著者はアメリカの医学博士で「ニュートリションファクツ」という栄養に関する非営利科学情報サイトの主宰者。

 説明は病気別に書かれているが、全体をまとめると

(1)肉、魚中心から、菜食中心の食事に変えること
(2)加工食品、ファーストフード、砂糖、塩を避けること
(3)健康に効果のある栄養素は自然のままとること、サプリメントには効果がないこと

 著者が、米国医療保険制度と製薬会社の圧力から、簡単な食事の内容を改善することで病状が改善することについても、無視しがちだし、米国の医師教育でも栄養学が軽視されていることを何度も指摘している。

 なんでもロビーイングで政策が決まる米国らしいが、様々な政治的が岩盤を自分の作ったネット上のサイトで突き崩そうとしている試みの一つがこの本。その意味で一定のバイアスが逆にかかっている可能性もあるので、その点は注意。

 なお、原典は医者らしくすべて参照文献で記載されているが、それに根拠のデータを譲っていて、本文中にグラフや表がほとんどないのが、若干読者からみて説得力に欠けるように思えて残念。

 例えば、位置No5357の食品別の腎臓への酸負荷の表とか、野菜を食べる比率が高いほど、糖尿病などの有病率が下がるデータ(位置No3589)のようなわかりやすい図表がもう少し多いと、より理解しやすくなる。

 以下、抜き書き。

 たくさん、抜き書きしたので、相対的に面白いのは、風邪ウィルスが馬起源という(10)、牛乳に健康へのマイナスの効果があるという(19)、人口甘味料の精神障害の影響(18)、魚の汚染物質の蓄積問題(20)か?

(1)こうして私は重大な問題に気づいた。科学以外の力が、医療に大きな影響をおよぼしているという深刻な事実に、はっきりと気づいたのだ。アメリカの診療報酬制度は、医師が処方した薬剤や実施した医療行為にもとづき、「質」ではなく「量」に応じて報酬が支払われる。医師が患者に対し、健康的な食生活のもたらす効果を説明・指導しても、診療報酬は支払われない。(位置No217)

(2)おおまかに言えば、「健康によい食物」と「病気になりやすい食物」の区別は、「植物性か、動物性か」というよりも、むしろ「未加工の植物性食品か、それ以外か」が境界線になる。(位置No449)

(3)若返り効果のあるこの酵素(テロミラーゼ)をどうすれば活性化できるのか、ということだ。 その答えを見つけるため、この分野の先駆的研究者であるディーン・オーニッシュ博士と、テロメラーゼの発見によって2009年ノーベル医学生理学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士が共同研究を行なうことになった。米国防総省の一部資金提供を受けたある研究では、未加工の植物性食品から栄養を摂る食事を3カ月間続け、運動などの健康的な生活習慣を実践した場合には、テロメラーゼが著しく活性化することがわかった。テロメラーゼの活性化が確認された介入実験は、これが初めてだった〔*67〕。(位置No554)

(4)当初、研究者たちは、(ファーストフードの食事を一回しただけで数時間以内に動脈が硬くなり、正常な弛緩機能が半減した)その原因は動物性脂肪や動物性タンパク質にあると考えていた。しかし最近では、「エンドトキシン」[内毒素。細菌の菌体そのものの成分である毒素で、菌が壊れたときなどに放出される。細菌が外部に分泌する外毒素(エキソトキシン)に対する]という細菌毒素が原因ではないかと考えられている。肉などの特定の食品は、生の状態でも、完全に火が通っていても、炎症を引き起こす細菌毒素のありかとなりやすい。エンドトキシンは調理温度や、胃酸や、消化酵素によって破壊されないため、動物性食品を食べたあとは、腸のなかにエンドトキシンが残ってしまう。それがやがて飽和脂肪によって運ばれ、腸壁を通過して血流に入り、動脈に炎症反応を引き起こす場合がある〔*44〕。(位置No1009)

(5)ほとんどの肺がんは喫煙が原因だが、発症者の約4分の1は非喫煙者だ〔*21〕。その原因のひとつは副流煙で、もうひとつの原因は、やはり発がん性のある煙──揚げ物によって生じる揮発性物質だ。 ラードなどの動物性脂肪であれ、植物油などの植物性脂肪であれ、油脂を揚げ物の温度まで熱すると、変異原性をもつ(遺伝子変異を発生させる)毒性の揮発性化学物質が、空気中に発散される〔*22〕。この現象は、温度が煙点に達する前から始まる〔*23〕。家で揚げ物をする場合は、キッチンに強力な換気システムを備えていれば、肺がんリスクの低減に役立つだろう〔*24〕。(位置No1290)

(6)デンプン質の食物、穀物、野菜、ナッツなどを多く摂る地域の若者たちは、喘鳴や、アレルギー性鼻炎結膜炎や、アレルギー性湿疹などの慢性症状が著しく少なかった〔*47〕。そして、毎日2品目以上の野菜を食べている子どもたちは、アレルギー性ぜんそくの罹患率が半分に低下することがわかった〔*48〕。さらに、植物由来の食物を多く摂る地域の人びとは、一般的にぜんそくや呼吸器症状が少ないことがわかった〔*49〕。(位置No1394)

(7)アルツハイマー病の予防ガイドラインでは、病気を悪化させる食べ物と軽減させる食べ物があるなかで、植物性食品中心の食生活を推奨している〔*104〕。たとえば、野菜、果物、豆類、ナッツ類をたくさん食べ、肉や乳製品をあまり摂らない「地中海ダイエット」は、認知低下の進行速度を遅らせ、アルツハイマー病のリスクを低減させることがわかっている〔*105〕。研究者たちが、地中海ダイエットのどんな点に病気の予防効果があるのかを調査したところ、野菜の摂取量が多く、不飽和脂肪よりも飽和脂肪の摂取量のほうが少ないことが重要な特徴だとわかった〔*106〕。(位置No1940)

(8)菜食中心の食事で疾病に対する保護効果が得られるのは、動物性食品を食べる量が減るからだけではない。抗酸化物質の豊富な植物性食品をおもに食べることで、食道がんのリスクは半減する〔*102〕。食道と胃のつなぎ目にできるがんの予防には、赤、オレンジ、緑黄色の葉野菜、ベリー類、りんご、柑橘類〔*103〕がもっとも効果的だが、未加工の植物性食品はすべて食物繊維を含んでいるため、効果がある。(位置No2475)

(9)一般的に、これまでに行なわれた大多数の研究では、塩漬け、漬物、燻製にされた食品や、魚の干物、加工肉、精製炭水化物[白米、白いパン、うどんなど]は、危険だと指摘している〔*144〕。日本におけるアルコール〔*145〕、コーヒー〔*146〕、緑茶〔*147〕の摂取効果については、結論が出ていない。(位置No2602)

(10)家畜化によって動物の疾病が爆発的に広まるまで、現代のヒト感染症のほとんどは確認されていなかった〔*6〕。たとえば、結核はヤギの家畜化によってもたらされたが〔*7〕、いまや人類の3分の1は感染する〔*8〕。また、はしか〔*9〕や天然痘〔*10〕は牛の牛痘ウイルスの変異によって生じたと考えられる。さらに豚の家畜化によって百日咳に、鶏の家畜化によって腸チフス、アヒルの家畜化によってインフルエンザに感染した〔*11〕。また、ハンセン病は水牛から、風邪ウイルスは馬から感染したと言われている〔*12〕。野生の馬が無理やり捕らえられ、馬勒を付けられるまでは、人間の顔にくしゃみを浴びせる機会などなかったはずだ。私たちがよくかかる風邪は、はるか大昔には、馬しかかからない病気だった。(位置No2796)

(11)ランダム化臨床試験によって、菜食中心の食事は、米国糖尿病協会が推奨する糖尿病食よりも、減量効果が優れていることが明らかになった。実験では食事量は制限せず、カロリーや炭水化物の量も計算しなかったにもかかわらず、そのような結果が出た〔*58〕。さらに同様のいくつかの研究のレビューによって、菜食中心の食事を摂った人たちは、動物性食品を多く含む食事を摂った人たちにくらべて体重が減っただけでなく、血糖値も改善し、心疾患のリスクも低減したことがわかった〔*59〕。菜食中心の食事には、実際にこれだけ多くのメリットがあるのだ。(位置No3681)

(12)アメリカの10代以下の子どもたちにとって、最大の塩分摂取源はピザだ〔*61〕。ピザ1切れ(ピザハットのソーセージピザ)で、1日の塩分摂取量の半分になる〔*62〕。50歳以上の成人の場合、最大の塩分摂取源はパンだが、20歳から50歳の成人の最大の塩分摂取源は、缶入りスープでもプレッツェルでもポテトチップスでもなく、鶏肉なのだ〔*63〕。(位置No4174)

(13)食生活の改善はきわめて大きな効果をもたらし、腎臓結石の予防に役立つだけでなく、薬や手術に頼らずに完治するケースもある。果物と野菜の摂取量を増やし、動物性タンパク質と塩分を控え、1日に最低10杯の水分を摂ることで、尿酸結石は完全に溶かすことが可能だ〔*65〕。(位置No5357)

(14)もっとも悪い種類のリンは、食品添加物のリン酸塩だ。リン化合物は着色料としてコーラにも使用されている〔*74〕(リン酸塩を加えなければ、コカ・コーラは真っ黒だ)〔*75〕。植物性食品のリンが血液中に吸収されるのは50パーセント以下〔*76〕、動物性食品のリンでは約75パーセントだが〔*77〕、食品添加物のリン酸はほぼ100パーセント血液中に吸収されてしまう〔*78〕。(位置No5359)

(15)りんごによるがんの予防効果は、りんごの果皮に含まれる抗酸化物質によるものと考えられている。それもそのはずで、果皮こそ外界に対する第一の防御層だからだ。果肉は空気に触れたらすぐに茶色く酸化してしまう。果皮の抗酸化力は、ゴールデンデリシャス種(黄色)で果肉の2倍、アイダレッド種(赤)で6倍にもなる〔*97〕。 ペトリ皿の実験によれば、りんごの抽出液には活性酸素やフリーラジカルによるDNAへの最初の攻撃に対する防御効果があるだけでなく、エストロゲン受容体陽性および陰性の乳がん細胞を抑制することがわかっている〔*98〕。(位置No5906)

(16)女性に特有の乳がんは世界でもっとも多いがんのひとつだが、アジアの女性たちは北米の女性たちにくらべて、乳がんの罹患率が5倍も低い〔*146〕。いったいなぜだろうか? ひとつの可能性としては、アジアの国々で日常的によく飲まれている緑茶の効果が考えられる。緑茶には乳がんのリスクを約30パーセントも低減させる効果があることがわかっている〔*147〕。もうひとつの大きな可能性としては、アジアの人びとが比較的よく食べている大豆の効果が挙げられる。(位置No6121)

(17)モノアミンオキシダーゼを安全に抑制できる方法はないのだろうか? じつは、りんごやベリー類、ぶどう、玉ねぎ、緑茶などの多くの植物性食品には、クローブ、オレガノ、シナモン、ナツメグなどのスパイス類と同様に、モノアミンオキシダーゼを自然に抑制する植物性栄養素が含まれている〔*30〕。そのため、菜食中心の人たちのうつ病の有病率が低いのは、理にかなっていると言える〔*31〕。(位置No6319)

(18)アスパルテームの神経学的影響をめぐる論争は、1980年代に始まった〔*51〕。当初、懸念されていたのは、精神疾患の既往症や持病のある人たちに限られていた。ケース・ウェスタン・リザーブ大学の初期の研究では、人工甘味料によってうつ病歴のある参加者たちに深刻な症状が現れたため、安全上の理由から途中で中止されたほどだ。研究の結論では、つぎのように述べている。「気分障害のある人びとは人工甘味料に対してとくに敏感なため、人工甘味料の使用は控えたほうがよい」〔*52〕(位置No6402)

(19)研究者たちは人びとの牛乳の摂取量と死亡率との関係を調べた。さらに、牛乳を飲む人たちを対象とした大規模な集団調査を行ない、骨折のリスクを調べた〔*27〕。その結果、女性の場合は1日当たりの牛乳摂取量が多いほど、骨折や股関節骨折のリスクが上昇するだけでなく、早期死亡、心臓病、がんのリスクが高くなることがわかった。1日3杯飲んでいる場合は、早期死亡のリスクが2倍近くも高くなっていた〔*28〕。いっぽう男性の場合は、1日当たりの牛乳摂取量が多いほど、やはり早期死亡のリスクが高くなるが、骨折率への影響は見られなかった〔*29〕。(位置No6662)

(20)では、これらの汚染物質は食料供給システムのどこで発見されるのだろうか? こんにちでは、DDTのほとんどは食肉、とくに魚に多く含まれている〔*19〕。海は人類の仕業で下水道と化し、なにもかもが最終的に海に流れ込んでいく。PCBの食事暴露についても、同じことが言える。PCBもすでに禁止された化学物質のひとつで、かつては電気機器の絶縁流体として広く使用されていた。 ある研究で18カ国の1万2000種類以上の食品と飼料を調査したところ、PCBの汚染度がもっとも高かったのは魚と魚油で、つぎに卵、乳製品、その他の肉と続いた。いっぽう、もっとも汚染度が低かったのは、食物連鎖のもっとも下に位置する植物性食品だった〔*20〕。(位置No7065)

(21)その結果は、パーキンソン病の患者たちを対象とする対照実験の結果とも一致していた。ニコチン含有量の多い野菜、とくにピーマンを食べると、パーキンソン病のリスクが有意に低下することがわかったのだ〔*58〕(このような効果が表れたのは、非喫煙者のみだった。タバコを吸うとニコチンを一度に大量に摂取してニコチン受容体が飽和するため、食事による効果は消されてしまう)。以前から、トマトやじゃがいもの摂取や、ナス科の野菜を多く摂る地中海ダイエットには、パーキンソン病の予防効果がわずかに見られることがわかっていたが、今回の研究結果はそれを裏付けることとなった〔*59〕。(位置No7199)