革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

『災害に立ち向かう人づくり』を読んで、多方面にわたる知見が得られ、同時に防災専門家のあり方も考えさせられる。。


 兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科の教員がまとめた本。

 まず、扱っている分野が、いわゆる防災や復興に係る政策部分だけでなく、健康面、教育面、心理学面など多方面にわたっていて、その内容自体非常に価値がある。

 自分の得意な防災・復興政策の部分でも、第8章の水害リスクとまちづくりの126頁-139頁の水害リスクマネジメントとして、治水対策、土地利用、建築規制、自然災害保険、さらに、滋賀県の流域治水の推進に関する法律の分析などや、第4章の減災復興とガバナンスの56頁-64頁の復興基金の分析、第13章の復興特区の現在とその可能性の分析など、丁寧な分析で非常に役立つ。

 また、防災・復興政策に関する大学の役割の以下の記述は、防災専門家全体に通じる話なので、書き出しておく。(259頁-260頁)

「教育面では、防災や復興の専門家育成の難しい点に、人材需要の変動の大きさがある。大規模な災害が発生すると、災害対応や復興の専門家が大量に必要になる一方、平時にはそれほど人材需要がないのが実情であり、FEMAでは非常勤職員を増やすことで、この需要変動に対応している。津波や地震など巨大災害のリスクが大きい日本では、ひとたび巨大地震が発生すると、様々な分野の専門家が総動員で、災害対応や復興に注力しなければならない。そこで、防災の専門家といっても、平時の防災・減災対策や災害復興の中核を担う「A:防災や復興の中核的専門家」に加えて、災害後の対応や復興に係わる「B:防災や復興に一定程度の知識、理解を有する幅広い分野の専門家の2種類が必要となろう。」

 これと同じことは、現在の国の防災体制にも言えること。

 内閣防災では、東日本大震災以降、防災・復興政策として複数の研究会などを立ち上げたが、「大規模災害時における被災者の住まいの確保策に関する検討会」など、論点整理や中間報告でほとんど終わってしまい、研究会の結論もでず、まして、制度改正自体が十分には行われていない。

 これだけ自然災害が相次ぐなかで、内閣防災の90名程度の職員が疲労困憊して、被災者の生活再建や住まい確保といった基本的な政策立案が十分にできないという点は、まさに、上記Aの部分の要員が極めて不足しているということ。

 防災の専門家集団を国の組織でも確保できる組織体制が絶対必要だし、これは政治的な問題ではなくまじめに議論すべき大事かつ最重要な内政上の課題ではないか?

『GAFA』を読んで、定性的な分析に目新しいものはないが、データでいくつか面白いものあり。

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
スコット・ギャロウェイ
東洋経済新報社
2018-07-27

  タイトルのGAFAは、グーグル、Amazon、フェイスブック、アップルのこと。

 著者は起業家でもあり、ニューヨーク大学の経営大学院の教員でもある。

 この四社の分析について、特にびっくりするようなことはない。

 この四社の次にくる企業として第9章で分析している、アリババ、テスラ、ウーバー、ウォルマート、マイクロソフト、エアービーアンドビー、IBM、ベライゾン、AT&T、コムキャスト、タイム・ワーナーなども、昔の企業にも可能性を認めてるんだがと思うくらいで、驚きはない。

 マイクロソフト全盛の1990年代には、この四社は影も形もなかったわけだから、次の企業の想像するのも難しいし、価値がないのかもしれない。

 ただし、データでいくつか面白いものあり。

(1)世界のスマホ市場 マーケットシェア:アップル14.5%、サムスン20.8%、その他64.7%、利益シェア:アップル79%、サムスン14.6%、その他6.4%(位置No1800)

(2)アメリカ以外の国であげた収益の割合(2016年):Amazon32%、グーグル53%、フェイスブック54%、アップル65%

(3)ユーザー10億人達成までの時間:マイクロソフトオフィス21.7年、Gメール11.8年、フェイスブック8.7年

 四社のなかでは、アップルが若干見劣りする感じがするけど、データ上、強みもある。また、変化が急激なのもデータで裏付けられる。

 また、こういう四社が支配する経済社会で生き残るための指針として個人的にささったもの。

「(25歳でもアイビーリーグ卒業生でないあなたも)いや、まだ大丈夫。私は52 歳で、平均すると25 歳は年下の社員たちと仕事をしている。L 2(著者の会社) にも何人かは私のような年配社員がいる。その全員に共通していることが1 つある。若い人たちを扱う方法を知っていて(明確な目標、指標、彼らに投資する、共感する)、四騎士とうまくつき合えること。つまりそれらを理解し、活用するよう努めていることだ。55 歳でソーシャル・メディアを使えないと(得々と)語る人間は、あきらめてしまったか、ただ怖がっているだけだ。」(位置No5561)
 
 その他抜き書き。

(1)アマゾンが訴えかけるのは、より多くのものをできるだけ楽に集めようとする我々の狩猟採集本能だ。
 我々はものに強く惹かれる性質を持っている。洞穴に住んでいた大昔から、いちばん多く枝を集め、実を割るのに具合のよい石を持ち、「いつ穀物を植えるか、どのような動物が危険か」を子孫に伝えるため壁に絵を描けるきれいな色の泥を持っている者が、生き残る可能性が高かったからだ。(位置No736)

(2)ベゾスが最初の年次書簡に書いていたとおりだ。「失敗と発明は不可分の双子だ。新しいものを生み出すには実験が必要だ。そして最初からうまくいくことがわかっていたら、それは実験ではない★53」。(位置No972)

(3)従来、消費者はブランドのサイトで商品について調べてからアマゾンで購入すると考えられていた。ところが現実は、商品検索の55パーセントはアマゾンから始まっている(グーグルなど他の検索エンジンは28パーセント★108)。これによって権力と利益がグーグルと小売企業からアマゾンへと移行している。(位置No1406)

(4)つまりフェイスブックはアマゾンより漏斗の上部にある。フェイスブックは〝何〟を提案し、グーグルは〝方法〟を提示し、アマゾンは〝いつ〟それが手に入るかを教えてくれる。(位置No2470)

(5)(政治の分断の分析に関係して)アルゴリズムがこうして私たちの社会の分断を深めていく。私たちは自分を分別のある生き物だと思っているかもしれない。しかし脳の奥底には生き残りたいという衝動があり、それが世界を「私たち」対「彼ら」というふうに分けてしまう。怒りと激情は簡単に燃え上がる。(位置No2878)

(6)規則が完全でなければ、消費者は好ましいサービスを使うために、法の抜け道をさがす。ウーバーはそれをよく知っている。また長期的に見れば、議会がウォール・ストリートと消費者の両方を敵に回すとは思えない。(位置No3967)

(7)進化心理学の見地からすると、成功するビジネスはどれも、体の3つの部位のどれかに訴えかけるものだ。 その3つとは脳、心、性器である。これらはそれぞれ人間の生き残り戦略の違う面を支えている。会社の指導者は、自分たちがどの領域にいるか──どの器官を刺激しているか──を知り、それに沿って戦略を練る必要がある。(位置No4206)

(8)四騎士に共通する8つの要素がある。①商品の差別化、②ビジョンへの投資、③世界展開、④好感度、⑤垂直統合、⑥AI、⑦キャリアの箔づけになる、⑧地の利。(位置No4307)

(9)さらに今後50 年、世界のGDP の成長は都市部で起きる。都市には最高の人材が集まるだけでなく、都市が最高の人材を生み出す。競争とチャンスがあふれる場所で働くことは、トップ・プロテニスプレーヤーとラリーをするようなものだ─ ─ あなたのプレーもどんどんよくなる。
 イギリスやフランスを含め、多くの国で国家のGDP の50 パーセントは都市部で生まれている。大企業の75 パーセントは、いわゆる巨大都市圏にある。今後25 年間、この傾向はさらに進む可能性が高い。(位置No4694)

(10)そもそも競争に参加していなければ、勝者にはなれない。勝つためにはまずフィールドに出て、リスクを背負い(顔を殴られるかもしれない)、ときには失敗の屈辱に耐えなければならない。それでこそ何かをなしとげられる。競争には勇敢さと、行動する意志が必要だ。(位置No5497)


『県立! 再チャレンジ校』を読んで、最底辺の学校の実態と学生の教育環境の厳しさに驚愕。


 ある政令市の区長さんの紹介。

 教育だけでなく、児童福祉、生活保護、住宅などの様々な問題が、最底辺の県立高校に集中している実態に驚愕した。

 教育はその現場に関わった人間でないと、どうしても自分の受けた教育や家族の教育などの見方にとらわれてしまう。標準以上の教育環境を経験した者だと、この本で書かれている最底辺の教育実態、そしてその学生の背景にある、それぞれの家庭の問題が十分に理解することができない。

 このような深刻な家庭問題、教育問題、住宅問題などを、県立高校という一つの場で教師や司書、地域の経営者が一体となって改善に取り組むというのは、実践的でもあり、また、総合的な対処方針でもある。

 まず、できる人=教師たちが、福祉の問題も住宅の問題もまとめて取り組むという姿勢には頭が下がる。

 その上で、こういう取り組みを教育の現場で考えるときに、課題となる点、気になる点がいくつかある。

 第一に、特別支援校といった仕組みが文部科学省の取り組みとして、現場の動きに並行して行われているが、このような取り組みを国が関与する理由はあるのか?
 そもそも国が教育に関与する理屈が、戦前は兵隊となるための基礎学力、戦後は、高度成長期の産業基盤を支える戦力のための基礎学力の育成だとしたら、現在は、どこまで国がこういう問題に対して、関与すべきなのだろうか?自閉症など病気から判断して特別支援校の対象者を考えるという文部科学省の発想(下の抜き書き(3))自体、現場のニーズと乖離しているのは、この本の指摘するとおり。
 もう少し、現場に近い行政主体が積極的かつ自立的に関与すべきなのではないか?

 第二に、仮に現場に近い行政主体がもっと積極的に関与するとして、児童相談や生活保護が都道府県と市町村にまたがっているので、現実的には、都道府県が主体となるのかもしれないが、この本でも、県教育委員会の文部科学省べったりで主体性のなさの事例が指摘されている。
 地域ぐるみで、地元企業や学生ボランティアなどと一緒に支えるということを考えると、また、子どもたちがちゃんと教育を受けずに、例えば、(若干例えはよくないが)子どもたちが不良化したりすれば、一番困るのは、地域住民たちだとすれば、市町村、少なくとも政令指定都市や人口規模が大きな市では、もっと市が前面にでて対応すべき事柄ではないのか?

 第三に、もう少し地域レベルで対応した方がいいとすれば、県立高校というレベルではなくて、地域的には狭いエリアで、さらに対応時期も小中学校といった早いレベルで、地域ぐるみでの支援を開始した方がいいのではないか?

 教育問題は全くの素人なのでピントがずれているかもしれないが、とりあえずの問題意識を整理。

 その他、抜き書き。

(1)困難な境遇で生きざるを得なかった子どもたちを、彼らと接する最前線の高校はどう支え、どう正規労働に就かせ、最終的に納税者としてカウントさせていくのか。高齢化・人口減少が不可避であるこれからの日本において、こうした子どもたちへの対応は、もはや教育問題の範疇を超えた、日本にとっての死活問題でもある。(位置No54)

(2)水谷は確信する。生徒の自立を育むキャリア教育のベースにあるのは、「人を信頼する」ということだ。信頼できる大人と出会い、困ったら相談できるということを生徒たちが知るのがまず、第一歩だ。もっとも、これはキャリア教育に限らない。生徒たちがこれから生きていくにあたって最も大切なことを、この2日間で体験することができたのだ。(位置No335)

(3)オレ、はっきり言うよ。純粋な医学的規定、診断名のみで児童生徒を判断するなよ!
 教育というものは本来、『障害』という医学的モデルからではなく『本人が困っているものは何か』から出発しないといけないんだ。子どもを、医学的診断名だけで理解できるわけがない。親の考え一つにだって子どもは左右される。単純にはいかないんだ。(位置No433)

(4)事情や背景がわかれば、その「困った、どうしようもない生徒」は、「困っている生徒」だとわかってくる。 この転換こそ、支援の第一歩なんだ。大人にとっての「困った生徒」ではなく、生徒自身が「困った」ことを抱えている「困っている生徒」だとわかれば、一緒に考えようとするスタンスへと転換していく。(位置No1073)

(5)教務とは、学校の運営に関わる事務全般を担う部署だ。年間・月間の授業計画、行事予定、生徒名簿や出席簿から、授業の時間割、成績表、指導要領にいたるまで、学校を動かすありとあらゆる事務案件の立案・作成を受け持つ、学校の屋台骨を支える仕事である。(位置No1387)

(6)吉岡は、槙尾高での実践で確信することがある。
 一人の素晴らしい教員がいたから、こういう変化が起きたのではない。決め手は、教員同士の関係性なのだ。(位置No2185)

(7)そもそも日本では教育は文部科学省、若者の就労支援は厚生労働省と、縦割り行政ゆえに教育と就労がなかなか結びつかないという硬直したシステムの弊害が延々と続いている。(位置No2480)

(8)校長の原田も言っていたように、成育環境の不遇などにより、社会的上昇の機会が得られぬまま苦しい人生を送っている子どもたちをしっかりした社会人・納税者へと変えていく学校─ ─ そんな学校は、これから未曾有の高齢化・人口減少社会を迎えようとしている今の日本にとって、もっとも必要とされる存在なのではないだろうか。(位置No3302)
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