革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2016年10月

『身体はトラウマを記録する』を読んで、毎度のことながら最先端の精神医学の現状がわかりやすく知ることができる本は本当にありがたい。


 たぶん、HONZの推薦。

 ボストン大学精神科の先生が一般向けに書いた本。

 前半は、第一次、第二次世界大戦、ベトナム戦争での帰還兵が受けたトラウマとその症状、さらに、幼児虐待を受けた経験のある大人の症状が詳細に述べられている。

 単純な談話形式のカウンセリングは効果が薄いこと、新しいSSRIなどの新しい薬は、劇的に効果があるもの場合があるが、本当のトラウマの記憶の整理(著者は「統合」といっている)ができないことから、薬をやめると元に戻って、本当の治療につながっていないことを指摘する。

 第5部からは、その現状を打破するため、様々な治療法を著者自身が患者となって経験しながら、いくつかの手法を提案している。その優劣はなにも記載していないが、科学的に効果が実証されたもの(ホルモンバランスや脳波の沈静化など)の説明を行っている。

 小生が興味をもった治療法は以下のとおり。(客観的にみて価値があるという意味ではなく、単に小生が全くしらかなったという意味)

(1)EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
 右目の前、30cmくらいに治療者が人差し指をたて、ゆっくり左右に指を動かす、患者はその動きを眼でおいながら、過去のトラウマとなった経験を話すという方法。(p409)

 EMDRは脳のなかの何かを解きほぐすので、過去の記憶にアクセスしやすくなり、トラウマ経験をより客観的に整理しやすくなる、必ずしもセラピストと信頼関係がなくても具体的な効果がでることにメリットがある。(p416)

 二重盲検法で比較してもプロザックよりも効果が大きく出た。(p419)

(2)ヨガ(この本では「ヨーガ」と訳されている)
 まず、呼吸法と心拍数の関係をみると、健康な人は呼吸と心拍数は関係していて、緩やかに息を吸うと心拍数は増加し吐くとと減少する。PTSDの人は、呼吸が浅くはやいのと、心拍数とまったく連携しない。

 ヨガは呼吸法と姿勢を特徴としており、この呼吸のメカニズムを整える効果がある。また、実際にヨガを週一回、20週間経験した患者の脳では、自己調節に関係する脳の組織(島と内側前頭前皮質)の活動が増加した。(p453)

(3)ニューロフィードバック
 PTSDの患者の脳は、各部位の脳波がうまくシンクロできず、混乱状態で集中できない状況にある。
 ニューロフィードバックの手法はいろいろあるが、脳波がシンクロできた場合になんらかの報酬(例えば画面の宇宙船をうまく操作できるようになるなど)が与えられる仕組みを使って、脳波のシンクロや極端に波長が遅い脳波や極端に波長が短い脳波をださない訓練をする。(p535)

 今のところ、この治療には否定的な効果を示す文献はないものの、まだ発達途中のよう。

 その他、演劇やリズムをとる治療法なども著者は試みている。

 個人的には、トラウマの治療法はまだまだ発展途上だが、いろんな治療法が試みられ、着実に進歩しているんだなという感想をもった。

 日本だと、PTSDの治療は、精神科医の投薬と臨床心理士のカウンセリング、あとはディケアぐらいしか、対応がない。しかし、この本を読むと、もっといろんな治療法が試みられている。
 特に、日本の場合、臨床心理士のカウンセリングは、何か相手の話を聞いて、うなずいて受容してみせる、という手法に偏っていて、進歩がないし、科学的に効果を検証するプロセスも曖昧な気がする。

 災害後の心のケアも、よく言われるが、肉親を亡くしたり財産をなくした被災者に対して本当に有効な対策になっているのか、個人的には疑問に思っている。もう少し、精神科医や臨床心理士の薬に頼らない部分での治療法が改善、発展していくことを期待する。
 

『げんきな日本論』を読んで、元気がでるかどうかわからんが、日本史で変だなと思っていた点を一生懸命議論しているところが素晴らしい。


 社会学者2人が、社会学の一般的枠組みとあとは博識な歴史知識をもって、日本史が世界史とちょっと違うところをいろいろ議論している。

 ものすごく面白い議論がされているが、その一部を紹介。

(1)古代の戦争は殲滅戦になるのが普通でそのため防御力を高めるために、居住地の周辺に城壁をつくる。これれに対して、日本は環濠があるぐらい。
 その理由は、そもそも日本は北方、南方からの人のハイブリッドなので、敵は異民族、負けたら奴隷にするという発想がなかった、農民はそのまま生活ができたからではないか。(p44) 

(2)中国は天をまつる、天は人ではないし、天は王を代えることができる。それに対して日本は神をまつる、神はもともと氏の祖先神から生まれてきたので、人とつながっている、天皇とつながっている、だから万世一系になれる。(p71)

(3)荘園は土地は公有というフィクションがあって、そこから逃れることによって免税特権をえるという農民側の判断から生まれた、その結果、国家財政は非常に苦しくなった。(p122)

 そもそも、「荘園」というのは確かに世界史ではでてこない。中世の封建領主は、その土地に住み着いて、その威力をもって農民から税を取り立てていた。荘園の領主たる貴族は京都にいて、農民がはらう税?の上前をもらっているだけ。

(4)藤原家などの貴族制がクーデターを起こさなかった背景には、天皇は神につながり、神が統治権を持っているという心的メカニズムが働いていた。(p131)

(5)ナショナリズムの成立には、俗語が文字になること、とベネディクトアンダーソンなど多くの学者が指摘しているが、日本は平安時代からひらがな、カタカナがあったことは非常にその意味では早い時代から俗語が文字になった特色がある。(p164)

(6)鎌倉幕府の実質的な権限は、荘園にも入っていける警察権、また平家などで武士に官位を与える朝廷の戦略も、わざと、低い官職(右近衛大将)を頼朝が受けることによって、その下の武家に官位を与えられなくなったことによって、朝廷にとりこまれることを防いだ。(p225)

(7)網野善彦の説によれば、日本の集落の姿は14世紀より前と後で断絶があり、後の集落はほぼ現在まで続いている。このため、14世紀に日本の「惣村」がうまれ、これが江戸時代の徴税の村請制度まで続いている。(p245)

(8)鉄砲は、訓練をしなくても使えるため、いわゆる中世の騎士の存在意義を失わせ、市民社会を生み出したといわれる。これに対して、日本では、戦国時代でも鉄砲は足軽隊という低い身分が扱う武器として押さえ込んだ、また、農民には扱わせなかった。また、鉄砲や大砲が補助的な武器として位置づけられた段階で戦国時代が終わったので、武士支配を打ち破るだけでの影響はなかった。(p306)

 あっているかどうか、疑問もあるけど、世界の歴史と違っている点をうまく見つけてきて、議論するというスタンスと議論の内容の知的水準の高さはたいしたもんだと思う。


(参考文献)『贈与の歴史学』 、講談社学術文庫「日本の歴史シリーズ」第7巻、

『面と向かっては聞きにくいイスラム教徒への99の大疑問』を読んで、政治的な分析は?だが、イスラム教徒との接し方のマナーなどは有益。


 たまたま、キンドルで購入。

 後半の政治分析は、ISの勃興がアメリカの実は陰謀というような記述もあって、あまり信用できない。

 むしろ、イスラム教徒(著者自身も日本人だがイスラム教徒)の生活習慣や応対のタブーなどの部分が参考になる。近隣に一国では最大の人口のイスラム教徒を抱えるインドネシアがある日本としても、基礎的なマナーの理解は重要。

(1)日本の職場でよくやる、激励の意味を含んで男性の背中やおしりをポンとたたく行為は、イスラム教徒では、ホモの要求の行為と誤解されること。

(2)女性をほめるときに、スタイルがいいとか美人とか外見を褒めてはいけない。一番の褒め言葉は敬虔なイスラム教徒ということ。

(3)イスラム教徒のマナー、年長者より先には座らない、あまり大きな声で話さない、など、やや日本人とは異なる部分に要注意。

(4)イスラム教徒とユダヤ教徒、キリスト教徒の結婚の場合、ユダヤ教徒、キリスト教徒は建前上改宗を迫られない。仏教など多神教と考えられる宗教を信じている場合には、改宗しないと結婚できない。

 その他、抜き書き。(1)は個人的には?。

(1)裏腹なようだが、イスラム教は一方で慈悲と慈愛を説き、その一方では神の命令に背く者に対しては戦争も厭わない宗教なのである。367ジャスミン革命の火の手は即エジプトに広がり、ムバラク大統領が辞任。 両国に挟まれたリビアでも2011年 10 月にはカダフィ政権が崩壊した。 このシナリオはアメリカのもくろみ通りであったと考えられる。 アメリカがチュニジアに期待したのはあくまでも起爆剤としての役割であり、政権転覆のターゲットの本命はエジプトでありリビアだったはずだ。(位置No462)

(2)妻や恋人をほめたいのなら、「敬虔なイスラム教徒だね」、「やさしい女性だね」などと、あくまでも内面をほめること。間違っても、美人だ、スタイルがいいなどと、その外見に触れないほうが無難だ。(位置No511)

(3)豚肉やアルコールをはじめとした『ハラーム(禁忌)食』が話題になっているようだが、その他にも、タブーや注意すべきことは多い。「相手が勧めるまで座らない」「あまり大きな声で話さない」「年配者が相手なら、聞き役に徹する」「必要以上のケチはバカにされる」「ツバを吐かない」など、イスラム教徒と余計な摩擦を避けるために心がけておきたいことは各種ある。(位置No531)

(4)イスラム教徒の男性は、ユダヤ教、キリスト教といった『一神教(唯一の神を信仰する宗教の形態)』の女性が相手であれば結婚が許される。結婚した女性は、原則的には「イスラム教徒になることが望ましい」とされているだけで、改宗が強制されるものではない。ただ、生まれてくる子供に関しては父親方の権限が強いこともあり、必然的にイスラム教徒となる。 結婚した女性も、原則的にはユダヤ教やキリスト教徒のままでいいことになってはいるものの、夫がイスラム教徒、子供もイスラム教徒という環境下にあっては、現実には自分も改宗せざるを得ない。(位置No888)

(5)描かれている月はいずれも「満月」ではなく「三日月」である。これはイスラムの大切な儀式であるラマダーン(断食)の始まりと終わりを示す月の形だ。 お気づきのように、月は宗教的な見地から見ても大切な存在なのである。(位置No2316)



 

『ザ・会社改造』を読んで、組織や人事マネジメントよりも商社がどうビジネスを変えたかの点が最初に腑に落ちた。


 木下氏の推薦。三枝さんの本は以前、三冊一気に読んだ記憶がある。http://blog.livedoor.jp/shoji1217/archives/1010732666.html 

 この本も本来、老化した組織をどうトップが大胆に改革しているか、という観点から読むべきだし、そのヒントにあふれている。しかし、今の時点では、老化しているけど、収益などで厳密に個々の部署や職員の評価ができない公務員の組織について、どう改善をしたらいいかは、ぼんやりしていて、自分の頭の中で焦点があわず、ぼうっとした像だけ。

 引き続き、なんかいいアイディアがでそうな気がするので考え続ける。

 ちょっと、別の視点なのだが、商社ビジネスが一気に発展するためにとった戦略について、ちまたに言われているいろんな会社の展開について、腑に落ちた部分がある。

(1)まず、マザー工場をあえて会社を買収して商社、ミスミがもったこと。この背景には、もちろんきれいごととしては、生産現場の知識を商社マンがもつということもあるが、より現実的には、海外に進出する際に、協力企業という体制では、リスクをとって商社と一緒に東南アジアに進出してくれる企業が見つけられなかったこと、そして買収した生産部門ができてからは、中国よりリスクのたかい、インドネシアなどの東南アジアへの進出も成功できたこと。

 何でもアウトソーシングして短期的には身軽になっても、いざ海外展開などのリスクをとった投資ができるような部分は内製化しておく必要があるという切り口は理解しやすかった。

(2)ミスミのような機械部品の商社機能を海外に展開すると、日本の協力企業という形では、中国などでは簡単に技術が流出していて、近い将来、協力企業であった中国の生産現場が、日本に反転攻撃してくる基地になってしまう。これを防ぐために、中国への商社機能の進出にあわせて、協力企業の中国進出も行い、その用地確保から建築、設備整備までを商社側が負担したこと。

 製品の差別化が難しい商品については、技術流出を防ぐ手立てとセットで海外進出しているんだなと理解。

(3)会社の買収、そしてその生産現場の改善や本社ミスミの経営理念の導入というのを、年単位の余裕をもってじっくり三枝社長が取り込んでいること。これは、やや組織マネジメントに近いが、やはり、トップが陣頭指揮といっても、社内野党が増えていくと、逆に、生産性が落ち、トップが追い出されてしまう。トップの理念をいい人材を見つけてまずそこから始める、そして古い組織でのイノベーターをつぶさないようにトップが支援し、社内野党の人材をじっくり説得する、飲み会などに連れ出して自分が会社を実はつぶそうとしていることを気づかせる、という、時間をかけた対応をしていることも強く印象に残る。

 少なくとも、トップが1年、2年でどんどん代わる役所の人事システムでは、大胆な改革は、それだけで無理だなと思う。そもそも、三枝氏のように、コンサルタントとしての能力を持ちつつ、様々な事業再生を行ったような人材が役所には存在しないということもあるけど、多少能力が落ちても、じっくり取り組ませれば組織の改善はできる人材はごろごろいるような気がする。しかし、1,2年で成果をあげようとすれば、そういう、そこそこの人材でも、かえって中長期的には悪い方向の組織マネジメントや政策選択をする可能性が高いのではないか?

 やっぱり、なんか役所の組織マネジメントはおかしい。 

 以下、抜き書き。

(1)事業のシナジーが得られるのは、① 事業・商品に関連性がある、② 共通の技術を使っている、③ 市場・顧客が重なっている、④ 販売チャネルが重なっている、⑤ 既存のブランドイメージを利用できる、⑥ 競争相手が同じなので戦略上の連動効果がある、⑦ 勝ち戦に至る重要な競争要因が同じで、こちらはその戦いに慣れている、⑧ 必要とされる社内組織の強みが同じなのでそれを使える、などだ。(位置No575)

(2)だから、三枝は主張してきた。日本企業を元気にするポイントは、人減らしの発想ではなく、《いま、そこにいる人々》の目を輝かせる手法を追求することだと。(位置No992)

(3)1枚目、2枚目、3枚目 リーダー能力の切れ味は、「3枚セット」のシナリオをいかに的確かつ迅速に作るかにかかっている。《1枚目》は、複雑な状況の核心に迫る「現実直視、問題の本質、強烈な反省論」。《2枚目》は、《1枚目》で明らかにされた問題の根源を解決するための「改革シナリオ、戦略、計画、対策」。《3枚目》は、《2枚目》に基づく「アクションプラン」である。(位置No1077)

(4)全面戦争の回避 事業改革を目指す経営者は、社員を揺らすことになる改革の対象を絞る必要がある。組織不安定化の心理をむやみに社内に広げる「全面戦争」を仕掛けてはならない。それは、改革者にとって命取りになりかねない。ひとつの改革を成功させたうえで、その手法を水平展開するステップを踏んでいくのが常道である。(位置No1156)

(5)SPパーツでの改善会議は、天井が高い大きな食堂の片隅で行っていたのですが、あるとき三枝社長から「改善ミーティングはもっと狭い部屋でやったほうがいい。ぎゅうぎゅう詰めでいい。そのほうが熱気が出るぞ」と言われました。 実行してみたら、いままで冷めていた現場の人たちが熱く改善を語り出し、喧嘩まで始まる始末でした。《場の理論》というのがあるらしいです。(位置No3894 )

 これはすぐに使えそうな会議の方法論だね。 

『移動販売車がゆく』を読んで、長野県伊那地区の移動販売車の苦労と実態がわかる本。


 長野県伊那地区の運送会社泰成運輸が、運送事業の多角化と社会貢献的意欲の双方を擁立させようとしている移動販売車についての、ルポタージュ。

 ざくっとした記述が多いのだが、読んでいると参考になる記述もある。中身は自分で調べるためのメモ。

(1)移動販売車3トン車1750万円のうち、1500万円を経産省の補助、300万円を町の補助で購入。初期費用は軽減されたが、逆に、購入者からは町の事業と誤解され、無理な要求がよせられる誘因になった。(p58、73)

(2)水産加工物を扱うために、「水産加工物販売業」、鮮魚を扱うための「魚介類販売業」、「移動販売」の許可をとった。(p48)

 どれだけ細かい許可、あるねん?

(3)介護ヘルパーさんの車で高齢者を移動販売車までつれてきてはいけない。(p109)

 介護保険の規制?

(4)JAはファミリーマートと提携して両社が融合している店舗をだしている。しかし、ファミリーマートの移動販売車は苦戦している。(p133、181) 

(5)沖縄の住民が共同で出資、運営している「共同売店」は1980年代は200店、現在でも60店ほどある。(p207)

(6)行政が、運営に直接お金で支援しなくても、もっと環境整備をするとか、福祉など関連する支援策を充実させて移動販売車を側面から支援すべき。(p209)

 
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