしかして?・・・
負けました。」

また別の対局で
匠クン
「負けました。」
宮田
「なに?」
匠クン
「負けました。」
宮田
「(匠クンの耳元に囁くように)この手は腰抜け。戦おうという姿勢がないもの。」
(そして再度匠クンの何とも悔しそうな表情で番組は終る。)

もう、見ていて顔に微笑みが浮かんで仕方なかった。宮田先生の厳しくも愛情溢れる指導法。それに悔しながらも真意を理解して必死についてゆく匠クン。素晴らしい「教育番組」でもあった。

後日談もある。番組にも登場した匠クンの父親の伊藤雅浩氏のツイッターのつぶやきより。

「宮田先生がカラフル!を見て息子に道場でこう言った。「認められたい?そんな訳ないだろ。認めてやれるのは竜王か名人になって、先生に賞金を半分くれたときだけだ」

匠クンはこれを聞いて、一体どんな表情を見せたのだろうか?

中田宏樹の一言

NHK杯の中田宏樹vs瀬川。解説は「元祖とよぴー」豊川孝弘だった。
相変わらずオヤジ・ダジャレ・ギャグ連発で矢内理絵子が全部それを素直に笑ってあげるという心和む展開であった。
豊川によると、中田は普段も寡黙そのもので「いるかいないか分からない」そうで、中田が食事をするのを真似する「中田食べ」が流行したそうである。よくわけが分からないが、「味もそっけもない」ということ。
でも、私が書きたいのはそんな事ではない。豊川の言葉をそのまま紹介する。
「中田八段で、ボクは忘れられない一言があって、10代の時ですけれどね、当時、中田三段は奨励会で、関東で一部かもしれませんが一番強いと言われていたんですよ。注目されていて、ボクねぇ、『今度将棋教えてください』って言ったんですよ。ボク、二段くらいだったですかね、奨励会の。そしたらね、『豊川クン、楽して強くなろうとしているでしょう。』って言われたんですよ。その一言がずっと忘れられなくて、やはり厳しい稽古を積んでいるんだろうなと、自分が恥ずかしくなってしまいました。だから、ボク、一生忘れないですよ、ホントに。」

当時はVS的な研究はあまり流行していなかったが、とにかく中田が苦労して一人で厳しい研鑽を続けているのを豊川は感じたのだろう。中田がプロの棋譜並べをしないのが一頃有名だったが、とにかく自分の力だけを頼りに苦心惨憺して強くなってきた将棋なのだと思う。
研究とデータ全盛の現代にあって中田は貴重な存在である。そして、現在でもB1で独自の存在感を発揮し続けている。

2012名人戦第四局 森内名人vs羽生二冠

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またしても▲7六歩△8四歩の出だしに。矢倉復権シリーズと高らかに謳いたいところだけれども、皮肉なことに後手が全然結果を出せていない。いや、結果だけではなく内容的にも。
△8四歩が復活したのは、角換わりの後手である程度の成算が持てるようになったからなのだが、肝心の先手矢倉に対して後手が大苦戦しているのが今回の名人戦である。
それは、後手矢倉の本質なのか、あるいは先手番での森内と羽生があまりに優秀すぎるのかは、ちょっと判断に苦しむところだ。
序盤作戦については、渡辺明ブログが分かりやすく解説してくれている。

渡辺明ブログ 名人戦第4局1日目。

後手の森内が採用したのは、どちらかというと矢倉ではマイナーな作戦。メジャーな主要な形ではない。しかし、それは前局の後手の羽生も同様で久々の急戦矢倉だったが、森内に完膚なきまでに粉砕されてしまった。
二人とも、後手の矢倉の作戦に苦慮しているのである。森内がマイナーな形に敢えて誘導した本局でも羽生が後手にとっては決定的とはいえないまでも「イヤな答」をきちんと出した感じだ。
羽生が選択したのは▲1五香と先に駒損して攻める順。駒損するだけに、攻めが細くてつながるかどうかが焦点とされていたが、どうも諸々の解説を聞いていると、細そうでいてなかなか攻めがうるさくてなかなか先手の攻めが簡単にはきれないということのようである。これが矢倉の宿命か。
それでも、ギリギリだったようだが、74手目△3三金寄が森内の後悔した手で、それに対する羽生の▲3六歩が絶妙だったようである。
直截的な▲2四歩を森内も控え室も本線で考えていた。そこを、間をためてじっくり攻める―というよりは手渡しにも感覚の▲3六歩はいからも羽生流だ。
森内はこれを全く読んでおらず、この▲3六歩で「しびれてしまった」と率直に述べている。
この▲3六歩は指されてみれば、納得できるちょっとした手筋なのだが、特にギリギリの攻め受けで指しているレベルの高いプロであるほど、指すあるいは発想するのら勇気がいる手かもしれない。特に本局は先手の攻めが細くてギリギリと言われていて、プロなら多分そういう感覚だと思うので、棋力が高いほど盲点になりやすいのかもしれない。単にその辺のアマチュアが▲3六歩を発見したり指すのと、名人戦で羽生がこれを堂々と指すのでは全く価値が異なるのである。
その後は、▲2六桂なども激痛で、完全に羽生に形勢が傾いていく。先の△3三金寄で別の手ならまだまだ難解だったそうだが、やはり先手が優秀なプロであるほど―特に羽生や森内なら―後手も切らすのは大変なのかもしれない。
夕休前あたりでは、BSの三浦=村山の解説を聞いていても、かなり後手が苦しそうな感じだった。
途中では、羽生が変調とも言われ、また森内も入玉含みに頑強に抵抗して、簡単には先手勝ちにはならなかった。感想コメントによると、羽生の簡明な勝ちがいくつも指摘されていて羽生もそれらに―羽生らしく―素直に同意していた。とはいえ、本譜でも基本的には全く問題はなかった。冷静に振り返ると、危なそうでいてずっと羽生勝勢を慎重に息長く保ち続ける羽生らしい勝ち方ではあった。
勿論、森内の猛烈な粘りもすごかった。第三局で羽生の猛烈な追い上げに冷や汗をかいてのを、多少とも本局でやり返した感じである。全くもって相当不利になっても恐ろしい二人だ。
これで先手が全勝。先手の勝ちについては再び渡辺明のご意見を傾聴しよう。

渡辺明ブログ 棋戦結果。

8時間と9時間のたった一時間の持ち時間の
違いが大きいのかもしれないということだ。こればかりは本当にトップで名人戦を戦った棋士でないと分かりそうにない世界である。
せっかくの二手目△8四歩復権を全否定しつつある本シリーズだが、それも森内と羽生、羽生と森内の名人戦の世界だけに言えることなのかもしれない。
私も前局で書いたが、第七局で振り駒をする奨励会員の役割がとてつもなく重要だと、誰もが言い始めている。
しかし、天邪鬼な私としてはそろそろ後手がブレイクしそうだと思うのだが、果たしてどうなるのだろうか。

相変わらずニコニコは面白い。初日には、山田久美が登場して相変わらずの練達の聞き手ぶりを発揮していた。最近のみうみうや佐藤康光のニコ生は、素人の危うさのあるスリリングな面白さが続いていたが、彼女あたりが登場すると落ち着いた堂々としたものである

山田はツイッターや一部のブログで、久美姐さんという愛称で呼ばれているのだが、今回ニコ生コメントを通じて本人にも伝わったようである。一部では「極道系」というコメントもあってご本人も苦笑していたようだ。とにかく、みうみう、ひふみんに続いてご本人の知るところとめでたくなった次第である。げにニコ生はおそろしい。
確かに山田久美の「なめたらあかんぜよ! 」もちょっと聞いてみたいところではある。(ごめんなさい・・。

2012名人戦第三局 森内名人vs羽生二冠

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森内先手で第一局同様▲7六歩△8四歩の出だし。森内は矢倉を選択。羽生が急戦矢倉に変化した。
羽生との竜王戦で渡辺が採用して脚光を浴びた作戦だが、最近それほど多く指されているわけではない。受身になりがちな通常の後手矢倉と違って、後手でも積極的に勝ちにいこうということである。
波紋を呼んだのが羽生の△3三銀。玉のコビンがあいてしまい金銀の連結も外れるので、この瞬間がこわい。すかさず森内が△6五歩から反発した。その後の流れをみると、さすがにこの△3三銀が危険すぎて明らかに先手が指しやすい展開になったように思える。もし敗着を挙げるならここまで遡るのではないだろうか。
二日目に入って羽生が選択したのは△4九角と一本打ってから、△2二玉△4二金上と二手続けて悠々と手渡しするいかにも羽生流の順。但し、これは明らかに苦しめなので仕方なくそうしただけで決して喜んでやっていたわけではないだろう。
なお、△4九角で△8五歩が感想戦では一番詳しく研究されたようだが、どうも本譜よりは後手もマシだがやはり先手がよさそうということのようである。
森内は羽生が二手手渡ししている間に香車を入手して▲5八香と「鉄板流」でしっかり受けとめた。先手はこれで困っていそうである。
後手は角と金で刺し違えることが出来なくなり、ノンビリしていると角を召し取られてしまうので駒損覚悟で暴れるしかなくなった。結果、63手目▲3九金とやはり鉄板流で先手がガッチリ受けたところでは、既に後手は絶望的な局面である。
先手が銀と香車の駒得。お互いに馬をつくりあっている。玉の堅さだけ後手が上回るが、後手は持ち駒の飛車と歩だけで急に厳しい攻めがあるわけでもない。
気の早い棋士なら投げてもおかしくない局面だと思っていたら、投了の早さが棋界で轟きわたっている?島朗が夕方のBSに登場して、この▲3九金のところで自分なら投げたいと考えたと話していた。島流のサービス精神で言っているところもあるのだろうが、期待を裏切らない。中村修に、島さん諦めないで指さないといけないよと、激励されたそうである。
その後、羽生にも△2六飛があって見た目ほど将棋が終ってないことが判明したが、冷静に考えるとやはり大差。森内鉄板流で▲5九銀打としたのも冷静で、ただでさえ後手は苦しすぎるのに、こういう受ける展開になると森内城の牙城を崩すのは至難の業に思えた。
さらに△4九金と打ちたくなさそうな金を打たされ、すかさずサッと▲7八玉とかわされたところでは、局面はますますハッキリしてきた。
夕方のBS解説でも佐藤康光が、先手は底歩もよくきいていて全然寄らず上部にも逃げられる、従って先手は落ち着いて攻めに専念すればよい、また後手が攻防手を放ちにくい展開である、紛れの起きにくい分かりやすい局面になってしまった、と明快に分析していた。プロでもアマでもその通りだといわざるを得ないだろう。さすがに控え室も観戦している我々も完全に終戦ムードだった。
しかし、ただ一人羽生善治だけは全然諦めていなかった。夕食休憩後も受け一方だったが、しっかり受け続けて決め手を与えない。後手玉もしっかりしてきて先手の明確な寄せが見つからない。冷静に考えれば大差であることには関わりないが、対局している立場なら、もともとど必勝だったので、なかなか勝ちがみつからずむしろ差が縮まっていそうなのは大変イヤだったはずである。
簡単に勝ちそうだったのが先手玉にも手がついて、先手は入玉を目指さざるをえないところまで来た。その間に先手も馬を一枚犠牲にしたので、一応後手も持将棋になれば点数が足りて引分けに持ち込める可能性も出できた。これも冷静に見ると後手が入玉するのは至難の業だが、現に対局している立場なら冷静ではいられないだろう。
さらに苦しいながらも、羽生も△4八角打、さらに△5九竜も働く形にして先手玉を遠く睨んで、先手も入玉していても駒を渡しすぎると詰まされる危険のある形に。驚くべき羽生の猛追である。
森内ももう後手玉を打ち取るしかなくなり、銀を渡したので後手玉を詰まさないと逆転というところまできた。あの将棋がこんなにギリギリの勝負になると誰が想像できただろう。しかし、後手玉は詰んでいた。森内も最後全力で逃げきった。
この羽生の粘りと不屈の闘志、どんなに大差でも、諦めて逆に差を開かず、ずっとついていくテクニックには驚かされる。僅差で離されずについていくのなら誰でも出来そうだが、大差でもとにかくベストの手順を尽くしてそれ以上差がつかないように指すのには相当精神力も必要だと思う。
最後はすごいことになったが、基本的には森内の将棋だった。三局連続で先手がサービスゲームをキープした。この二人の場合、本当に先手の勝率が高い。
勝負を決めるのは第七局の振り駒をする奨励会員ではないかと囁き始められている。

加藤一二三@名人戦ニコ生、学習院講演、達人戦、新著

まずは懺悔から。今日の終盤はすごいことになった。羽生の鬼気迫る追い上げて本当に逆転しかけた。このすごい将棋については、また日を改めて書く。
ところが、私はもう今日の昼食休憩の頃から諦めていた。いや、私だけじゃなくてプロもそうだ。夕方のBSを見ていたら、島朗が出てきて、▲3九金でもう私なら投げたくなって、中村修に指し続けないといけないと諌められたと話していた。
夕休時点では、私はもっと諦めきっていた。普通そうですよね。逆転する要素なんて、これっぽっちもない。ところが、羽生善治だけは全然諦めていなかった。最後、森内が詰まさなければ明確に逆転というところまで追い込んだのである。
さて、以下は私が夕休以降、諦めてお酒を痛飲しながら楽しく書いてしまった記事である。
でも、加藤先生もやはり偉大で素晴らしいので、強引にそのままアップすることにする。
今日の将棋についての感想を期待して来てくださった方にはごめんなさい。

名人戦ニコ生初日に登場した加藤は終日エネルギッシュなトークを繰り広げて、その勢いは最初から最後まで留まるところを知らなかった。ツイッターでは聞き手の貞升南に対して「ガンバレ!」の声援がやむことがなかったことも肯けるところである。
以下、私も全部見たわけではないが、ツイッターの他の方のつぶやきも参照して一部再現してみよう。

最近の矢倉は本局のように▲6六歩がほとんどなのですが、わたくしが名人戦で中原さんと千日手持将棋を含む10局の死闘を繰り広げた末に名人を獲得しまして。その時も矢倉がほとんどだったのですが、全て▲6六歩ではなくと▲7七銀型でした。わたくしは個人的には▲7七銀の方がよいと思っております。えぇ。

わたくし、矢倉の後手では△6三歩から△6三銀の作戦を多用しておりまして、これが大変強力な作戦でして、わたくし、後手では七割近い勝率をあげております。それは他の棋士も皆知っているのですが、なぜかほとんど採用する人間がおりませんで、せいぜい、そうですね1%。そして本局のように△5四歩が大部分なんですね。それで勝てればいいのですが、なかなかうまく行かないのに。なぜわたくしの形を皆が採用しないのかは棋界の七不思議です。えぇ。

加藤「わたくしは現在までに1300勝なにがしの勝ち星をあげておりまして・・。」貞升「えぇぇぇ、すごいですねぇー。」加藤「あれっ、知らないの?それは知らないとおかしいですよぉー。(笑顔)」貞升「あっ、はいっ。」

わたくし、実は九段になりましてから800勝あげていまして・・。
(すごいですよね、さすが神武以来の天才で九段になられたのがはやかったということです。)

本日は時間がタップリありますので、また後々お話つせていただくこととしまして・・。
(落語「寝床」でダンナが期限を直して「今日はまたミッチリと語らせていただきますから」という桂文楽師匠の名人芸が私の脳裏をよぎりました。)

実はですね、過去の勝ち星の記録で、記憶が曖昧で正確ではないということで記録が取り消された例があります。大山さんやわたくしの記録については、ちゃんと残っているので間違いございません。

わたくし、新潟の第二局の立会いでして、夕食の際に私の右隣にに森内名人が座りました。わたくしがこういう話をしました。わたくしは持将棋が苦手でどう指せばいいのか分からないと。そうしますと、森内名人曰く、「私は加藤先生に持将棋で見事に負かされたことがあります。262手でした」と。わたくしは森内名人の記憶力に大変感心いたしました。(満面の笑み)

例えば、大山さんと羽生さんが、どちらが強いかというと、わたくしは互角だと思います。わたくしは、大山さんにはある時期からは楽勝が多かった。羽生さんは、対局数が少ないけれど負かすのは大変。でも、強さとか将棋に対する執着とかは二人は互角ですね。うん、互角。

わたくし、揮毫をよくしまして、ササッと素晴らしい勢いで書くわけですが、ある時、大山先生に書き順の間違いを指摘されたことがありまして。大山さんは基本通りにやっているんだと感心いたしました。でも、将棋は基本通りじゃないのにね、ふふふっ。

わたくしは第二局の立会人の際に対局前に座布団を直しました。横長に置かれていたのを縦長に直しました。われながら、これはちょっといいなぁと思っております。(満面の笑み)
(聞くところに新橋の大内先生の解説会で「仲居さんがせっかく揃えたのに(笑)」「いやあ、さすがですね」とおっしゃったそうです。)

わたくし、実は将棋界の連敗記録の持ち主でして、21連敗というのがあります。さらに、中原さんには7年間一度も勝てなかったこともあります。でも段々中原さんも得意になってきまして、ついに名人戦の死闘では勝ちまして何年何月何分に見事名人を獲得することが出来たわけです。
(最後はポジティブにもっていく思考を是非見習いたいところです。)

Q将来有望な棋士は?Aわたくしの数多い対局の中でも千局はほとんど名局です。そして私の将棋をよく並べたというのは郷田さんが若い頃に並べたと言っていたかな、そして渡辺さんも。はい、それでは将来有望な棋士?それは私の棋譜を理解してよく並べる棋士ですね、えぇ。

羽生さんがNHK杯でわたくしと対戦した際に指した▲5二銀。あれは大変有名な指し手で今でもよく言われるわけですが、でもあれはね、羽生さんにしてみれば朝飯前の手なんですよ。

わたくしもかつて升田先生ともよく戦いました。して、戦って先生が勝った場合は感想戦はありません。ところが、わたくしが勝った場合は、朝の6時7時まで続きました。そして、朝になった頃に升田先生が「加藤さん、最近指した将棋を見てくれよ」と先生の会心局を並べました。勿論、イヤだと思ったことなど一度もありません。

大山さんは結構賑やかな多弁な人でした。ある時記者のご夫人が手術で、皆でお見舞いをお金だそうという話に対局中になったこともあります。昔はそのように対局中にも会話をしていたんですよ。

わたくし、昔天ぷら定食を頼んだんですが、配達がこないことが二度ありまして。当時新鋭の勝又さんが心配して走り回ってくれたけれども結局来なかったんです。なので何も食べずに指しました。それ以降うなぎにしました。鍋焼きうどんも好きなのですが、あつくて冷ますのに10分くらいかかるのでやめました。今は寿司です。

わたくしが対局の前によく聴くのはモーツァルト、メンデルスゾーン、バッハです。最近はモーツァルトのオペラ「後宮からの誘拐(逃走)」、メンデルスゾーンの「スコットランド」が好きでよく聴いています。

大山先生とのタイトル戦を銀波荘でわたくしが致しましたた時に、駒を打ちつけた際に、盤の左側にヒビが入ったことがあります。それは、ずっと使わずに保存して出した温度差、湿度差のためで、わたくしが駒を強くたたきつけたからじゃないんです、えぇ。

大山先生に皆が勝てなかったのは、我々が棒銀を徹底的に研究しなかったからだとわたくしは思っております。今度出す本にもわたくしは書いています。

わたくしは、ひふみんと呼ばれているのは知っていまして、いい感じ、なかなか巧みなネーミングだと思っております。わたくしが二十歳の頃には、ピンさんと呼ばれていたの。大山さんとか丸田さんとか。別にイヤじゃなかったです。

対局中によく食べるのは、カマンベール・チーズですね。以前ある棋士と戦っていて、わたくしがカマンベールを食べていたら、相手もほしいと言い出しまして。ところが、出てきたらカマンベールじゃない違うのが出てきたの。ホテルのチーズがもうなかったのかどうかは知りませんが。

大山先生は、投了しなければいけない局面で、隣の部屋にカメラマンがいるのに気づいて、意地でも投げないと決めて一時間くらい粘ったという話があります。だから、わたくしも立会人の時に対局室に入るのは投了を促しているようで味が悪いので入らないようにしています。

わたくしの棒銀は現在でも、誰に対しても通用すると思っています。それは千葉さんとの対局で新たな発見がありまして、将棋世界にも自戦記を書きました。

渡辺さんは、大変将棋も強くて名人戦にも出で来るだろうと、わたくしは思っております。また、人間的にも常に安定している感じです。話も大変面白いと思います。

よく将棋は理系だと言われるけれども、わたくしはそうは思いません。だって、将棋というのは景色をみてその感覚で指すものでしょう。わたくしは将棋は文系だと思っています。

わたくしのよく指す棒銀戦法について、私のふるい本にも書いていますが、現在は入手が難しいです。ただ、羽生さんの「羽生の頭脳」にも書かれていまして、それが大変優秀でオススメです。実は、わたくしも羽生の頭脳の通りに指しまして二度勝ったこともあるんですよ。

山田道美さんとは、わたくしは昔からの知り合いでした。早く亡くなられてしまったのですが、大山さんとのタイトル戦は本当に火花の散る激しいものでした。山田さんも「打倒大山」を前面に出して、大山さんもそれに反応して闘志を燃やして、あの二人のタイトル戦くらい激しかったのはいまだにないと思います。

実は振り飛車に対する矢倉というのは大変有力な作戦でして、わたくしは大山さんにもよく勝っています。ほとんど無敗でした。ところが、森安さんだけには負かされました。森安流で来られると困ります、ギブアップです。

以上、ごく一部に過ぎないが加藤先生の将棋界の生き証人ぶりを遺憾なく発揮した素晴らしいニコなまであった。
なお、加藤先生が学習院大学で講演された話が出ていたが、加藤先生ご本人がその模様がyoutubeにアップされていることをお話されていた。それについては、こちらのブログで見ることが可能である。

男45才経営コンサルティング会社社長の感動備忘録/有限会社キャタリスト軟式HP 【講演】「将棋と人生」加藤一二三さん
9個の動画に分かれていて「加藤一二三 学習院大学」でぐったこのページに出てくる。

さらに、加藤先生は最近の達人戦でも高橋道雄九段に勝たれている。A級の高橋のお得意の後手横歩取らせに対して、やや模様が割る目ながらも最後は怒涛の攻めを決めて勝った素晴らしい将棋である。
棋譜はこちら
さらに、中継ブログでは加藤先生の写真が満載でファンには見逃せないものになっている。

そして、加藤先生の新著も5/10に発売である。わたくしも(別に加藤先生の口癖がうつったわけではない)、当然買います。


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