shohoku321

sixthman's 『靴を脱げ』

随筆  by tomohiro nagayama      

20

セブンイレブン セツナイキブン

いつもの帰り道。
そしていつものように途中のセブンイレブンに立ち寄った。すると店内の様子に僕は唖然とした。
商品棚がほとんど空の状態なのである。雑誌に至っては一冊も並んでいない。それはまるでオープン前のコンビニの姿のようでもある。
あぁ改装でもするのかなとその時は何となく思った。
何歩か店内に歩みを進めたところで壁の上部に広々と横断幕のように貼られた文字が目に入った。

「40年間ご愛顧いただき誠にありがとうございました。」

僕はハッとした。そして急に巨大な切なさが襲ってきた。

良く立ち寄るセブンだった。ホントに良く立ち寄るセブンだった。
帰り道のちょうど中間地点にあり何の用も無くても必ず入店する。
どこか頼りなく天パで頬が桃色で小柄な店長がいつもレジに立っている。
ぎこちない口調で「ありいがとおございましたあ。」と言う。
ちゃきちゃきした妹さんがいて彼女もたまにレジに立つ。
パートのおばちゃん達からからかわれたりしている。

40年間のご愛顧。ずいぶん長い年月だ。僕が産まれる前からだ。もしかしたら店長のお父さんは元々なにかの小売店でもやっていて息子に店を引き継ぐ時に一大決心をしてセブンに切り替えた、そんな背景が想像される。

突然の閉店じゃないか。これから帰り道にどこへ立ち寄ればいいというのか。

缶コーヒーを持って僕はレジに立った。もちろん目の前には店長。会計を済ませお釣りを受けとったその瞬間僕は当然の事を尋ねた。
「閉店するんですか?」
店長は少し困ったような顔で答えた。
「そうなんです」
それ以上何も聞かず店を出ようとしたとき店長はいつもの感謝の言葉ではなく僕にこう言った。

「すいません・・・」



店を出て僕はなぜか涙が出てきた。




その翌日にはもう店の窓ガラスには内側からベニヤが貼られ
セブンイレブンに入ることはできなかった。

5

ギターと僕

先日終了したトローチの「エキスポ」。
桐本拓哉さんが演じた山下が劇中でギターを弾く素敵シーンがあった。
元妻が鼻歌で良く口ずさんでいたメロディー。
儚く美しい愛の歌。

僕はシーンに全く関係のない役だったのですがこれは何かの機会だと思い、せっかくなら僕も弾けるようになりたいと稽古場で勝手に拝借しては弾き、家に帰ってはずっと部屋の角に立てかかっていたギターをおもむろに手に取っては弾き、本番中も空き時間に拝借しては弾いていました。

今まで弾きたいと思う曲ができるたびにコード表を開いては練習し不可能なコードが出てくると挫折するという愚行を繰り返してきました。
結局弾けるのは大好きなスピッツの「冷たい頬」ただ一曲。

今回の公演のおかげで、僕のレパートリーに「千代子の歌」が加わりました。
千穐楽打ち上げで桐さんとギター話で盛り上がりユニット組みましょうなんて提案もでました。
「エキスポズ」なんてどうでしょう?
これからも弾き続けたいと思います。

追伸:かの名曲「Stand by Me」は4つのコードで成り立っている素晴らしい曲です。
現在練習中の曲は小沢健二の「いちょう並木のセレナーデ」です。
10

未来から来た女の子

先日とある場所へ向かう途中の地下鉄で起こったはなし。
僕は電車に乗り込んでほどほどに空いている席の一番端に座った。
なんとなくボーっと周りを見やっていると21時の方向の少し離れた戸袋付近で手刷りにもたれ掛かるように立っている一人の女の子に目が止まった。
年の頃は23.4歳だろうか。顔立ちはキリッとしており、強気な雰囲気である。背丈は160くらい。薄手でカーキ色のロングコートを羽織っているのだけど様子が少しおかしいのである。
全身に煤(すす)を被った案配で頬にも手でぬぐった感じの黒い炭のような痕がついている。それはまるで未来の荒廃した街から突然現代にやってきた女の子の如くなのである。
挙動にも落ち着きがなく辺りをせわしなく見回したり、停車中の駅で一度降りたと思いきや扉がしまるギリギリのタイミングでまた車両に戻ってきたりとおおよそ普通とは言いがたい。
ぼくはたまたまその日かけていたサングラス越しに彼女を目で追いかけていた。

何駅が進んだころ事態は起こった。
彼女が突如スタスタと僕めがけて歩み寄ってきたのだ。機敏な動きとスマートな佇まい。近くで見てもやはり顔立ちは整っていてかっこよさすら感じる。彼女は座っている僕を覗き込みこう言い放った。

「あのぅ!なんかぁ・・・なんか届きました?」

・・・・!?

なんだこれは。どういうことだ?届いた?僕に?何が?誰が俺に何を届けた?届きました?届いた?・・・何かとても重大な機密かなにかなのか?
この女の子は僕に届いた未来からの世界を救う重要なエレメントを受けとる使命のためにこうして地下鉄に乗り続けて僕というキーパーソンを探し続けていたのだろうか?
そんなことを考え巡らしていた次の瞬間

「あっ、違いました!」

んーっ違うんかい!!!



7

世界最高のシーン

高校生のころクラスメイトに映画好きなやつがいまして言い訳になりますがそのおかげで当時僕は進学に向けた勉強もろくにせずレンタルビデオ屋で大量の映画を借りるという生活を送っていました。
そいつが最初に勧めてきたのが「レザボア・ドッグス」。スタイリッシュな展開と暴力性に魅了されてそれからタランティーノ作品をシュパパパパッと借りたのです。
中でもタランティーノが脚本を手掛けている「トゥルー・ロマンス」のクリストファー・ウォーケンとデニス・ホッパーの対決シーンはほんと世界最高のシーンだと思いますし僕の目指す全てが詰まっているのです。image
内に抱え込んだ感情の実(じつ)を表現として出し引きするときの絶妙なバランス。
場合によって状態と感情はイコールではなく特にデニス・ホッパーの笑顔は極限の状況下の中で人間はきっとこうなってしまうと思わざるを得ない強烈な説得力を帯びているのです。
image
二人の間に目には見えない数千発の銃弾が無音で激しく飛び交っているような錯覚に陥ってしまいます。豊かが極まっている。


そういえば僕にレザボア・ドッグスを教えてくれたあいつは今何をしているのだろう。

26

全身全霊タッチ

朝。

駅のキオスクでちょっとした腹ごしらえのためエナジー系のスティックバーとホットミルクティーを買おうとレジに置いた。

「Suicaで買うと20円引きよ!」

店員のおばちゃんは陽気に言い放った。
僕は既に財布から小銭を用意しかけていたのだけどそのおばちゃんの陽気さに心が揺れ動きかけていた。自分がどんな言葉を言ったのかははっきりと覚えていないが
「残高ちょっと不安ですけど・・・」
そんなニュアンスを呟いたときおばちゃんがすかさずこう切り込んだ。
「いってみよう!せーのっ!」
僕は操られるように財布を小さく振りかぶりタッチをしていた。

ピッ・・・

Suicaは無事商品の総額をねじ伏せた。

今になって思う。
もしかしたら残額は足りていなかったかもしれない。
でもおばちゃんの「せーのっ!」が僕の背中を力強く押してくれた。

本当のところ20円引きなんて嘘だったのかもしれない。細かく残高や商品の総額を覚えてはいないのだから。

どこか元気のないシケた面をした僕をおばちゃんは「しっかりしろ!」とキオスクを使ったプチどっきりをして励ましてくれたのだと思う。

そんなことを思った。
ありがとう おばちゃん。
21

クラウチングガール

先日作詞サポーターとして参加させていだいたあひるなんちゃらの「走るおじさん」。稀代のトラックメーカー綱島慎平さんとの楽曲も3曲目となりました。またご一緒させてもらえれば光栄でございます。女の子が疾走してるイメージで書きました。よろしければご覧くださいませ!

------

あひるなんちゃら「走るおじさん」テーマ曲
『クラウチングガール』

あたしはここにいる
好きな服着て 好きなstepを踏んで
悲しいこと全部
ISETANの紙袋に詰め込みながら

涙のデトックスで痩せてく
幾つかの幸せなメモリー

裸足で走る
ミュールはあの日に脱ぎ捨てた
ママからもらったストールが襷
夢中で踊る
あたしmadeのつたないワルツ
ちょっとふらついたとしても
笑わないでね

話は変わるけど
君の家まで 今度走って行くね
無理だと思うかな
そんなことないよ
ちゃんとランニングしてるし

お気に入りのシューズを見つけた
サーモンピンクの ニューバランス

あたしは走る
冷たい風が心地いいから
ママからもらった襷が揺れる
夢中で走る
あの日捨てたミュールに火を灯す
全ての想いが燃えて聖火になる

アラカワのリバーサイドで
何故かよく見かける
走るおじさん

すごく気になる
なんの為に走っているの
何に追われてどこへ向かうの
とても気になる
なんとなく泣き顔に見える
心のなかで小さなエールを贈る

頑張れおじさん

走るおじさん
15

まだ見ぬ未来はそのうち必ずやってくる

街にあわただしく道路工事が急増し始めた。
正に年度末といった趣のある風景である。

都心部には建設中のビルがそこここに出現し始め、首都高は環状で繋がり、北陸新幹線が開通。数年後には名古屋と品川を40分で結ぶことが約束されている。

未来はやってくる。

昔漫画で見た主人公が手にしている四角いものは、スマートフォンとして当然のように我々の前に現れた。映像は飛び出し、国民全てがナンバーで登録され、スケボーは空を飛び、ナイキのスニーカーはサイズ自動調整機能を備え、後は車が空を飛ぶだけだ。


そんなことありえないなんて、口が裂けても言えない。

Recent Comments
QRコード
QRコード
Profile
Works
Screenshot_2017-02-17-19-54-19

さぬき映画祭ストーリープロジェクトグランプリ作品
「中年よ、神話になーれ!」
監督:頃安祐良

Screenshot_2017-02-17-19-56-42

ジャグラー20周年動画
「ジャグラーは変わらない。」
ナガレコランキング(09.09現在)
no.1 『誰より好きなのに』/古内東子
no.2 『Songwriter』/KAN 
no.3 『冷たい頬』/スピッツ
no.4 『時には昔の話を』/加藤登紀子
no.5 『慕情』/サザンオールスターズ
no.6 『LOVE SONG』/ORIGINAL LOVE
no.7 『さらば青春』/エレファントカシマシ
no.8 『かもめが飛んだ日』/渡辺真知子
no.9 『命果てるまで』/ユニコーン
no.10『DISCOMAN』/Great3   
高円寺紅白歌合戦
〜歌合戦の歩み〜
第1回:2009.春開催
参加者 3名
第2回:2009.7開催
参加者 7名
第3回:2009.9開催
参加者 11名 
第4回:2010.8開催
参加者 10名 
※第5回は年末開催予定。
  • ライブドアブログ