革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2014年09月

岩瀬昇『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』を読んで、なんで日本のLPG輸入価格が高いかわかった。


石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門 (文春新書)石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門 (文春新書)
(2014/09/19)
岩瀬 昇

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 HONZの成毛さんの推薦。  著者は、三井物産で長く石油関係の仕事をしていた。その実体験から、具体的な事例で石油事情を説明。  ちょっと、タイトルが狭いが、広く、石油などのエネルギー事情を論じている。  自分が、なるほどと思った点。 (1)LPGは、生産設備、それを運ぶ特殊なタンカーなど、採算性を確保するのに、1兆円規模のプロジェクトとなる。そのため、ファイナンス再度からは、長期の売値、販売先を確保してからプロジェクトを立ち上げる、長期収支安定型でないと、事業が成立しない。この方式で日本はLPG開発にコミットしてきたので、基本的には、長期契約での価格を、原発事故で急に輸入量が増えても、価格を下げることができない。(p24) (2)シェールガスの掘削技術は、鉱業権が国家ではなく、土地所有権にあるという特徴をもつアメリカで、かつ、1970年代の政府支援がなくなってからも、目張り強く開発を続けていた、ジョージ・ミッチェルとその技術陣が、資金ぐりに苦しみながら、開発した手法によって、採算性がとれるまで技術革新が進んだ。この点での技術力は未だにアメリカがリードをしている。(p67) (3)ホルムズ海峡は、幅55キロ、浦賀水道は10キロ、海流も速く、機雷の設置も難しい、イランとオマーンが中間線で領有を主張しており、今でも日本の全タンカーはオマーン領海を通過している、イランがオマーン領海に機雷を設置することになれば、戦争行為になり、簡単にできることではない。(p178)  もちろん、リスクがあるし、危機をあおって石油価格市場を混乱に陥れる可能性はあるので、エネルギー安全保障の考え方は重要。ただし、著者は、集団的自衛権の説明でホルムズ海峡の封鎖の事例をあげるのは、「国民を誤解させ、いたずらに不安に陥らせるだけではないか」と指摘している。  後半の政策論は、やや冗長だが、具体の石油市場や石油開発の情報、シェールガス開発の裏事情など、ミクロの情報に価値あり。

和田幸信『フランスの環境都市を読む』を読んで、フランスの最新都市計画の情報は貴重だが、日本の制度の理解に過ちがあるのはおしい。


フランスの環境都市を読む: 地球環境を都市計画から考えるフランスの環境都市を読む: 地球環境を都市計画から考える
(2014/08/27)
和田 幸信

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 国土交通省の本屋の棚でみつけて、なにげなく購入。  最新のフランスの都市計画制度の状況がわかり、貴重。しかし、比較対象とする日本の都市計画制度に誤りがあるのは残念。また、フランスの都市計画制度も万全ではないはずなので、フランスの課題も整理しておいた方がよかったと思う。  あれっと思った点。 (1)日本の中心市街地のように店舗の駐車場を規制すると、消費者はますます郊外の大型店にいってしまう。(p41)  日本の中心市街地の店舗は、駐車場法と大店立地法で、最低限の駐車場の設置義務を二重にかけていて、駐車場の数を低くする規制はしていない。著者の事実認識は誤り。  ただし、公共交通を導入するために、むしろ駐車場の設置台数を減らすべきという考え方はあり、自分も総合的な都市交通体系の中での一つの手法だと思う。 (2)ディジョン市では、トラムの周辺の高密度化のため、高さ制限、壁面の位置制限、容積率を廃止している。(p42)  本当かな。よほど開発需要がないところでないかぎり、めちゃくちゃな街になりそう。なにか、コントロールの仕組みが別途あるのではないか。 (3)日本の都市計画区域マスタープランは、策定主体も決まっておらず、また住民手続きもない。(p80)  全くの誤解。都市計画法第15条でちゃんと都道府県が決定すると書いてある。また、都市計画なので、公告縦覧や利害関係人の意見提出など、普通の都市計画として、住民手続きも規定している。 (4)地区計画は七つのメニューがあり、地方公共団体が地域の実情に応じて自由に地区の整備を行うことができない。(p183)  これもやや誤解に近い。むしろ、従来分かれていた、再開発地区計画とか住宅地高度利用地区計画などを全部まとめて一つの地区計画にしている。受けの建築基準法の規定を法律上かき分けるために、なんとか型と称しているが、それ自体はメニューというよりは同時に複合的に使うことができるもので、むしろわかりやすいように、運用上、街なみ誘導型とか名前をつけているだけにすぎない。これはいわゆる別々の制度として複合的に重ね合わせて使う、という意味でのメニューではない。  ちなみに、著者の批判の点はずれているが、上記の指摘された点について課題がないのではない。  都市計画区域マスタープランは、柳沢提言にあるとおり、一市一都市計画区域だと存在意義がないので、都市計画区域ごとではなく、かつ都道府県全域を対象にした県都市計画マスタープランにすべき。  また、地区計画については、計画事項の限定が使いにくい。例えば、京都の町屋などは防火、準防火などをはずして独自条例で耐火性能を規定しているが、これなどは、構造などを地区計画に規定すればもっと楽に対応ができるはずう。建築確認ともリンクできる。  とてもいい本なのに、ちょっとおしい。  参考文献、『コンパクトシティ再考』(学芸出版社)  

佐々木信夫『大都市行政とガバナンス』を読んで、できそうもない大げさな構想よりできることから始めたらいいと思う。


大都市行政とガバナンス (中央大学学術図書)大都市行政とガバナンス (中央大学学術図書)
(2013/07)
佐々木 信夫

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 国土交通省の図書館の新刊の棚で発見。  結構大上段に、道州制とか議論しているけど、僕は、できることからやったらいいと思う。  そもそも、国が巨大な借金を抱えているので、効率的な国、地方の行政体制が必要だが、国の権限を道州に下ろしても、別に特別の財源が国にあるわけではなく、借金する権限を下ろすことになる。  それより、すぐにでもできそうなこと。 (1)北海道や沖縄にならって、地方支分部局のうち、公共事業関係の地方整備局と地方農政局をブロックごとに合体すること。また、運輸業の許認可を行う地方運輸局も、都市計画との関係が強いので、一緒に合体すること。 (2)特に、県の区域が小さい、鳥取、島根はそれぞれ、岡山、広島と合併する、福岡、佐賀、長崎を合併すること。 (3)政令指定都市は、県と同等の特別市とすること。また、23区も一つの東京市として、政令指定都市並とすること。23区以外の東京都は例えば、神奈川県と合併すること。  いずれも、道州制とか、ほとんど、なんのために行うのか、具体的に行政効率化が行われるのかという効果が予測できないので、まず、いかにも非効率な部分を是正していく方向が正しいと思う。  あまりに狭い県の合併をすることは、国民の一票の重さの是正にもつながると思う。  国と地方の役割分担は百家争鳴となるし、緊急事態などが頻発してくると、むしろ国の役割も重要になってくる。地方分権して国家が弱体化してもしょうがないので、まず、あまりに非効率な部分から是正を始めるのが現実的な対応だろう。  あと、市町村合併によって、市町村の行政区域は大きくなったが、住民の意向が届きにくい、受益と負担の関係がわかりにくいという問題については、地域環境団体のような地域団体法人をきちんと位置づけて、一定の行政事務を行うという、政策目的にリンクした対応をまずとっていくべきだろう。  大上段に地方自治制度の見直しだとか、国家の統治機構の見直しなどというのは、仮に実施したときに日本の経済社会に相当長期にわたって混乱をもたらすので、この停滞傾向の日本社会でとるべきではないと思う。  なお、東京都の都議会議員の給料が2000万円、政務調査費が約800万円というのは、やってる仕事や他の県議会議員に比べてもあまりに高すぎ。

ダグ・メネズ『無敵の天才たち』を読んで、イノベーションの現場とそれに群がる投資家の雰囲気がよくわかる。


無敵の天才たち スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間無敵の天才たち スティーブ・ジョブズが駆け抜けたシリコンバレーの歴史的瞬間
(2014/09/10)
ダグ・メネズ、Doug Menuez 他

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 アップルをジョブスが追い出されて、NEXTという会社を立ち上げた頃の、スティーブの写真やそれを取り巻く無名のプログラマーたちの写真、ビルゲイツやアマゾンのベソスの写真もある。  それを取り巻く、ベンチャーキャピタルのネクタイをした投資家。それに対する言い争いの写真。  とにかく、イノベーションの現場は秩序もなく、徹夜あけのファーストフードがちらばり、あちこちで人が寝転び、そして作業し、討論している。  こういう、混乱と作業と会話の中から、今のアップルとか、マイクロシフト、アマゾンが生まれてきたというのは、おもしろい。  ネクタイしめて、きれいな机の上ではイノベーションは起こらなかったことがわかる。  ちなみに、アップルに当初圧倒されたヒューレッドパッカードの社員はネクタイをしている。  自由闊達な雰囲気、馬鹿騒ぎを許す雰囲気と、厳しい締め切りに併せて徹夜を続けて、家族やペットまで一緒にオフィスにつれてきてずっと生活をするプログラマーに、イノベーションの秘訣を見る。

服部茂幸『アベノミクスの終焉』を読んで、アベノミクス批判は切れがいいが、対策があいまい。


アベノミクスの終焉 (岩波新書)アベノミクスの終焉 (岩波新書)
(2014/08/21)
服部 茂幸

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 アベノミクス批判は的確。  異次元緩和で、国債を猛烈に勝って、市場に円を供給して、金利は下がったが、円安でも輸出が増えないこと、実質賃金が低下していること、輸入インフレで国内企業と家計にダメージがでていること、金利がゼロになった流動性のわなの状況では金融政策が効かないこと、第二の矢の財政政策は2014年には公的固定資産形成がマイナスを予測され、息切れが予測されること、など、よくいわれていることばかり。  むしろ、この本で問題なのは、それに代わる処方箋がないこと。  規制緩和や民営化については、批判的に述べていて、社会保障などの支出によって経済成長が可能なようにも読める。  しかし、経済成長が長い目でみると、資本と人口増と技術革新で生じるという通常の経済理論からすると、社会保障政策がイノベーションを起こすとは、現在のがんじがらめの制度では到底想像できない。  やはり、民間企業や事業者、地域産業による、新しい起業などを通じたイノベーションが必要だと思う。  イノベーションによって一定の経済成長が確保されて初めて、ナショナルミニマムを確保するための、配分政策が実現する。経済がマイナス成長の時に貧困層への配分政策を充実させるのは政治的にも極めて困難。  その意味では、もっと経営学的なセンスから、成長の素を探すという視点がこの本には必要だと思う。
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