革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

2016年12月

『再考・医療費適正化』を読んで、政策分析の模範となるやり方を示している、最後の理念の整理も適切。


 新聞の書評でみつけて購入。

 医療費増大に対する政策評価を慶応大学の社会科学系の先生方が分析している。

 医療のどの部分(地域とか年代など)の分析を紹介したうえで、それだけでは要因の分析が難しいことを指摘。

 その上で、都道府県別で時系列のパネルデータで、要因を重回帰分析を用いて解析。

 結果としては、p182にまとめてあるとおり、数ある医療費増要因のうちで最大かつ安定的なものは医師数。海外ではよく指摘されている所得や医療技術の向上は医療費増の主因ではない。また、社会の高齢化も主因ではない。
 政策的には、魔法の杖の政策はなく、医師数と病床数、平均在院日数(短縮化は増加要因)をコントロールするしかない。
 また、診療報酬の改定と医療保険制度の改革の効果は限定的。

 このあたりの分析については、専門家の評価を待ちたいが、統計的には説明できる結論となっている。

 しかし、医療政策は医療費抑制が目的ではないとして、理念を再構築している部分がわかりやすく面白い。(p212)

(1)憲法第13条前段の個人の尊重から「自律の原理」(個人の意思決定の尊重、意思確認、エンパワーメント)

(2)憲法第13条後段の生命権から、「生命保障の原理」(救命機会の最大化、無差別平等、国家責任、応能負担)

(3)憲法第13条後段の自由、幸福追求権、憲法第25条第2項の社会保障から、「自立医療」(自立機会優先、公私共同責任、要保障要素中心、自立意思、自助努力、社会参加・連帯の責任、環境適応」

 を理想的な理念。さらに実務的に機能するための理念として

(4)「機能合理性の要請」(目的追求の継続的検証、機会主義的行動の防止、資源最小化、モラルハザード防止)
 をあげている。

 特に、(2)の国家責任でおくべきものは生命にかかわるもの、公私共同責任のものは自由、幸福追求、社会保障(同項には公衆衛生もある)という区別は、防災・復興制度や都市計画制度の理念の分析にも活用できる気がする。

(1)の大前提の理念は、防災・復興や都市計画制度では、第13条第1項の個人の尊重に加え、第26条第1項の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を追加すべきだろう。

(4)の機能合理性はすべての政策に共通のものだろう。 

 なお、p109のコラム6で横断仮説の誤謬を指摘している。
 具体的には、都道府県別の一人あたり医療費と一人あたり病床数の散布図、相関関係から、病床数を削減して医療費を減らそうという議論について、横断仮説から縦断仮説、因果関係を導いており、誤謬だとしている。

 コンパクトシティを説明する都市計画のパンフでも、人口密度と、介護保険負担、都市財政指数、エネルギー使用量の相関関係の図から、人口密度を上げればこれこれの効果があるとの記述があるが、同様に誤謬を犯していると思う。

 因果関係を探るには、1)共変関係の確認(横断仮説)、2)原因が結果に対して時間的に先行していること(縦断仮説)、3)他の関連要因の統制が行われたうえでも共変関係が存在すること(競合仮説との対比)が必要である、とのこと。

 よくお互いに注意したい。 

『実験国家アメリカの履歴書』を読んで、アメリカの全体像をしるための教科書、でもアメリカはどこに行くのか?


 新聞の書評かなにかで見つけて購入。

 休日しかよめない、教科書シリーズ、その一。

 アメリカの政治経済文化の歴史的な概観がわかる本。

 時々トリビアもあるけど、アメリカの情報って知らず知らずに大量に頭に入っている。その点は先日読んだ北欧5国の本と全く違う。

 しかし、最終章の第16章で、著者は、まず、原爆投下の偽善的な積極評価と銃保持の正当化の理屈を事例にして、アメリカは、自分を相対的にみて評価できないことを指摘する。

 確かに、アメリカは自らを相対化することが苦手。さらに、時間的にも先住民族やマイノリティの問題について歴史的に客観的評価をするのが苦手な国だと思う。

 後者については、インディアンとの古戦場を国の史跡に指定する際に、インディアン側とバランスよく記述するケースが生まれてきて、カスター古戦場もリトル・ビックホーン古戦場に名前を変えたとのこと。(p238)

 前者の国際的にみて自分がまともかどうかを冷静に判断する思考方法を身につけてほしいが、トランプが大統領になる時代だと、まだまだ、先は長そう。アメリカがしっかりしてくれないと、世界の混乱を招くので本当にまともになってほしい。

 以下、トリビア。

(1) american jeremiad(アメリカの嘆き)
 17世紀から始まった米国の宣教者の訴え方で、「聖書の引用、現世の嘆き、でも将来は約束の地となる」、という三段論法。これは、根強くアメリカの演説などに使われていて、キング牧師のI have a dreamもこのロジックをつかっているという。(p25)

 レーガンの「丘の上のまち」の演説もこれだったのかな。なかなか、こういう悲惨さの指摘から、でも夢がある、と日本人だと議論を逆転しにくいし、聞いている方もしらけるだろうけど、これに盛り上がるアメリカ人の歴史的な感覚は意外と大事な視点かも。

(2)transcendentalism(超越主義)
 自然と一体化する、様々な外部からの制約や圧力を跳ね返して自分の精神を自然に向かって解放する考え方。エマソンなど。(p53)

 このtranscendentalismは結局自己信頼の思想で、日本人のように、最初から自然と一体的になっているとする発想とは実は大きく異なる感じがするが、どうかな?

(3)1957年の最高裁のドレッド・スコット判決
 奴隷は財産権、一度、自由州に戻っても奴隷州に再度戻れば持ち主のもの。さらに、北緯36度30分でそれより北部を自由州とするミズーリ協定自体も意見とする判決。(p72)
 この判決とリンカーンの大統領就任で南北戦争が始まった。 

(4)1880年代のアメリカ大企業(ロックフェラーやカーネギーなど)の反映の背景となった自由放任主義の経済思想の背景には、社会進化論があった。(p103)

(5)1954年のブラウン対教育委員会判決
 公立学校の人種分離を違憲とした。(p158)

(6)カトリーナの問題には、災害対策が民営化されていて十分に機能していなかったのが関係している。(p221)

 本当かな?

 以下、参考文献『アメリカの先住民を知るための62章』(明石書店)、『ティーパーティー運動の研究』(NTT出版)、『99%の反乱』(バジリコ) 

『限りなく完璧に近い人々』を読んで、北欧5国の課題も浮き彫りになるが、まず、長所を抑えることが大事。


 イギリス人のジャーナリストで奥さんはデンマーク人。

 イギリスの北欧礼賛ばかりでなく、北欧5国でもいろいろ課題やそれぞれの国相互に微妙な感情あることを、足でかせいて、いろんな人のインタビューをまとめた本。

 エッセイ風の本なので正確さは期待できないが、読みやすい本。

 まず、イギリスほど、北欧5国賛美をあまり聞かない日本で押さえておきたい、北欧5国(デンマーク、ノルウェー、アイスランド、フィンランド、スウェーデン)の長所。

 著者があげているのは、国民相互の強い信頼関係、社会の団結力、経済的な平等や男女の平等、合理主義や慎み深さ、バランスのとれた政治制度、経済制度。(p505)

 さらに、一般的に幸福度調査の結果が非常に高いが、その背景として著者は、社会的流動性(職業や場所の移動が可能か?)が高いことも上げている。(p506)

 これを抑えた上で、著者の皮肉の効いた各国民のコメントを理解することが大事。

(1)デンマークはヨーロッパの大国から最後はプロシアから領土をとられ、ヒットラーに占領されるという屈辱を味わっているので、デンマーク人は、うちにこもる、野心を持たない。(p39)
 幸福感は高いが、健康スコア(癌罹患率は世界最高、平均寿命やアルコール消費量は北欧4国で最低。(p55)教育の機会が地域よって差が大きい。(これは北欧5国共通、これによって都市化が加速されている。p83)
 公共サービスの質は必ずしも高くないが、デンマーク人は明確には高負担に不満を述べないし、頭脳流出が生じていることも認めない。(p108)

 なお、著者はあまりふれていないが、デンマークは極右政党が強く、最近は移民排除にうごいていることも重要なポイント。

 著者は奥さんがデンマーク人なのでデンマークの章がやたら長い。ここをなんとか読む終えるとあとは読みやすくなる。

(2)アイスランドは、なにはともあれ、リーマンショックの際の国家破綻、銀行破綻。背景には、同質性が高すぎて、自由で多様な報道機関がなく、政府にブレーキをかけられなかったことがある。(p189)
 民族的にはノルウェー人に近いが、驚愕の投機におぼれたのは、第二次世界大戦後のアメリカ空軍基地の駐留と、最大人口の3分の1程度の米軍人の駐留で、考え方がアメリカナイズされたことも考えられるとのこと。(p211)

(3)ノルウェーは石油を産出し、それを投資基金に積み立て、アイスランドのような投機におぼれず、着実に基金を増やしている。(p256)

(4)フィンランドは、処方薬のトップ3が抗精神病薬、インシュリン、別の抗精神病薬、まだ銃の保有率が米国、イエメンに次いで世界3位。(p294)
 ロシアへの敗北、冷戦時代のロシアとの親密な関係、スウェーデンをロシアから守ってやったというスウェーデンに対する複雑な感情。(p359)
 教育はPISA1位、特に、学校間の差がない。(p364)背景には、教師への待遇のよさとフィンランド人の教師への尊敬の念がある。(p365)

(5)スウェーデンは経済規模も人口規模でも北欧5国で一番。1990年代以降の経済危機も、政府サービスの民営化と改革は、学校の民営化など大胆に行った。(p390)そのため、製造業などでは北欧5国で突出して状況がよい。H&MやIKEAなど世界的企業の多い。SAABはつぶれたが。(p390)
 会社の経営に従業員の意見を聞くという慣例がある。逆に会社に活をいれるためにはデンマーク人を幹部に採用したりする。(p400)
 移民を多く受け入れてきて、マルメーのローゼンゴーデン地区など移民と低層スウェーデン人が集住する地区がある。過去、何度も暴動が起きている(p428)

 現時点では、社会主義国はほとんど消滅し、資本主義国でも新しいモデルとして北欧が語られる機会が多い。その福祉国家である北欧でもバブルにはじけたアイスランドもあれば、スウェーデンのようにサッチャーばりに民営化を進めている国もある。

 しかし、国民の幸せと将来に向けての安定的な政策を考える上で、政策は実験できないのだから、北欧5国を単純に理想化するのもいけないが、移民問題などに揺れる問題点だけをあげつらうのも問題。素直に現状分析を理解して、なんからの知恵が得られないかを考える必要がある。
 いろいろ、著者は皮肉交じりにコメントしているが、北欧5国の政策や経済システムが基本的に気に入っているし、そこに日本も学ぶ点があるように思う。

 

『ブッダはキリストと何が違うのか』を読んで、どっちにしても宗教の意義って薄れてきたよなと思う。


 常識を確認するための軽い本。

 ブッダとキリストの違い、仏教とキリスト教の違いを社会学者が議論した本。

 違いはわりと簡単。

(1)ブッダは最後まで人、キリストは一時的に人になったが、神。

(2)仏教は自分の力で悟りを開くことができるが、キリスト教は救われるかどうかは神が決める。
 
 それだと双方ともあまりに救いがないので、仏教でも浄土宗のような他力本願とか念仏という考え方がでてきたし、カトリックではローマ法王を頂点とする神父が神とのとりなしをしてくれる。

(3)地獄は双方ともあるが、仏教の地獄は最後は輪廻するので救われる可能性があるが、キリスト教の地獄は永遠。

 当たり前の話しだが、頭を整理しておくことは常識として必要。

 あとは、そもそも宗教ってなんで人類に生まれてきたのかを、最近の個人的な経験などを踏まえてざくっと考えてみた。

(1)人を多数死亡させる巨大な災害や原因がわからない伝染病に対する恐怖からくる、畏敬の念からくる側面

(2)粗暴な集団を統治するルールとしての側面

(3)人の生き死に、特に、死の穢れを払うという側面

 などがぱっと思いつく。

 しかし、(1)の側面は自然科学の発展で、特に迷信ぶかい人以外は宗教にたよらないこと、(2)の統治ルールも中世まではそうだが、それ以降は、国民国家、民主主義、社会主義など様々な統治システムが原則として宗教として分離して成立してきていて、まあ、それなりに宗教に頼らずともなんとか統治できる経験を積んだ来たこと。(3)の特に死への穢れの想いも、先日の父の葬式の際に坊さんが死は穢れではないと明言していて、塩はくばりませんといっているとおり、死への穢れという意識は、未だに存在するもの薄れつつあること。

 死の穢れの意識がなくなっても、肉親の死に対するケアとしての側面はまだ宗教にはあると思うが、より効果的なのは精神科の治療や臨床心理士のカウンセリングをうけることだろう。

 こんな風に考えていくと、宗教って、これからなんで人を惹きつけ続けるのかよくわからなくなってきた。
 でも、これだけ長い間継続してきたものがすぐになくなる訳はないから、何か、他の意味が宗教にはあるのかもしれない。

『そして、暮らしは共同体になる』を読んで、タイトルは秀逸、よこにゆるゆるつながって共同体で楽しむというのは大事な切り口。


 タイトルをみて購入。

 前半は食、後半は空間に関して、これまでの上、上という動き、高級品を目指す動きから、次に外、外への動き、体制に反抗して無理して反発する動き、そして、これからは横、横への動きになるという視点。

 横、横というのは、ゆるやかに仲間とつながっていくこと、そして、あまり原理主義にならずに、ゆるゆるとつながり、適当に収益事業もまぜて、持続的に、さらに、楽しく暮らしていく。そういう動きがこれから主流になるという。

 食のところは個人的には使ってみたいサービス(オイシックスなど)があるが、後半の空間のところは、すでに友人であるロイヤルアネックスの青木純さんの取り組みのほか、いくつか面白い取り組みがある。

 例えば、熊本の「三角エコビレッジ・サイハテ」(p235)、「コレクティブハウス聖蹟」(p219)、 「クラシコム」(p300)など。

 正直いって、もう少し、日本には、横に横につながりながら、空間をみんなで作っていく事例はたくさんあるのではないかなと思う。

 coなんとかという動き、shareなんとかという動きはみんなこれに当てはまるはず。

 地域の互助的なのコミュニティビジネスも収益をちゃんとあげて持続的ながら、みんなで楽しく、適当にゆるゆる仕事をしていく、といった観点は重要だと思う。

 そのような動きを阻害している理由を一つずつ解決していくことも重要。 例えば、米国で盛んなキッチンカーを規制している衛生関係の法制度も課題かもしれない。
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