革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

災害法制

『地震保険の理論と実務』を読んで、最新の地震保険に関するトリビアをメモ。


     損害保険関係の実務家が書いた本。

     内容は基礎的なものだが、地震保険に関するトリビアをメモ。

(1)(関東大震災の際)保険会社は保険金ではなく、見舞金を支払うことを決定します。しかし、資金調達が苦しかったため、政府は助成金として6355万円を保険会社に貸付(利率年4分、償還期限50年、据え置き期間3年)、これに各社の自力での拠出分1130万円を加えて合計で7485万円が火災保険契約者に支払われることになりました。(中略)
    この後、この借入金は一部保険会社の経営を大きく圧迫する要因になり、返済軽減の運動が続けられましたが、認められず、結局戦後のハイパーインフレが問題を解決する形で、借入から30年近くを経た1950年3月にようやく返済は完了することになりました。(7ページ)

(2)(「財務省地震再保険特別会計に関する論点整理係るワーキンググループ」での検討の際に使われた資料(2011年9月8日付))1966年の、地震保険誕生以外貯まったお金は2.4兆円ありましたが、2011年で東日本大震災の直後一二兆円に減少しましたこのお金は、その後の毎年と地震保険料によって回復し2041年には3.9兆円となります。しかし、ここで発生する、東海三連動地震によって、マイナス0.3兆円まで落ち込み、政府(一般会計)から赤字分の0.3兆円借入ます。その後借り入れを返して、2061年に15兆円まで回復した後、首都直下地震に寄ってマイナス1.5兆円となり、これも政府から借り入れます。さらに2143年には5.9兆円まで回復した後、関東大震災の最大によって04兆円となります。(14ページ)

    なお、この資料は財務省の該当ページでは探し当てることもある現在はできないようだ。https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/jisinronten/proceedings/index.html

(3)自動車保険に地震担保特約を付けて引き受けることを保険会社が表明した場合、東海、東南海、南海沖地震の予想地域を中心に逆選択的に保険引受要請が集中し、集積リスクが圧倒的に高まる可能性があります。つまり、自動車保険を、地震担保特約付きで引き受けることはほぼ不可能といえるわけです。
    そこで、東日本大震災の後に登場したのが、「地震・噴火・津波 車両全損時一時金特約」という特約です。この特約は地震担保特約のように車両価格の全額を補償するというものではなく、ほぼ全ての保険会社で補償金額は条件50万円と再設定されています。(35ページ36ページ)

(4)(東日本大震災における対応)損害の規模が多くなればなるほど、損害保険登録鑑定人の足が生じます。(中略)
    そのため、各社から「損害保険募集人によるサポート」を認めてほしいとの要望が強く寄せられました。この要望は金融庁の現地視察に当たり、現地の保険会社から金融庁に直接要望されたこともあり、東日本大震災では募集人によるサポート体制が認められることとなりました。(121ページ)

『減災と復興』を読んで、関東大震災とこれからの大災害との国家財政規模との比較をしてみた。


 歴史地震学の先生の書いた本。

 主な内容は、明治村に残っている関東大震災の震災遺産を題材にして、関東大震災の状況や復興状況を振り返るもの。

 中身の書評は「震災リゲイン」の27号で載せる予定なのでそれ以外の部分をコメント。

 一番基礎情報で大事だと思ったのは、災害規模と国家財政の比較。

(1)関東大震災 損害総額(直接被害)55億円、当時にGDP150億円、国家予算15億円

(2)首都直下地震の予測 以下のURLから。http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h25/74/special_01.html 
 直接被害 47兆円、間接被害48兆円

(3)南海トラフ巨大地震 以下のURLから。
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/nankaitrough_info.html
 直接被害 97.6兆円 ~169.5兆円
 間接被害 生産・サービス低下に起因するもの 30.2兆円~ 44.7兆円    
      道路、鉄道の寸断 4.9兆円~ 6.1兆円 

 仮にGDP500兆円、国家財政90兆円と考えると、関東大震災よりはそれぞれ比率は低い。

 しかし、現在の災害関係制度を前提にすると、災害の規模に対応した国家財政支出が増加しているので、その点には留意が必要。

 感覚的には、東日本大震災の20兆円規模の被害に比べると上記の損害額予測はやや甘い可能性もあるか?損害額想定は、歳出予算規模の算定にも影響するのできちんとした検証が必要。

『災害に立ち向かう人づくり』を読んで、多方面にわたる知見が得られ、同時に防災専門家のあり方も考えさせられる。。


 兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科の教員がまとめた本。

 まず、扱っている分野が、いわゆる防災や復興に係る政策部分だけでなく、健康面、教育面、心理学面など多方面にわたっていて、その内容自体非常に価値がある。

 自分の得意な防災・復興政策の部分でも、第8章の水害リスクとまちづくりの126頁-139頁の水害リスクマネジメントとして、治水対策、土地利用、建築規制、自然災害保険、さらに、滋賀県の流域治水の推進に関する法律の分析などや、第4章の減災復興とガバナンスの56頁-64頁の復興基金の分析、第13章の復興特区の現在とその可能性の分析など、丁寧な分析で非常に役立つ。

 また、防災・復興政策に関する大学の役割の以下の記述は、防災専門家全体に通じる話なので、書き出しておく。(259頁-260頁)

「教育面では、防災や復興の専門家育成の難しい点に、人材需要の変動の大きさがある。大規模な災害が発生すると、災害対応や復興の専門家が大量に必要になる一方、平時にはそれほど人材需要がないのが実情であり、FEMAでは非常勤職員を増やすことで、この需要変動に対応している。津波や地震など巨大災害のリスクが大きい日本では、ひとたび巨大地震が発生すると、様々な分野の専門家が総動員で、災害対応や復興に注力しなければならない。そこで、防災の専門家といっても、平時の防災・減災対策や災害復興の中核を担う「A:防災や復興の中核的専門家」に加えて、災害後の対応や復興に係わる「B:防災や復興に一定程度の知識、理解を有する幅広い分野の専門家の2種類が必要となろう。」

 これと同じことは、現在の国の防災体制にも言えること。

 内閣防災では、東日本大震災以降、防災・復興政策として複数の研究会などを立ち上げたが、「大規模災害時における被災者の住まいの確保策に関する検討会」など、論点整理や中間報告でほとんど終わってしまい、研究会の結論もでず、まして、制度改正自体が十分には行われていない。

 これだけ自然災害が相次ぐなかで、内閣防災の90名程度の職員が疲労困憊して、被災者の生活再建や住まい確保といった基本的な政策立案が十分にできないという点は、まさに、上記Aの部分の要員が極めて不足しているということ。

 防災の専門家集団を国の組織でも確保できる組織体制が絶対必要だし、これは政治的な問題ではなくまじめに議論すべき大事かつ最重要な内政上の課題ではないか?

『至上最悪のインフルエンザ』を読んで、科学的知見が少ない災害に参考になる点多し。


 1918年の第一次世界大戦中に蔓延した新型インフルエンザについて、社会科学的な観点から分析した本。

 FB友達の推薦。

 現在は、新型インフルエンザはウィルスの変異によって生じることがわかっているし、蔓延をふせぐための水際の対策が重視されている。

 しかし、当時は、まだウィルスが原因となっていること自体がわかっておらず、最新の技術であるワクチンも効果がなかった。(130頁)

 その時点で効果があったのは、当時、事前対策であるマスク着用(133頁)と病後の休息と暖かな環境(172頁)だった。しかし、それが適切に提供されなかったことが、インフルエンザのパンデミックにつながった。

 分子生物学の進歩によって、インフルエンザの対策は劇的に変化したが、台風などの気象災害や地震などの対策については、依然として科学的にそのメカニズムが十分には解明されておらず、当然、十分な予知、予測ができない部分が多い。

 これらの災害対策に対しては、1918年当時のインフルエンザ対策を題材に考えると、「マスクや休養な暖かな環境」該当するような、現状で実施可能な地道な対策、例えば、危険な地域から安全な地域への移住の促進とか、危険な地域居住者などへの保険や共済制度の充実などだろう。

 当時のワクチンのような、目先の新しさや格好良さで対策をしたつもりになっても、後から考えると不十分だったり効果がなかったりする。「ワクチン」にあたる目新しい対策と、「休息と暖かい環境」にあたる、地道な災害対策ってなんだろうか、と考えてみることが重要ではないか?
 
 なお、第一次世界大戦後のベルサイユ条約の交渉過程で、理想主義をかかげたウィルソンがインフルエンザにかかったことが、ウィルソンの妥協につながったという指摘(242頁)を読んで時には、最初はびっくりした。

 しかし、落ち着いて考えれば、インフルエンザウィルスは、首脳会議を行っていたトップにまんべんなく襲いかかっていたはずなので、きっと英国やフランスなどにも罹患者はいたはず。要は、当時の米国外交団が経験が未熟であって、熟練の英米の外交官に翻弄されたことと(220頁)、ウィルソンの与党である民主党が米国議会上下院で敗北したこと(215頁)が主な原因ではないか?

 特に、会議終了の際に次回に向けた解決策の提案を提出して、議論を誘導するなどは、交渉ごとでのイロハ。それを英国のロイド・ジョージと英国外交団が行っていて、米国ができなかったこと自体(220頁)、米国外交団の交渉テクニックの欠如を物語っていると思う。

内閣府のとりまとめた「大規模災害時における被災者の住まいの確保策に関する検討会論点整理」は、読み返してみると非常に踏み込んでいる論点あり。どう実現につなげていくか?

 月末の論文修正提出締め切りに向けて、こつこつ既存研究や政府報告書を読み直している。

 この「大規模災害時における被災者の住まいの確保策に関する検討会」とその参考資料は、非常に踏み込んだ点が多い。

 自分の書いている論文の関係では、

(1)応急仮設住宅を継続居住をするニーズがあることを受け止めていること(本編9頁-10頁)

(2)応急仮設住宅を建築基準法の本設にする際の建築基準法上の対応方策を詳細に述べていること(本編10頁)

(3)建設型の応急仮設住宅について、当初からRC基礎とすることは大規模災害時には供給に支障が出る可能性があること、後から基礎を鋼製束で補強するとともに維持修繕計画を作成しておくことを指摘していること(本編10頁)

(4)建築基準法上の問題がない借り上げ型応急仮設住宅は東日本大震災における岩手県の実態として、地元市町村からの転出及び自力再建も移転先となる傾向があることを示していること(参考資料70頁)

 厳しい査読意見に苦しんでいるけど、初心に戻って政府報告書を読み直すことができ、本当にいい勉強になる。

 なお、内閣府の検討会は「被災者に対する国の支援のあり方に関する検討会中間整理」のように途中で中断してしまうケースが多い。

 今の内閣府の体制と災害が頻発する現状では無理もないところもあるので、着実に現役のみなさんが制度拡充できるよう、自分としても努力するつもり。
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