革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2011年07月

岩波文庫の『孫子』を読んで、いろんなバージョンの孫子を読んでも、その都度得るところがある。

新訂 孫子 (岩波文庫)新訂 孫子 (岩波文庫)
(2000/04/14)
金谷 治

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 日垣隆さんのメルマガ古典グループの課題本ということで、岩波文庫の『孫子』を読了。  いままで角川ソフィア文庫の『孫子・三十六計』、講談社学術文庫の『孫子』をよんで、岩波文庫の孫子が一番、あっさりとしている。 ①「兵とはき(言偏に危)道なり」(p32)  戦争とは正常に反したしわざ。  敵を欺くのが戦争ということ。 ②「兵に拙速なるを聞くも、未だ攻久なるをみざるなり。」(p36)  戦争にはうまく早く切り上げることはあるが、うまく長引くという例はない。 ③「故に進んで名を求めず、退いて罪を避けず、唯民を是たもちて而して利の主にあうのは、国の宝なり。」(p136)  功名を求めないで、進むべき時進み、罪に触れることをおそれないで退くべき時に、退いて、ひたすら人民を大切にした上で、主君の利益にあうという将軍は、国家の宝である。  役人の鑑でもありますな。

河合秀和『チャーチル』を読んで、チャーチルが、大英帝国の繁栄のための、頑固と変節の併存した政治家と知る。

チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)
(1998/01/25)
河合 秀和

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 石川知裕先生の『悪党』で、石川先生がよく読んでいる本として紹介。  チャーチルは、浮き沈みの激しい政治家だから、石川先生の心を打つのかも。 ①チャーチルは、貴族の出だが、母親はアメリカ人、学校の成績は、ラテン語など悪いため、しかたなく、陸軍士官学校をうけた。陸軍士官学校でも成績が悪くて、自己負担のおおい騎兵科にまわされた。(p40) ②チャーチルは、保守党、自民党、保守党と渡り歩いた。第一次世界大戦中に海軍大臣をつとめたが、軍縮の時代は不遇で、ドイツが第二次世界大戦で開戦してから、総理大臣にカンバックした。  自民党時代には、社会政策を支持していたが、労働組合が過激化してゼネストをうつなど、国家体制に影響するようになると、徹底的な弾圧派になる。(p99)  イギリス帝国の反映という観点から一貫しているが、ここの政策については、いろいろ変節している。 ③チャーチルが組閣の日の感想「私は運命とともに歩いているかのように感じだ。私のこれまでの生涯がすべて、この時、この試練のための準備にほかならないと感じた。」(p263)  チャーチルは、無役のときは、ギボンなどの歴史を学び、回顧録を口述筆記している。そのような彼なりの歴史観を培う努力は、どのポストであっても、必要なことだと思う。  自分も心がけたい。

東大作『我々はなぜ戦争をしたのか』を読んで、米国、ベトナムの双方の誤解が戦争を拡大させたことを知る。

我々はなぜ戦争をしたのか (平凡社ライブラリー)我々はなぜ戦争をしたのか (平凡社ライブラリー)
(2010/07/10)
東 大作

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 マクナマラは、ベトナム戦争の時の国防長官で、ベトナム戦争を推進し、その後、マクナマラ回顧録で、アメリカ人らしくなく、素直に誤りを認めた人。  池田・養老さんの『ほんとうの復興』で紹介されていたが、記憶のどこかに、マクナマラとベトナムの指導者が最近、会談をもって戦術をぶつけあったことが残っている。  東さんは、その対談を日本に紹介した、当時、NHKのディレクター。 ①トンキン湾事件であったといわれている2回のベトナムの攻撃について、ベトナムのザップ将軍は、1回目は事実だが、2回目は行っていないと明言。(p35) ②ジョンソン大統領からベトナム戦争の戦略調査を命じられたバンディ氏がサイゴンにいるときに、米軍のブレイク空軍基地が攻撃され、アメリカは当時、これが北ベトナムの挑発行為と考えた。しかし、当時のベトナムの中部方面司令官だったヒエップ氏は、単なる末端司令官の小規模な攻撃で、そのとき、アメリカの調査団がきていることも知らなかったという。(p144)  もともと、北ベトナムの政府軍は、ゲリラ戦化しており、末端司令官に権限が委譲されているので、あちこちで暴発していたらしい。  米軍は近代的統制のとれた軍隊だったので、そんなことはありえないと考えたのだが、単なる小部隊の暴発が、北爆を開始させたとういのは悲劇。 ③1966年のポーランド外務省の仲介による秘密交渉の席に、ベトナム側が出席しなかったのは、北爆が直前にあったため。しかし、アメリカ側は、たまたま空爆が天候不順でおくれていて、秘密交渉の直前にそれがまとまって北爆したため大規模空爆になってしまった。(p189)  文官であるマクナマラが制服による個別の空爆の実施について、コントロールできなかったのが悲劇。  いずれにしても、戦争中には、相互の不信が高まって、悪い方に誤解する事態が連続することがわかる。  なんとなく、NHKにいた東さんのコメントは説教臭さが鼻につくが、その間に挟まれた、生の両国指導者の対話は、ぐいぐい引きつけるものあり。  両方の戦争指導者が存命中に、行われた対談の貴重な記録。一度は目を通す価値あり。

畑村洋太郎『未曾有と想定外』を読んで、驚くような指摘はないが、相変わらず畑村節はわかりやすいと思う。

未曾有と想定外─東日本大震災に学ぶ (講談社現代新書)未曾有と想定外─東日本大震災に学ぶ (講談社現代新書)
(2011/07/15)
畑村 洋太郎

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 畑村さんは失敗学で有名。  今回の福島原発の事故調査委員会の委員長を引き受けられたので、委員長になって守秘義務がかかる前に、考え方をまとめたとのこと。  是非、国民にわかりやすく原発事故の原因を説明してほしい。  この本については、あっとおどろくような事はない。 ①完全な高所移転は、今回も実現しないとみています。(中略)欲望や便利さを求める気持ちが恐れの気持ちより勝るということは、どの時代のどの場所でも起こっています。(p77) ②じつは今回の原発事故にかぎらず、近年の組織で起こした事故や失敗をみていくと、大本の原因の多くは、周りが変化しているのにかかわらず、設定を見直してこなかったつけが回ったことがおおい。(p98) ③プレートによって東西が分断されていることから東西の移動がスムーズにできる箇所は3カ所しかない。うち、南側の由比は、国道1号線、東名、東海道本線、東海道新幹線が集中していて、心配。(p161)  そのほか、今回の地震のまんのう池のダム崩壊ももっと注意した方がいいとのこと。ダムが決壊したのは初めて事例のため。  崩れの関係では、幸田文『崩れ』(講談社学術文庫)が参考になりそう。

武田満『原発報道とメディア』を読んで、大震災の後に書き直した、まじめで少し難解なジャーナリスト論だと知る。

原発報道とメディア (講談社現代新書)原発報道とメディア (講談社現代新書)
(2011/06/17)
武田 徹

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 武田氏は、以前、『「核論」』という本を読んで、なんとなく違和感をもって、そのままになっていた。  今回、職場の本屋で、新書の新刊で並んでいて、タイトルで購入。  別に具体的に大震災以降の報道の評価をしているのではなく、大震災以降に書き改めた、ジャーナリスト論。  自分はいわゆる職業ジャーナリストになる可能性もないので、読みながら、ちょっとはぐらかされた感じもするが、ブログやSNSには、「一人ジャーナリスト」という性格もあると思って、我慢して読了。  切り口として大事だと思った点。 ①ジャーナリズムが自らおくべき位置は、安全安心の議論に触れつつ、その内部には入り込まない「へり」の位置。(p46)  相変わらず難しいものいい。  安全安心の議論について、電力会社とか政府とか社会的強者の側と、脱原発活動家の側の両方に属せず、客観的な立場を維持しようということか? ②原発事故がパンドラの箱をあけたとしたら、そのリスクを最小化して生きられる技術を、今こそ確立できるかにかかっている。(p107)  いたずらにおそれるのではなく、科学的知見を受け止め、そのリスクを最小限にするよう、しのいでいくことが大事。 ③ジャーナリズムは、誰も関心をもっていないけど、実は多くの人に知られるべき事実を発掘する、弱者の声を拾い上げる必要がある。(p182)  例えば、原発で必死に制御をしようとしている技術者の声、原発避難でかえって体調のくずしてしまった高齢者の声とか、原発批判と逆の視点も重要。  武田氏の本は、いろいろ大事なことが書かれていると思うが、難解。特に、今回の本は、大震災であわてて書き直したためか、かなり、論旨が追いにくかった。  ちょっともったいない。
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