革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2010年03月

樋口陽一『比較憲法全訂第三版』を読みました。

 憲法学者が何を研究しているのかよくわからなかったが、勝手にばかにしていても無意味なので、世界憲法集を読んで、次に、海外の憲法を分析しているこの本を、古本で購入。  自分が学生時代には樋口先生はまだ確か東北大学にいたと思うが、この本の初版に学生時代にえらい説得された記憶があり。  最近の比較憲法の本の評価ができないので、評価が安定しているこの本を無理して高額で購入。  この本を読みながら、比較憲法の意義を考えてみた。 ①日本の憲法は、GHQが10日間で急いでつくった輸入品なので、海外の憲法、特に、アメリカ憲法の規定や判例の積み重ねは有意義。  違憲立法審査権の分析などは、今は少しドイツとかも参考にしているらしいが、基本的にはアメリカの基準、精神的自由について特に違憲判断を厳密にする「二重の基準」などをもってきて、日本で議論している。 ②社会科学は自然科学のように実験できない。特に憲法は、ためしにつくってみて失敗したらやり直すというわけにもいかない。  その意味で、例えば、ワイマール憲法のどこに欠陥があり、ナチスがどんな風に憲法を批判したのか(第一次世界大戦直後の占領期でつくったワイマール憲法制定には正統性がない、ナチズムは首尾一貫した思想を持たずあらゆる階層の人々にばらまきで、何ものかを約束した(p187))は、今の憲法とそれをとりまく状況を理解する参考になる。 ③最近の各国の憲法改正や憲法判例を批判することによって、今後の憲法をとりまく状況を予想できる。  残念ながらこの本は、1992年の本なので、東西ドイツの統一やソ連崩壊は視野にいれているものの最近の憲法状況はわからない。  ただし、海外の憲法の分析論文が詳細に各章末にのっており、憲法学者も比較憲法の分野でいろいろ論文をだしていることは確認できたので、憲法学者が何をやっているかわからないといった前言は撤回したい。

日垣隆『知的ストレッチ入門』を読みました。

 日垣さんは、おこりっぽり作家で有名。  この本は、単行本で購入し、単行本で推薦していたミニ付箋や吉川国工業製のファイルユニットを購入して、勉強の効率化を図っています。  この本は文庫本にするにあたって、新しい章を追加して、日垣ファンにもう一度購入させようとしているところが日垣さんらしい。 ①小さな、コピーつきのプリンターを購入すべし。  職場ではスキャナーを装備して、ペーパーレスを実現しているが、自宅でも、読書してこれはというページだけコピーして保存しておくのもありかもしれない。 ②ブームの終焉には、身につけているだけでも恥ずかし「パンタロン型」とそれが日常になって定着する「ジーンズ型」があり、ブログはジーンズ型だ。(p168)  はじめたばっかりのブログも、僕がはじめるぐらいだと、もう終焉というか、あたりまえになっているらしい。 ③kindleは、60秒以内で洋書がダウンロードでき、今はアマゾンがシェアを保つため洋書を1000円ぐらいで割安に売っている。また世界の新聞が購読でき、2週間はお試しで無料。(p217)  早速、アマゾンコムでキンドル購入。使い勝手は、またの機会に紹介。  また、英語の単語をなぞるだけで和訳してくれる、quicktionaryという道具も、この本の表紙の写真で紹介していたので購入。  これで、英字新聞と洋書への対応は万全です。かな?

松井賢一『エネルギー問題』を読みました。

 これも東京新聞の書評でみつけて購入。  エネルギー問題は、日本のような資源小国では常に最新情報を得る必要があるなと思っていたので、即読了。  年齢は、たぶん70歳代後半で、本人も引退した学者といっている。しかし、筆致はみずみずしい。 ①石油の埋蔵量は、昔は石油会社、今は産油国が価格を維持できるように操作しており、本当はまだ相当残っている。しかし、産油国のカルテルがうまくいかず、価格が乱高下することによって、むしろ石油離れが進んでいる。(p44)  著者は2008年の価格の乱高下がエポックメーキングになると指摘している。第三者からみるとそれはそれでいいような気もするが。 ②代替エネルギー(太陽光とか風力など)は補完的役割。例えば、住宅用の太陽光発電の設置コストはこの10年で5分の1にさがったが、まだ、通常の電力の2倍のコストがかかっている。(p156) ③地球温暖化説については、現役の学者はそれに異を唱えると研究費がとれなくなるので、口をとざしている。異論を唱えているのは自分を含めて、引退した教授だ。(p226)  確かに、CO2による地球温暖化説に批判的なのは養老先生とか武田先生とかお年寄りですね。  そもそも、国民の生活を犠牲にしてまでもCO2削減をしなければいけないと考えている(そのような目標を提示している)国は日本以外ない。  政治のおもちゃにされている地球温暖化対策については、もっと冷静な議論と正確な情報提供が必要だし、まず、国民の生活の維持改善は大前提だと思う。

服部龍二『日中歴史認識』を読みました。

 先週の東京新聞の書評でみつけて購入。  今これを書きながら服部先生の履歴をみたら、1968年生まれ、今中央大学の准教授。若いな。  田中上奏文という偽書(「世界を制覇するにはまず満蒙から」というフレーズが有名)が、なぜ偽書でありながら、中国、アメリカ、ロシアなどに流布し、国際連盟や東京裁判まで影響したのかを、簡潔でわかりやすい記述で、かつ、冷静なタッチで記述。  これは名著になるね。 ①田中義一首相がもう死んでいた山県有朋と会議をしていたり、内容はめちゃくちゃながら、田中上奏文は、今でもロシアと中国では本物と信じる学者が多い。  なお、アメリカと台湾では最近は偽書という認識にかわりつつある。 ②田中上奏文が偽書でかつ著者によれば中国東北部で作成されたものにかかわらず、世界中に流布したのは、中国国民党の宣伝活動、情報戦の結果。  当時から、日本外交は、情報戦に弱かった。今でも弱いような気がする。役人のはしくれとして人ごとではない。 ③北岡先生が座長になって行った日中歴史共同研究で、田中上奏文については、中国も日本作成を前提とせず、あいまいな評価をしている。(p307)  服部先生の本はこれまでも中国語に訳されて中国で分析されていたそうなので、こういうまじめな本が相互理解に役立ち、過去の歴史については学問的に議論されることを望みたい。  また、自分としては、対外的な宣伝活動の改善に自分が何ができるか考えてみたい。

内田貴『民法ⅠⅡⅢⅣ』を読みました。

 教科書シリーズとして、最近の民法の定番の教科書と言われている内田民法を読了。  4冊あわせて厚さ13センチ。  とっても良心的な教科書。今の若者は幸せだ~。 ①まず、横書き、2色刷、ポンチ絵つき、判例百選の番号までついている。  僕の時代には、法学の教科書で2色刷、ポンチ絵つきなど考えられなかった。そもそも僕の大学生時代には、一人で通しで書かれた民法の教科書は我妻先生の古い本しかなくて、非常に不便だった。 ②記述の順序が、総則、物権、債権各論、債権総論、担保物権、親族相続と工夫されている。  大学1年の後期で加藤一郎先生に民法総則をならって、なんてくだらない学問だろうと当時思ったけど、ちゃんと勉強しなおすと、わかりやすいし、民法は法学の基礎だね。 ③これは感触だけど、内田先生は、最高裁判決を従来の学者より尊重している。  行政実務からいうと、ア 立法当時の内閣法制局部長説明資料や国会審議用の想定問答、イ 内閣法制局の有権解釈(第一部と第二部の場合あり)、ウ 最高裁判決、という順序で法律の解釈を考えていくので、あまり学者さんが独自性を主張して最高裁判決を批判されても、しょうがない気がする。  その意味で、まず、最高裁判決をできるだけ尊重する内田先生の姿勢は大事だと思う。  えらそうに、最高裁判決を批判するのは、最高裁の判決を変更させるぐらいの影響力をもってからにしたらどうかな。  内田先生は、今、法務省で民法大改正の作業をしているらしいので、また、新しい民法の勉強が必要になるね。  その前に、もう少し内田民法を復習してみよう。
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