革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2015年02月

関満博『東日本大震災と地域産業復興Ⅳ』を読みました。


  役所の図書館で借りてきた。
 東日本大震災の被災地における地域産業復興の詳細な実例が紹介されている。

 おおざっぱな感想。

(1)震災前から、工場の中国進出に伴う閉鎖が続いていた製造業はやはりかなり苦しい。東北トヨタと連携した下請け企業がどれだけ生き残れるかは、トヨタの国内戦略にかかっている感じがする。

(2)商業も苦しい。無料で入っている仮設店舗で終わってしまう可能性もかなり高い。特に、経営主が60歳を境にして、それより年齢がいっていると廃業のおそれが高い。

(3)豊かな海の恵みを前提にした海産加工業とか飲食業は可能性があるし、ここでしかできないというサービスが提供できる気がする。

(4)復興事業や廃炉などに係わる建設業は、やはり一時的なものにしかないと思う。

(5)地場の味噌、醤油や日本酒などは、国内での販売網を確立することによって生き残れそう。

(6)産業系の復興については、グループ化するという条件で、4分の3の補助が国からでているが、これと住宅再建への支援とのバランスがとれているのか気になる。災害公営住宅にあたる施策がないから、補助率が高いという理解なのか?

『超成熟社会発展の経済学』を読みました。


  役所の図書館で借りてきた。
 第一部が学者、第二部が実業界からの論考だが、実業界からの論考ががくっと質が落ちる。

 学者の論文では、斉藤潤さんの「日本のイノベーションシステム」がおもしろい。

 アダム・ボーゼン氏の説を使って現時点まで分析して、日本は研究開発費、特許数など、高度成長期から現時点にいたるまで大きな変化はない。しかし、その技術革新なり新しい技術が新しい産業や収益に結びつかなくなってきている。特にサイエンスと関係が深いバイオではアウトプットが弱い。また、サービス分野でのイノベーションがない、と指摘している。(p153)

 しかし、原因の分析はあいまいではっきりしない。サービス分野についてはなにか規制が原因なような記述になっているが、具体的な指摘はない。なんだろうか?

 実業界の論考では、トヨタの中川剛男さんが、海外工場の現地調達率を100%にもっていこうとしていること(p200)、亀田総合病院の亀田さんが、生活保護費の支給額3兆円の半分が医療費になっているのはモラルハザードだと指摘していること、混合診療を認めてほしいといっていること(p223,227)、大和ハウスの広瀬基紀さんが、サービス付き高齢者住宅は、市町村の介護事業計画と関係なく建てられること、土地を提供する者にも補助がでることから建設が進んだことを指摘していること(p246,260)が、ちょっと面白かった。

 タイトルからして、何かこの閉塞感ある経済構造の打開策があるのかと思ったが、それは過剰な期待だった。

ちきりん『マーケット感覚を身につけよう』を読みました。


  ちきりんさんは、ブロガーで市場に明るい人。素性は不明ながら、出す本はわかりやすい。
 要は、論理的思考と市場感覚の両方でものごとを考えようということ。

 特に市場感覚、マーケット感覚というのは、結局、市場でどう評価されるか、市場でどの程度の価値があるものと考えられるか、という視点をきちんともつことと、目的を実現するためには、規制手法よりも市場メカニズムを使う方がうまくいくことが多いということ。

 以下、おもしろいと思った点の引用。

(1)位置No. 192-193
実は世の中の大半の問題は、ひとつの手法を使って考え続けるより、論理的な思考とマーケット感覚という、ふたつのアプローチで両側から考えたほうが、圧倒的に早く、現実的で豊かな解に到達できます。

(2)位置No. 522-524
日本は他の先進国と比べて、非市場的な制度(=権威を持つお上が規制を作り、一般の人を守ってくれる制度)を好む人の多い国です。しかしネットを利用する機会が増えると、世界標準での規制のほうが、合理的だと考える人も増えてきます。
(3)位置No. 651-652
市場化が進む社会で高く売れるのは、「よい商品」ではなく、「需要に比べて供給が少ない商品」なのです。

(4)位置No. 739-741
自分が勉強している間に、その仕事に対する需要の大きさが変わってしまうかもしれないのだから、ひとつの分野にこだわり続けるより、需要が増える分野を見極め、伸びている分野にすばやく移動することのほうが、よほど有用な場合も多いのです。

(5)位置No. 1738-1742
何かあるたびに「規制を強化すべきだ!」と叫ぶ人を見ると、私は心底ぞっとします。そんな人ばかりになってしまったら、罰則だらけの息苦しい規制社会に向かうだけです。問題があれば、まずは人間のインセンティブシステムを利用してなんとかできないか、考えるべきなのです。そうすれば嬉々として、問題を解決する人が現れるのですから。

(6)位置No. 1925-1927
日本人はよく、「シリコンバレーは失敗に寛容だが、日本社会は失敗した人を許さない」と言いますが、この理解は完全に間違っています。シリコンバレーは失敗に寛容なのではなく、「失敗経験のない人など、まったく評価しない」のです。

(7)位置No. 2074-2076
市場性の高い場所とは、需要者と供給者が価値を交換する現場や、人間のインセンティブシステムが直接的に働く場所、組織的な意思決定ではなく、市場的な意思決定方法が採用されている環境のことです。

(8)位置No. 2159-2162
学校が提供する価値には、最先端の知識や知見に加え、学位(卒業証書)、価値ある同窓生とのネットワーク、極めて容易に社会の信頼が得られる「学生という立場」など、さまざまなものが含まれます。アジアからの留学生にとっては、日本に滞在できる権利(学生ビザ)や、日本企業へのアクセスも大きな価値でしょう。

(9)位置No. 2174-2177
反対に地方では、潜在的な価値がゴロゴロしているのに、それに気づき、市場化しようという人が足りていません。このため学生時代に都市部でマーケット感覚を鍛えた人が、UターンやIターンで戻った地方で何かを始めるというパターンは、構造的に成功しやすいアプローチとなっています。

(10)位置No. 2242-2247
霞が関の官僚が構造改革に積極的に取り組んでいたら、優秀な学生たちは、「これからも日本は官僚がリードしていく国だ」「自分も官僚になって、日本を率いていこう!」と考えます。しかし、自分たちの保身のために担当業界と癒着し、業界と一緒になって抵抗勢力と化していると、学生たちは「今の時代、官僚になるなんてありえない」と理解し、就職希望先を変えてしまいます。「役所が変わらないなら、優秀な学生たちの就職希望先が、外資系企業やベンチャー企業にとって替わられる」のです。 

 最後の一節はきついな。霞ヶ関は変われるかな?替わられるかな?

ジョン・フリードマン『市民・政府・NGO』を読みました。


   なんで購入したか失念。
 発展途上国、特に南アメリカの事例から、市場や政府と連携しつつも、地域自立的なエンパワーメント(=オルタナティブな開発)を説いた本。

 開発経済学の知識がないからか、ややぶつぎりの論理の進め方で、納得する部分と論理の流れがつかめない部分が交互にでてくる感じ。少なくとも、主流派の経済学の論じ方とは全く違う。

 肩書きはアメリカのカリフォルニア大学の都市計画・地域計画の先生。

 自分なりにおもしろいと思った視点。オルタナティブな開発の実施のための教訓(p231~)

(1)小規模で地域に根ざすだけでは十分でない。

 スポンサーの獲得や市民の政治的経済的な参画が重要とのこと。

(2)国家はオルタナティブな開発の主要な行動主体の一つであり続ける。

(3)自然発生的な地域活動には限度がある。変化をもたらす外部のエージェントが必要。

 これなんか日本の地域社会がまさにそうだとおもう。外部のエージェントとの接触による発火が重要。

(4)NGOは国家と市民社会との間の仲介役をはたしつつある。

などなど。

 なんか、日本の地域社会の活性化とか自立化へのメッセージとしてもぴったりだと思う。

『持たざる国の資源論』を読みました。


  「資源論」なるものの、歴史的な分析本。
 資源という切り口は、必ずしも、原材料に限らず、それをとりだし利用する人的・社会的なシステムまでを含んでいると著者は主張している。そこまで含むと、いわゆる社会共通資本ともかなり近くなる。

 戦前は、この資源論を物質面に限定して軍部が考えたため、満州や南方への拡大戦争に走ったが、利用する人的・社会システムの面からは、むしろ朝鮮や大陸から撤退して、その原材料を輸入してそれを利用し付加価値をつけるという方向性もあったはずという、石橋湛山の戦前の指摘はおもしろい。

 資源論については小生はあまり執着はないが、その発展性の指摘については、国土計画、都市計画に共通のものがあると思うので、列記しておく。(p224)

(1)議論の場を設定する。

 国土計画とか都市計画も、まさに土地利用とかインフラだけでなく、福祉、エネルギー、防災などを議論する共通の基盤を提供できるし、すべきだと思う。

(2)そこにある可能性を見る。

 行き詰まったとき、今のように財政制約、人口減少社会という厳しい制約条件の中で、どう新しい道をみつけるか、そういう可能性を現状から見いだすという視点も重要だと思う。

(3)現象の間の共通項を見る。

 例えば、エネルギーについても、単に発電量とそのエネルギーミックスを考えるだけでなく、省エネ建築、住宅、あるいは省エネとなる都市構造、交通政策、都市・農山村での自立的・分散的なエネルギーシステムという面から切り取ってみると別の解決策もみえているような気がする。

(4)場の特殊性から袋小路を抜け出す。

 都市計画は現場がすべて。現場の特殊解を一般解にすることによって、今の国政上の課題の解決方向がみけるような気がする。

 やや牽強付会な感じもあるが、なんとなく刺激を受ける本だと思う。
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