和歌山大学のシステム工学の先生が書かれた本。

 ざくっというと、「ソフトウェアは日本は遅れているけど、オープンソースになっているのでそれほど不利ではない、ハードウェアはものづくりで培ったノウハウや技術があるので、日本はまだ優位性がある」ということ。

 それ自体は日本にとっては望ましいことながら、ものづくり、すりあわせ技術という日本の優位性のある部分にこだわって、電気自動車というすりあわせ技術があまり必要のない新しいトレンドに乗り遅れそうになっている日本の自動車メーカーのようにならなければいいなと思う。

 欧米や中国はすりあわせ技術が不得意だが、それをあまり使わない新しい、モノの動かし方が今後でてくる可能性もあるように思う。

 なるほどと思った点とあれっと思った点。

(1)日本のHALは、日本の介護現場での道具が医療器具に限定されていなかったため、厳しい認定をとらずに実践でつかえ、そのデータがヨーロッパで認証をとるのに役立ったということ(位置No1172)

 規制の厳しくない分野や場所で活用して、データを蓄積するというのは大事な発想になりそう。自動運転は道路交通法の適用のない大規模な公園内の通路で実験してみるとか。

(2)「人間ができない(空を飛んでの撮影など)、人間がしたくない(危険な作業、単純な作業、夜間な作業など)の分野の仕事をロボットに担当してもらうという流れは、このまま進んでいくでしょう。自分たちにはロボットはあまり関係ないな、と思っている業種こそ、その活用法いかんで思わぬチャンスにつながる可能性があります。」(位置No1818)

(3)以下の抜き書き(2)で例示しているように「国プロ」が一定の成果を上げているということ(位置No620)

 従来、国主導の技術開発は、多額の予算を使って失敗したもの、第五世代コンピューターから国策検索システムまで、累々とした失敗例が積み重なっているが、本当、ロボットの分野は成功したのだろうか。仮にそうだとしたら、なんでロボットだけ成功したのだろうか?

 以下、抜き書き。

(1)AIに関してはアメリカに大きく先を越された感があります。しかし、AIは誰もが無料で利用できるオープン化が世界の趨勢となっているため、話題のディープラーニングでさえ、私たちはわりと簡単に自分のロボットに取り入れることができます。ですから、AIでの遅れをそこまで悲観することはありません。一方、日本の技術力は素晴らしく、ロボットのハードウェアやロボットに使われる各種部品(要素部品)の性能は、世界のトップを走っています。ハードウェアというのは、AIのように簡単にコピーできる種類のものではありません。部品の組み合わせ方や使い方いかんによって、ロボットの性能は大きく左右されるからです。これはAIとは大きく違う部分です。この部分に強いのは、日本の強みです。(位置No79)

(2)極限作業用ロボットの研究・開発(図2―5)から、新しい技術の芽が出てきたことは、「国プロ」の一つの成果でした。まずあげられるのが、「ロボットの移動方式」に関する技術です。(位置No621)その他、このプロジェクトによって発展した基盤技術として重要なものは、「テレイグジスタンス(遠隔臨場感)」です。東京大学の舘暲名誉教授によって開発が進められました。これは、現在のバーチャルリアリティにつながる中核技術の中の一つといわれています。(位置No630)

(3)現在は、このような「単機能」という方向にもロボットの開発目的が広がってきています。さらに、もう一つ大きな特徴をあげるとすると、それは「タフ」であること。これらは特に2011年3月に起きた東日本大震災の反省から生まれたキーワードです。複雑すぎて使えない、環境に依存する、すぐに動かなくなるといった、今までのロボットの弱点を克服するために、目的を明確化した「単機能」で、「タフ」なロボットが注目を浴びるようになってきたのです。(位置No1005)

(4)日本で「HALⓇ」が医療機器として認められたのは2015年のことですから、医療機器としての実績は実はありませんでした。しかし「HALⓇ」はすでに、医療用ロボットとして介護施設などで活躍を始めていました。そのため事例やデータが豊富に積み上がっていたのです。日本では介護施設で使用する機器が「医療機器でなくてはならない」という制約がないため、医療用ロボットとして働くフィールドがあったことが幸いしました。ヨーロッパで医療機器としての認証を得る際には、この事例やデータが役に立ちました。(位置No1173)