革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2013年08月

松元崇『持たざる国への道』を読んで、政策には金融の知識が不可欠と知る。

「持たざる国」への道 - 「あの戦争」と大日本帝国の破綻 (中公文庫)「持たざる国」への道 - 「あの戦争」と大日本帝国の破綻 (中公文庫)
(2013/07/23)
松元 崇

商品詳細を見る
 松元さんは、財務省出身で現役の内閣府次官。  実際にお仕えしていて、冷静ながらシャープな人だと思っていた。  文章もうまい。読ませる。  一番ショックで自分の無知を知らされたのが、軍部の中国大陸との円と元をパーで兌換する、円元パー政策によって、極端な円高から、円が流出して、日本国内が不況になるとともに、中国、特に蒋介石に外貨準備を支援してしていたこと。  金融知識がないと、とんでもないことをやらかす。  あと、井上準之助や高橋是清の時に、すでに非伝統的な金融政策を実施していたこと。特に、日銀が直接融資をするような政策までやっていたこと。  知らなかったな。  経済、財政の裏にある金融政策の知識の重要性を知る本。  あと、役人の余業としても、業務で得た知識をわかりやすく国民に説明するということは大切と理解。

宇野賀津子『低線量放射線を超えて』を読んで、福島は第二のチェルノブイリにはならないとのこと。

低線量放射線を超えて: 福島・日本再生への提案 (小学館101新書)低線量放射線を超えて: 福島・日本再生への提案 (小学館101新書)
(2013/07/31)
宇野 賀津子

商品詳細を見る
 よくわからないなりに、低線量放射線被曝の影響について勉強。  宇野先生は、京都パスツール研究所の先生。    最初は理学系からはいって免疫系の研究をされている方。  単純にいうと、低線量被曝については冷静に対応すべきであって、いたずらに恐怖心をあおるのは、それ自体が免疫力を弱めるのでよくないという立場。  チェルノブイリのようにならないという根拠。 (1)放出された放射線量が約10分の1であること。 (2)福島ではヨウ素で汚染された牛乳の流通をすぐとめたこと。 (3)日本人は平素からヨウ素をよくとっていること。 (4)福島のホールボディ検査でも問題となるセシウム量は発見されていないこと。  など。(p206)  この本のなかでは、京大の原子炉研究所の今中助教とも意見が一致している(p204)と書いている部分があるが、今中さんは『低線量放射線被曝』では、閾値なし仮説を指示しており、本からうける印象はかなり違う。  素人に対する語り口の問題なのか、原子力工学と免疫学の立場の違いなのかわからないが、よく専門家で議論して、一致した点については、同じトーンで説明してほしいと切に思う

小幡績『成長戦略のまやかし』を読んで、よくここまで成長戦略をみそくそに言うな。

成長戦略のまやかし (PHP新書)成長戦略のまやかし (PHP新書)
(2013/08/13)
小幡績

商品詳細を見る
 小幡さんは、大蔵省をやめてから、今慶応の先生。  自由人だから、成長戦略をみそくそに言っている。  単純に整理すると、生産年齢人口が減っている中で、日本が成長するためにはイノベーションが必要。  しかし、イノベーションがどうやって起こるかについて、きちんとした学説はない。  しかし、経済産業省が好きなターゲティングポリシーでは起きないことは明らか。第五世代コンピューター、国策検索システムなど、どこへいってしまったのか。むしろ通商産業省の指導を拒否した自動車産業が日本経済を牽引したのは記憶に新しい。  同じようなことを繰り返してはいけない。  規制緩和については、社会的な問題が発生している都市計画のような分野はこれ以上の緩和は問題だと思うが、社会のイノベーションを阻害している分野については規制緩和もありえるのではないか。規制は既得権のためで規制緩和は期待できないと小幡さんがいうほと、絶望的にもなれない。  なお、円安誘導は、今、原子力がとまって大量の化石燃料を輸入して貿易赤字になっていること、製造業もサービス業も海外進出をねらっているので、旧来型の自動車産業ぐらいしか喜ばないのではないか。この本によれば、本田は製造拠点を消費者地に移すといっているので、本田は円高がいいのではないか。  黒田バズーカ砲の影響はすでに長期金利の上昇に現れているし、池田さんの『アベノミックスの幻想』で詳細に分析されている。  要は、若者、女性が既成観念を越えて、イノベーションを起こさないと成長はしないんだよ。役所は変は口だしをしないこと、それが大事。

越澤明『哈爾浜の都市計画』を読んで、復興事業の全面買収方式の参考になるのではないかと思う。

哈爾浜(はるぴん)の都市計画 (ちくま学芸文庫)哈爾浜(はるぴん)の都市計画 (ちくま学芸文庫)
(2004/06/10)
越沢 明

商品詳細を見る
 越澤先生の本は全部読んでいると思っていたが、この本を職場でみつけて、あれっと思って読んでみた。絶版本なんですね。  哈爾浜のロシア支配時代、満州時代の都市計画、建築物の実態及び計画図が詳細に紹介されている。  なお、本書に紹介されている建築物については、『図説満州都市物語』(河出書房新社)で鮮明な写真を一部みることができる。  自分は、ロシア時代から、荒野であった土地を鉄道の付属地として公有地化し、その上で都市運営をしたという点について、特に、インプレッションを受けた。  我が国では実現したことがないが、東日本大震災の復興事業の参考になるのではないかと考えている。  当然、前提としては、被災を受けた土地、建築物の価値が残っていない土地を対象にして、将来の人口規模の減少、高齢化を前提にして、コンパクトな中心市街地の部分、例えば駅及びその周辺を一団の都市施設として全面買収し、原則は、底地を市有地のままにする。  市の公共施設に加え、仮設的な市街地を借地で先行的に立地させることによって、コンパクトで先行的な市街地復興が可能になるのではないか。また、借地料で都市経営、今時の言葉でいえばエリアマネジメントができると思う。  その発想で、全額用地費まで国費でみる津波復興拠点整備事業の都市計画及び予算制度を作ったが、現在、釜石市でその発想に近い使い方が検討されている。  今回恒久化した大規模災害復興法のなかでも、一団地の復興拠点施設の都市計画を制度化したので、今後は、津波被害にかかわらず、面的に消失などした市街地でも活用ができると思う。  越澤先生の本にも指摘されているとおり、土地の公有化と一体的な都市運営について、復興事業というフェイズで是非、関係者の活用の検討をお願いしたい。

河合敦『よめばすっきりよくわかる日本外交史』を読んで、高校の受験参考書のようだった。

読めばすっきり! よくわかる日本外交史  弥生時代から21世紀まで (角川SSC新書)読めばすっきり! よくわかる日本外交史 弥生時代から21世紀まで (角川SSC新書)
(2013/07/10)
河合 敦

商品詳細を見る
 河合先生は、高校の日本史の先生兼歴史研究家。  文章の2行に一つはゴシックの固有名詞が入っており、受験参考書のよう。  それでも新しい受験参考書のポイント、自分の知らなかった歴史の新しい発掘がわかる。 (1)聖徳太子の偉業については、これが一人の人間が主導したかどうかについて疑問がでてきている。そのためん、厩戸皇子と教科書では記述されている。(p26) (2)1359年、壊良親王が九州を平定して、独自に明を国交をひらいていた。(p102)  この話全くしらなかった。「詳説日本史研究」でも全く触れられていない。先生が発掘した事実なのかな? (3)小村寿太郎とヴィッテとのポーツマスの交渉の様子は、ヴィッテがかなり神経質な人間と表現されていて、また、日本の譲歩案の提出時期も、吉村昭の「ポーツマスの旗」とはだいぶ違っている。  高校の先生の方があってるんだろうね。  思い出せば、高校の世界史の先生とか日本史の先生とか、博学だったな。授業時間中、ずっと黒板に板書していてそれをノートにうつすのが大変だったことを思い出した。
ギャラリー
最新記事
記事検索
  • ライブドアブログ