革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

『公共性』を読んで、公共性を国家に絡み取られないという著者の主張は理解できるが、国家の公共性が法制論としては重要なんだな。

公共性 (思考のフロンティア)
齋藤 純一
岩波書店
2000-05-19

 先日読んだ『ここから始める政治理論』http://blog.livedoor.jp/shoji1217/archives/1070378793.htmlで、「公共性」のところがしっくりこなかったので、参考文献にあげられていたこの本を通読。

 まず、「公共性」の定義(著者は「意味合い」と表現)が三つある。

 「第一は、国家に関する公的な(official)ものという意味。この意味での「公共性」は、国家が法や政策などを通じて国民に対して行う活動を指す。」(viii頁)
  
 「第二に、特定の誰かにではなく、すべての人びとに共通するもの(common)という意味。この意味での「公共性」は、共通の利益・財産、共通に妥当すべき規範、共通の関心事などを指す。公共の福祉、公益、公共の秩序、公共心などはこの言葉のカテゴリーに含まれる。」(ix頁)

 「第三に、誰に対しても開かれている(open)という意味。この意味での「公共性」は、誰もがアクセスできることを拒まれない空間や情報などを指す。公然、情報公開、公園などの言葉はこのカテゴリーに含まれるだろう。」(ix頁)

 それほど論旨が取りやすいとは言えない本なので、やや誤解があるかもしれないが、自分の理解したこの本のストーリ。

(1)ハーバーマスの市民的公共性は、上記第二の公共性の観点から「公権力に対する批判的領域」(29頁)として位置づけ、国家が公共性を独占することへの抵抗論理とする。

(2)リベラリズムとしてのロールズの正義の考え方「正義は、この基本財ー自由、機会、所得と富、自尊の基礎であるーをそのような人びとに、いかなる優先順位で分配すべきかについての基本原理」や、アマルティ・センの「基本的な潜在能力」(basic capability)など、相対的に公共的価値を広くとる立場に対して、ノージックの「暴力、窃盗、詐欺に対する保護、契約の執行等」に限定した自由至主義(リバタリズム)の伸長に危機感を持つ。(68頁-71頁)

(3)結果として、社会的連帯が国民的(国家的)連帯にからみとられ、さらに、「経済的なもの」と「社会的なもの」が離反し、社会的=国民的な連帯に深い亀裂が入っていく。(75頁-77頁)

 そのための社会的な連帯として、中間組織の再生などを主張しているが、その実効性については十分に理解できない。

 以下は、自分の雑ぱくな感想。

 国家的公共性と市民的公共性を別物と整理して後者を重視するという著者の立場よりも、「双方が一体的なもの、ただし、国家的公共性のみで公共性を語ることは歴史的にみて非常に危険なのでストッパーが必要」と理解した方が、将来の絵姿としてより希望のあるものが描けるのではないか?

 国家(国と地方公共団体を含む)による公共性と敵対するものとして市民的公共性を理解しているかぎり、空疎な社会的連帯にすがるだけになってしまい、具体的な政策論との乖離が埋まらないような気がする。

『技術の街道をゆく』を読んで、失敗学の大家の津波防災の考えを踏まえて、現時点での復興政策の論点をメモ。

技術の街道をゆく (岩波新書)
畑村 洋太郎
岩波書店
2018-01-20


 失敗学の大家の畑村先生のざっくばらんなエッセイ集。

 津波防災について語っている点。

(1)「ハードウェアとしては高い防潮堤を作らずに、高潮、高波、台風から守れるくらいに止めておくことである。どんなに高い防潮堤を築いても、津波は必ずそれを乗り越えてくる。それをまず前提知識として共有することである。そのうえで、「逃げる」ということを徹底的に意識化しておくのである。」(64頁)

(2)「知っていても行動できないということは、知識と行動とを結びつける「行動回路」ができていない、ということである。一度見て知っただけでは、知識は記憶回路の一番深いところへ簡単に沈んでしまう。(中略)知識と行動を結びつけて、緊急の場合でも即座に体が動くようにするためには、日常的な訓練が欠かせない。頭で覚えるだけでなく、実際に体を動かして、自分の頭と体に行動回路をつくる必要があるのである。」(75頁)

(3)「技術者に限らず、人間は問題解決については一生懸命よく考える。しかし、ひとたび問題が設定され、その解決について考え始めると、その問題が本当に解決すべき問題だったのかどうかは考えなくなるのである。これは、もし仮に、その問題設定に誤りがあった場合、その解決策も誤りになる恐れがある、ということである。」(114頁)

 ざっくばらんな発言でまともにも思うが、実際に復興計画に反映させるには、いろんな知恵と準備がいるな~。

 先日の3.11のNスペで全部放映されなかったけれど、私が大越さんやNHKの記者と議論した内容は、上の畑村先生の意見と同調する点もあるので、ついでにメモ。

 東日本大震災の復興政策を踏まえて、今後改善すべき点。

(1)L1L2(50年から150年確率の津波は防潮堤で対応、1000年確率の津波は都市整備で対応)の基準は、とりあえずの基準としては意味があったが、畑村先生の(1)のとおり、避難計画も踏まえて、もっと選択肢があるべき。そのためには、土木計画、都市計画、防災計画のアカデミズムが、連携して柔軟な津波復興計画論を打ち出すことを期待していること。

(2)被災直後とは被災者の意向が変化すること、また経済情勢などが不確実なことから、小規模で先行して復興事業を始め、状況を踏まえて地区を拡大していく手法を開発すること。(津波復興拠点整備事業はその趣旨で予算担当課長のときに制度設計したつもりだが、現在の担当課の若者たちはそのように考えていないようなので、とりあえず、手法開発と整理する。たぶん、津波復興拠点整備事業の運用の見直しで対応可能なはず。なお、土地区画整理事業が地区拡大が不得意なのは、地区拡大によって従前の地区の減歩率(公共減歩と保留地減歩の両方を含む)が変化する可能性がでてくるため。)

(3)肉親が亡くなったるなどの状況から、被災者に冷静に今後の復興計画を判断することが難しいことから、(1)のハードや盛り土の整備水準と避難計画、自分の新しい居住地や事業地などを、災害の前の現段階から冷静に、かつ、次世代のために考えておく、事前復興計画が大事なこと。また、事前復興計画が着実に進むためには単なる絵の計画策定だけでなく、それを踏まえた、事前の高台移転、例えば、保育所や小学校の高台移転などに対する事業を事前に少しずつでも進めていくことが大事。また、(南海トラフ巨大地震法で一部実現しているが)そのような事前復興計画に基づく事業に対して、補助率のアップなど国が少し後押しする支援策を講じること。

 これらの施策によって、結果として、南海トラフ巨大地震の復興事業など巨額な予算がかかる事業について、国力にみあった復興計画の策定にもつながると考える。

『ここから始める政治理論』を読んで、西欧の理論を大雑把につかむことは政策立論にも役立つかも?


 発行されたばかりの政治理論の入門書。

 政治学の中で、特に政治思想や政治哲学など本質的な部分を扱っている本。
 
 易しい言葉で説明しているので、政治理論なる分野をメタ把握、大雑把に把握しておくには役立つ本。

 いくつか気になったテーマと議論の紹介。

(1)多数決と熟議民主主義、闘技民主主義。(第7章)
 多数決による民主主義の決定が、政治の「私」化、「生の世論」という不正確な意見などの課題があるとして、「理由(reason)」を議論し合意を目指す「熟議民主主義」の議論。
 これに対して、そもそも合意などできるのか、という現実から、一定の前提条件の同意、尊重の下での闘技を主張する「闘技民主主義」の提案がある。

(2)ナショナリズム(第12章)
 ナショナリズムは近代に生まれたという主張のうち、ゲルナーは産業化による人の流動化と学校の画一的な教育が生み出したという主張、ベネディクト・アンダーソンは新聞や出版物で国民意識が醸成されたという「想像の共同体」を主張、アンソニー・スミスは、より集団の名前、起源の神話、同質的な文化、歴史上の記憶など「エトニー」が起源とする。

(3)公共性(第14章)
 「みんなにかかわること」を公共性と定義すると、ユルゲン・ハーバーマスの身分制が崩壊してコーヒーハウスのような市民的公共性が生まれ、1960年代には巨大な資本やメディアに支配される「操作的公共性」に変化すると指摘。
 公共性の衰退に対して、ハーバーマスは国家とも市場とも違う「市民社会」によって培われる子うっ共生に期待。これに対して、コミュニタリアリズムからは、生まれ育った共同体から生まれる「共通善」を強調する。

 全体を通じて欧米学説の紹介となっているが、様々な先人たちが議論していて、そこそこの賛同者を得て生き残っている学説は理解しておくことは、重要。

 平井宜雄先生の「進化論的法価値論」http://blog.livedoor.jp/shoji1217/archives/1069587479.htmlでも真面目に論争して生き残っている学説は価値が高いと指摘している。この素朴な指摘を踏まえ、最新の政治理論で気になる点をメモすることは有意義?
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