漫画村について

 やや過激な言い方をすれば、漫画村の使用者は売国奴であり、文化の破戒者であり、ウィルスの感染源でもある。
 まず漫画村については今更説明することもないだろう。著作者に無断で商業漫画を公開しているサイトである。
 つい先日、アクセスが政府側から規制された。しかし後続サイトが運営された。

僕の立場

 この問題を論じる前に僕と漫画の関係について述べておきたい。僕は社会人に入ってからめっきり漫画を読まなくなった。精々、ランチ時に喫茶店でゴルゴ13を、あるいは病院の待合室で漫画で読破シリーズを読む程度である。
 またもともと子供の頃から漫画よりライトノベルを読んでいた。精々、金田一少年の事件簿、名探偵コナン、さよなら絶望先生、寄生獣、クレヨンしんちゃん、ドラえもんくらいである。
 ライトノベルもスレイヤーズ以降、読まなくなった。つまりマンガ文化が廃れても実質的には何の影響もない。
 それにも関わらず漫画村を強く非難している。訴訟を起こして欲しいとも思っている。
 以下、その理由を説明する。

特定の権利者のみを擁護すると

 善悪の基準は極めて主観的であるが、違法か合法かはある程度まで客観的に判別できる。そして、今回漫画村に対して、政府側からアクセスを遮断された。
 もちろん、これ自体は望ましいことだが手放しには喜べない。なぜならこの措置自体、通信の秘密*1を侵害しているからだ。加えて、きちんとした手続きを得ていないことにも問題がある。
 一方で図書館の利用は合法的であり、著作権教育もしっかりされている。
 将来、特定の権利者のみを擁護する前例ができてしまうと、恣意的なアクセスブロックがなされてしまう危険性があるのだ。例えば中国では天安門事件、文化大革命などという政府にとって不都合な単語が検索できないようになっているが、特定の権利者のみを性急に保護しようとした場合には、これ全く同じ論理が働くのである。
 これが売国奴という第一の理由である。

文化的な不利益

 かどうかは解らないが、大局的な見地に立つと少なくとも僕は間接的に不利益をこうむることになる。
 しかし、先ほど僕は漫画を余り読まないと述べた。そうだとしたら矛盾していないだろうか。もちろん、直接的に不利益にならない。青山剛昌が4ヶ月間休もうが、ハンターハンターが休載しようが何の影響もないのである。
 海賊版のサイトが蔓延すると、職業的な漫画家に正しく報酬が行き渡らなくなる。熱意はもちろん必要だが、経済的な問題も考えなければいけない。実際、執筆よりもアルバイトをせざるを得ないのである。新しい作品を生み出す時間がなくなるということは読者にとって、極めて不利益である
 そして作品が生まれないと、後続の作品が連鎖的に生まれなくなる。漫画だけでなくゲームも、アニメも、そして小説に至るまで全ての文化が停滞しかねないのだ。そして二番煎じの作品が多くなっていく。
 僕は小説を読んで、小説の筋書きを思いつくが、現代作家は漫画の影響を受けた作品が少なくない。例えば新井素子はモンキー・パンチの、台湾人作家の洪凌は攻殻機動隊の影響を受けている。つまり、漫画が滅ぶと、文化が萎縮してしまうのである。
 これが文化の破壊者という理由である。

経済的な不利益

 クリエイターでないし、二番煎じの漫画でもいいと思われるかもしれない。しかし巡り巡って日本国民に不利益があるのである。
 漫画村の経済損失は500億円と言われている。つまり、500億円は正規のルートで買っていれば、正しく配分されていたのだ*2。その結果、公立学校の整備、国防費、福祉予算が少しは充実していたかもしれない。これが国益を損なうのである。
 売国奴という第二の理由である。ここまで比喩的に売国奴と述べてきたが、漫画村は北朝鮮によって運営されている*3。つまりは防衛予算ではなく、北朝鮮のミサイルの資金源になっているのだ! これを売国奴と言わずして何であろうか。

ウィルス感染の危険性

 海賊版サイトからウィルスに感染する危険性もある。海賊版サイトに接続しているのだから自業自得なのだが、昨今はSNSでつながっているのだ。乗っ取られてしまうと、そのコンピュータを経由して、そのウィルスが世界中に拡散されかねない。
 つまり日本だけでなく世界規模で迷惑を掛けかねないのである。

著作権侵害は親告罪

 さて、まず著作権侵害は親告罪である。親告罪では、被害届がなければ告訴されない。例えば強姦や強制わいせつは被害届を出さなければ、第三者がいくら警察に通報しても意味がない。被害者にとって不利益になる可能性があるという点が挙げられる。
 一方、非親告罪の典型としては殺人罪が挙げられる。被害者が死亡したら被害届は出せないからである。

著作権侵害は

 警報には非親告罪と親告罪があるが、著作権侵害は現在のところ、親告罪である。著作権はそもそも権利者の意志・意図を保護している。例えば、フリー素材として公開しているにも関わらず、第三者が警察に通報して取り締まったら権利者の意図に反することになる。
 つまり、二次創作物は権利者の許可を得ていない以上、合法ではなく黙認しているにすぎない。もう一度いう。合法ではなく、黙認だ。
 理由は様々である。弁護士に頼むのが面倒くさいと言う理由から、ネットで自分の作品が広まるのも宣伝効果になる、という考え……。

もし非親告罪になったら

 この非親告罪化は海賊版の対策として大きな武器となりうる。第三者が通報すれば漫画村のような違法サイトに介入できるからだ*4。漫画村を散々、罵ってきたが非親告罪化は賛同できない。
 僕はパロディも一次創作物として価値があると考えている。実際、シャーロック・ホームズほどパロディの対象となった人物はいない。聖典に忠実なジューン・トムスンなどを始め、「リュパン対ホームズ」*5……島田荘司の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』など枚挙に暇がない。ホームズは著作権が消滅しているので、著作権侵害には当たらない。
 さらに万葉集では額田王が、次の歌を詠んでいる。
三輪山を しかも隠すか 雲だにも 心あらなも かくさふべしや
 紀貫之はこれに着想を得て次の歌を詠んでいる。
三輪山を しかも隠すか 春霞 人に知られぬ 花や咲くらむ
 本歌取りという手法だが、一種の「二次創作物」とも見なせる。
 このように考えると、本歌取り、パロディ、コラージュなどの二次創作も、また文化であるのだ。非親告罪化は悪質サイトも駆逐する代わりに、このようなパロディ文化も潰しかねない。パロディだからこそ実現できる表現を破壊しかねないのではないか。
 僕はそう憂慮している。

僕たちにできること

 僕たちにできることは3つある。
1.違法サイトだと訴えること:多分、自己中心的な人ばかりだから、ウィルス感染の危険があると伝えるのがいいと思う。
2.ブロック:ツイッターアカウントをブロックすること
3.署名活動:著作権法改正への署名活動
 

*1 「漫画村」問題:「海賊版サイトブロッキング」はアリかナシか? 問題点はココにある(Business insider Japan)
*2 経済損失は500億円!? 「漫画村」など海賊版サイトの実態
*3 漫画海賊版サイトの閲覧者 知らぬ間に仮想通貨「モネロ」を「採掘」させられていた 北朝鮮資金源の可能性
*4 著作権非親告罪化のメリット・デメリット 〜許諾と黙認の違い〜
*5 これは原作者からのクレームで当時sholmesとして発表されているが、パロディと考えている。