革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

『伝えることから始めよう』を読んで、ジャパネットで成功した、ものやサービスの売り込み方は「ジョブ理論」に通じるものあり。

伝えることから始めよう
高田 明
東洋経済新報社
2017-01-13

 テレビショッピングで、ゼロから燃焼1000億円まで成長させて、高田氏の自著。

 だれでもあの甲高い声は一度は聞いたことがあるはず。

 立身出世物語としても読めるが、最新のマーケティング論としても読むことができる。

 ジャパネットは、基本はナショナルブランドで特段安売りもしない。ただし、高齢者を中心として、困っていること、面倒くさいと思っていることなど、いわゆる「ジョブ」を解決するもの+サービスとして説明するところが特徴。
 
 例えば、大型液晶テレビを売るときには、「自室にこもっているゲーム好きの息子さんが居間にでてきて一緒にテレビをみるようになる」と説明して、家族の断絶に困っている夫婦の心をとらえる。

 高齢者が若者が使っているタブレットについて、うらやましいと思っているのに対して、タブレットの販売から設定、使い方まで、ものとサービスをセットにして販売する。

 まさに、先日読んだクリステンセンの「ジョブ理論」http://blog.livedoor.jp/shoji1217/archives/1067496636.htmlを実践している。

 また、経営者の身の振り方として、息子や若手職員が一日特定の商品をテレビ、ちらし、新聞広告で一斉に割引きして販売する戦略を、絶対に失敗すると思って反対していたが、損を覚悟でやらせてみたら、大成功。この結果から、自分の経営者としてのセンスが100%正しくないことを知り、たぶん、時代遅れになっていることを悟って、2016年に社長を退き、一切経営から身を引いたことも、的確な判断だと思う。

 その他、顧客情報がもれた際に一切の営業や宣伝を一時中止するなどの危機管理対応についても、常道ではあるものの、実際には、とっさに大きな損失をだす行動をなかなかとれないなかで、適切な判断をしている点も光る。

 あの高い声でなんかいかがわしいな、と思っていたが、著者がちゃんとした経営者であったことで、自分の認識を改めた。

『ネットメディア覇権戦争』を読んで、ネットを使った便利なニュースサービスの競争は是として、消費者側が賢くなる必要あり。


 ネットメディア、特にニュースメディアとして、ヤフー、LINE、スマートニュース、日本経済新聞、ニューズピックスを紹介し、比較している。

 ニュースメディアについては、

(1)ニセニュース、フェイクニュースが混じり込む問題
(2)既存メディアのただ乗り問題
(3)メディアであれば自らが誤報の責任を持つが、単なるプラットフォームだと記事元が責任をもつ。しかし、これが混在している、ヤフーなどは責任の所在が不明確
(4)広告なのに広告であることを示さないステマ
(5)ニューメディア側の問題としての収益事業化が困難な問題

 この本で紹介されている5つのニュースメディアの特徴や編集方法(人かアルゴリズムか)については、位置No2393で表で整理されている。

 この5つのメディアはいずれも収益事業化に成功し、便利なサービスを提供しており、上記のいろんな批判はあるものの、消費者としては有効に使っていくのが望ましい。いろいろ文句を言っていても始まらない。

 むしろ、上記の問題、さらに、アルゴリズムによって消費者個人の関心事に限った情報しか提供されず視野が狭くなる問題などについて、消費者側でどう賢く情報の取り込みや自分の思い込みを修正していくかが重要。

 それは、結局、紙の新聞や雑誌、さらには、有料メルマガジン、NHKのワールドニュースなど、効率的に他の媒体や情報源をあたるしかないし、それを意識的に行う消費者がふえていくことしかないと考える。

 また、この本でも指摘しているが、既存メディア、新規のニュースメディアとも、短い速報のほかに、論点を深掘りして読者が一緒に考えて論評できるような、深さとコミュニティ感をもった方向への充実が大事だと考える。

 その意味では、自分も購読しているが、新潮社のForesightや日本語版のウォールストリートジャーナルなどは参考になると思う。

 以下、抜き書き。

(1)ライブドア事件は、ネットに広がるマスゴミ(マスコミとゴミを掛け合わせた造語)批判の源流の一つだ。それ以降、「マスメディアが伝えるニュースは偏向しているが、ネットは編集されていないから真実がある」といったマスゴミ批判は、ニュースにおいてもアクセスを集める格好のテーマとなった。そして、マスゴミ批判は、人々が偽ニュースを受け入れる素地となっていく。(位置No357)

(2)ステマの原因は、ネットニュースのビジネスモデルの不完全さにあると言える。記事への支払いが安く、不安定なままでは、ステマを密かに続けるメディアや個人はなくならない。ステマ問題は、ニュース流通の独占状態にあぐらをかき、ニュースをつくるメディアへの配慮が乏しかったヤフーの自業自得でもあった。(位置No703)

(3)(LINEが韓国系と指摘した上で)注意してもらいたいのは、LINEを規制したり、批判したりすべきだと言っているわけではないことだ。いま、私たちが使っている検索サービスやソーシャルメディアのほとんどが海外企業による運営で、われわれはそのアルゴリズムが選択したニュースに日々接している。ニュースメディアと国家の関係を考え、どのような対応をすべきかは、ユーザーがまず考えるべきことだ。(位置No1215)

(4)「ソーシャルメディアの登場で、ニュースはブレイキングからビューズになる」が、渡辺のニュースの未来予測だ。 ブレイキングとは、最新の、進行中の、という意味で、ニュースの世界では、the  breaking  news=ニュース速報として使われている。ビューズは視点や解説のこと。「池上(彰)さんの人気が高いことでも分かるでしょう」と渡辺は補足した。これまで報道機関が重視してきた、誰よりも早くニュースを伝えるという速報から、事象を分かりやすく説明したり、さまざまな見立てを提供したりすることに価値が移るというのだ。(位置No1713)

(5)有料でも購読してもらえる魅力あるコンテンツとは何か。試行錯誤の結果、有料会員獲得に有効な記事の特徴が分かったという。 速報ではなく、時間が経過しても価値がある「ストック型」。じっくり対象に取材をする「深掘り型」。そして、公開のタイミングは「毎日」だ。(位置No2216)

『フランス現代史』を読んで、フランスの加害者、被害者双方での隠れた歴史的事実の指摘は貴重か?ジャーナリストとして旗幟を明らかにしてもよかったかも。


 著者は、毎日新聞の記者。2011年から2015年のフランス特派員時代に、第一次世界大戦、第二次世界大戦が生んだ、フランス人もあまり語らず、日本人も当然しらない、フランス人が加害者、被害者となった歴史的事実を現場の踏査とインタビューでまとめた本。

 ア フランスの第一次、第二次世界大戦で生じた大量の不発弾処理の問題
 イ 第二次世界大戦でドイツに協力してユダヤ人を強制収容所に送り出したドランシ収容所
 ウ ドイツに協力したヴィシー政権とペタン元帥への微妙な評価
 エ ノルマンディ作戦直後に理由もなくドイツ軍に村ごろ破壊され村民が虐殺されたオラドゥール村
 オ アルジェリア戦争でフランス側についたアルキのフランス移住後の差別
など、歴史の貴重な情報あり。

 それだけでも貴重な情報なのだが、学術書や論文のような緻密な分析に基づいているわけではなく、また、歴史的事実の背景にある抽象的な仮説の証明をしているわけでもない。

 仮に、ジャーナリストとしてこれらの情報を世に問うのであれば、大胆に、その問題から学ぶべき点と具体的に提示した方がよいのではないか。

 そうでないと、フランス人も加害者、被害者になって苦労したんだな、というだけで理解がとまってしまう。たぶん、著者は、この加害者、被害者として屈折したフランス人の感情と混乱状態が、なんらかの意味で日本の経験や戦前意識に比較して、意味があると考えたのだと思う。

 その点をもう少し具体的に述べる方ことが、学者でなく、ジャーナリストが書いた本として可能であったのではないか、と考える。その点が惜しいと思う。

 以下、抜き書き。

(1)(第一次世界大戦の激戦地のフルーリ村(現在でも居住不能)の住民の子孫は)「私の父親の世代まではドイツ人を恨み、許そうとしませんでした。でもドイツとの戦争で親族を失った私たちのようなフランス人家族がいるように、ドイツにはフランス兵に殺されたドイツ兵の家族がたくさんいることに、私たちは気づいています。私たちは理解し合えてきています」。ジョゼットは取材の最後にそう語った。(位置No239)

(2)(ドランシー収容所の生き残りのユダヤ人の)ベルコヴェールにはもう一つ懸念することがある。「だんだんと、人々が自分のことだけしか考えない、他者との関わりが薄い世の中になってきています」。他人の痛みを感じない人間が多くなれば、紛争や戦争の芽が増えるのは明らかだ。ベルコヴェールが中学生たちに語りかけた言葉が印象に残った。「もうガス室も遺体焼却施設もないかもしれない。それでも私に起きたことが、形を変えて、君たちにも起こり得るのですよ」(位置No938)

(3)一九七〇年代に入り、アメリカの歴史学者ロバート・パクストンが著書で発表した研究をきっかけに、ドイツ占領下のフランス政府がユダヤ人迫害や強制連行を積極的に進めた事実が次々に明らかになって行った。 パクストンは豊富な資料を丹念に調べ、当時の政府がユダヤ人への差別的政策を、ドイツによる直接的な圧力がない中で策定し、厳格に適用したと解明し、政府が、ナチスによるユダヤ人の強制連行を助け、国内のユダヤ人の状況を悪化させたと説明した。 またフランスの一般国民も、一部はユダヤ人を助けたものの、多くは結果として迫害を黙認するような態度を取ったことが分かっている。歴史学者の間では、フランスでのユダヤ人に対する差別意識は、一九二〇年代には比較的弱かったものの、三〇年代に入り、増幅したとみられている。(位置No974)

(4)ガウク大統領は(ドイツ軍は破壊虐殺をしたオラドゥール村の)訪問を前に、フランスのテレビ局のインタビューで、次のように語っている。「七三歳の私は、隣国を攻撃するドイツ、数百万人の人々を殺害する国に生まれました。戦後の今のドイツは、痛みを伴いながら、この罪と向き合うことを学びました。私は若い頃、自分の国が好きではありませんでした。多くのドイツ人が同じ感情を持っています。真摯にこの罪と向き合うことが、私たちにとって、一つの解放になっています」(位置No1481)

(5)フランス軍側で戦ったアルキは、一九六二年にアルジェリアがフランスから独立するとフランス国籍を失い、後ろ盾だったフランス軍も撤収した。FLNの復讐で、当時約二〇万人いたアルキのうち推計六~八万人が殺害された。 アルジェリアの独立を認めたドゴール政権は、事実上、アルキを見捨てた。独立後、自力でフランスにたどり着き、フランス国籍を再取得した元アルキや家族は約五〇万人に上る。(位置No2238)

(6)ルモンド紙の調査では、パリ近郊のサンモール市など、対象となる市町村の四割弱が、低所得者向け住宅の建設割り当てを実行せず、罰金を払って済ませている。その結果、特定の地域で貧困が貧困を呼び、移民を中心とした低所得者層が集中、固定化している。(位置No2357)
ギャラリー
最新記事
記事検索
  • ライブドアブログ