著者は、ハーバード大学の先生。

 前半は一般的な開発経済学の話しだが、中頃から、著者自身が携わった、ボリビアとポーランドの経済再生の話は迫力がある。

 1985年のボリビアのハイパーインフレーション対策は、

(1)ペソを安定させるためのペソ発行額と同額の外貨準備積み立て
(2)IMFの債務利子支払いの停止
(3)富裕層への課税強化
(4)世界銀行支援によるインフラ投資支援ための緊急社会基金の設立

 これによって、何度かインフレの再編はあったものの経済の安定化が図られた。(p193)

 ポーランドの民主化に伴う経済システムの変革については、

(1)安定化(ハイパーインフレーションの終結と安定した交換可能な通貨の確立
(2)自由化(価格統制の打ち切りと必要な商取引法の確立)
(3)民営化
(4)社会のセーフティーネット(福祉、医療、老人高齢者のための福祉、移行時のショックの緩和)
(5)制度の調和(段階的に西欧の経済に関する法律、手段、制度の取り入れ)(p213)

を実施。同時に西欧諸国との交渉で債務の半分、150億ドルを帳消しにしたのも大きかった。(p222)

 ユーゴスラビアやロシアの経済再生にも著者は拘わったが、西欧側の債務帳消しなどの支援が受けられず、移行期に大きな混乱をもたらした。

 特に、ロシアの改革の際に、オルガルヒがロシアの天然資源を私物化したことに厳しい批判を著者は行っている。(p260)

 中国の経済再生にも関与し、比較的うまくいっていると評価しつつも、地域格差、農村地域での共同体によるセイフティネットの破壊、政治改革の必要性を指摘している。(p293)

 中国については、もう少し長期的な判断が必要。
 中国という巨大な領土と多数の民族を抱える地域をまとめる国家が、著者の提案するような連邦制による民主化が可能かどうかは注意がいる。仮に、経済の自由化が政治の自由化を求めるのなら、その前に中国政府は経済の自由化を止めてでも現在の国家体制の維持を図るのではないか?