革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2011年05月

日経アーキテクチュア2011.5.25を読んで、復興計画の産みの苦しみが現地で始まっていることを知る。

 今月号の日経アーキテクチュアを図書館から借りてきた。  定期購読雑誌なので、この号だけ買えないのは残念。  大船渡市では、高台移転と現地残留で地元民の意見が分かれていること、宮城県の女川町では、県が現地、近傍移転、大規模移転の3案を地元に示したことなど、最近の動きを詳細に伝えており、有意義。  これはと思った点。 ①関西大学の河田先生が示した、人工地盤案、高台移転案、がれき海岸砂丘案は、宮城県がしめした案にくらべても、壮大だが、実現性が疑問。(p23) ②奥尻島の一部高台移転の実績に対して、当時の設計チームが疑問を呈しているが(p33)、地元の理解をえた案として、むしろ模範になると思う。 ③仙台市長の被災宅地救済制度の支援の要望(p41)については、知恵を絞ってなにか支援制度をつくりたい。  いずれにしても、防潮堤などの方針がたぶんなかなかきまらないことが予想される(絶対安全という規模は途方もないことになる)ので、仮おきをしながら、地元住民の意見のまとまったところから、その規模で、高台移転なり、現地再建と避難ビルの建設などを、先行的にすすめていくしかないと思う。  そういう意味で、河田先生がいうような、きれいで、大規模な開発を最初から目指さない方がいいと思う。

藤井聡『列強強靱化論』を読んで、藤井先生の東日本大震災の復興対策の提案をしっかり受け止めたいと思う。

列島強靱化論―日本復活5カ年計画 (文春新書)列島強靱化論―日本復活5カ年計画 (文春新書)
(2011/05)
藤井 聡

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 藤井さんは、公共事業の必要性を訴えている土木工学者と思われているかもしれない。  だが、それだけでなく、『社会的ジレンマの処方箋』などの心理学との連携による政策の進め方など、幅広い学説を展開していて以前から注目。  東日本大震災に対する復興対策について、これを役所に対して受け止めろという強い熱意を感じる。  しっかり受け止めたい。 ①三陸地震の前後18年以内に、東海・東南海と首都直下が起きていることを表にして整理。(p52)  説得力がある。日本は、地震活動期に入ったことを実感する。背筋が伸びる。 ②エコタウンや、最先端のモデル復興地域、大規模農場などの雨後のたけのこのような思いつきや、はやりのアイディアに対して、違和感を感じる皆さんには、是非ともできるかぎりのご尽力でそういう方向にいかないように願う。(p78)  自分もまず被災者の声を大事にしたいと思う。そのなかで、強い国土をつくっていきたい。 ③「まちの骨組み」について復旧・復興を急ぐところから、人の手によるまちづくりの営みを開始しなければならない。(p103)  自分も、壮大な構想について、地元の意見がまとまるには時間がかかるので、まず、先行的にまとまったところから事業に着手することが大事だと思う。  全体の復興計画がまずありきではなくで、個別の先行的な事業計画がだんだんまとまっって、復興計画の全体ができているイメージが大事。  その他、復興八策としての、「リスクコミュニケーションの推進」「コミュニティの維持と活性化」「強靱な国土構造の実現」も説得力あり。  一言付け加えれば、個人的には、日本海側のインフラ(高速道路、新幹線、国家行政機能など)の充実が、東海、東南海、南海地震を考えれば重要だと思う。

春名幹男『秘密のファイル 下』を読んで、鳩山家の米国ぎらいは、おじいさんから始まっていることを知る。

秘密のファイル〈下〉―CIAの対日工作 (新潮文庫)秘密のファイル〈下〉―CIAの対日工作 (新潮文庫)
(2003/08)
春名 幹男

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 春名さんの秘密のファイルの下巻。  主に、占領終了後だが、なぜか上巻とかぶった時期も記述している。やや読みにくい。 ①鳩山政権発足時に、ダレスCIA長官は、「鳩山は、中共、ソ連との貿易拡大をめざしている」と憂慮していた。(p154)  おじいちゃんが、米国に嫌われていたのが、前総理にも影響しているのかな? ②アメリカは、ソ連が北方領土で譲歩することをおそれていた。(p167)  当時は、アメリカが沖縄を占領中であったことから、そこへの波及をおそれたということ。 ③パチンコプリペイドカードは、CIAの要請を受けて、警察がのり、警察が利権も確保した。(p539)  北朝鮮への資金の流れを断つ目的があった。  いろいろと、米国の情報公開制度をつかって公文書をベースに分析していて、説得力がある。  役人も、海外留学の時点で、CIAに取り込まれることも多いらしい。自分にはそういう接触はなかったが、若者の官僚も注意してほしい。

岸本美緒『東アジアの「近世」』を読んで、中国人が、本来の国土を侵略国家である清帝国の範囲とする理由がわかった。

東アジアの「近世」 (世界史リブレット)東アジアの「近世」 (世界史リブレット)
(1998/11)
岸本 美緒

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 岸本さんは、東大の教授で、きわめて、(たぶん)正統的な歴史学者。  先日あげた岸本さんの本が手に入らないので、簡単なブックレットを購入。  中国は、本来の国土として、清帝国の範囲を考えているようだが、どうして、侵略された政府の国家の範囲を、そう考えるのか、疑問に思っていた。  この本を読んで、康煕帝は、漢族の母をもち、満州語、漢語、モンゴル語を扱ったこと(p48)を知り、侵略国家も継続的にも文化的にも漢族と融合させてしまって、自分の祖国と意識することを理解した。  その他おもしろかった点。 ①清朝が成立後、最大の反対勢力となった鄭成功は、漢族と日本人の混血。(p40) ②清、江戸とも時代が安定していたため、それ以前のように西欧から武器技術を移入することがとだえっため、19世紀の西欧進出時に東アジアの武器が時代おくれになっていた。(p65) ③清の19世紀は、人口が1億数千万人から3億へのほぼ倍増した。(p76)  これには、広い国土のおくへ「山区経済」といって、開拓していった背景がある。これに対して、日本は、人口はこの時期停滞している。

春名幹男『秘密のファイル 上』を読んで、戦後に米国に協力した有力者について、社会安定のためやむをえなかったことと思う。

秘密のファイル〈上〉―CIAの対日工作 (新潮文庫)秘密のファイル〈上〉―CIAの対日工作 (新潮文庫)
(2003/08)
春名 幹男

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 孫崎さんの国境問題での参考文献として、春名さんのこの本を購入。現在絶版。  春名さんは、共同通信の編集委員。 ①CIAの非軍事の工作権限は、国家安全保障法の「国家安全保障会議が時に応じて指示するような機能と任務を果たす」と規定されている。(p478) ②アメリカがおそれたのは、CIA文書によれば、中ソからの宣伝攻勢や日本共産党を使った内乱触発の可能性だった。(p514) ③公安調査庁法案を作成した当時法務省の関特別審査局次長は、FBIの担当者と法案の打ち合わせをした。(p522)  CIAが特に有力な情報源にした個人名もp580に列記されている。  なお、GHQは、反ソの組合をつくるために総評を支援したが、結果としては、反米の組織ができてしまったなど、米国の工作の失敗例も多い。  いずれにしても、戦後の混乱期に、米国側についた人たちが、CIAの協力者になったことについて、今の時代から批判する気にはならない。
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