革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

自然科学

『ロボット それは人類の敵か、味方か』を読んで、ハード部分にまだ日本の優位性があると知る。期待していいのかな?


 和歌山大学のシステム工学の先生が書かれた本。

 ざくっというと、「ソフトウェアは日本は遅れているけど、オープンソースになっているのでそれほど不利ではない、ハードウェアはものづくりで培ったノウハウや技術があるので、日本はまだ優位性がある」ということ。

 それ自体は日本にとっては望ましいことながら、ものづくり、すりあわせ技術という日本の優位性のある部分にこだわって、電気自動車というすりあわせ技術があまり必要のない新しいトレンドに乗り遅れそうになっている日本の自動車メーカーのようにならなければいいなと思う。

 欧米や中国はすりあわせ技術が不得意だが、それをあまり使わない新しい、モノの動かし方が今後でてくる可能性もあるように思う。

 なるほどと思った点とあれっと思った点。

(1)日本のHALは、日本の介護現場での道具が医療器具に限定されていなかったため、厳しい認定をとらずに実践でつかえ、そのデータがヨーロッパで認証をとるのに役立ったということ(位置No1172)

 規制の厳しくない分野や場所で活用して、データを蓄積するというのは大事な発想になりそう。自動運転は道路交通法の適用のない大規模な公園内の通路で実験してみるとか。

(2)「人間ができない(空を飛んでの撮影など)、人間がしたくない(危険な作業、単純な作業、夜間な作業など)の分野の仕事をロボットに担当してもらうという流れは、このまま進んでいくでしょう。自分たちにはロボットはあまり関係ないな、と思っている業種こそ、その活用法いかんで思わぬチャンスにつながる可能性があります。」(位置No1818)

(3)以下の抜き書き(2)で例示しているように「国プロ」が一定の成果を上げているということ(位置No620)

 従来、国主導の技術開発は、多額の予算を使って失敗したもの、第五世代コンピューターから国策検索システムまで、累々とした失敗例が積み重なっているが、本当、ロボットの分野は成功したのだろうか。仮にそうだとしたら、なんでロボットだけ成功したのだろうか?

 以下、抜き書き。

(1)AIに関してはアメリカに大きく先を越された感があります。しかし、AIは誰もが無料で利用できるオープン化が世界の趨勢となっているため、話題のディープラーニングでさえ、私たちはわりと簡単に自分のロボットに取り入れることができます。ですから、AIでの遅れをそこまで悲観することはありません。一方、日本の技術力は素晴らしく、ロボットのハードウェアやロボットに使われる各種部品(要素部品)の性能は、世界のトップを走っています。ハードウェアというのは、AIのように簡単にコピーできる種類のものではありません。部品の組み合わせ方や使い方いかんによって、ロボットの性能は大きく左右されるからです。これはAIとは大きく違う部分です。この部分に強いのは、日本の強みです。(位置No79)

(2)極限作業用ロボットの研究・開発(図2―5)から、新しい技術の芽が出てきたことは、「国プロ」の一つの成果でした。まずあげられるのが、「ロボットの移動方式」に関する技術です。(位置No621)その他、このプロジェクトによって発展した基盤技術として重要なものは、「テレイグジスタンス(遠隔臨場感)」です。東京大学の舘暲名誉教授によって開発が進められました。これは、現在のバーチャルリアリティにつながる中核技術の中の一つといわれています。(位置No630)

(3)現在は、このような「単機能」という方向にもロボットの開発目的が広がってきています。さらに、もう一つ大きな特徴をあげるとすると、それは「タフ」であること。これらは特に2011年3月に起きた東日本大震災の反省から生まれたキーワードです。複雑すぎて使えない、環境に依存する、すぐに動かなくなるといった、今までのロボットの弱点を克服するために、目的を明確化した「単機能」で、「タフ」なロボットが注目を浴びるようになってきたのです。(位置No1005)

(4)日本で「HALⓇ」が医療機器として認められたのは2015年のことですから、医療機器としての実績は実はありませんでした。しかし「HALⓇ」はすでに、医療用ロボットとして介護施設などで活躍を始めていました。そのため事例やデータが豊富に積み上がっていたのです。日本では介護施設で使用する機器が「医療機器でなくてはならない」という制約がないため、医療用ロボットとして働くフィールドがあったことが幸いしました。ヨーロッパで医療機器としての認証を得る際には、この事例やデータが役に立ちました。(位置No1173)

『食事のせいで、死なないために(病気別編)』を読んで、菜食中心の食事で、加工食品を避けると健康に効果があるという具体のデータあり。


 著者はアメリカの医学博士で「ニュートリションファクツ」という栄養に関する非営利科学情報サイトの主宰者。

 説明は病気別に書かれているが、全体をまとめると

(1)肉、魚中心から、菜食中心の食事に変えること
(2)加工食品、ファーストフード、砂糖、塩を避けること
(3)健康に効果のある栄養素は自然のままとること、サプリメントには効果がないこと

 著者が、米国医療保険制度と製薬会社の圧力から、簡単な食事の内容を改善することで病状が改善することについても、無視しがちだし、米国の医師教育でも栄養学が軽視されていることを何度も指摘している。

 なんでもロビーイングで政策が決まる米国らしいが、様々な政治的が岩盤を自分の作ったネット上のサイトで突き崩そうとしている試みの一つがこの本。その意味で一定のバイアスが逆にかかっている可能性もあるので、その点は注意。

 なお、原典は医者らしくすべて参照文献で記載されているが、それに根拠のデータを譲っていて、本文中にグラフや表がほとんどないのが、若干読者からみて説得力に欠けるように思えて残念。

 例えば、位置No5357の食品別の腎臓への酸負荷の表とか、野菜を食べる比率が高いほど、糖尿病などの有病率が下がるデータ(位置No3589)のようなわかりやすい図表がもう少し多いと、より理解しやすくなる。

 以下、抜き書き。

 たくさん、抜き書きしたので、相対的に面白いのは、風邪ウィルスが馬起源という(10)、牛乳に健康へのマイナスの効果があるという(19)、人口甘味料の精神障害の影響(18)、魚の汚染物質の蓄積問題(20)か?

(1)こうして私は重大な問題に気づいた。科学以外の力が、医療に大きな影響をおよぼしているという深刻な事実に、はっきりと気づいたのだ。アメリカの診療報酬制度は、医師が処方した薬剤や実施した医療行為にもとづき、「質」ではなく「量」に応じて報酬が支払われる。医師が患者に対し、健康的な食生活のもたらす効果を説明・指導しても、診療報酬は支払われない。(位置No217)

(2)おおまかに言えば、「健康によい食物」と「病気になりやすい食物」の区別は、「植物性か、動物性か」というよりも、むしろ「未加工の植物性食品か、それ以外か」が境界線になる。(位置No449)

(3)若返り効果のあるこの酵素(テロミラーゼ)をどうすれば活性化できるのか、ということだ。 その答えを見つけるため、この分野の先駆的研究者であるディーン・オーニッシュ博士と、テロメラーゼの発見によって2009年ノーベル医学生理学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士が共同研究を行なうことになった。米国防総省の一部資金提供を受けたある研究では、未加工の植物性食品から栄養を摂る食事を3カ月間続け、運動などの健康的な生活習慣を実践した場合には、テロメラーゼが著しく活性化することがわかった。テロメラーゼの活性化が確認された介入実験は、これが初めてだった〔*67〕。(位置No554)

(4)当初、研究者たちは、(ファーストフードの食事を一回しただけで数時間以内に動脈が硬くなり、正常な弛緩機能が半減した)その原因は動物性脂肪や動物性タンパク質にあると考えていた。しかし最近では、「エンドトキシン」[内毒素。細菌の菌体そのものの成分である毒素で、菌が壊れたときなどに放出される。細菌が外部に分泌する外毒素(エキソトキシン)に対する]という細菌毒素が原因ではないかと考えられている。肉などの特定の食品は、生の状態でも、完全に火が通っていても、炎症を引き起こす細菌毒素のありかとなりやすい。エンドトキシンは調理温度や、胃酸や、消化酵素によって破壊されないため、動物性食品を食べたあとは、腸のなかにエンドトキシンが残ってしまう。それがやがて飽和脂肪によって運ばれ、腸壁を通過して血流に入り、動脈に炎症反応を引き起こす場合がある〔*44〕。(位置No1009)

(5)ほとんどの肺がんは喫煙が原因だが、発症者の約4分の1は非喫煙者だ〔*21〕。その原因のひとつは副流煙で、もうひとつの原因は、やはり発がん性のある煙──揚げ物によって生じる揮発性物質だ。 ラードなどの動物性脂肪であれ、植物油などの植物性脂肪であれ、油脂を揚げ物の温度まで熱すると、変異原性をもつ(遺伝子変異を発生させる)毒性の揮発性化学物質が、空気中に発散される〔*22〕。この現象は、温度が煙点に達する前から始まる〔*23〕。家で揚げ物をする場合は、キッチンに強力な換気システムを備えていれば、肺がんリスクの低減に役立つだろう〔*24〕。(位置No1290)

(6)デンプン質の食物、穀物、野菜、ナッツなどを多く摂る地域の若者たちは、喘鳴や、アレルギー性鼻炎結膜炎や、アレルギー性湿疹などの慢性症状が著しく少なかった〔*47〕。そして、毎日2品目以上の野菜を食べている子どもたちは、アレルギー性ぜんそくの罹患率が半分に低下することがわかった〔*48〕。さらに、植物由来の食物を多く摂る地域の人びとは、一般的にぜんそくや呼吸器症状が少ないことがわかった〔*49〕。(位置No1394)

(7)アルツハイマー病の予防ガイドラインでは、病気を悪化させる食べ物と軽減させる食べ物があるなかで、植物性食品中心の食生活を推奨している〔*104〕。たとえば、野菜、果物、豆類、ナッツ類をたくさん食べ、肉や乳製品をあまり摂らない「地中海ダイエット」は、認知低下の進行速度を遅らせ、アルツハイマー病のリスクを低減させることがわかっている〔*105〕。研究者たちが、地中海ダイエットのどんな点に病気の予防効果があるのかを調査したところ、野菜の摂取量が多く、不飽和脂肪よりも飽和脂肪の摂取量のほうが少ないことが重要な特徴だとわかった〔*106〕。(位置No1940)

(8)菜食中心の食事で疾病に対する保護効果が得られるのは、動物性食品を食べる量が減るからだけではない。抗酸化物質の豊富な植物性食品をおもに食べることで、食道がんのリスクは半減する〔*102〕。食道と胃のつなぎ目にできるがんの予防には、赤、オレンジ、緑黄色の葉野菜、ベリー類、りんご、柑橘類〔*103〕がもっとも効果的だが、未加工の植物性食品はすべて食物繊維を含んでいるため、効果がある。(位置No2475)

(9)一般的に、これまでに行なわれた大多数の研究では、塩漬け、漬物、燻製にされた食品や、魚の干物、加工肉、精製炭水化物[白米、白いパン、うどんなど]は、危険だと指摘している〔*144〕。日本におけるアルコール〔*145〕、コーヒー〔*146〕、緑茶〔*147〕の摂取効果については、結論が出ていない。(位置No2602)

(10)家畜化によって動物の疾病が爆発的に広まるまで、現代のヒト感染症のほとんどは確認されていなかった〔*6〕。たとえば、結核はヤギの家畜化によってもたらされたが〔*7〕、いまや人類の3分の1は感染する〔*8〕。また、はしか〔*9〕や天然痘〔*10〕は牛の牛痘ウイルスの変異によって生じたと考えられる。さらに豚の家畜化によって百日咳に、鶏の家畜化によって腸チフス、アヒルの家畜化によってインフルエンザに感染した〔*11〕。また、ハンセン病は水牛から、風邪ウイルスは馬から感染したと言われている〔*12〕。野生の馬が無理やり捕らえられ、馬勒を付けられるまでは、人間の顔にくしゃみを浴びせる機会などなかったはずだ。私たちがよくかかる風邪は、はるか大昔には、馬しかかからない病気だった。(位置No2796)

(11)ランダム化臨床試験によって、菜食中心の食事は、米国糖尿病協会が推奨する糖尿病食よりも、減量効果が優れていることが明らかになった。実験では食事量は制限せず、カロリーや炭水化物の量も計算しなかったにもかかわらず、そのような結果が出た〔*58〕。さらに同様のいくつかの研究のレビューによって、菜食中心の食事を摂った人たちは、動物性食品を多く含む食事を摂った人たちにくらべて体重が減っただけでなく、血糖値も改善し、心疾患のリスクも低減したことがわかった〔*59〕。菜食中心の食事には、実際にこれだけ多くのメリットがあるのだ。(位置No3681)

(12)アメリカの10代以下の子どもたちにとって、最大の塩分摂取源はピザだ〔*61〕。ピザ1切れ(ピザハットのソーセージピザ)で、1日の塩分摂取量の半分になる〔*62〕。50歳以上の成人の場合、最大の塩分摂取源はパンだが、20歳から50歳の成人の最大の塩分摂取源は、缶入りスープでもプレッツェルでもポテトチップスでもなく、鶏肉なのだ〔*63〕。(位置No4174)

(13)食生活の改善はきわめて大きな効果をもたらし、腎臓結石の予防に役立つだけでなく、薬や手術に頼らずに完治するケースもある。果物と野菜の摂取量を増やし、動物性タンパク質と塩分を控え、1日に最低10杯の水分を摂ることで、尿酸結石は完全に溶かすことが可能だ〔*65〕。(位置No5357)

(14)もっとも悪い種類のリンは、食品添加物のリン酸塩だ。リン化合物は着色料としてコーラにも使用されている〔*74〕(リン酸塩を加えなければ、コカ・コーラは真っ黒だ)〔*75〕。植物性食品のリンが血液中に吸収されるのは50パーセント以下〔*76〕、動物性食品のリンでは約75パーセントだが〔*77〕、食品添加物のリン酸はほぼ100パーセント血液中に吸収されてしまう〔*78〕。(位置No5359)

(15)りんごによるがんの予防効果は、りんごの果皮に含まれる抗酸化物質によるものと考えられている。それもそのはずで、果皮こそ外界に対する第一の防御層だからだ。果肉は空気に触れたらすぐに茶色く酸化してしまう。果皮の抗酸化力は、ゴールデンデリシャス種(黄色)で果肉の2倍、アイダレッド種(赤)で6倍にもなる〔*97〕。 ペトリ皿の実験によれば、りんごの抽出液には活性酸素やフリーラジカルによるDNAへの最初の攻撃に対する防御効果があるだけでなく、エストロゲン受容体陽性および陰性の乳がん細胞を抑制することがわかっている〔*98〕。(位置No5906)

(16)女性に特有の乳がんは世界でもっとも多いがんのひとつだが、アジアの女性たちは北米の女性たちにくらべて、乳がんの罹患率が5倍も低い〔*146〕。いったいなぜだろうか? ひとつの可能性としては、アジアの国々で日常的によく飲まれている緑茶の効果が考えられる。緑茶には乳がんのリスクを約30パーセントも低減させる効果があることがわかっている〔*147〕。もうひとつの大きな可能性としては、アジアの人びとが比較的よく食べている大豆の効果が挙げられる。(位置No6121)

(17)モノアミンオキシダーゼを安全に抑制できる方法はないのだろうか? じつは、りんごやベリー類、ぶどう、玉ねぎ、緑茶などの多くの植物性食品には、クローブ、オレガノ、シナモン、ナツメグなどのスパイス類と同様に、モノアミンオキシダーゼを自然に抑制する植物性栄養素が含まれている〔*30〕。そのため、菜食中心の人たちのうつ病の有病率が低いのは、理にかなっていると言える〔*31〕。(位置No6319)

(18)アスパルテームの神経学的影響をめぐる論争は、1980年代に始まった〔*51〕。当初、懸念されていたのは、精神疾患の既往症や持病のある人たちに限られていた。ケース・ウェスタン・リザーブ大学の初期の研究では、人工甘味料によってうつ病歴のある参加者たちに深刻な症状が現れたため、安全上の理由から途中で中止されたほどだ。研究の結論では、つぎのように述べている。「気分障害のある人びとは人工甘味料に対してとくに敏感なため、人工甘味料の使用は控えたほうがよい」〔*52〕(位置No6402)

(19)研究者たちは人びとの牛乳の摂取量と死亡率との関係を調べた。さらに、牛乳を飲む人たちを対象とした大規模な集団調査を行ない、骨折のリスクを調べた〔*27〕。その結果、女性の場合は1日当たりの牛乳摂取量が多いほど、骨折や股関節骨折のリスクが上昇するだけでなく、早期死亡、心臓病、がんのリスクが高くなることがわかった。1日3杯飲んでいる場合は、早期死亡のリスクが2倍近くも高くなっていた〔*28〕。いっぽう男性の場合は、1日当たりの牛乳摂取量が多いほど、やはり早期死亡のリスクが高くなるが、骨折率への影響は見られなかった〔*29〕。(位置No6662)

(20)では、これらの汚染物質は食料供給システムのどこで発見されるのだろうか? こんにちでは、DDTのほとんどは食肉、とくに魚に多く含まれている〔*19〕。海は人類の仕業で下水道と化し、なにもかもが最終的に海に流れ込んでいく。PCBの食事暴露についても、同じことが言える。PCBもすでに禁止された化学物質のひとつで、かつては電気機器の絶縁流体として広く使用されていた。 ある研究で18カ国の1万2000種類以上の食品と飼料を調査したところ、PCBの汚染度がもっとも高かったのは魚と魚油で、つぎに卵、乳製品、その他の肉と続いた。いっぽう、もっとも汚染度が低かったのは、食物連鎖のもっとも下に位置する植物性食品だった〔*20〕。(位置No7065)

(21)その結果は、パーキンソン病の患者たちを対象とする対照実験の結果とも一致していた。ニコチン含有量の多い野菜、とくにピーマンを食べると、パーキンソン病のリスクが有意に低下することがわかったのだ〔*58〕(このような効果が表れたのは、非喫煙者のみだった。タバコを吸うとニコチンを一度に大量に摂取してニコチン受容体が飽和するため、食事による効果は消されてしまう)。以前から、トマトやじゃがいもの摂取や、ナス科の野菜を多く摂る地中海ダイエットには、パーキンソン病の予防効果がわずかに見られることがわかっていたが、今回の研究結果はそれを裏付けることとなった〔*59〕。(位置No7199)

『デザインを科学する』を読んで、認知科学に基づく説明に納得力あり。


 名人芸的なデザインの作業について、認知科学に基づく実験結果から、ある程度、説明して見せた本。

 一定の納得力あり。分析のデータや論文をたどれる情報がないのがちょっと惜しい。

 以下、面白いと思った点。

(1)赤色の丸をみてから、同じものはどれかといって、黄色の丸と黄色の四角のどちらかを選ぶ設問では、黄色の丸を選んだ「形型」は男性55.2%、女性38.35、赤い四角を選んで「色型」は男性44.8%、女性61,7%と性差があること(36頁)。また、同一環境で生活する場合には、同一のケースの型であることが多い。
 「これは脳内の色と形に反応する発達度に関係があると思われる。生活をともにすると嗜好品が似るなどの現象が見られる。それにより、特定の色や形などを多く見て、反応する細胞がかたよって発達していると推測される。(37頁)

(2)四角を四つに区分して商品と値段を並べたチラシについて、何を最初にみるかの実験によれば、左上、右上、左下、右下というようにZ型に視野は移動する(44,45頁)

(3)「かわいい」というデザインは、平面デザイン画においては、
●形が整っている、または整った配列をしている
●図柄同士が重なってはいけない
●図柄の大きさはさほど関係がない
●特定の色よりも色の組み合わせが大事、色のトーンがそろうこと(118頁から122頁)

(4)色の好み
●男女の違い(男:青・緑・赤・黒・白の順、女性:ピンク・青・白・緑・赤の順)(150頁)
●地域別にみると、北海道・東北は「黒や青系の寒色系をこのむ傾向)、首都圏は「ほかの地方より緑が好まれる」、大阪地区は「金・銀などの特殊色の人気が高かった、暖色系の人気が若干高い」、沖縄・九州「赤など暖色系をより好む傾向にある」(161頁)

(5)心地より色の組み合わせ
 メインカラーは全体の70%、配色のサブカラーを25%、5%のアクセントカラーという70-25-5の組み合わせが心地よいと感じる(162頁)

 デザイナーの人には当然の常識かもしれないが、一応、アンケート調査などで科学的裏付けをとっているので、説得力もあり。

『アルゴリズム思考術』を読んで、最新の数学の知見とIOTの処理手法が、最適選択など生活に役立つ情報になることを知って、興味津々。


 この本でのアルゴリズムの意味とは、効率的で相対的に最適な答えをえるための手法を意味している。

 最近の数学やコンピューター処理の情報からの示唆は非常に興味深い。これは使えそうというものが多い。

(1)家探しとか秘書さがしのように一定数の候補がある場合には、その候補(時間で計っても対象数で図ってもいい)の37%まではただ見ていて、その後、これまで見たものよりよいもの、人を見つけたら契約、採用するのが最適停止基準。(位置No98)

(2)カジノのスロットマシーンを選ぶといった多腕バンディット問題の手法としては、「勝てばキープ、負ければスイッチ」という手法(位置No908)、ギティンズ指数(位置No1000に表が提示されている)が高いスロットマシーンで勝負する手法などあり。

(3)キャッシュを整理する理論と、野口悠紀雄のファイル管理は、最長未使用時間法という意味で共通。(位置No2483)

(4)巡回セールスマン問題など依然として現在数学で説けない問題があるが、セールスマンが同じ町を二度訪れて良いことときた道を引き返すときに費用を考えないというようにルールを緩めると、「最短全域木」という解が得られる。(位置No4375)

 このように解けない問題は条件を緩和して、少しでもましな答えをえることが大事。

(5)現在のネットワークの渋滞制限の中核は、加法的増加・情報的減少というアルゴリズム。増やすときには、足し算でそろそろ増やし、パケット応答が返ってこなければ(渋滞すれば)、一気に半分に減らすという手法。

 これもなんとなく常識に会っているし、何かに使えそう。

 以下、抜き書き。今回は量多し。

(1)最良の物件に入居できる可能性を最大にしたければ、部屋探しに充てる時間の三七パーセント(一カ月かけるつもりなら最初の一一日間)までは結論を出さずにただ物件を見て回る。小切手帳は家に置いておき、判断基準を定めることに専念する。しかし三七パーセント以降は、それまでに見たどの物件よりもよい部屋に出会ったらすぐさま保証金を払って契約するのだ。これは「見る」と「跳ぶ」を直感的に満足のいく形で折りあわせた答えであるばかりでなく、最適であることが証明可能な解となる。 そう言えるのは、部屋探しは数学で「最適停止」問題と呼ばれるタイプの問題だからだ。先ほどの三七パーセントルールは、この種の問題を解くための一連の単純な手順(コンピューター科学者は「アルゴリズム」と呼ぶ)を規定している。(位置No98)

(2)逃げきれる確率を捕まる確率で割った数にほぼ等しい回数に達したら、足を洗うべきである。腕利きの泥棒がいつも九〇パーセントの確率で逃げおおせる(逆にすべてを失う確率が一〇パーセント)とすれば、九〇一〇で九回やったところでやめるのだ。成功する確率が半々しかない下手な素人の場合はどうか。初めてのときにはどうせ失うものなどないが、そのまま調子に乗るのはやめたほうがいい。(位置No662)

(3)ギッティンズは(《ディール・オア・ノー・ディール》の放送開始より何年も前のことだが)、多腕バンディット問題がこれと変わらないことに気づいた(20)。事前に情報がまったく、あるいはほとんど得られないどんなスロットマシンにも、次にもう一度プレイした場合に勝つ確率がこのくらいならもうプレイをやめてよいと思える、そんな率が存在する。この率(ギッティンズは「動的配分指数」と呼んだが、今ではギッティンズ指数と呼ばれている)から、ここでとるべき明白な戦略がわかる。この指数が最も高いマシンで常にプレイするのだ(*)。(位置No979)

(4)「不確実性に立ち向かう楽観主義(33)」と称される原理を実装することで、信頼上限アルゴリズムは楽観主義とは完璧に合理的なものだということを示す。今までに得られた証拠をもとに、ある選択肢が最良の場合どのくらいよいものとなりえるかに着目することにより、このアルゴリズムは情報の少ないさまざまな選択肢を底上げする。その結果、意思決定プロセスに探索の要素がおのずと加わり、どの選択肢も大成功をもたらす可能性をもつことから、新たな選択肢に対して積極的に向かっていくようになる。同じ原理を、未知なる領域の価値を高めることによって周囲の空間を探索する「楽観ロボット(34)」の製作にあたる、MITのレスリー・ケルブリングらも用いている。(位置No1118)

(5)一九六九年、ニューヨーク州立大学の生物統計学者のマーヴィン・ゼレン(訳注 のちにハーヴァード大学に移った。故人)は「適応的」な臨床試験の実施を提案した(48)。彼の出したアイディアの一つが、ランダム化した「勝ち残り」のアルゴリズムだった。「勝てばキープ、負ければスイッチ」のバリエーションで、ある治療法が成功すれば次にそれが使われる確率を上げ、失敗したら使われる確率を下げていくというやり方である。(位置No1236)

(6)もっと一般的に言えば、合理性に関するわれわれの直感は、探索ではなく活用によって情報を得ていることがとても多い。意思決定について語る場合には、一つの決定から生じる直接的な報酬だけに目を向けるのがふつうだ。決定を下すときにいつもそれが最後の決定であるかのように考えるなら、確かに活用だけが意味をなす。しかし一生のあいだにはたくさんの決定を下すはずだ。それらの決定に関して、とりわけ人生の序盤には、探索─ ─ 最良のものよりも新しいもの、安全なものよりおもしろいもの、熟慮されたものよりもランダムなもの─ ─ を重視するほうがじつは合理的ではないか。(位置No1412)

(7)ベラーディが突き止めたのは、ランダムエビクション、先入れ先出し法、そして最長未使用時間法のバリエーションをさまざまなシナリオのもとで比較した結果、最長未使用時間法なら一貫して千里眼に最も近い結果が出せる、ということだった(18)。(位置No2272)

(8)最大納期遅れ時間を最短にしたいなら、納期が最も近い作業から着手して、それから納期が遅いものへと順番に処理していくのが最良の戦略となる(12)。この戦略は最早納期優先と呼ばれ、じつにもっともだと思われる(たとえばサービス業では実質的に、来店する客の「納期」は客が店に足を踏み入れた瞬間であり、店側は入店した順番に従って客に対応することになる)。しかし、この戦略には思いがけない側面がある。たとえば、各作業が完了するまでにかかる時間はまったくどうでもいい。計画には影響しないので、知る必要さえない。大事なのは納期だけだ。(位置No2745)

(9)合計所要時間の最小化から、処理時間順というごく単純な最適アルゴリズムが導き出される。これは、常に可能な限り最短で終わる仕事を先にせよというものである(14)。(備考)位置No2787)

(10)くじについて事前の情報がまったくない場合、一回めで当たりが出たら、くじ全体で当たりの割合はちょうど三分の二だと期待すべきである、と彼は示した。くじを三枚買ってすべて当たりだったら、期待される当たりの割合はちょうど五分の四となる。試行回で当たりが枚だったとすると、期待される割合はシンプルに「当たりの枚数+1」を「試行回数+2」で割った(+1)/(+2)となる。 驚くほど簡単に確率が推定できるこの方法をラプラスの法則と呼び、過去の結果にもとづいて事象の起きる確率を評価する必要のあるどんな状況でもこれは容易に適用できる。(位置No3387)

(11)世の中にはひたすら不変なものもある。その種の現象を研究したデンマークの数学者、アグナー・クラルプ・アーランは、互いに独立な事象の生じる間隔の分布を公式化して、アーラン分布と呼ばれる関数をつくった(35)。この曲線の形状は正規分布ともベキ分布(訳注 ロングテールやファットテールと呼ばれる。図6参照)とも異なり、鳥の翼のような形をしている。上昇してなだらかな山を描いたあと、尾はベキ分布よりも急激だが正規分布よりはゆるやかに下降するのだ。二〇世紀の初めにコペンハーゲン電話会社で働いていたアーランは、この分布を利用して電話ネットワークで通話と通話のあいだに予想される空き時間をモデル化した。それ以来、アーラン分布は都市計画者や建築設計者が自動車や歩行者の通行をモデル化したり、ネットワーク技術者がインターネット用のインフラを設計したりするのにも利用されている。(位置No3611)

(12)競合する複数のモデルから一つを選ぶ方法として、「オッカムの剃刀」という原則がある。これは、すべての条件が対等なら、考えうる限り最も単純な仮説がおそらく正しいとする教えである。もちろんすべてが完璧に等しいということはめったにないので、数学的な文脈でオッカムの剃刀のような原則をどう適用すべきかはなかなか容易にはわからない。ロシアの数学者のアンドレイ・チホノフは一九六〇年代にこの問題に取り組み、一つの答えを提唱した。より複雑な解を不利にする項、すなわちペナルティーを計算に加えるという方法だ(22)。複雑さに対するペナルティーを導入したら、複雑なモデルはその複雑さの正当性を明らかにするために、データを説明する際に単によりよい仕事をするのではなく著しくよい仕事をすることが必要となる。コンピューター科学者は、モデルの複雑さにペナルティーを与えるというこの方針を正則化と呼ぶ。(位置No4049)

(13)一方、既存の材料を利用するしかないことから、有益な制約とでも呼ぶべきものが課される。生体構造に急激な変化が起こりにくいので、オーバーフィッティングも起こりにくくなるのだ。一つの種において、過去の歴史による制約は既知の現在に対して完璧に適応する妨げになるが、未知の未来に対する頑健性を保持する助けにもなる。(位置No4167)

(14)問題を緩和する方法はいろいろあり、そのなかで特に重要な三つについてはすでに見てきた。一つめの「制約緩和」では、制約の一部を完全に取り除き、ゆるくした問題で前進したうえで本来の問題に戻る。二つめの「連続緩和」では、離散選択または二値選択を連続選択に変える。アイスティーとレモネードのどちらを注文するか決める場合、まずは両者が半々に混ざった「アーノルド・パーマー」ブレンド(訳注 プロゴルファーのアーノルド・パーマーがゴルフ場でこの飲み物をよくオーダーしていたことからこう呼ばれる)を想像し、それから望みの配合にもっていく。三つめの「ラグランジュ緩和」は、不可能な事柄をただのペナルティーに変えて、ルールをブレンドする(またはルールを破ってその結果を受け入れる)方法を教えてくれる。(位置No4549)

(15)メトロポリスは、徹底的な確率計算の代わりに単純なシミュレーションを用いるというこの方法をモンテカルロ法と名づけた。同じように偶然の気まぐれに頼る場であるモナコのカジノ・デ・モンテカルロにちなんだ命名である(8)。ロスアラモスのチームはこの方法を使って、核物理学の主要な問題をいくつか解くことができた。現在では、モンテカルロ法は科学計算を支える礎石の一つとなっている。(位置No4661)

(16)突破口は、連続して失敗したあとの平均待機時間を延ばすという手だった。具体的には、再送信を試みるまでの最長待機時間を二倍にしていくのだ。最初に失敗したら、発信者はランダムに一回か二回待ってから再送信する。二度めも失敗したら、一回から四回までのいずれかだけ待ってから再試行する。三回続けて失敗したら、今度は一回から八回のあいだのいずれかだけ待つ。このエレガントなやり方では、ネットワークは競合する信号がいくつになっても対応できる可能性がある。最大待機回数(二回、四回、八回、一六回……)が指数的に増えていくので、この方法は指数バックオフと呼ばれるようになった。(位置No5431)

(17)現在TCPの渋滞制御の中核に位置するのは、加法的増加・乗法的減少というアルゴリズムである。まずはこのアルゴリズムを作動させずに、新たな接続が積極的に伝送速度を上げる(31)。一つめのパケットがうまく受信されたらパケットをさらに二つ伝送し、これもうまく届いたら今度は一度に四つ伝送する、といった具合に送るパケットを増やしていく。しかしいずれかのパケットの確認応答が発進者側に戻ってこなければ、ただちに加法的増加・乗法的減少アルゴリズムがあとを引き継ぐ。このアルゴリズムのもとでは、一度に複数のパケットを伝送してそれがすべて受信されたとしても、伝送するパケットの個数を二倍にするのではなく、一つだけ増やす。パケットが行方不明になったら、伝送速度を半分に下げる(加法的増加・乗法的減少という名称はこれらの手順に由来する)。(位置No5518)

(18)ゲーム理論において大きな影響をもたらした成果の一つとして、数学者のジョン・ナッシュは一九五一年に、プレイヤーが二人のゲームでは均衡が少なくとも一つは必ず存在するということを証明した(12)。彼はのちにこの重大な発見によって、一九九四年のノーベル経済学賞を受賞することになる(そしてナッシュの生涯を描いた本と映画『ビューティフル・マインド』が発表されるに至る)。今では、このような均衡はしばしば「ナッシュ均衡」と呼ばれる。この「ナッシュ」こそ、ダン・スミスが常に把握しようとしているものだ。(位置No5935)

『日本人の9割が知らない遺伝の真実』を読んで、タイトルはやや扇動的だが、中身がまじめな研究者が書いた本。

日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)
安藤 寿康
SBクリエイティブ
2016-12-05

 著者は慶應大学の教育学の先生。

 著者は教育学を学び始めたときには遺伝の影響などほとんどないと考えて研究生活を始めたが、最近の生命科学の研究成果を踏まえると、相当程度の遺伝の影響は否定しえないと自分の意見を変えた。

 その上で、適切な教育の方法論などを論じている。

 自分なりに、重要な情報と思った点。

 第一は、一卵性双生児と二卵性双生児との比較実験の結果から、相対的なものだが、遺伝の影響が高いものは、音楽、数学、スポーツであること。なお、詳細なデータは位置No695で棒グラフで示されている。

 これらの違いを踏まえて、教育環境を考えるのは大事だと思う。

 高校時代の個人的な経験からいうと、自分は、数学は得意だったので、授業はつまらなかったし、スポーツは苦手でまったく授業についていけなかった。このような遺伝的な特質があるのであれば、一定の分野は能力別のクラス分けが有効なように思う。

 この能力別クラス分けの有効性は『善意だけで貧困はなくせるか?』http://blog.livedoor.jp/shoji1217/archives/1068718166.htmlでもランダム化試験の結果が紹介されていた。

 第二は、遺伝的な特質と環境から得られた特質のうち、年齢とともに前者の発現割合が強くなってくること。

 これは、なんとなく中年の自分にとっては、いいことか悪いことかよくわからないが、まあ、なんとなくやっていて楽しいこととか、子どものころに得意だったことに集中した方が、これからの人生楽しいかもしれないなと思う。

 なお、著者があとがきで書いてあるように、橘玲『言ってはいけない』の露悪的な部分を消して、より学術的なフォローを丁寧にした本という側面もある。

 以下、抜き書き。

(1)論理性に優れた人は数学的な能力にも優れているなど、知能は一元的にまとまる傾向が高いというのが一般知能理論ですが、「頭頂部と前頭葉の連携性」のように、脳の異なる部位のネットワークこそが知能の本質であるとすれば、それも納得がいきます。一般知能の存在を科学的に支持する結果といえるでしょう。 ただし、それ以外にも言語野や角回の灰白質の厚さとIQとの間に相関があるという報告もあります。それどころか、脳全体の容量とIQとも相関するといいます。この関連は決して大きいものではありませんが、やはり脳全体が知能にかかわりがあることを示す証拠かもしれません。(位置No532)

(2)自分にはこれができる、これが好きだ、逆にこれは向いていないからやめておけ。そうした内側から沸き上がってくる感覚というのは、自分が生まれ持っている遺伝をもとに、環境が出会ったときに生じるのだと私は考えています。そういう内なる感覚に導かれて、人は何かに専念し、そこにリソースを集中的に投入することで才能が発現していくのではないでしょうか。(位置No1046)

(3)人間は年齢を重ねてさまざまな環境にさらされるうちに、遺伝的な素質が引き出されて、本来の自分自身になっていくようすが行動遺伝学からは示唆されます。(位置No1195)

(4)学歴や大学のレベルは、実質的にどんな教育を受けたかの指標ではなく、どの程度の能力を持っているかの指標(シグナル)にすぎないというシグナリング理論が成り立つわけです。(位置No1649)

(5)素質を高められる環境を探求し、適応し、生存する。そして旅をしながら私たちは、「本当の自分」になっていくのです。「かわいい子には旅をさせよ」といいますが、それは大人も同じ。私たちはみな死ぬまで旅をし続けるのです。(位置No2263)

ギャラリー
記事検索
  • ライブドアブログ