神経科学者のアウトリーチ本。ややこの分野では古典に属するもの。

 デカルトが理性と身体を別個ものと扱ったことを題材にして、理性、意思決定と身体、情動とは密接不可分なことを主張している本。

 1848年の鉄道事故で前頭葉を破壊されたゲージという技師が性格と行動が一変した話しからはじめて、脳の機能において、情動を起こす部分とそれをコントロールする前頭前野の部分の説明などから、話しが始まる。

 著者はデカルト的な考え方が、心を生物学的な観点から理解することを遅らせたこと、精神の病に対して、総合的に理解することなく専門分化したことをもたらしたと指摘している。(p386)

 これらの話しは、脳科学の本などでよく説明される話し。

 また、最近では腸内細菌の議論などから、内臓と脳との関係なども指摘するものもあるので、読んでいて意外性はない。

 むしろ、近年のAIの発展、深層学習などの進展によって、いわば身体性のない判断が突き詰められたときに、一層、人の身体性に基づく判断や反応の重要さが指摘されてくると思う。

 その意味では、精神、理性などと身体を一体的に考えるべきと主張した、神経科学の古典として重要な本と考える。