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(将棋の銀河戦のページで棋譜閲覧可能。)

阿久津先手で普通の角換わりに。羽生が後手の角換わりでよく用いる形に。今年の名人戦でも出ていた。先手が▲2五桂と跳ねて▲2八角と打って後手が飛車をきる展開になることが多い。
しかし、阿久津が流行の最新形を避けて▲2五歩として▲4五歩と仕掛ける形に。解説の島朗によると、かつて村山聖と羽生が20年前に指した形だそうである。
阿久津も手段を尽くして攻めるのだが、△4六歩と飛車角の焦点に垂らして受けたのがいかにも感触が良い。まだ優劣不明だが、受けている羽生の方にらしさが出ている。
阿久津の攻めがつながるか、羽生が攻めをきらせてしまうかという展開になったが、羽生がテクニックを使って巧みに正確に受け続けて、阿久津が攻めさせられていて、常に攻めがきれるのを心配しないといけない展開になった。
じっと△1四歩と香車を取りにゆく手など、とにくあせらずにじっくり受ける方針が徹底していた。
阿久津も角をきって香車を取っての田楽刺しで王手馬取りをかけてハッとさせる。しかし、羽生もその角を打って冷静に受けられてみるとなかなか攻めがみつからない。どこまで行っても、羽生の懐の深さに阿久津が手を持てあましている感じだった。
阿久津も自爆せずに▲6四歩と手を渡したが、羽生も負けずと△9二飛の得意の手渡し。阿久津が何をしても羽生が山のようにドッシリと構えて動じてくれない。
結局、島朗によると「阿久津さんが本来一番やりたくない俗筋の」▲6三角で迫る。しかし先手も必ずと金が出来るので後手も具体的にどう受けるか難しそうなところだ。
ところが、ここも羽生も再度の△4六歩と先手の飛車を近づけての△4三香。これがピッタリの受け、かつ攻めにもなっている。下手に攻めると香車が飛車にあたってきてしまう。羽生らしいセンスのよい受けで阿久津は参ってしまった。
とにかく本局は羽生の受けの強さと冷静さが光った。島の言うように、最近の羽生の将棋にはますます凄みのようなものが出てきていると思う。
将棋は満を持して羽生に攻める番が回ってきた。あとはどう攻めるかという感じになったのだが、島が特に感心していたのが△8六桂。
直前に△6七歩と叩いたので当然△5五桂と思いきや、こちらに桂。
島「この一手ほどレベルの高さを感じた事はありません。△5五桂より△8六桂が速いと分かると将棋はどれだけ楽しんでしょうね(笑う)。将棋って楽しいと思いますよ、これ分かっていると。(笑うしかないという感じで笑う。)」
以下、ゆるむことなくきちんと寄せて羽生勝ち。終ってみれば羽生の快勝譜である。最近の羽生の勝ちっぷりは、ちょっとこわいくらいである。
文中に何度も登場したように島朗の名解説ぶりが素晴らしかった。矢内も相変わらずの安定の聞き手ぶりで、島も気分良さそうに乗りに乗って喋っていた。
最後に特に印象的だった島による羽生分析、将棋分析を紹介しておこう。
「羽生さんの凄いのは、七冠の頃と比べるとタイトル数は減りましたが全然衰えてない事。むしろ、最近の方が凄みがあります。
今でも若手と最新形を指して、なおかつ競りあって勝つ凄みがあります。
羽生さんが40代になっても衰えないのは、知識の棚卸とでも言いますか、知識の更新が凄いと思うんですね。
知っている事を復習して、さらにその精度を高めているという気がします。単なる研究というよりは、自分の知識の整理が今までの棋士になかったと思います。特に記憶力の落ちてくる年代になって、それを集中的にされている印象があります。」
「類似形のある局面について。チェスの実験でも分かっているが、レーティングの高い棋士ほど、新しい局面としては見ないです。レーティングの低い棋士ほど新しい局面として見てしまう。
専門技術というのは、そういう技術を結びつけるという事。知識のネットワークの結びつけの強い人が勝ちます。情報をバラバラにしているだけでは結びつきません。」