最終局はアルファ碁が勝って四勝一敗でシリーズを終えた。
第四局でセドルがひとつ返して、なおかつアルファ碁の弱点を浮き彫りにしたので、最終局も大変注目された。もし、また勝つかあるいはソフトの欠点を見つければ随分印象が変わるので。
しかし、結果的にはアルファ碁の快勝。やはり良くなってからの安定性は他の三局同様だった。
将棋でもそうだけれども、やはりコンピューターの場合は、劣勢になると弱い。人間なら劣勢になっても逆転するために辛抱して差を広げないようにしたり有効な勝負手を放ったりすることができる。しかし、コンピューターの場合は、自分が悪くなると辛抱せずに自暴自棄になったり無意味な手を恥ずかしげもなく続けたりする。「水平線効果」と呼ばれるものである。
だから、人間は一度かなり形勢を良くすればその後はコンピューターが自滅してくれるので、勝つのは容易だ。問題なのは、アルファ碁のような強い相手になかなかそのようにハッキリよくするのが至難なわざだという事である。
最終局に勝ったことで、アルファ碁が人間トップを超えてしまったことは素直に認めざるをえないだろう。
但し、囲碁の場合は、コンピューター特有の弱点をつく「アンチコンピューター戦略」はまだ全然行われていない。将棋ではそれもかなり進んでいるのだが。
例えば、第四局で出た中央のゴチャゴチャした複雑な石の配置を読みきれない弱みはモンテカルロがそもそも具体的に読めないがゆえの必然的な弱点だろう。但し、それを具体的にどうつくのかは難しそうなのだけれども。
また、アルファ碁の「コウ」への対応もよく分からないままに終わった。
今後もし人間との対局が継続的に行われるのならば、その辺も明らかになってくるはずだ。
それと、解説の王銘琬によると、当初はセドルが良さそうだったが、その後慎重にかたく打ちすぎて逆転されたという見方を示していた。セドルは普段なら良くなってももっと大胆に攻撃的に打つそうである。やはり、それはアルファ碁の強さを警戒しすぎてしまったのかもしれない。第四局も勝ちはしたが、ヨセを見ていた高尾紳路が「こんなにかたく打つセドルさんは見たことがありません」と述べていた。心理的にセドルも普段通りには打てなかったのも大きかったのかもしれない。

シリーズを通じてセドルの振る舞いはエレガントで大人だった。かわいらしいお嬢さんも登場したりして、セドルの人柄にすっかり惹かれてしまった。
しかし、実はセドルも若い頃はかなりとんがっていたらしい。

人間対AI:感情ない人工知能から謙虚さを学んだ「反逆児」李九段

まるで今の柯潔のよう?だったらしい。
しかし、年齢的な成熟もあるのだろうが、敗者の姿としてとても美しかったと思う。カスパロフがディープブルーに負けた際の、両腕を広げて悔しげに盤面から立ち去る姿が忘れられないが、あれとは対照的だった。もっとも、カスパロフのような素直な反応もあれはあれでたいそう魅力的なのだけれども。

韓国碁院、アルファ碁に「名誉プロ九段証」

このニュースについて、王銘琬は「読めない九段だよねぇ」と述べていた。そう、アルファ碁は原理上きちんと読めないので、それで九段に認定されてしまったのは本当に驚くべきことである。

アルファ碁の技術面ではこの記事が詳しくてよくまとまっている。ど素人の私が手探りで書いてきたことが、それほど間違いではなさそうなのでちょっとホッとしている。

【時論】「アルファ碁の衝撃」から何を学ぶべきか=韓国

アルファ碁の「直感」について具体的な方法も説明している。
アルファ碁で使われたニューラルネットワークは、高等動物の頭脳の視角皮質で起きる計算をまねてイメージ内のオブジェクト認識に活用するコンボリューショナルニューラルネットワークという技術だ。すなわち、碁盤を黒色と白色のピクセルで成り立つイメージとして扱って人間がイメージを見て直観的にオブジェクトを認識するのを碁盤でほとんどそのまま適用したのだ。
アルファ碁の人工知能としての限界についてもこう述べている。
今回の対局の結果が「人工知能の完成」を見せるということも絶対にない。アルファ碁に搭載された技術は真の意味の汎用人工知能だとは呼びがたい。
とはいえ、とにかく囲碁という分野ではあっても、人間特有の高度な能力である「直感」のようなものを具体的に再現できたのが何より画期的な事だったと思う。

カスパロフがツイッターで、この対決についての記事を公式RTしていた。
カスパロフはもはや完全に政治家なのでそのような事ばかり呟いている。その中にポツリとこのRTが混じって現れていた。特に自身のコメントはないのだが、それがかえってカスパロフの気持ちを伝えているように感じた。
この地球上でセドルの気持ちが恐らく一番よく分かるであろうカスパロフが何を思い何を感じたのか、とても気になったのである。