革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2011年03月

山本文男『津波の恐怖』を読んで、東北関東大震災の復興対策を考える。

津波の恐怖―三陸津波伝承録 (東北大学出版会叢書)津波の恐怖―三陸津波伝承録 (東北大学出版会叢書)
(2005/04)
山下 文男

商品詳細を見る
 山本さんは、三陸津波に関する本をたくさん書かれている地元の作家。 ①奥尻島の津波では、死者の半数が61歳以上。(p91)  「津波てんでんこ」といって、三陸では津波のときは他人にかまわずてんでに逃げるという言葉があるそうですが、災害弱者である高齢者や障害者の対応を、今後は十分意識しないといけない。 ②昭和津波のあとは、政府と県は、住宅を明治及び昭和の三陸津波線より高いところに移転させるため、大蔵省預金部の資金34万5千円を各市町村に配当、内務省都市計画課の承認を受けて、町村を事業主体として実施。」(p151) ③1300億円をついやして湾口津波防波堤をつくっている(2002年当時)釜石市は、同時に、2002年に土石流災害にもあっている。(p161)  高台移転のための安全な宅地の造成ができるかどうかも、よく検証しなければいけない課題。

田中直人『福祉のまちづくりデザイン』を読んで、東北関東大震災の復旧復興対策を考える。

福祉のまちづくりデザイン―阪神大震災からの検証福祉のまちづくりデザイン―阪神大震災からの検証
(1996/08)
田中 直人

商品詳細を見る
これも学芸出版社の前田さんのご厚意で、PDFで読了。  この本をよんで、障害者や高齢者のことを考えて、復旧・復興をしなければいけないことがよくわかった。 ①阪神・淡路のときは、障害者用の仮設住宅をまとめてつくって、障害者からは不評だった(p82)ようだが、そもそも、今の東北関東大震災では、障害者用の仮設は作っているのだろうか。 ②例えば、津波の被害にあわないように高台移転を計画した場合、障害者や高齢者にとって、波アリアーにならないかという論点は重要だと思う。 ③また、津波避難施設にしても、高齢者や障害者はどう避難したらいいのか、地震のあとは、当然、エレベーターはとまっているし、何か妙案はあるのか。  そもそも、高齢者住宅と津波避難施設を一体にして、高層階に高齢者、障害者に住んでもらうのか?  ちょっと、考えただけでも、福祉のまちづくりに沿った復興事業には課題がたくさんありそうだ。

『阪神大震災はや5年まだ5年』を読んで、東北関東大震災の対応を考える。

阪神大震災 はや5年まだ5年―被災者たちの復旧・復興阪神大震災 はや5年まだ5年―被災者たちの復旧・復興
(2000/01)
産経新聞大阪本社編集局、大阪市立大学宮野研究室 他

商品詳細を見る
 この本も、学芸出版社の前田さんのご厚意で、PDFで読了。  産経新聞と大阪市立大学が、避難者、仮設住宅居住者、復興公営住宅居住者にアンケートをして整理した本。  なまのデータなので、どきっとするものもある。 ①避難所生活のこまったことの設問に、165人中93人が「他人の視線」をあげた。(p35)  どこかの本にのっていたが、段ボールでできたしきりのようなものだけでも、随分違うはずだと思うが、そこまで、手が行政もまわらないのだろう。 ②被災者をうけいれた学校の教師の7割が、生徒に悪影響があったと答えた。(p46)  これもそうかなと思うが、厳しい結果。 ③仮設住宅に入居したとき、6割近くが体調を崩した。(p65)  一気に気力がゆるんで病気になるらしい。これもいわれればそうか。  被災者の緊張状態に思いをめぐらすと、ぐっとくるものがある。

紙野桂人監修『これからの安全都市づくり』を読んで、東北関東大震災の復興を考える。

これからの安全都市づくり―阪神・淡路大震災の教訓を踏まえてこれからの安全都市づくり―阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて
(1995/10)
日本都市計画学会関西支部震災復興都市づくり特別委員会

商品詳細を見る
 これも学芸出版社の前田さんのご厚意で、PDFで読了。  阪神淡路の経験から、都市計画学会関西支部が提言している。  これを読みながら、考えた点。 ①国土構造・都市構造からみた防災対策。(p112)  阪神・淡路は主に近畿圏の中の兵庫県に集中したので、関西圏でのあり方に議論が収斂しているが、今回のように、東北から関東までの太平洋沿岸に被害が広がった場合に、あるべき国土構造とはどんな形になるのか。  だれもいわないが、太平洋岸のプレートと日本海側の海溝の地震が想定されていることを考えると、道州制のようなブロック別というよりも、太平洋側と日本海側といった複線の国土構造がいるのではないか。  近畿圏の広域連合といっても、東海や東南海地震がおきたら、関東から近畿圏、四国まで広く沿岸部がやられるので、その際の備えとしては、ブロック別ではなく、日本海側とか北海道、沖縄といったところから救援するのではないか。 ②被災市街地復興特別措置法の清算金にかえて住宅を供給する仕組みを鳴海先生がまじめに検討してくれていた。(p136)  今回のように、移転が想定される場合、少し高台の不便な土地に土地を換地することによって、清算金で戸建て住宅が建てられ、免税措置もあるというのは、有効な手法ではないか。  もちろん、共同化した場合には、住宅局の補助を使えばいいと思う。  ただし、地方では、津波に襲われる危険がある地域には中層を薦められても、高台や津波が来なかった地域では、戸建てを希望されるだろうから、復興法の特例は使い勝手がいいと思う。  ③最後に、都市計画学会の東北支部というのはあるのかな。また、復興対策の検討を始めているのだろうか?  どなかたご存じであれば教えてください。

久保光弘『まちづくり協議会とまちづくり提案』を読んで、東北関東大震災の復興を考える。

まちづくり協議会とまちづくり提案まちづくり協議会とまちづくり提案
(2005/08)
久保 光弘

商品詳細を見る
 この本も、学芸出版社の前田さんのご厚意で、PDFで読了。  長田北の土地区画整理事業に取り組まれたコンサルタントの久保さんの著作。  読みながら考えた点。 ①久保さんは、二段階都市計画に賛成と述べている。(p26)  一般論としては、自分も共感。ただし、津波でやられた地区などに仮に二段階都市計画をするとすると、最初に決めておかなければいけないのは、沿岸地域の大規模な公園予定地ぐらいか?  そもそも、区画道路や街区公園に施設の都市計画決定まで求めるのは、補助金の対象にするためなので、4m以上の道路への拡幅などすべて、単純に補助対象にすれば、2段階目の施設の都市計画決定はいらないのではないか。  もちろん、事業の都市計画決定は必要だと思うが。  あと、津波避難施設自体を土地区画整理法上の公共施設としてしまうか、それが大変なら、都市公園法上の公園施設にしてしまったらどうか。 ②被災市街地復興特別措置法の復興共同住宅区が使いにくくて、事実上の換地設計で共同立て替えを対応した(p137)  もともと、事実上、同意を得ながらやるのが通常で、最後には復興共同住宅区もありますよといった伝家の宝刀なので、それでよかったと思う。  今回も、津波避難施設を兼ねた共同住宅については、うまく換地設計、短冊換地で対応すればいいと思う。 ③まちづくり協議会のような将来のまちづくりを考える組織、取り組みは、東北の地方部ではどうなっているのか。  阪神・淡路でも、真野のように地道な活動があったところは、大きな反対もなく事業が進む。どんな形の事業であれば、今回は、大きな都市構造の変更がありうるので、そういう地元の活動の情報、地元に入っているコンサルタントの情報がほしい。  どなたか、くわしい方がいれば、書き込みをいただきたいと思います。
ギャラリー
記事検索
  • ライブドアブログ