著者は、京大の先生で、霊長類学者。

 霊長類を観察・分析して、人間社会の成り立ちを考えるという視点は説得的。(第4章)

 サルは、グループをつくり、個体相互に優劣関係がある。グループにはオスが数頭、メスもいて、交尾はいわば乱婚状態。

 ゴリラは、オス一頭とメス数頭と子どもからなり、個体相互に優劣がない。メスはオスとしか交尾しない。

 これについて、サルは社会関係だけあり、ゴリラは家族関係だけあると評価できるという。

 人間は、家族関係と社会関係相互をもっており、この意味でも中間。

 体重あたりの睾丸は、チンパンジーは0.27%、ゴリラは0.02%。これは、チンパンジーが乱交状態なので大きな睾丸で一回の射精で大量の精子を出せるように進化した結果。これに対して、ゴリラはオス一頭なので大量の精子をだして精子同士が競争する必要がなく、睾丸は小さいまま。(p101)

 人の睾丸はこの中間という。(p104)ここからも、人間はサルとゴリラの中間と評価できる。

 ちなみに兄弟や親子と交尾しないというインセスト・タブーは、サルもゴリラも存在する。

 著者は、人はもとはゴリラ型で家族関係しかなかったが、家族関係が崩壊しつつある現代は、サル化しつつあるという仮説を述べている。(第7章)これがこの本のタイトルとなっている。

 しかし、p17の図で示されているとおり、共通の先祖から、ゴリラが別れたのが900~1200万年前、チンパンジーが分かれたのが700から900万年前だとすると、ゴリラ、チンパンジーが社会・家族関係を形成したのは100万年単位の出来事。
 これに対して、人間の家族崩壊は、戦後70年程度の出来事なので、簡単に、サル化しているといえるかは疑問。普通に考えれば、人間の家族崩壊は、所得水準や経済水準の向上、就労就学水準の変化に伴い、核家族化が進んだという、比較的短期な環境条件の変化ととらえるのが普通ではないか。

 サル化までは極端だとしても、ゴリラが家族関係、平等な親子関係がある点など興味深い指摘多し。