共同通信記者OBの本。

 新ガイドラインなどの英訳や米国側の公開された外交文書を直接あたっている点が貴重。
 
 重要な指摘として、日米安保条約についての行政間の運用指針である,2015年策定の新ガイドラインにおいて、従来のガイドラインよりも在日米軍の防衛義務の位置づけが薄くなっていること。

 具体的には、「Ⅳ.C.2.の日本に対する武力攻撃が発生した場合」

 「日本は日本の国民及び領域の防衛を引き続き主体的に実施し、日本に対する武力攻撃を早期に排除するため直ちに行動する。(略)米国は、日本と緊密に調整し、適切な支援を行う。米軍は、日本を防衛するため、自衛隊を支援し補完する。」(p24)

 このうち「主体的に実施する」は英語ではprimary responsibilityで第一義的な責任を持つということ、支援し補完するは、support and supplementで、通常の補完するという意味のcomplementよりも弱い単語が使われている。(p31)

 これは、1978年のガイドラインでは、自衛隊と米陸軍、自衛隊と米海軍が「共同して作戦を実施する」という規定に比べて米軍の位置づけが薄まっている。(p36)

 また、著者は、米政府機密文書で公開されているものから、「在日米軍はほとんどすべてが米軍の兵站の目的である」という記述のある文書を発見している。(p47)
 この文書を柳澤協二元内閣副長官補に見せたところ、「随分はっきり書いてある」と言ったものの別に驚かなかったということ。また、現場を知る自衛官も、在日米軍は守るための装備がなく、攻撃用の装備しかない」と指摘している。(p67)

 これらの指摘が事実だとすれば(事実である可能性が極めて高いように思う)、

第一に、この緊迫した国際情勢のなかで自衛隊が第一義的な責任をもって実施できるのかどうか、そのために適切な体制や装備が整っているのかどうか

第二に、本来沖縄を含めた基地の提供との相互関係で在日米軍は日本の防衛義務を負うのが日米安保条約の前提だが、仮に在日米軍が日本の防衛義務を負うことを避けようとしているのであれば、そもそもの基地負担の問題も再検討が必要なのではないか
 
 など、日本の外交防衛戦略に大きな見直しが必要になると考える。

 少なくとも、このような情報はより幅広く国民に提供する必要がある。また一市民としても、主体的に外交文書などの情報をえる努力が必要だと痛感する。