革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

自然科学

『シグナル&ノイズ』を読んで、気象予測と地震予測の部分に見るべきものあり。


 実は以前、キンドルでこの本を読んでいる。http://blog.livedoor.jp/shoji1217/archives/1060323130.html

 本の置き場の問題とか考えると、紙の本よりも、キンドルは優れているのだが、今回、紙の本を読んでみて、だいぶ、印象が残る部分が違っている。
 
 キンドルだと、一つは図表と文章を一体的に読みにくいので、図表のデータが頭に入りにくいこと、別々の章を行ったり来たりしながら読むことができないので、関連が理解しにくいことが弱点としてあるように思う。

 今回、インパクトがあった点。

(1)p59の図表2-2 予測の上手なキツネは「総合的、柔軟、自己批判的、複雑さを受け入れる、用心深い、経験的」、予測の下手なハリネズミは、「専門的、硬直的、頑固、秩序を求める、自信がある、イデオロギー的」。

(2)米国の国立気象台と民間の気象会社の予測を評価したところ、降雨量予測はアキュウェザー、気温予測はウェザーチャネル、全体的には政府の予測がよかった。ただし、長期予測になればなるほど、当たらなくなる。最高気温でみた場合、図表4-6のとおり、9日前になると、単純な平均気温の方が誤差が少なくなってしまう。(p145)

(3)アメリカ地質調査所では緯度経度を入れると長期的な地震確率がでるアプリケーションがある。この予測値は、グーテンベルグ・リヒターの法則(地震の規模と頻度はべき乗則に従う)に基づいている。(p166)

(4)ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハチウスがいうとおり、経済予測には3つの難問、一つは経済統計だけから因果関係を見つけるのは困難なこと、二つ目は、経済は常に動いているので、ある景気循環では有効な経済行為の説明が、別の景気循環でも使えるとか限らないこと、そして最後は、エコノミストが使用するデータがそれほど有用なものではないということである。(p202)

『依存症ビジネス』を読んで、学問的な記述ではないが、依存症ビジネスが、薬、アルコールから菓子、ゲームまで拡大していることはわかる。

依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実
デイミアン・トンプソン
ダイヤモンド社
2014-10-10

 イギリスのジャーナリストが書いた本。

 昨日の『ストレスの脳科学』http://blog.livedoor.jp/shoji1217/archives/1068416896.htmlと異なり、科学的な分析本ではない。

 ただし、「依存症」addictionという概念が、欧米でどこまで広がっているかが、よくわかる。

 当然、麻薬、アルコールのほか、バイコディンというハイになる鎮痛剤や向精神薬などは日本でもよく耳にする。

 この本では、それ以外に、スイーツ(第5章)、ゲーム(第8章)なども依存症の範囲に含めている。

 もちろん、薬の管理が日本ほど厳密でない米国での注意欠陥多動性障害のためのアデロール、リタリンなども紹介されている。(第7章)

 著者自身がアルコール中毒に苦しみ、ようやく禁酒して20年間たっているとのことで、依存症に対する説得性が増している感じはする。ただし、あまりデータに裏付けられていないので、その点は要注意。

 著者の主張は、ややわかりにくいが、たぶん、依存症は習慣による要素が強く、そして環境に影響されやすいということ。

 例えば、ベトナム戦争時に、メコンデルタにいた米軍兵士の15から20%はヘロインを摂取していたが、帰還後にヘロイン摂取をしていた依存症の帰還兵のうちヘロインを摂取し続けていたのは12%にすぎなかったこと(p75)
 これは、戦争中という心理条件と簡単に入手できるという社会環境がなるなると、自然とヘロインを摂取しなくなったことを示している。もともと、戦争の強い心理的圧迫のなかったタイ駐留の米軍ではヘロイン中毒は1%に満たなかったとのこと(p78)

 個人的な感想としては、砂糖満載の菓子とかゲームとか、別に健康に悪いとあまり思わないものに対しても、依存症として位置づけられる側面もあることから、自制を効かせ、注意が必要ということに留意しようと思う。

『ストレスの脳科学』を読んで、ネズミだからできる実験結果は、ヒトにとっても説得的。


 久留米大学の薬理学の先生で、今は退官され名誉教授。

 ストレス関係の本や脳科学の本は、客観的なデータの裏付けが怪しいものが多いが、この本は久留米大学で自らがネズミをつかって一定のストレス(電気ショックとか動けなくするとか)によって、脳内のノンアドレナリンの分泌状態や副腎皮質ホルモンを具体的に計測しており、説得力あり。

 特に自分が参考になった点。

(1)ネズミを2ヶ月と15ヶ月の月齢に分けて、ストレスをあたえば場合、最初の脳内の変化は年齢に差がないこと、しかし、ストレスの回復が高齢ネズミは遅く、若いネズミが6時間で完全に脳内の状態が元に戻るのに対して、高齢ネズミは24時間たってもまだストレスが負荷されたのと同じ状態であること(p127)
 さらに、反復ストレスに高齢ネズミは弱く、特に、反復ストレス7日目には、副腎皮質が完全にギブアップしてしまったこと。これは免疫機能もほとんど働かなくなっている可能性もあること(p136)

(2)普通のゲージと回転かごつきで、分け、さらに、餌を自由に食べることができる場合と、一日1時間に限定した場合では、回転かごつきで1時間限定のケースで、活動性ストレス状態となり、一日20kmも回転かごを回し、胃潰瘍が発生し、五日間で半分のネズミが死亡したこと。いわばネズミの過労死のような状態が発生したこと。(p99)

(3)ストレスを与えられたネズミ(この場合は動けなくする)でも、箸をかんで怒りを表出できた場合には、ノンアドレナリンの分泌状態、副腎皮質ホルモンの増化も、箸をかめなかったネズミよりは相対的に落ち着いており、胃潰瘍の数、長さとも少なかったこと(p172)

(4)活動期(ネズミは夜、ヒトは昼間)のストレスは反応も大きいが、回復も早いこと。(p163)

 きちんとデータで実証した点が優れていると思う。
  
 特に加齢とストレスを分析した(1)の結果は、よく自戒したいと思う。

『地震予知はウソだらけ』を読んで、地震の発生確率の議論は自分には腑に落ちた。


 元国立極地研究所所長が書いた本。

 著者がp376で自ら書いているように、上記の職の前の北海道大学の職で行った外国との共同研究で北海道大学から訴えられ有罪となっているなど、いろいろ、大学や学界では紛争があった模様。
 
 自分は著者に関係する個別の情報は一切しらないが、著者の論理は明解だと思う。

 地震予知の議論はよくされているし、一度、コメントしたことがあるhttp://blog.livedoor.jp/shoji1217/archives/1067985343.htmlので、あえてとりあげない。

 その後、地震調査研究推進本部が中心の仕事として行っている地震発生確率に関するコメントが重要だと思う。

(1)活断層がトレンチ調査で1000年に一回程度発生している仮定すると、今後の予測はプラスマイナス100年、10万年に一回程度と仮定すると、プラスマイナス1000年となってしまい、実は長期的予知の観点からはあまりに曖昧であること(p160)

(2)そもそもの活断層調査がわかっている2000のうちの都市部に近く地震が起きたときに影響が大きいと見られる100について確率を調べている。しかし、この2000の全部を調べたとしても、それ以外に見つかっていない活断層は多数あるはず。日本のほとんどの都市部では柔らかい泥や火山灰がかぶっており、活断層を発見することができない。そういうところを活断層はないと考えざるを得ないため。(p163)

(3)実際にも最近の大地震はマークされている活断層でないところに起きている。例えば、2000年の鳥取県西部地震、2004年の新潟県中越地震、2005年の福岡県西方沖地震、首都圏直下地震、2007年の能登半島地震、新潟県中越沖地震、2008年の岩手・宮城内陸地震、どれもそうなのだ。(p164)

(4)阪神・淡路大震災が起きる前の野島断層の30年内発生確率は0.4~8%に過ぎなかった。(p168)

(5)海溝型地震の発生確率も、もともと曖昧なデータから、経験的、物理学に裏打ちされていない数式を使って計算するので、ちょっとした仮定の違いによって、結果は大幅に違ってしまう。逆にいえば、いかようにも結果の数字は出せるようになる。(p171)

 以上のようなことは、よく大学の先生から口頭で聞くのだが、文章でちゃんと指摘している本に始めて出会った。

 地震の発生確率は極めて不確実で幅のある数字であることを前提にして、施策なり具体の施設計画や土地利用計画を立てる必要がある。

 そういう前提としての事実を地震学者はもっと正直に広く、国民や関係者に発信すべきと考える。

『スパイス、爆薬、医薬品』を読んで、最近一見地味な化学に人類の健康は守られていることを知る。


 世田谷図書館で借りてきた。

 最新の自然科学は分子生物学や量子力学、宇宙物理学などと最近は考えられているが、第二次世界大戦ころまでの化学が最先端。

 例えば、「気体が生成して、続いて反応熱により急激に膨張すること=爆発力」という観点から、NO2、ニトロ基を三つもつニトログリセリンの反応を、安定化させるためにノーベルが、ニトログリセリンと珪藻土をまぜたダイナマイトを発明した話し。(p97)
 
 反応式は、4C3H5N3O90→6N2+12CO2+10H2O+02

  殺菌剤にも使うフェノールとホルムアルデヒドを温度と圧力を調整してつくるベークライト。(p136)私の父が住友ベークライトにつとめていたので、よくこの話しは子どもの頃から聞いていた。

 次に米国が開発した合成ゴムの技術は、当初はドイツのIGファルベンが持っていたが、米国のシタンダードオイルと協業契約を結び、不用意にIGファルベンが米国側に技術情報を伝えたため、米国は戦時中に合成ゴムの生産に成功した。(1941年 8千トン、1945年 80万トン)
 ステレンとブタジエンを重合して人工ゴムと作った。その構造は、H原子がc=cの同じ側にあるシスとH原子がc=cと同じ側にないトランスがまじったもの、(p160)

 第12章の幻想をうむ物質として、植物からとられたアルカイド、アトロピン、スコポラミンは、膣や肛門に塗って使用したことから、魔女が箒にまたがる意味は、この物質によって幻覚を起こしたことを意味しているとのこと。(p240)

 これを知っていると、「魔女の宅急便」もちょっと意外な観点からみることができる。

 その他、冷媒としたのフロンとその代用品の開発、マラリア対策としてのDDT、キニーネの合成など、化学が、社会に役立ってきた側面も多い。

 少し前の先端自然科学にちゃんと目配りする必要あり。
ギャラリー
最新記事
記事検索
  • ライブドアブログ