竜王戦中継サイト
生で佳境の終盤部分を見ることが出来たのですが、いや堪能しました。将棋のネット中継というのは、一度はまるとプロ野球やサッカーなどのテレビ観戦などよりも、よっぽど興奮しますよね。オリンピックも同時に見ていますが、あくまで二次鑑賞に過ぎません。
という、模範的な?将棋ファンなのですよ。私は(笑)。
さて、以下は明くまで私がどう楽しんだかの観戦記に過ぎず、あまり客観性は無いかもしれないことを最初にお断りしておきます。基本的に私はメチャクチャ大げさに騒ぐタイプだとご承知おきください。多分、強い人たちほど、もっと冷静な見方をしているはずです。

戦形は、「通常」の角換わりに。一手損角換わりよりも、より定跡研究が深く隅々までされていて、安易には指せない形です。かつては、この形のスペシャリストでは、丸山さんや谷川先生などは、先手でこの形、特に本局の相腰掛け銀になれば、ほとんど必勝というイメージがありました。また、先手が一方的に攻めることが多く、後手が守勢一方になりがちという印象も強かったです。かつての矢倉と似たところがあります。
しかし、最近は、そう簡単に先手が勝てるという感じではなく、後手の対策が進んで来ているようです。それも矢倉と似ています。
丸山vs羽生でも、去年の順位戦で、羽生さんが後手を持って勝っています。やはり、羽生さんは、相手を見てどの戦形を選ぶか考えているのでしょう。何でも指せる羽生さんだからできることなのですが。但し、基本的には研究将棋なので、研究の深さに定評がある丸山さんにぶつけるのは、特にこういう大きい将棋では勇気がいると思うのですが、そういうところで踏み込んでくるのも羽生さんらしいところです。
先手が▲2九飛と引くのは、割と古い形で、実戦も多く研究され尽くしているはずなのに、まだ分からないというのが将棋の深いところ。ゴキゲンの▲5八金右急戦でもそうですが、基本的には将棋は簡単には研究しきれないものなのでしょう。少なくとも、現状では。
どうも先手の攻めが細いように言われていましたが、さすがに丸山さんもなんだかんだと手をつないで、この局面に。
羽生丸山aaaaa101手
この後は、先手は▲3二金から▲3三馬の狙いが分かりやすい。何より後手玉は逃げ場がありません。いわば、自玉には確実に爆発する時限爆弾が仕掛けられている状態です。したがって、その攻めが来る前に、羽生さんは丸山玉を攻めなければいけないのですが、上部開拓も見えていて、素人目には羽生さんが大変そうだなあと思ってしまうところです。
ところが、個々からの羽生さんの手のつけ方粘り方がすごかった。まず、先手玉に尻金で王手をかけておいての△3一歩。
羽生丸山bbbbb114手
羽生さん自身の感想によれば、この歩は受けなかったほうがいいそうです。ただ、私が注目したいのは、こうして攻めておいて一転受けて手を渡すということを羽生さんが繰り返すことです。
さらに、△6九飛成だと▲4五桂で決まるので、苦心して一度△3八龍と引いて歩を受けさせてからの、△3六龍の二段モーション。さらに、わざわざ近づけて打つ△6四角。銀で受けると、後手から強襲する順が生じるそうです。丸山さんもさすがに看破して桂を受けると、玉頭にアヤをつけて迫ってきます。この辺のやり取りは、迫力満点で息を呑みました。
但し、結局羽生さんが龍を逃げなくてはならなくなりました。
羽生丸山ccccc130手
これも、感想では羽生さんが玉頭に手をつけたのは、上部に逃がしてやり過ぎだったそうです。但し、丸山さんにしてみれば、あの羽生さんにこのように、あの手この手で怪しくせまられたら、相当精神的にも疲労したのではないでしょうか。で、最後にひょいと龍が逃げます。羽生さんからすれば、やむにやまれず逃げただけなのでしょうが、結果的には攻めたり引いたり、丸山さんを疲れさせる指し方になっているように感じました。
とはいえ、ここでは丸山さんが、あとはどう決めるかだけという感じの局面。持ち時間も、しっかり残してあったようです。▲5一の馬は、受けにきかしておきたいところですが、普通に攻めて行くのでは受けが生じるので、いきなり馬切りから行くのは、こわいけれども正解だったようです。
進んで、丸山さんが飛車を打って詰めろをかけたのに対して、羽生さんが△7三角と詰めろ逃れの詰めろをかけたところ。
羽生丸山ccccc138手
ここら辺では、実は私などは興奮してしまいました。「おお、こんなところで、詰めろ逃れの詰めろが、出たかマジック、羽生逆転か」と。でも、これは弱い素人の悲しいところ。冷静に考えれば、これくらいの詰めろ逃れの詰めろなら、羽生さんでなくてもどんなプロでも一目でしょう。また、羽生さん自身は、その後の展開まで読んでいて、この手ではどうしようもないとして、ガッカリしたように指したそうです。冷静に見ていた控え室も、ちゃんとその後の展開まで見えていました。
ところが、この後ドラマは起こりました。丸山さんが、▲9七玉と逃げたところ。
羽生丸山ddddd139手
これだけはやってはいけないという手を丸山さんが指してしまいました。先手玉に詰めろがかかっている以上、とにかく何か受けるしかありません。▲8三金でも、香車を王手でとって▲7五香でも受かっていたそうです。どちらも、特に妙手というわけではありません、とにかく必然的に詰めろを受けただけの手。特に、がっちり金を打って、場合によっては入玉してしまうのは、普段の丸山さんなら、得意中の得意のはずです。それが、一番あぶない逃げ方をしてしまった。
魔がさしたとしか言いようがないでしょう。前局の深浦さんも、最後に逃げてはいけないあぶない玉の逃げ方をして、勝負をフイにしてしまったばかりです。それが、こんな大事な将棋で二局も続いてしまった。棋譜解説によれば、どなたかが「何かが(羽生さんに)憑いているようだ」といわれたそうですが、誰しもそう感じたことでしょう。
少し強引に心理面と結び付けて考えると、羽生さんの相手を疲れさせる指し方によって、対戦相手は最後にはすっかり消耗してしまうというのは、もしかしたらあるかもしれませんが。
また、丸山さんの投了が、素人には少し早かったのも興奮を高めました。「えっ、丸山さん、投げたの」と。解説によれば。もう指す手が無いそうですが、羽生さんも驚かれたそうなので、やはり少し早いのではないかと思います。丸山さんは、時々こういう潔い投了があって、銀河戦でも、渡辺竜王相手に投了が敗着というのがありました。朝日杯の決勝でも、行方さん相手に急に投げていました。
丸山さんは、よく激辛流といって、厳しい勝ち方をするといわれますが、結局あれは、プロ意識を持って確実に勝てる順を選んでいるだけということなのでしょう。プロ意識が徹底しているので、指しても仕方ない場面では、いきなり投げるということなのではないかと推測します。丸山さんは、本当に独自のプロ意識を持った棋士だと思います。
とはいえ、丸山さんにとっては、まさしく痛恨の一局。
気の早いファンは、羽生の竜王挑戦で決まりだと思っているでしょうが、木村さんもそういう世論を感じて、最高に闘志を燃やしていることでしょう。何よりあれだけ高い勝率を上げ続けているというのは、とにかく力がある分かりやすい証拠。どうなるか、まだまだ分かりません。
ちなみに今週の週刊将棋を見たら、一二年の新人を除いて、現在通産勝率が七割を超えているのは、もう羽生さんしかいません。最高に強い相手だけとずっと戦い続けてこの数字。
やっぱりバケモンです。