革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2010年12月

川島真『近代国家への模索』を読みました。

近代国家への模索 1894-1925〈シリーズ 中国近現代史 2〉 (岩波新書)近代国家への模索 1894-1925〈シリーズ 中国近現代史 2〉 (岩波新書)
(2010/12/18)
川島 真

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  岩波新書の中国近現代史の第二巻。  これも、既刊の第一巻、第三巻と同様に、中国の歴史を丁寧に分析した好著。  この本は、日清戦争ぐらいから、辛亥革命ぐらいまでを扱っている。  全体を通じた理屈とか史観とうのものがないので、ごちゃごちゃした感じはするが、実際、ごちゃごちゃした事実の積み重ねなので、むしろ、事実を正確に記述する著者に好感を持った。  新たに知った事実。 ①日清戦争後の遼東半島の三国干渉については、李鴻章は事前にしっていて、下関条約を結んでいた。(p10) ②日清戦争後の光緒帝による光緒新政では、近代化に伴う西洋への劣等感の裏返しとして、中国国内での中央、漢民族の優越感と周辺部への蔑視感が生まれた。(p77)  これは中華民国になってから特に顕著で、五族共和をうたいつつ、モンゴルや新彊、チベットでの紛争に結びついていく。(p146) ③第一次世界大戦のあとのヴェルサイユ条約は、日本の山東利権が含まれていたので、中国(当時の北京政府)は条約を締結せず、ドイツは単独で講和条約を結び、様々な不平等条項を撤廃した。  これが、その後の中国とドイツの軍事面を含めた友好関係の始まり。(p187)  上海事変のときに、ドイツの軍事顧問によるトーチカが築かれていたなど、シナ事変の際にドイツの影がちらちらする理由がわかった。  次のシリーズ本が楽しみ。

若宮健『韓国は、なぜパチンコを全廃できたのか』を読みました。

なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか(祥伝社新書226)なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか(祥伝社新書226)
(2010/12/01)
若宮 健

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  パチンコは何となくいかがわしいと思っていたので、興味をもって、職場の平積みから購入。  結論からいうと、つっこみ不足。また、データの出所の記載が巻末にないのも困る。  パチンコは、ア 賭博罪、風営法違反を意図的に見逃しているのではないか、イ その背景には、警察官僚OBのいる公益法人がからんでいるのではないか、ウ パチンコがいたずらに射幸心をあおっているのではないか、などの疑いがある。  この点について、著者は、ウイアの順のウェイトで記述している。  ウについては、残念ながら、メールでの反応などを根拠にしており、説得力がない。  また、問題は、ウの依存症的問題よりも、アの賭博罪の目こぼしの方が大きいと思う。 ①店内で換金せずに、裏の方にいって、換金所で換金できるのに、なぜ、賭博罪にあたらないのか、まったく理解できない。  警察は、パチンコ屋と、換金店、景品卸の三者のぐるぐるまわしをもって賭博罪にあたらないといっているらしい(p139)がそんなことでいいなら、すぐ合法的にカジノが日本に作れるはず。  このあたりをつっこんでほしかったな。 ②店内での換金を合法化しようとする民主党新時代娯楽産業健全育成プロジェクトチームの話(p150)もあきれる。 ③パチンコ台の型式認定を独占的に行っている保安電子通信協会に、元警視総監、通信局長ほか役員が天下っている。(p202)  国家公務員は、国益のため、国民の生活向上のために仕事をすべき。先輩には悪いが、先輩のためのさじ加減があってはいけない。  現役警察官僚の皆さんは、国民が理解できる説明をする必要がある。この協会の公益性は何なのか、どこが国民のお役にたっているのか、説明しないといけない。  これは、人ごとではなく、我が身に対しても常に課している義務でもある。

川口淳一郎『小惑星探査機はやぶさ』を読みました。

カラー版 小惑星探査機はやぶさ ―「玉手箱」は開かれた (中公新書)カラー版 小惑星探査機はやぶさ ―「玉手箱」は開かれた (中公新書)
(2010/12)
川口 淳一郎

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  今年の明るい話題、世界で初めて、地球外に飛び出して、小惑星の物質を採取し、地球に帰還した、はやぶさ。このプロジェクトマネージャーの川口さん自らの著書。  カラーの写真が多用されていて、とても楽しく、わくわくしながら一気に読了。  年末年始の読書にはいち押し。 ①はやぶさのチームは、宇宙科学研究所の平時の縦割り組織から横割りに人をあつめたプロジェクトチームで実施し、そのリーダーが教授の川口さん。(p12)  役所でも、法案つくるときにたこ部屋をつくるけど、それと似た感じ。実際にたこ部屋と同じく、川口さんも寝袋もちこんで、泊まり込んだりしている。 ②はやぶさは、周知のとおり、化学エンジンの不調などから地球と一月以上、通信できない危機状態になったが、その時川口氏が行ったことの一つは、年度末に予算が切られないよう、生き返る確率を計算したこと。(p126)  文教科学担当主査が、渋い顔をしながら、予算をつけたのが想像できて笑える。川口さんは優れた科学者とともに、優れた役人でもあったということ。 ③はやぶさは、満身創痍になって、自らは大気圏で炎上しながら、カプセルを地球に送り届け、そこにいとかわ由来のチリが含まれていたのも周知のこと。  この事実を、ちょっとひねって考えると、衛星が自律的に運動しながら様々なミッションを通信によって実現でき、最後は、自ら破壊する選択をとれたのも、無人探査機だったから。  逆に、これだけの調査をできるのであれば、他のミッションでも、有人飛行にこだわる理由もないのでは。  おもわず、財務省の主査のような感想を持ってしまった。(笑)

原武史ほか『団地の時代』を読みました。

団地の時代 (新潮選書)団地の時代 (新潮選書)
(2010/05)
原 武史、重松 清 他

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これも職場の同僚のかばちゃんの推薦。  団地というのは、鉄筋コンクリート4階建てくらの箱形住宅が林立しているところ。  この団地をめぐって、早稲田の先生の原武史さんと作家の重松清さんが、奔放の対談している。  かばちゃん推薦本の中では、一番、軽く、ところどころ笑えた。  原さんは、西武沿線の滝山団地で育っていて、前にコメントした『滝山コミューン』を書いている。 ①西武は、自らあまり団地を開発しなかったが、東急は多摩田園都市というビジョンをもって、一戸建てを沿線に開発していき、西武を追い抜いた。(p72)  この東急ブランドのために、ぼくも田園都市沿いにマンションを買ってしまった。アハ。 ②団地に共産党の支持が高かったのは、その同質性、均質性に加え、公団がハードだけつくって、あとは、幼稚園はない、電話はない、保育園はない、小学校がたりないのないないづくしで、住民の不満がたまったため。(p147)  先にコメントした、政治学者の菅原さんと違って、統計的根拠がないのが玉に瑕だが、そんなもんかと妙に納得感がある。 ③ニュータウン(大規模で戸建て、分譲、賃貸がまじっている団地)の方が昔の箱形団地よりも、大資本の商業施設とか導入したため、撤退も速く、衰退も速い。(p164)  こういう議論を、政治経済評論家と作家がかわしている自体、都市計画の観点からはおもしろい。  ニュータウンと団地を切り分けて、その歴史と現状を、住んでいる人々の感覚からきれいに分析している。

菅原琢『世論の曲解』を読みました。

世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書)世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書)
(2009/12/16)
菅原 琢

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  菅原先生は、1976年生まれの若い政治学者。  竹中平蔵氏が前読んだ本の中で、永田町、霞が関でよく読まれているというので、こりゃ、大変と思って読んでみた。  確かに、小泉政権、安倍、福田、麻生、そして政権交代の2009年の国政選挙を定量的に分析した名著。 ①小泉郵政選挙では、従来の自民党の都市でよわく、農村で強いという傾向を打ち破って、農村票を維持しつつ、都市部でも同程度の得票率を確保した。(p39)  より詳細には、都市部の若者が小泉総理が掲げた改革路線を支持したことにある。これを、単なる郵政の争点化の成功、人気投票の結果と判断を誤った自民党が、安倍内閣で失敗し、さらに古い自民党色をだして、連敗していく。 ②麻生人気は産経グループなどマスコミによって作られたもので実際には存在しなかった。(p127)  産経は自民党支持者が多く読んでいるので自民党党首を応援するのはあたりまえ。雑誌『大相撲』が八百長相撲を報道しないのと同じ。(p132)  そこまでいうと、なんだか産経を購読している自分としては、ばかにされたような気がする。著者の若気のいたりか。  ちなみに、ネットで結構、麻生さんは人気がでていたといわれるが、投票行動に与えるネットの影響は定量的に分析するときわめて低い。(p133) ③2009年選挙では、自民党は都市部で負けるだけでなく、農村部でも、自民・民主対決選挙区では過半数の得票率を民主にとられている。(p249)  自民党の負けを加速させたのは、一つは、共産党が候補者を小選挙区から撤退したこと、民主党が国民新党や社民党と連携して、保守票や労働組合票をまとめたことがある。  いずれにしても、もう、古い自民党では選挙に勝てないので、自民党は、小泉改革を冷静に評価して、ぶれない、新しい、改革の政党に生まれ変わる必要がある。ただ、役人を悪者にしているだけではだめ。  古参議員の多く残っている自民党にそれができるかどうかが課題だな。 続きを読む
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