棋士の羽生さんが、NHKの取材チームと一緒に、海外の人工知能の開発現場でインタビューをして、自分の考えを整理した本。

 将棋の棋士などプロのゲーム関係者は、まさに人工知能と戦ったり、それに破れたりするようになっていて、まさに最先端の人工知能と一番人間として真剣に立ち向かっている人たち。

 そして、天才羽生さんがそれについてどう頭を整理したか、自体が面白いし、結果としてその分析の内容も相当に興味深いと思う。

(1)人工知能が編み出す手は、リスクをおそれず、違和感のあるもの、美意識に反するものがある。これが人工知能の強さでもあるし、人間がリスクを避けることで進化してきた制約要因でもある。
 羽生氏が自分で分析しているとおり、美意識自体はどんどん自分のなかでも変化してきているので、人間の弱点でもある。
 しかし、人工知能が、この人間が持っている一定のリスクを避ける、そしてそれを美意識として感じる点を、うまくとりこめないと、違和感が残り、倫理などの問題も生まれてくる。(p81)

(2)現状の人工知能には「水平線効果」という課題、じり貧になり勝ち目がないけど、相当長い間手を打つことができる手を選ぶ癖がある。(p87)

(3)人間の美意識というのは時間の概念が入っているが、今の人工知能は静止しているデータを読み分析することは得意だが、時間という概念を入れ込むことができていない。(p144)

(4)最先端で効率的な情報を追い求める「学習の高速道路」だけを歩むのではなく、自分の頭を使ってあえて違うことを考える能力をつけないと、未知の状況に対応する能力が落ちてくる。最近の若い棋士にもいえること。(p204)

(5)データのない未知の領域に挑戦すること、現場で人と対話して理解を深めること、人間の知性とは何かを再度考えること、が羽生さんのまとめ。(p215)