革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2016年05月

『デンマークのヒュッゲな生活空間』を読んで、協同組合住宅のような仕組みが日本でできないかな?


 役所の図書館で借りてきた。

 北欧は特に住宅政策に特徴がある。

 デンマークの協同組合住宅は、住宅を必要とする者が集まって総費用の2割を出資、残りをローンで調達して、各戸はローン返済を家賃として支払い、組合協会?がローンを返済する。この協同組合は土地の購入、設計から入居者管理まで組合が行うため、入居者の満足度は高い。(p41)

 ただし、デンマークでは協同組合方式を政府が支援してきたが、近年の保守系政権で支援は打ち切られ、むしろ、日本と同じく、区分所有型の住宅の建設が進んでいる。

 小生が思うところ。

(1)区分所有建物は需要が高い地域であれば転々と流通するし、空き家もでにくいので問題が生じ得ない。

(2)しかし、住宅需要が減少することが見込まれる都心3区以外の地域では、区分所有に空き家というか、相続人が相続放棄した持ち主なしの住戸がいくつか発生すると、エレベーターなどの設備の維持管理や大規模修繕ができなくなる。要は区分所有建物は持続可能性がないかもしれない。

(3)また、小規模なマンションではいいコミュニティが生まれていて、共助の雰囲気があるにもかかわらず、突然、区分所有者が業者に住戸を打ってしまい、コニュニティが壊れる、逆に、購入者側もどんなコニュニティがあるかがわからず、結局、「レモン」状態=情報の非対称性状態になっている。

 このような課題を解決しつつ、需要が乏しいなかで、よい居住環境とコミュニティを維持する仕組みとして、協同組合住宅の形式も選択肢としてありえるのではないか。

 ただし、現行の税制では、協同組合が建物保有すると小規模宅地の固定資産税特例がきかないこと、協同組合との間の永代使用権では住宅ローンがつかないことなど、入り口で制度的ネックがある。

 しかし、これは、ニーズがあれば、制度改善が可能だと思う。逆にニーズがあるのであれば、税制やローンでその可能性を摘む必要はないはず。

 日本の現状のコーポラティブ住宅も今は最後は区分所有形式にするので、代替わりすると住戸所有者が勝手に売却することを止められない。

 住宅需要が少ない地域で、気のあった仲間が住宅を作り合う、さらにシェアしあう、そして、新居住者は居住者と仲良くなってから入ってくるといった、小さなコミュニティを維持する住宅所有形態が必要だと思うのだが。

 この形はうまく展開すれば、地域住民相互の助け合い組織にもなるし、一戸建て住宅地での地区管理組合へ可能性も秘めていると思う。 

『帝国の参謀』を読んで、米ソ・米中間の米国側からみた相手の推計手法がおもしろい。

帝国の参謀 アンドリュー・マーシャルと米国の軍事戦 略
アンドリュー・クレピネヴィッチ
日経BP社
2016-04-14

 国防省のoffice of net assesment の室長を40年間していたマーシャルの評伝。

 これも先日読んだ、「レーニン対イギリス秘密情報部」と同じく、機密情報を避けて書かれているので、なんとなく、わかったようでわからない部分が何カ所かある。

 それでもマーシャルが新しく開発した当初はソ連、最後は中国を分析する手法の特徴がわかる。

(1)ゲームの理論、囚人のジレンマのように、相手を一つの点として、合理的な判断をする主体として考えない。相手を官僚制の組織であって、特に、マルクス主義に染まっていて、歴史に一定の法則があると思い込んで判断する、組織という膨らみのある存在で、かつ、無理に不合理な判断をする主体として考える。そして、相手側がどういう判断をその組織でするかどうかを考える。

(2)相手の武器などの数量や生産量の分析に加えて、相手の経済規模を冷静に分析する。マーシャルはソ連の国防費が、CIAななどのGDP6%という米国並みの数字を否定し、 20から30%さらにそれ以上であって、ソ連経済がそのうち破綻することを予測した。

 この背景には、CIAや軍部が自然と相手の脅威が継続することが自分の立場を強固にするというバイアスがかかっていることをマーシャルは見抜いていた。

 その他、参考とすべきは、マーシャルは、経営や政治学などを、当初、ランド研究所で力を磨いて、NSCや国防省への転身した。ある程度機密情報にも接することができる、かつ、純粋の民間研究所の存在というのは、米国の対外情報を分析する能力を向上させるのに貢献している。

 日本だと、どうしても、大学は国の予算に依存して、自由闊達な研究ができにくいが、そもそも、企業や大富豪が寄付して、かなり、時代からみるとピントはずれでも、大胆な研究をこつこつやることができる、社会科学系の研究所があると、日本の社会科学分野の知的分析能力も向上するのではないか。 

 ちなみに、もう、中国ではこの本を中国語訳して徹底的に読み込んでいるらしい。日本の自衛隊や外務省でも読み込んでいてほしいな。 

『ロケット・ササキ』を読んで、戦後からの日本の技術イノベーションの特徴を考える。


 シャープの技術開発の父、LSI、半導体、液晶の開発をリードし、日本の電子技術をリードした佐々木正氏の評伝。

 日本の技術リノベーションの歴史から読み取れるもの。

(1)日本の最初のトランジスターの開発は、実はアメリカの技術のパクリ。しかし、劣化コピーでなく、パクリつつ少しでも優れたものを開発したこと。

 パクリをばかにしてはいけない。遅れたらまず、パクリ。そこから一歩先にいくことが重要。 

(2)電卓競争では、一つの新しい技術を商品化したと同時に次ぎの技術開発、少子化、安値化の技術を狙って開発を進めた。

 同時並行して途切れなく、新しい技術開発を行うこと、また、米国で見込みがないと言われた技術を安く買い取って、独自に技術開発をするなど、戦略性と先進性(本当はリスクをとって人とカネを思い切ってつぎ込むこと)が当時のシャープの社風にはあった。

 ちなみに、シャープは通産省のコンピューター開発の仲間に入れてもらえなかった(p118)から発憤して電卓競争に勝利したという、役人の先見性のなさもちゃんと歴史が実証している。役人の頭では技術開発はリードできない。実際に技術開発をリスクをとって先見性のある指導者のもとで競争に勝つことによってのみ技術開発は実現する。

(3)佐々木が開発した技術は、問われれば(必要なテナント料、技術料を支払って)他社や外国の企業に提供した。逆に、佐々木が技術開発に困った点は、素直に外国の技術者や会社にアドバイスを求めた。電卓競争に勝ったときには、松下電器にその秘訣を講義までしている。

 当時のシャープのオーナー社長の一括で佐々木の松下への講義が了承された(p197)。会社組織という小さな枠にとらわれず、それぞれの知恵をだしあう「共創」が大事。

 小生も知恵やアイディアを自分からどんどんだせば、いろんなアイディアを皆さんから教えていただけるという関係を築く努力をしている。

 現在のシャープの技術開発は、佐々木が進めた液晶技術開発一本足打法になっていて、優れた技術に甘んじて次ぎの技術開発を怠ったこと、シャープの液晶技術を囲い込んで、他社から隠したため、シャープ自体も技術を他社から得られなくなったこと、など、佐々木自身が自ら、現状のシャープの批判をしている。

 このような革新性がシャープに失われたのは、結局、大企業病、官僚制組織の問題。

 一度、小さく分解して、個々の技術者が起業して、佐々木のようにゼロから技術イノベーションをやり直すしかないかもしれない。 

ジェイコブス『市場の倫理 統治の倫理』を読んで、切り口は斬新、文章は長い?

市場の倫理 統治の倫理 (ちくま学芸文庫)
ジェイン ジェイコブズ
筑摩書房
2016-02-09

 先日の山岸俊男先生の本で引用されていたので購入。

 ジェイコブスは相変わらず、切り口は鋭い。

 以下の二つの倫理があり、優劣はないが、それぞれ区別して用いること、ごっちゃにするとかえってむちゃくちゃになると主張。

(1)市場の倫理=山岸先生のいうところの「商人道」
 暴力を締め出せ、自発的に合意せよ、正直たれ、他人や外国人とも気やすく協力せよ、競争せよ、契約尊重、創意工夫の発揮、新奇・発明を取り入れよ、効率を高めよ、快適と便利さの向上、目的のために異説と唱えよ、生産目的に投資せよ、勤勉たれ、節倹たれ、楽観せよ

(2)統治の倫理=山岸先生のいうところの「武士道」
 取引を避けよ、勇敢であれ、規律遵守、伝統堅持、忠実たれ、復讐せよ、目的のためには欺け、余暇を豊かに使え、見栄をはれ、気前よく施せ、排他的であれ、剛毅たれ、運命甘受、名誉を尊べ

 日本は戦国時代は市場の倫理、江戸以降、高度成長期までは、統治の倫理が優先してきた。

 しかし、これから世界で闘って競争していくためには、他人も一応を屎尿して、その中で利益をえるという、従来の集団主義から個人主義に転換していく必要がある。そのためには市場の倫理を踏まえること。

 この解決について、統治の倫理のような気合いとか伝統、集団の掟を持ち出しても、うまくいかない。そこは、市場の倫理を使って、個々人が快適利便性を追求する中で、社会的な富、幸福が高まるようにうまく誘導していくことが必要。

 商人道の世の中なんで、武士道を振り回してはいけないということ。

 この切り口は、ジェイコブスの非常に鋭いところ。

 しかし、これを説明するのに、ギリシャ哲学のような対話編のような形をとっており、読みにくい。
 ジェイコブスは経済学でも都市計画、建築の世界でも最近非常に評価されているが、切り口の鋭さと対照的に、彼女の本は冗長で読みにくいというか、効率的に読めない。

 きっと、ジェイコブスの本を全部読まずに、つまみ食いしている学者も多いんじゃないかな? 

『ヤンキーの虎』を読んで、うまく地方の起業家の共通項を抽出できているか、やや疑問あり。

ヤンキーの虎
藤野 英人
東洋経済新報社
2016-04-15

 最近、話題のようなので購入。

 地方経済の主体として、地方の若い起業家をとりあげていることは原則、共感。

 その上で、本当に著者の切り出している地方の起業家の特徴というのが、地方でビジネスを成功させる共通項かどうかについては、もう少し検証が必要だと思う。

(1)経営者は、地方の企業の二代目、三代目。

 これは、地方である程度、まわりを巻き込む上では共通項として納得感あり。。

(2)仕事の内容は儲かる仕事全般。儲からなくなったらすぐに撤退。牛丼チェーンのフランチャイジーとして20軒運営、自動車整備業、携帯電話販売会社、物流会社など。

 自動車整備業は、車検制度によって通常よりも利益率が高い、レントが発生しているので、一時的にはもうかるかもしれないが、車検間隔が規制緩和で広がれば、一気にアウトだろう。フランチャイジーとして経営するのも、フランチャイジャーといて経営する大企業に比べてそれほど有利とも思えない。物流も小規模配達に宅配便業者が入り込んでいるところに、それほど一般論として可能性があるともおもえない。携帯電話にいたっては、市場が飽和状態で、安い携帯はネットで買う時代なのでこれからは厳しいのではないか。

(3)経営者が東京の様々なコンサルタント会社の会議などに出席して新しい情報を仕入れ、地元の情報の遅れをうまく活用して事業を成功させている。

 これも、そんなに東京においしい話があるわけでもなく、コンサルタント会社が考えることは大企業の方がずっと考えているので、それほど、地方のビジネスに独自性があるとも思えない。

(4)本社機能にたくさんのビジネスをぶら下げて本社の固定費を軽くする。

 これも、地方に進出した大企業の方が、その地方のビジネスにかかる本社の固定費は、全国のビジネスに共通で薄まっている可能性もあり、特段、地方のビジネスモデルの有利さともいえないと思う。

(5)地縁血縁で定着率の高い社員を確保する。

 これも諸刃の剣。厳しいときに人を切れないといざというときに乗り切れない。単純に地縁血縁で人を雇用するとうまくいくものでもない。これが有利なら常に地元企業が大企業より有利になってしまうが、そんなことは全くないはず。

 結局、地元の有力企業の2代目が、地元の既得権と戦い、うまく融和しながら、新しいビジネスモデルを試し、それをリスクをとって実現した場合に、収益があがって事業が拡大している、という以外には、論理的には、ヤンキーの虎の共通項、共通した特徴になっていないような気がする。

 まあ、そんな簡単な決めてがあればみんなやっているし、ビジネスを地元にやっている人からすれば、そんなに簡単に整理できるものではない、ということなんだろう。 楽してもうかるような話はないということ。

 地元で額に汗して仕事をしている同級生などを思い浮かべると、まさにそうだなと痛感。 

 以下、抜き書き。
(1)「地方を本拠地にしていて、地方でミニコングロマリット(様々な業種・業務に参入している企業体)化している、地方土着の企業。あるいは起業家」 これがヤンキーの虎の位置付けです。「地方豪族」と言ってもよいかもしれません。(位置No223)

(2)そこで私が興味を持ったのは、ヤンキーの虎は「地縁血縁」を使ったネットワークでビジネスをしているということです。 彼らはキャッシュを仲間内の中で回す工夫をします。自分の仲間のグループ内でビジネスを完結させて、お金をできるだけ外の地域に出さないようにするのです。(位置No274)

(3)地方には、まだまだ残存者利益がたくさんあります。残存者利益とは、縮小する市場の中で、競争相手が撤退した後に残ったシェアを取って、得られる利益のこと。これは、大手企業にも取り切れていない部分がたくさんあるのです。しかし、中小企業がそれを奪うには、ある程度の規模がなければ難しい。(位置No1025)

(4)「動く人」とは、新しいことに積極的にチャレンジし、成果を出す人です。株を買って儲けたり、事業を始めたりと、アクティブに動きます。 Facebook などの SNS を通じて友達を増やすし、恋もするし、趣味も楽しむし、仕事でもプライベートでもどんどん動きます。 一方、「動かない人」というのは、根本的にネガティブに物事を捉えます。「日本はこれからダメになる」と、将来を悲観的に考えています。だから、お金を使うのが嫌いで、すぐに貯金をします。(位置No1871 )
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