革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

政治学

『はじめて学ぶ地方公務員法』を読んで、本来自治体の自主的判断で行うべき人事管理を国が統制する理屈はどこにあるのかな?

はじめて学ぶ地方公務員法
圓生 和之
学陽書房
2017-09-02

 ざくっと地方公務員法の勉強をしてみた。

 問題意識は、最近の公民連携事業などの民間と地方公務員が連携する機会が増えてきたのに、地方公務員法がその要請にマッチしていないのではないかということから。

 ざっと読んでみて、そもそも疑問に思った点。

 地方公共団体が自分の団体の職員を統制するのは本来自らが条例で行えばいいのであって、それを国の法律で統制する理屈はなんなのかという点。

 都市計画法などで議論する時、国の統制が必要な論点としては、
(1)国家的広域的観点
(2)全国で統一すべき必要最小限の観点
の2点がある。

 地方公務員法は地理的な概念はないので、国家的観点か必要最小限の観点。
 ちなみに、労働者としての最低限の観点は本来労働基準法で守られているとすれば、それと異なる点が法律で統制すべき必要最小限の観点なのか。

 その意味では、

ア 政治的行為の制限(第36条)
イ 争議行為の禁止(第37条)
ウ 職員団体(第52条)
エ 団体交渉(第55条)
オ 組合専従(第55条の2)
カ 職員団体活動による不利益取扱の禁止(第56条)
などは、労働者の権利と条例で抑圧してはいけないという観点から理解できる。

 公民連携事業で関係すると思われる条項は以下のとおり。

ア 職務専念義務(第35条)
イ 営利事業への従事等の制限(第38条)
 なお、p92で「農業協同組合等は法律上営利を目的とされていない限り」、営利事業の範囲を確定する「その他の団体」にあたらないという解釈が示されている。
 
 アは条例で特別の定めができ、イは任命権者の許可で適用除外ができ、その基準は人事委員会規則で定めることが「できる」と規定されているので、市町村長の判断と議会の理解があれば、公民連携関係で独自の対応も法律上可能である。その意味ではあまり深刻な問題ではない。

 なお、PFI法第79条で、地方公共団体職員派遣の特例として、地方公務員法第29条第2項の懲戒処分、第38条の2第2項の退職手当通算法人、地方公務員等共済組合法の第140条の公庫等職員に含まれる特例が規定されている。
 
 個別の規定についてよりチェックが必要だが、少なくとも、地方公務員等共済組合法の特例は、個々の地方公共団体の条例などで対応することが困難であり、これは法律上の措置が必要と考える。

 なお、「公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」で株式会社は対象にしておらず、一般社団法人、一般財団法人は対象になるという特例の作り方も、営利性では一般社団法人と株式会社が同率の法人税を図っていることを踏まえても、現実に合致していないとの疑問あり。

 事ほどさように、地方公務員法、地方公務員等共済組合法の規定には、地方公共団体の自主的な経営の観点から法律で細かく規定しすぎている、条例でもっと自由に定められてもいいのでは?との懸念を持つ。

『仮面の日米同盟』を読んで、在日米軍の日本防衛義務が新ガイドラインで薄められていることを知る。


 共同通信記者OBの本。

 新ガイドラインなどの英訳や米国側の公開された外交文書を直接あたっている点が貴重。
 
 重要な指摘として、日米安保条約についての行政間の運用指針である,2015年策定の新ガイドラインにおいて、従来のガイドラインよりも在日米軍の防衛義務の位置づけが薄くなっていること。

 具体的には、「Ⅳ.C.2.の日本に対する武力攻撃が発生した場合」

 「日本は日本の国民及び領域の防衛を引き続き主体的に実施し、日本に対する武力攻撃を早期に排除するため直ちに行動する。(略)米国は、日本と緊密に調整し、適切な支援を行う。米軍は、日本を防衛するため、自衛隊を支援し補完する。」(p24)

 このうち「主体的に実施する」は英語ではprimary responsibilityで第一義的な責任を持つということ、支援し補完するは、support and supplementで、通常の補完するという意味のcomplementよりも弱い単語が使われている。(p31)

 これは、1978年のガイドラインでは、自衛隊と米陸軍、自衛隊と米海軍が「共同して作戦を実施する」という規定に比べて米軍の位置づけが薄まっている。(p36)

 また、著者は、米政府機密文書で公開されているものから、「在日米軍はほとんどすべてが米軍の兵站の目的である」という記述のある文書を発見している。(p47)
 この文書を柳澤協二元内閣副長官補に見せたところ、「随分はっきり書いてある」と言ったものの別に驚かなかったということ。また、現場を知る自衛官も、在日米軍は守るための装備がなく、攻撃用の装備しかない」と指摘している。(p67)

 これらの指摘が事実だとすれば(事実である可能性が極めて高いように思う)、

第一に、この緊迫した国際情勢のなかで自衛隊が第一義的な責任をもって実施できるのかどうか、そのために適切な体制や装備が整っているのかどうか

第二に、本来沖縄を含めた基地の提供との相互関係で在日米軍は日本の防衛義務を負うのが日米安保条約の前提だが、仮に在日米軍が日本の防衛義務を負うことを避けようとしているのであれば、そもそもの基地負担の問題も再検討が必要なのではないか
 
 など、日本の外交防衛戦略に大きな見直しが必要になると考える。

 少なくとも、このような情報はより幅広く国民に提供する必要がある。また一市民としても、主体的に外交文書などの情報をえる努力が必要だと痛感する。

『生物に学ぶイノベーション』を読んで、個々の新技術も素晴らしいが、自然と調和し持続可能な方向に社会経済を変えることを一番生物から学ぶべきか?


 36億年という生物進化のなかで生物が生き残るためにもっている様々な側面を、今人類が活用しつつあることを紹介した本。
 
 第一章の「生物の形をまねる」では、有名なサメの皮膚構造をまねた水着の紹介がある。(位置No349)
  
 第二章の「生物の仕組みを利用する」では、日産自動車のロボットカーの衝突回避システムは、イワシが、隣に泳ぐさなかの動きを追いかける(追従)、視覚によって仲間に近づく(接近)、側線感覚で近づきすぎたときには離れる(反発)の三つのルールで群れを作るという原理から開発している。(位置No860)

 第三章の「生物がつくったものを活用する」では、うじ虫が体に損傷を受けたときに緊急に分泌される「5-S-GAD」という物質が乳がん、皮膚がんなどへの抗がん性をもつことを発見した。同様にカブトムシの幼虫からMARSに効く薬剤開発が大詰めを迎えているという。(位置No1134)

 一つ一つの今生き残っている生物が持つ機能を参考にしてイノベーションを見つけている事例はすばらしい。

 しかし、最も大事なことは、生物が現人類20万年よりもずっとずっと長い38億年で環境に調和し、持続可能(生き残るということは持続可能そのもの)な仕組みを構築してきたことを、謙虚に、人間が反省することだろう。

 原子力を始めとする自然科学の知識や理論、赤字国債や異次元の金融緩和などの経済金融政策など、この生物が培ってきた能力に比較して、持続可能なものか、自然や環境と調和したものか、を考えてみると、本当に恥ずかしい、情けない気持ちになる。

 生物のイノベーションに学ぶべき点は、まさに、この刹那的、短絡的な人間の行動そのものへの反省ではないか?
 
 以下、抜き書き。

(1)生存競争の中で生き残ってきた生物と、市場競争の中で勝ち残ってきた技術の間に、明らかな共通点があるということである。
  第一は、変えること、変わることの勇気を放棄したものは淘汰されるということ
  第二は、すなわち絶えず変化する状況に対し、変革・革新を行なってきたもののみが生き残るということ
  第三は、さらに、その変革・革新は、他者とのつながりや環境への配慮といったバランスマネジメントのうえに成り立っている必要があるということ(位置No12)

(2)生物学における進化とは、「突然変異によって供給される集団内の遺伝的変容」を意味する。そして、この遺伝的変容には、生物が生育する環境が大きく関わっている。つまり、環境に対してより適応度の高い個体の子孫が増える「自然選択」と、偶然生き残った個体の子孫が増える「遺伝的浮動」によって、生物の進化はもたらされる。(位置No249)

(3)また、こうした群れの行動はたった三つのルールだけで成り立っていることも、研究によって明らかになった。それは、隣を泳ぐ仲間の動きに反応して追いかける(追従)、視覚により仲間であることを確認して近づく(接近)、側線感覚で近づきすぎたことがわかると離れる(反発)という行動だ。それぞれの魚が、この三つを満たしてさえいれば群れの隊列は保たれるというわけである。(位置No864)

(4)生物に学ぶ科学観の本質は、すでに形になった知識の体系を網羅的に学ぶことではなく、自然界のどこに「私や社会や未来のための知恵の宝」が埋まっているかを嗅ぎ分け、自分の頭で考える「直感と論理に裏付けられた科学的思考力」を養うことにある。 そこにこそ、いま生物に学ぶことの大きな意義があるのではないかと、私は思うのである。(位置No1964)

『なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか』を読んで、コミュニケーション論のほかに、戦争と正義の議論が大事な点。


 著者は広告代理店などを経て、コミュニケーションのコンサルタント、東京外語大学でも教えている。

 コミュニケーション論、メディア論など前半部分の議論も重要だが、最後に整理している、戦争は「正」対「正」の議論だという指摘は重要。

 1991年から2002年まで続いたシエラレオネ内戦では、クリントン政権が斡旋した「ロメ合意」では、反政府勢力の合意前に行った犯罪行為をすべて許すとともに、反体制勢力の指導者を副大統領とする前代未聞のもの。
 著者はこれを、正義を犠牲にして平和を構築したと整理する。(p238)

 また、ルワンダ紛争では、国連PKO軍がいたにもかかわらず、内政不干渉という原則から介入ができず、わずか100日で約80万人が殺害された。これを踏まえて、国連では「保護する責任」という人権概念を作り出した。しかし、これはイラク戦争の際に米国がイラク国民を「保護する責任」があると正当化したように、大国の軍事介入の大義名分になる可能性もある。(p241)

 実際に戦争や戦闘が始まる際には、いわば「正」と「正」とが対立する場面が非常に多い。 
 これに対して、著者は以下のように言う。

 「(自分の立場を簡単に決めると都合の悪い情報が頭に入らなくなることから)「正」と「正」という正解のない問いに対して、できるだけ立場を決めずにぎりぎりまで考え続ける。そして正解がないというだしても最後はいずれは私たちは選択しなければならない」(p260)

 重要な視点だと思う。

 その他、コミュニケーション論などで貴重な情報。いずれも思い当たる節がたくさんある。最近の北朝鮮の報道とか。

(1)戦争のプロパガンダ10の法則」(p56)
・我々は戦争はしたくない
・しかし敵側が一方的に戦争を望んだ
・敵の指導者は悪魔のような人間だ
・我々は領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う
・我々も誤って犠牲をだすことがある、だが、敵はわざと残虐行為に及んでいる
・敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
・我々が受けた被害は小さく、敵に与えた被害は大きい
・芸術家や知識人も正義の戦いを支持している
・我々の大義は神聖なものである
・この正義に疑問を投げかけるものは裏切り者である

(2)ニュースの価値基準(ニュースとして選ぶ選択基準)(p100)
・新しさ
・タイミング
・著名性
・影響度
・異常性
・地理的接近性

(3)メディアの影響についての仮説(p137)
・自分で経験できないことほどメディアを信じてしまう(アジェンダセッティング仮説)
・自分の態度に合致する情報だけ選んで接触する(選択的接触仮説)
・自分の態度に合致しない情報を回避する(認知的不協和仮説)
・多数派の意見を持つ人はより意見を表面し、少数派の意見をもつ人はより沈黙する(沈黙のらせん階段仮説)

『在日米軍』を読んで、日本の国土と国民の安全につながっているかの判断をする前提として、一国民として知っておくべき情報満載。


 日米安保条約に対して厳しい立場の著者が、在日米軍について書いた本。

 条約、地位協定、ガイドラインなど外交官や防衛官僚の専門事項ではあるものの、一国民としてちゃんと最低限理解しなければいけない事柄。

 自分もそれほど日米安保条約やそれに基づく地位協定など詳しくないので、まず、とっかかりとして勉強。

 プロには常識だと思うし、なんとなくそう思っていたが、この本で確認された点。

(1)ゴルバチョフ・ブッシュイニシアティブの結果、空母を含むすべての艦船から核兵器が撤去されたこと。また、潜水艦に配備されていた核巡航トマホークミサイルもオバマ大統領によって2013年に退役したこと。(p180)

 著者は明確に述べていないが、長距離爆撃機によって核攻撃が可能になっていることから、扱いが難しい艦船や潜水艦に核兵器を配備する戦術的な必要性がなくなったということと理解できる。

(2)在日米軍は、安保条約による日本及び極東の安全の確保の目的が拡張され、主に太平洋軍、さらには米軍全体の世界戦略の一部として運用されていること。(p124)

(3)日本に太平洋軍で最大の人員規模の基地を置いているのは、主に、日本の財政支援が大きく、米軍にとって財政効率的であること。(p142)

 沖縄海兵隊などが、ブッシュ父の時に緊急に始まった湾岸戦争に参加していないことなどの背景として、著者は、海兵隊の訓練などの観点から沖縄が米国本土に比べ規模が極端に小さく、訓練度練度が低いことなどを指摘している。

 高速で地球上に部隊を展開できるといった技術進歩によって立地の束縛が小さくなっていることがわかる。

 なお、現状から基地の配備を変更する場合の対外的なメッセージなど心理的な側面もあることには注意が必要だと思う。

 日本の国土と国民の安全を守るために、米国との関係をどう考え、どう日米安保条約を運用したらいいのかを考える上、基本的かつ重要な情報が満載。
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