第二局もAlphaGoが勝った。イ・セドルは完敗を認めた。
「言葉がない。私の完敗だったことを認める」と語り、10日のアルファ碁には「弱点がなかった」と付け加えた。
 先だって李氏は、AIに対して自らの「大勝」を予見していた。だが対局後、李氏は青ざめた顔で「アルファ碁は今日、ほぼ完ぺきな囲碁を打った。(中略)全力を尽くして、少なくとも1勝はしたい」と述べた。
(グーグル開発のAI、囲碁第2局も勝利 トップ棋士との対局で より)
序盤で独創的な手をAlphaGoが放つたようである。
プロの囲碁棋士で解説者の金成龍(Kim Seong-Ryong)氏によると、李氏はアルファ碁が序盤で「衝撃的なまでに型破りな」手を何度か打ったところで、苦戦し始めたようだったという。
(同上より)
昨日も中継を見ていたのだが、イ・セドルが4線に打った白石に対して、AlphaGoが5線にカタツキしたのが独創的だったようである。
解説のマイケル・レドモンドが「タケミヤ・スタイル」と表現していた。
碁には隅をかたく打ってまず地を確保する打ち方と、中央志向で手厚く大きく展開する打ち方の二通りがあるようだ。武宮正樹が後者の代表格で「宇宙流」とも呼ばれている。ただ、その打ち方だと地(キャッシュ)を確保しないので、まとめるのが大変なわけである。
そういう打ち方をAphaGoはしたようだ。そもそも、モンテカルロ法を使用しているソフトはそういう打ち方になりやすいらしい。今までのソフトだとその打ち方だと強い相手(プロでなくてもアマでも)にはまとめられずに負けてしまっていたようだ。しかし、AlphaGoにはそれだけの力があるようなのである。
将棋の世界で言うと、現代将棋は玉のかたさを重視する。居飛車穴熊がその典型で、多少悪くても玉のかたさをいかして「居飛穴の暴力」で勝ってしまう。それに対して、例えば武宮と同じように独創的な将棋を指す佐藤康光などは、穴熊に対して広く堂々と構えて戦ったりするのだが、勝つこともあれば、網の目が破れて負けてしまうこともあるという感じである。やはり玉がかたい方が実戦的には勝ちやすいのである。
囲碁の事はよく分からないが、恐らく地の確保を優先するのが現代的な合理的なスタイルなのだろう。武宮流はロマンがあるが勝つのは大変なはずだ。
ところが、AlphaGoがそういう人間がなかなか打ちこなせないような碁を志向しているようなのである。しかも、イ・セドルに完勝してしまったわけだ。
つまり、AlphaGoは単に強いだけでなく、囲碁の打ち方のスタイルの可能性を広げて技術向上に貢献する可能性もあるのだ。将棋の世界にも強いソフトはたくさんあるが、そういう意味での可能性まで感じさせるものはないような気がする。
AlhaGoがそういう打ち方をする原因は、先述したモンテカルロ法以外に、ニューラルネットのディープラーニングを用いている事にあるのだと思う。Alpha碁の仕組みや特性についてはまた回を改めて考えたいと思っているが、結論だけ言うと人間の無意識の直感に似たような指し手選択をする仕組みになっていて感覚重視で、合理的な読み重視ではないようなのだ。その結果、地を重視するのでなく、中央志向の厚み重視になっているのが大変興味深い。
囲碁プレミアムの解説は高尾紳路だった。言うまでもなく現在の日本のトップクラスの現役バリバリである。
高尾はわりと率直にAlphaGoの打ち手に対して感想を述べていた。やはり、人間の感覚とは相当ずれているらしい。イ・セドルの打ち方が人間からみると素晴らしいのに対して、
AlhaGoの着手は、感覚的にはよくないように見える、あるいは「筋が悪い」ようなのである。ところが、進んでみるとそういう手が決して悪い手ではないことが分かってくる。
第一局同様に、やはり人間の感覚だとイ・セドルがかなり優勢にみえたようだ。高尾以外のプロもそう見ていたようである。
しかし、高尾が具体的に地を計算してみると、「意外に黒の地が多いですね」ということになった。中央志向なので確定地は少ないが、実際には難しい。高尾も驚いていた。
さらに、終盤のヨセに向かうにつれて、ますますAlphaGoが冴えてくる。相変わらず人間の高尾の感覚だと違和感があるようだが、やはり手が進むと感心させられてしまう。
例えば、イ・セドルが下辺を攻めたあたりでは、それがとても大きくて、中央の白が死ななければもうセドルの勝ちだと高尾は述べていた。
ところが、Alpha碁は悪いと思っていないようで、悠々と落ち着いて打ち続ける。そしてかなり進んでから、高尾が「こうなると下辺の白はそんなに得になっていませんね。細かい碁です。」、と言い出すのだ。
さらに進むと、実は黒が盤面で10目くらい勝っていることが判明する。イ・セドルが小刻みに指を動かして地を計算して、「いゃぁ」という感じで頭を抱える。
AlphGoの打ち手に高尾が、「これはやっちゃったのではないですか」と述べる。人間だと普通打たない手である。ところが進むと立派な手だったことが分かる。高尾は弱いプロではなく日本や世界のトップレベルなのである。
最後は、AlphaGoがゆるんだ部分もあったようだが、それもモンテカルロ法を採用しているソフトの特性で、わざとゆるめてギリギリでも確実に勝つクセがあるそうだ。勿論意図してではないが、人間にとってはなめられたようでたまったものではないだろう。
終わってみればAlphaGoの完勝である。第一局以上に強さを感じさせた。囲碁のプロ棋士たちも認めていたが、既に人間を超えてしまっているのかもしれない。
まるで、イ・セドルがAlhaGoの「お釈迦様の手の上で踊らされている孫悟空」のようにも感じてしまった。