悪い奴ほど合理的―腐敗・暴力・貧困の経済学悪い奴ほど合理的―腐敗・暴力・貧困の経済学
(2014/02/24)
レイモンド・フィスマン、エドワード・ミゲル 他

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 意外なデータから、経済学分析をしてみせた本。  一つは、インドネシアのスハルト大統領政権下で、スハルト大統領の健康悪化説が流れると、息子の関連会社の株が急激にさがる、それも対外公表の少し前から急激に下がるというデータ。  これは、市場は息子の関連会社は大統領のコネで収益をあげているので、大統領が退陣すると一気に収益構造が悪化すると判断していること。また、大統領の入院の情報などは、インサイダー取引であらかじめ差や抜きをしている投資家がいることがわかる。  二つ目は、香港から中国本土への輸出入で、中国本土への関税が鶏肉と七面鳥で後者が安いので、香港側からの輸出統計上の鶏肉の量が中国本土の輸入量とあわず、本土の輸入量が減っていて、かわりに七面鳥が増えている。これは、当然、中国本土に輸入する際に鶏肉を七面鳥と偽って密輸していることがわかる。  第三は、ニューヨーク市のマンハッタンでの外交ナンバーの自動車の駐車違反件数とその違反金の不払い実績が、原則は、その母国の腐敗係数と比例して駐車違反件数が多くなる。腐敗係数が高くても、親米感情の強い国、例えば、エクアドルとかコロンビアでは外交官一人あたりの違反件数は少ない。  これも、外交官ナンバーの自動車の駐車違反件数をニューヨーク市が詳細にデータ把握していたのでおもしろい分析ができている。  後半のアフリカの開発援助については、まだ発展途上の感じだが、人口衛星のデータで降雨量が詳細に分析できるようになり、干魃の翌年には内戦が起こる可能性が高いこと、そのために干魃に対して予防的に援助するプログラムが機能していることが報告されている。  開発経済学については、自分もよくわからない部分があるし、医学のような厳密な対象実験ができないところが課題だと思うが、この本では意外なデータを見つけてきて、スハルトの息子の会社のコネの問題、中国本土の密輸入、外交官の遵法意識と母国政府の腐敗度係数との分析をしていて、うまくデータがつかまえられると、おもしろい分析ができるなと思う。  ちょっと、タイトルが誤解を招く。これは、悪い奴らも合理的に私服を増やそうとしているということで、普通の人より合理的という訳ではないと思う。