革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2010年10月

中垣俊之『粘菌その驚くべき知性』を読みました。

粘菌 その驚くべき知性 (PHPサイエンス・ワールド新書)粘菌 その驚くべき知性 (PHPサイエンス・ワールド新書)
(2010/04/21)
中垣 俊之

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   この本は先週読んだ。  粘菌は、単細胞で寒天培地などでどんどんひろがっていく。南方熊楠とか昭和天皇が研究していた。 ①粘菌は、人間が見えない紫外線も感じて数分で退避する。(p51)  紫外線は活性酸素を作るので粘菌に危険なのですが、それは人間も同じ。でも人間は日焼けまでしないとその危険性に気がつかない。 ②粘菌は迷路を解く。(口絵の図3-2)  粘菌を迷路いっぱいにはわせておいて、出口と入り口にえさをおくと迷路をつなぐ最短経路だけの太い管だけが残る。あたかも迷路を解いた様。 ③粘菌は悪い刺激を定期的に与えると、その刺激がなくても定期的に立ち止まる。(p133)  その事実だけでもびっくり。でも著者は、それを共振の理論で数学的、物理的に分析。

内田樹『武道的思考』を読みました。

武道的思考 (筑摩選書)武道的思考 (筑摩選書)
(2010/10/15)
内田 樹

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   田舎の親父の具合が悪くなって、一気に精神状態が不安定。  人間って弱いな。ということで、この週末に読了したのは、この一冊だけ。  内田好きのタツラーなので納得付箋があちこち。 ①日本の武道は明治維新で破壊され、兵士の殺傷能力として残った。終戦でGHQに再度破壊され、今度はスポーツとして残った。(p18)  柔道とか、なんか細かなポイント制になっているけど、本当は、もっとすっきりした礼儀正しいもののはず。ちょっと昔柔道をかじった個人的感想。 ②「行蔵は我に存す。毀誉は他人の主張。」(p233)  福澤諭吉が勝海舟を厳しく批判した書を送った際の勝の返事。  出処進退は、自分が行うが、批判は他人が自由に行って結構。昔の人は格好いいこといっているね。 ③若者がナショナリストになるのは、帰属する集団がないから。ナショナリストは、自らナショナリストのグループに所属しても、そのグループから求められるものがないので、なるのが簡単。(p254)  過激なことを言い放っていても、それに責任を求められないし、議論には強い。弱腰とかいって罵倒すればいいからね。  2チャンネルとかで、若者がなんであんなに右翼化しているのかと思っていたが、その一つの回答。

内田貴『制度的契約論』を読みました。

制度的契約論―民営化と契約制度的契約論―民営化と契約
(2010/07/22)
内田 貴

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   小生、身近なまちづくり(生田先生がいうところの小公共)の世界では、契約、協定制度が有効と考え、その一般化としての「都市計画協定」を勉強課題としている。  この都市計画協定については、建築協定、緑地協定等と同じく、行政契約からの議論もありえるが、内田先生の提唱する「制度的契約」からの議論もありえるのではと思って、論文集であるこの本を読んだ。  この本はかなりオタクなので、これまでの本とは異なるコメントとなるご容赦願いたい。  内田先生によれば、制度的契約とは、「特定の当事者同士の契約関係でありながら、一方当事者が、同様な契約を結すんでいる他の当事者や、まだ契約関係にない潜在的な当事者への配慮が要求されるような性質の契約」(p57)とされる。  その特徴としては、①個別交渉排除原則、②締結強制、平等原則、差別禁止原則、③参加原則、④透明性原則、アカウンタビリティ、とされる。  さらに内田先生は、松下年金訴訟の意見書において、就業規則の不利益変更の法理を援用して、制度的契約の不利益変更の合理性を判断するにあたって、ア 変更内容にかかわる要素、イ 変更の必要性、ウ 変更の手続きに関する要素、をあげている。  ここで、建築協定等を一般化した都市計画協定は、①から④の個別交渉排除原則等、制度的契約の側面も持つものと想定できる。  この切り口から、建築協定等の現行協定制度は、全員同意でない限り、協定の延長(一種の権利制限の延長という意味では不利益変更と考えられる)を認めていないが、これの突破する論理にならないか。  具体的には、松下年金訴訟の意見書を踏まえた、厳格な要件を制度設計した上で、全員同意でない協定の延長制度ができないか?  ふと、今朝、思いついたので、今後の検討のimplicationにしたい。

アラン・ジェイコブス『サンフランシスコ都市計画局長の闘い』を読みました。

サンフランシスコ都市計画局長の闘い―都市デザインと住民参加サンフランシスコ都市計画局長の闘い―都市デザインと住民参加
(1998/04)
アラン・B. ジェイコブス

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   1967年から1975年の間、実際にサンフランシスコ市で都市計画局長をした著者の体験記。  自分も県の都市計画課長と、都市計画の担当の部長という二回の経験をしているので、実感として、日本もアメリカもかわらないなと思う。 ①都市計画局は力がない。  サンフランシスコ市は、都市計画委員会の事務局として都市計画局があり、市長とは独立しているが、全体を通じて市長といい関係だった前半はうまく仕事ができたが、その関係がくずれた後半は苦労している。 ②連邦の都市美化プログラムで予算をもつと住民に力を発揮できる。(p102)  日本でも、都市計画課に事業予算がある方が土地利用規制だけしか権限のない都市計画課よりダイナミックに都市計画ができる。 ③計画裁量があるアメリカでも、市長を巻き込んだ奇抜なビル計画推進の動き(トランスアメリカビル)を止められなかった。(p184)  開発事業者側が、政治家を巻き込んで、都市計画を押しきるという苦渋の現実がここにもある。  この本、残念ながら絶版。日本では、都市計画行政側の生の声を知るのが難しいので、とても貴重な本。

上田紀行『「肩の荷」をおろして生きる』を読みました。

「肩の荷」をおろして生きる (PHP新書)「肩の荷」をおろして生きる (PHP新書)
(2010/07/16)
上田 紀行

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   上田さんは、東工大の准教授。  前の「がんばれ仏教」がおもしろかったので、この新刊も新聞でみつけて購入。  この本は、ちょっと自己啓発本のようになっている。読んでいると、気が楽になるので、その必要がある人にはお勧め。 ①仮面をはずすために外国に行こう。(p36)  もっくんが、仮面をはずすためにインド旅行をした例が引用されています。  自分はそれほど重い仮面はないけど、外国旅行にいくときには独特の開放感がありますよね。 ②有給休暇を全部消化して、代わりにワークシェアをしよう。(p58)  新自由主義批判が前提にあるが、このあたりになると、どうかなと思う。著者もいっているが、厳しい国際競争の中で生き抜くためには、必死に知識をえて競争する人、まあ、全体の2割でしょうけど、が必要ではないか。  その2割の人は、所得を得て早く引退して、そこからのんびりするのがいいのではないか。  みんなが、のんびりワークシェアをしたら、日本の未来はない。 ③新自由主義が襲いかかっても神様が救ってくれる西洋と違い、日本には精神のセーフティネットがない。(p215)  このあたりになると、新自由主義の定義を明確にしないといけない気がする。  新自由主義の中の要素である、「競争する、切磋琢磨する」という世界は進歩には欠かせない。もちろん、それから落ちこぼれた人を支える社会の仕組みも必要といった複眼的な思想が重要だと思う。  まあ、やさしい気持ちにあふれた本ですね。
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