自分の知識で弱い経営センスを磨こうと、経営学の本を乱読しているうちに、これは、そもそも経営学の古典的な本を読まないと、うまく、頭が整理できないなと思って、有名なこの本を読んでみた。

 時代を超える生存の法則と副題で書いているが、扱っている企業のうち、既に勢いを失った企業として、ヒューレットパッカード、ソニー、IBM、フォードなどがあり、後知恵で考えると、やや修正が必要な点がある。

 第一に、基本理念を明確にするという点は揺るぎないと思う。ビジョナリー、基本理念を明らかに未来志向であること、そして、それが継続するように、組織の中に埋め込むこと(著者は「時を告げるのではなく、時計をつくる」と表現している)の重要性が明らか。

 例えば、ソニーはそもそも」「日本の復興と技術進歩」という基本理念が、失われたからこそ、技術の会社ではなく、単なる金融会社になってしまったのだろう。

 第二に、社運をかけた大胆な目標設定というところは、現代で通じるか疑問。ボーイングが747開発で失敗したら会社が倒産する危機まで自社を追い込んだが、現在のように世界経済が不透明な時にそんな極端なことをすれば企業が継続できない。むしろ、最近いわれる「リーンスタートアップ」の方が現在企業の生き残り戦略だろう。

 第三に、大量に試して、うまくいったものを残すという戦略は正しいと思う。後知恵であたかもイノベーションを最初から最短距離で目指していたように説明するが、その時点、その時点ではどれがものになるかわからない、だからこそ、いろんなことをたくさん、リーンに試してみて、ものになるものを見つけていく、そういう戦略は今でも十分通用すると思う。

 第四に、生え抜き経営陣の話は、要は後継者づくりをうまくする話。日本でもセブンイレブンの鈴木会長の話題になっているが、後継者を社内であれ、社外であれ、基本理念、組織に埋め込んだ時計を活かすトップをどう育てるかという課題で、そこまで課題設定を一般化すれば、現代でも通用する。

 第五に、これは、この本では記述していないが、社会的に正しいことをする、社会に役立つことをする、というのもビジョナリーカンパニーに重要な要素だと思う。
 具体的には、フィリップスモリスのように公衆衛生局と闘ってタバコを売り続けるのは今では社会的に正しくないと評価されるだろうし、海外の発展途上国でシェアを伸ばすことも社会的に望ましいこととは思えない。
 企業は、すべて社会に貢献する社会的企業であるべきだと思う。そういう理念と、消費者からの正しいこと、良いことをしているとの評判がないと事業の継続性は難しいのではないか。 

 以下、抜き書き。

(1)ビジョナリー・カンパニーとはなんだろうか。ビジョンを持っている企業、未来志向の企業、先見的な企業であり、業界で卓越した企業、同業他社の間で広く尊敬を集め、大きなインパクトを世界に与え続けてきた企業である。(位置No176)

(2)あとから見れば、じつに先見の明がある計画によるものに違いないと思えても、「大量のものを試し、うまくいったものを残す」方針の結果であることが多い。この点では、ビジョナリー・カンパニーは、種の進化によく似ている。(位置No410)

(3)ビジョナリー・カンパニーは、自らに勝つことを第一に考えている。これらの企業が成功し、競争に勝っているのは、最終目標を達成しているからというより、「明日にはどうすれば、今日よりうまくやれるか」と厳しく問い続けた結果、自然に成功が生まれてくるからだ。そして、この問いかけを生活の習慣にして、ずっと続けてきた。百五十年以上も続けているケースもある。(位置No321)

(4)一言でいえば、企業として早い時期に成功することと、ビジョナリー・カンパニーとして成功することは、逆相関しているのだ。長距離レースで勝つのはカメであり、ウサギではない。(位置No718)

(5)息子を後継者として育成していたころ、ガルビンは「会社を動かし続ける」ことの重要性を繰り返し教えている。方向はどうであれ、活発に動いているほうが、じっとしているよりはるかによく、いつも目標を決めておくべきだと助言した。(位置No2569)

(6)ビジョナリー・カンパニーでは、もっとも大切なことは、「どこまでうまくいっているのか」でも、「どうすればもっとうまくやれるのか」でも、「競争に対応するために、どこまでやらなければならないのか」でもない。もっとも大切な問いは、「明日にはどうすれば、今日よりうまくやれるのか」である。(位置No4238 )