革新的国家公務員OBが語りたいこと・伝えたいことー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at an innovative official of the national government

36年の公務員生活で培った「防災・復興法制」「都市計画法制」の知識を広く共有するため、書評を通じて、関係する新しい論点を示します。なお、意見にわたるものは個人的なものであり所属する(した)組織の意見や立場ではありません。

経営学

『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』を読んで、競争戦略の議論は再開発とリノベーションの議論につながるな。


 ややタイトルに誤解を招く感じアリ。

 要は、経営学のドラッカーのような経営者向けの本ではなく、統計分析などを駆使した経営学の学術誌で議論されている経営学の知識を紹介した本。
  
 競争の型と競争戦略のタイプの比較は、都市計画にも示唆多し。

(1)IO型(産業構造が安定している状態)⇒ポーターのSCP戦略(差別化とコスト削減)が有効
(2)チェンバレン型(参入障壁が低く、複数の企業が激しく競争)⇒RBV戦略(自社の技術力やサービス力など経営資源に注目)が有効
(3)シュンペーター型(競争環境が不確実な状態)⇒リアルオプション戦略(常に不確実な事業環境に柔軟に対応する)(位置No490)

 シュンペーター型の競争環境では、ちゃんとした戦略を立てることには意味はなく、「とにかくまず少額でもいいから投資をしたり、小ロットでもいいから製品・サービスを市場にだしてみる」というリアルオプション戦略が有効。『リーンスタートアップ』にも近い発想。

 日本の都市開発をめぐる状況も不確実性という観点では同じ状況。

 2020年以降の日本の経済状況や床需要などは極めて不確実性が高い状況。この段階で100億円単位の投資を相当長期間にわかって行う再開発事業よりは、小規模で特定の地区でビジネスを始めて段階的に規模を拡大していくリノベーションの方が経営戦略上もマッチしているということ。

 その他、面白い指摘

(1)既存の知識に縛られた(ドミナントデザイン)を壊す「アーキテクチュラルな知」は、研究者の会社の枠を越えたコミュニティによる知識交換と、会社内でも分野の垣根を越えた幅広い情報交換が必要。(位置No929)

(2)「全般的に成功体験はよい効果をもたらす」が、「失敗体験が乏しいまま成功体験を重ねてしまうと、むしろその後は失敗確率が高まる」(位置No1480)

(3)小規模企業が成功するための経営幹部に必要なpostureは、innovative,proactive,risk-takingの三つ。(位置No2994)

(4)女性活用や外国人活用などのダイバーシティ戦略は中途半端では組織内グループができ生産性が落ちる、やるのであれば徹底的に複数次元でダーバーシティを進める必要がある。(位置No1992) 

 その他、抜き書き。

(1)最も根本的な誤解から述べさせてください。それは「経営学は『役に立つ』ことを目的にした学問である」と思われがちなことです。実は、経営学者の多くはそう考えていません。(位置No246)

(2)経営学は何を提供できるかというと、それは(1)理論研究から導かれた「真理に近いかもしれない経営法則」と、(2)実証分析などを通じて、その法則が一般に多くの企業・組織・人に当てはまりやすい法則かどうかの検証結果、の二つだけです。(位置No341)

(3)経営学は、企業の戦略を「競争戦略(事業戦略)」と「企業戦略」に大別します。前者は「特定の業界・市場で、企業がどのような戦い方をしていくか」を考えるもので、後者は「複数の業界にまたがってビジネスする企業が、全体としてどのように戦略を進めるか」を考える分野です(広義の多角化戦略といえます)。(位置No442)

(4)SCP戦略(注1)とも呼ばれるこの戦略は、米ハーバード大学のマイケル・ポーターが中心となって発展させたもので、1980年代以降の競争戦略の代名詞になっています。代表的なフレームワークが、「ポジショニング戦略」です。 ポジショニングとは「業界内のライバルと比べて、自社がどのような製品・サービスを顧客に提供していくか」を考えるものです。この「ポジション」は2種類に分かれます。一つは、同業他社と差別化した製品・サービスを提供して顧客に追加価値を提供する「差別化戦略」であり、もう一つはコスト削減に注力して、例えば同業他社よりも低い価格をつけて市場シェアをとる「コストリーダーシップ戦略」です。(位置No429)

(5)SCP戦略と対比するように使われるのがRBVです。米ユタ大学のジェイ・バーニーを中心に90 年代に打ち立てられた考えで、「企業の競争優位に重要なのは、製品・サービスのポジションではなく、企業の持つ経営資源(リソース)にある」とする考え方です。 経営資源の代表例は、なんといっても人材や技術でしょう。優れた人材、他社がまねできない技術、といった自社の「強み」を磨くことで企業は安定して高いパフォーマンスを実現する、という考え方です。(位置No436)

(6)IO型競争をしている業界で有効な戦略は、ポーターのSCP戦略です。なぜなら、SCP戦略はそもそも「競争環境が寡占化に進むほうが、企業は安定して高い収益を上げられる」という前提に立った考えだからです。「(寡占状態を維持するために)新規参入をどうやって阻むか」「自社はライバル社とどのように異なるポジションをとって、ガチンコ競争を避けるべきか」などを考えるのです。(位置No459)

(7)チェンバレン型: IO型よりも参入障壁が低く、複数の企業がある程度差別化しながら、それなりに激しく競争する型です。この型では「差別化しながら競争すること」が前提になっているので、その「差別化する力」を磨いていくことこそ、各社が重視すべき戦略になります。結果、各社は少しでも優れた(差別化された)製品・サービスを提供するために、自社の技術力やサービス力に磨きをかけます。従ってこの型の業界では、技術・人材などの経営資源に注目するRBVに基づく戦略が有用なのです。(位置No465)

(8)リアル・オプションについては経営学ミニ解説2で詳しく紹介しますが、これは事業環境の不確実性が高いことを前提にした考えです。その含意を平たくいえば、「不確実性の高いときには、とにかくまずは少額でもいいから投資をしたり、小ロットでいいから製品・サービスを市場に出したりしてみよう」という感じでしょうか。(位置No520)

(9)第一に、新興企業のビジネスモデルにおいて決定的なのは、そのデザインが「新奇性」が高いこと、すなわちイノベーティブであるということです(結果3)。すなわち「いままでつながっていなかった人と人をつなぐ」「いままでつながっていなかった企業と人をつなぐ」あるいは「そのつなぎ方を新しくする」といったデザインです。逆に、この点で従来の企業と大差ないビジネスモデルを組んでいる限り、企業価値は高まらないことになります。
 第二に、それ以上に興味深いのが、結果1と4です。結果1が示すように「効率性」を追求するビジネスモデルも企業価値を高める可能性があるわけですが、しかしイノベーティブなビジネスモデルの企業が「効率性」も同時に追求すると、それは逆効果となり得るのです(結果4)。「新奇性と効率性の二兎は追わず、メリハリをつけたほうがよい」ということでしょう。(位置No629)

(10)企業・人は様々な知の組み合せを試せたほうがいいですから、常に「知の範囲」を広げることが望まれます。これを世界の経営学では「Exploration」といいます。本書では、「知の探索」と呼びましょう。 一方、そのような活動を通じて生み出された知からは、当然ながら収益を生み出すことが求められます。そのために企業は一定分野の知を継続して「深める」ことも必要です。これを「Exploitation(知の深化)」と呼びます。この知の探索と深化をバランスよく進めていくことを、両利き(Ambidexterity)というのです。(位置No760)

『虚妄の成果主義』を読んで、自己決定の感覚が高いほど職務満足度が高まり、金銭的インセンティブが負の効果があるという指摘は重要?

虚妄の成果主義
高橋 伸夫
日経BP社
2004-01-17

 東京大学の経営学の先生が書いた本。

 大胆な物言いの本で、東大の先生でもこんな思い切った発言をするのかど、その点でもびっくり。

 経営学もどきの本はたくさん読んでいるが、今ひとつ最新の経営学の大系が理解していないので、全体的な評価は、もう少し経営学の本を読んでからにする。

 気になった点。

(1)日本の経営学は米国の経営学を輸入している。そして米国の経営学は、戦後直後は、日本の終身雇用や年功序列を固定費を高めるものと批判していた。しかし、日本の高度成長期には、同じ学者たちが、日本的経営の優れた点として高く評価した。例えば、アレグレンとドラッカーの主張。 
 この米国経営学者の動きに日本の経営学者も右往左往している。(第2章)

(2)現在は日本の終身雇用や年功序列を批判し、成果主義を取り入れる動きが大企業に多い。しかし、金銭的なインセンティブを入れるとかえってやる気を失う効果がある。金銭的なインセンティブの範囲内でしか働かなくなるという逆効果を生む。米国経営学者のデシは、やる気を出させるためには、金銭的報酬がパフォーマンスによって直接決まらないようにするのがよいと指摘する(p170)

(3)やる気をださせる「内発的動機付け」には、自己決定度(上司から権限委譲されているとか、自分の意見が尊重されているなど自分の判断がいかされているという感覚)を高めることが重要という仮説が提示され、日米とも実証的研究で裏付けられている。(p159)

 これらの指摘は、ある程度は自分の国家公務員の経験に合致する。「仕事の褒美は仕事」というよういに次から次への難しい仕事をあてがわれ、対応していくうちに自分の自己決定度が高まり、満足度が上がったことは事実。

 このようにミクロに社員、職員のやる気や生産性という観点からは、極端に金銭インセンティブを重視する成果主義が企業や職場の生産性向上に寄与せず、むしろ逆効果になることは納得感がある。

 しかし、若い時代に仕事にみあった給与をもらえず、管理職になって仕事もしないのに給与は高くもらうことで自分の企業人生での収支をとるような仕組みは、企業や経済が成長しなくなると、若者に負担が大きくなり、また、若者は将来の企業でのポストに不安があるので、働く意欲を欠く可能性がある。この点の是正は必要と考える。若い時代にもう少し仕事にみあった給与を払うバランスで、仕事をしない中年の社員については、現状よりも給与水準を下げていくこともやむを得ないのではないか。

 また、年功序列制度をある程度は維持するにしても、途中採用の社員、職員について、たたき上げと同等の給与を支払うこと、これによって、能力の高い社員の企業間の流動性がもう少し高まることが大事だと思う。これは、ポストがなくて鬱屈している中年管理職予備軍に対して、能力に応じたポストを外部に見つける可能性を高め、日本経済全体としては望ましい結果になる可能性がある。

 さらに、あえていえば、企業規模によっても成果主義か年功序列主義かを重視するかは違いがあってしかるべきだし、実際にもそうなっている可能性も高い。新しく起こしたベンチャー企業であれば、経営者が全社員に目も行き届くし、有能な社員に成果に応じて給与を払っても別に問題は起きないはず。
 それが企業が成長していくにつれ、管理部門も増えてくるし、社員数も増えてきて、経営者が自分で社員全部に目配りできなくなってくる。そういう大きな企業では、ベースとして年功序列制度を維持していくことには一定の合理性があり、現実にもそうなっているのではないかと思う。
  
 これらの留意点を前提にした上で、成果主義万能とかそれを上っ面だけまねた目標管理の手続きなどについては、猿まねしないことが大事という指摘は極めて重要。

『Airbnb Story』を読んで、新しいビジネスを成功させたプロセスになるほどと思う点多し。

Airbnb Story
リー・ギャラガー
日経BP社
2017-05-25

  タイトルで購入。

 空き部屋を短期的に貸し出す、最近の日本語では民泊ビジネスを開拓した、airbnb創業者の美大出身のブライアン・チェスキー、ジョー・ケビア、ネイサン・ブレチャージクの3人がどうやって起業に成功したかの経緯を物語風にまとめた本。

 まず、ネットでの情報交換を通じて空き部屋を短期間第三者にマッチングするサイトはairbnbが最初ではなく、既に存在していた。それにも拘わらず、airbnbが大化けした理由として、以下のものが指摘されている。

(1)資金が尽きたら、シリアルを買ってきて、オバマ・オーという名前をつけた箱に入れ替えて資金を確保し、投資家に「ゴキブリみたいに絶対死なない」と言わせるほど、粘り強かったこと。

(2)セコイアなど伝統的な投資家たちも、アイディアだけでなく創業者の3人を気に入って投資を決めたこと(位置No895)。これらの追加投資が3人の魅力によって規模拡大を行えたため、他のサイトを圧倒的に引き離すことができたこと。

(3)家を破壊するなどの問題事例に対しても、3人が第三者の意見を聞いて結果としてかなりうまく対応できたこと。(第4章)

(4)ニューヨーク市、サンフランシスコの民泊禁止条例、ベルリン、バルセロナの同様の条例など規制強化の動きに対しても、条例違反に対する罰金を争うなど積極的に対応したこと。また、既存のホテル業界の抵抗に対して、全世界のホストとユーザーを鳩合して支持の運動を起こして一定の成果をあげたこと。(第5章)

 airbnbのビジネスは現時点でもまだ様々な規制当局とのフリクションを起こしているし、日本でも一定の規制のもとので住宅としての民泊を認める法律ができたところ。今後もいろんな問題を起こす可能性があるが、宿泊するというニーズに対して、低価格で大都市中心部に止まれるという経済性、ホストと仲良くなれる意外性、予想を裏切られる変わった室内、居住環境など、一定のメリットがあり、それをうまくつかんたairbnbのようなビジネスモデルはなくならないと思う。

 むしろ、その先にairbnbがどう新しいビジネスを考えていくかが注目点。

『逆説の法則』を読んで、渋滞学の西成先生が数学を背景にした四つの逆説の法則を提案、説得力あり。

逆説の法則 (新潮選書)
西成 活裕
新潮社
2017-05-26

 西成先生の本を本屋で見つけて購入。

 著者は、渋滞学など切れ味鋭いアウトリーチ本をいくつもだされている。

 この本では意思選択、組織論から社会経済論まで扱っているが、提案しているのは四つの法則。それを数学的な説明をしているところに説得力あり。

(1)空けるが勝ち
 一つは、渋滞を避けるためには、渋滞を吸収する車(車間を大きくとった車)あると有効という説明。もう一つは、バケツリレーでバケツに水を7割程度が一番効率的という説明。三つ目は、スケジュールもガンチャーとに隙間がある方が長期的には効率的。(p152)
 なお、ここから、準最適(平均は最適よりやや落ちるが分散が小さい選択肢)をえらぶべきという。(p155)

(2)分けるが勝ち 
 ランチェスターの法則によって、分ければ小が大に勝つ可能性がある。(p156) 
 鉄道、金融などの社会基盤は媒介中心性が高い部分を非常時には切断する仕組みが有効。(p160) 
 組織も分割して決定する仕組みが有効

(3)かけるが勝ち 
 一手間かけた方が効率的になる。

(4)負けるが勝ち 
 利他的行動をとった方が利己的行動よりも平均して安定的かつ得点が高い。(p175)
 裏切り、フリーライダーを防ぐ場合は、ア 血縁関係、イ 直接互恵性(助けた人から直接お礼を受け取る関係)、ウ 間接互恵性(第三者がいい評判をながす)、エ ネットワーク互恵性(限られた人的ネットワーク)、オ グループ選択(利他的な行動をとる人だけで仲間になる)(p178)
 営業は引くとうまくいく、うるさい場所の講義ではわざと小さい声で話す。(p179)

 その他、交通の分析などは渋滞学の時から鋭いもの多し。組織論なども、以上の4つの観点から指摘しており含蓄あり。

『サラリーマンの悩みのほとんどは学問的な答えがでている』を読んで、答えが十分とは思わないが、経営学の観点での知識が自分が不測していることがわかったのは有益か?


 タイトルと著者名で購入。
  
 タイトルのようにこの本でサラリーマンの悩みが解決するかどうか、答えがでているかどうかについてはそんなに納得感はない。
 
 しかし、自分が雑学的に経済学や行動経済学、経営学を学んでいるので、自分が欠けているらしい分野を知ることができたのは有益。
(1)最初の所得を収穫逓減の議論からそんなに順調に増えないというのは、まあ、ミクロ経済学の議論として当然。
(2)次の消費者が判断の際にバイアスを持ってしまう議論も行動経済学の標準的な議論。

(3)ポジティブ心理学の部分は興味がないのでパス。次の組織行動論はこの本を読む限り、当たり前の話しのようだが、組織の考え方として学問的な蓄積があるかどうかは、参考図書『組織行動のマネジメント』(ダイヤモンド社)でチェックしてみる。

(4)アポロ計画などで使ったプロジェクトマネジメントも同様にに学問的な蓄積があるかについては、『世界一わかりやすいプロジェクトマネジメント』(総合法令)でチェック。
  
 ポジティブサイコロジーは関心がわかず。最後の幸福度の話しは過去集中して読書した経験があり今回は刺激なし。
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