革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2011年01月

倉沢進ほか『新編 東京圏の社会地図』を読みました。

新編 東京圏の社会地図 1975‐90新編 東京圏の社会地図 1975‐90
(2004/03)
不明

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これもかばちゃんの推薦。  23区は500メートルメッシュで、それ以外の南関東は、市町村区域で切った上で、様々な社会指標をおとして、コンピュータで分析したもの。  ちなみに、この本は、このアウトプットの地図をみているだけで楽しめる。 ①一番の成果は、23区での西側にホワイトカラーの居住地が、東側にブルーカラーの居住地が立地していることを、みごとに明らかにしたこと。(p41) ②南関東全体でみると、離婚者比率は23区に集中して高いこと。(p86)  人の目を気にせずに暮らせるから、23区に移ってくるのかな? ③生活保護費率は、南関東全体でみても、23区の東側、北側に集中して高い。(p192)  なんとなく、区のイメージで思っていることが、正確に地図におとされていることに驚く。  こういうデータと分析は、都市計画を考える上で、継続して蓄積していく必要がある。また、他の都市圏でも行う必要がある。

磯崎敦仁ほか『北朝鮮入門』を読みました。

LIVE講義 北朝鮮入門LIVE講義 北朝鮮入門
(2010/11/12)
礒崎 敦仁、澤田 克己 他

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 何が契機で購入したか失念。  ただし、北朝鮮関係の本としては、最新のものだし、従来のまる秘情報中心ではなく、公表データも丁寧に分析した好著。例えば、文末には、北朝鮮の最新の憲法の全文と、旧憲法の抜粋が載っている。 ①1990年の金丸・田辺氏の訪朝による三党共同宣言では、日本の植民地支配だけでなく、戦後、日本が北朝鮮との間で国交正常化に同意しなかったことで損害を与えたという歴史認識を認めたため、後に日本国内で強い批判を浴びた。(p68)  これこそ政治主導だったのだろうが、当時すでに役人になっていたのに、何が日本の損失だったのが明確に理解しておらず、今初めてわかった。とても恥ずかしい。 ②小泉訪朝で、金正日は、拉致について、部下の妄動行動として謝罪したが、実はこの対応には前例がある。北朝鮮の武装工作員が青瓦台に襲撃して失敗したときも、金日成が、同様の部下の暴走といって謝罪している。(p77)  ちなみに、日朝共同宣言の日本語の全文もp72に掲載されている。 ③美濃部東京都知事が訪朝した際の金日成との会談で、「キムイルソン首相の指導しておられる社会主義建設にまったく頭が下がるばかりで、感心しています。」(p85)  当時の雑誌世界に載った記事です。    人間の認識がいかに誤るか、今から過去の先輩を批判しても仕方ないけど、自分が誤らない眼力を持ちたいと思う。

久保亨『社会主義への挑戦』を読みました。

社会主義への挑戦 1945-1971〈シリーズ 中国近現代史 4〉 (岩波新書)社会主義への挑戦 1945-1971〈シリーズ 中国近現代史 4〉 (岩波新書)
(2011/01/21)
久保 亨

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岩波新書のシリーズ中国現代史の第4巻。  このシリーズは名著続き。  中国は、国民党が台湾に逃げたあと、急進的な毛沢東が、大躍進、文化大革命と何度も急進的な運動を進め、そしてそれが挫折するという歴史を繰り返している。  毛沢東は、革命の煽動者としては優秀だったのかもしれないが、治世者としては、現実を直視できない失格者だと思う。 ①台湾の1947年の2.28事件。国民党と台湾住民との大規模な衝突で、以後、外省人と本省人との根深い対立感情をもたらす。(p29) ②アメリカは、1948年のまだ、国民党が大陸に勢力をもっていた時代に、すでに、国民党の政権担当能力がないと見切っていた。(p34)  著者によれば、アメリカは中国よりもヨーロッパの復興に熱心だったという。 ③1959年のチベット大反乱は、中国が1951年の併合時の、政治制度を変更しない、固有の宗教、習俗を尊重するという約束を破ったのが背景。(p117)  それからダライラマ14世の亡命生活が始まり、今に続いている。  この本のタイトルは、社会主義の挑戦の失敗とした方がいいくらいだ。

山口進ほか『最高裁の暗闘』を読みました。

最高裁の暗闘 少数意見が時代を切り開く (朝日新書)最高裁の暗闘 少数意見が時代を切り開く (朝日新書)
(2011/01/13)
山口 進、宮地ゆう 他

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最高裁の判決が、判事ごとの意見の違いから微妙なバランスで決まったり、判事の交代によって、影響を受けたりするという話を、興味深く取材して書かれていて、おもしろい。  ただし、「おもしろい」とはいうものの、いくつか、司法制度や判決を分析する姿勢として苦情を言いたい。 ①例えば、最高裁判事や調査官とのやりとりなどが赤裸々に書かれているが、その根拠は何か、一つも明示されていない。  人の命を奪う死刑とか財産権など人権に影響する判断について、判事も人間だからいろいろ揺れ動くのはわかるが、データの根拠なしにかくのは、ボブウッドワードに寄せられている批判のとおり、小説なのかドキュメンタリーなのかわからない。  少なくとも、取材によるのであれば、判事への取材の日時場所を参考文献で明示すべきであり、それを拒否されるのであれば、そもそもその取材をベースにした文章は根拠がないものはずである。  ただし、事実関係として、整理されていておもしろかった点。 ①東京地裁の藤山雅之裁判長は、行政事件訴訟関係で、小生の関係するものでも小田急訴訟、林試の森訴訟など、さらに課税処分訴訟などの多くを、行政敗訴にしたが、その後の高裁、最高裁の判決を一覧表で整理している点。(p151)  大部分は高裁でくつがえったが、そのいくつかは、最高裁で藤山判決を支持している。行政の裁量性に対する厳しい判断が最近の司法の傾向。  なお、藤山さんの愛読書は、美濃部達吉の『日本行政法』だそうなので、読んでみたいと思う。  最後に、いずれにしても、最近は、「本うらんかな」という観点から、本のタイトルがどぎつすぎる。  「暗闘」ではなんだかわからない。最初は「暗躍」だと見違えた。全体的には、この本は、最高裁はよくやっているという雰囲気で、「最高裁の改革」とか「最高裁の変身」とかがせいぜい。  このタイトルでは、かえって、真面目な読者が逃げると思う。

トーマス・ペイン『コモン・センス』を読みました。

コモン・センス 他三篇 (岩波文庫 白 106-1)コモン・センス 他三篇 (岩波文庫 白 106-1)
(2005/03/16)
トーマス ペイン

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これは鎌田さんの『座右の古典』からの推薦。  アメリカ独立戦争のときに、独立に躊躇する中産階級に向けて、自然権に基づいて、イギリスからの独立をといた、パンフレットがコモン・センス。  アメリカ独立戦争のときにイギリス軍に押されていたときにかいた『危機』など。  自分は初めて読んだけど、アメリカ人は、もしかして、子供のころから、独立戦争の歴史の副読本として、胸躍らせて読んでいる本かもしれない。  論旨は単純です。 ①「もっともよく安全を確保できる政府が、また、最小の費用で最大の幸福をもたらしてくれる政府がなりよりも結構だ。」(p18)  今の共和党もこんなこと言っていますよね。 ②「もうイギリス憲法はうんざりだ。なぜなら王政が共和制を毒し、王が下院を独占したからだ。」(p41)  当時のジェームズ1世が、お金で下院をコントロールしようとしていたことを誇張している部分です。 ③「自分自身を統治するのはわれわれの自然権である。」(p65)  でた、自然権論。ちなみにサンデルはコスモポリタンで自然権論者ではないのだけど、みんな知っていた?  古典を岩波文庫で始めようとする方には、コモン・センスのようなアメリカものがとっつくやすくお勧めです。
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