名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 (光文社新書)

概要

 大学生の学力が低下している。具体的には中学レベルの問題すら解けない。ゆとり教育が原因だと巷間、囁かれているが本当にそうなのか。
 日本では世界でも珍しい大学制度を取っている。それはたった一度の学力テストで入学可能で、簡単に卒業ができるという点である。しかもその学力テストの問題が一部、中学入試にも出ているのだ。つまり優等生と劣等生の篩分が早々からされている。
 そればかりではない。経済力も学びを大きく左右している。

結論ありき

 まず初めに断っておかなければなりません。それは僕自身、河本さんの主張は賛同できるんです。しかし、論の進め方や学力テストの実施方法が意図的なものだと言う感じが拭えませんでした。
 例えば、数学は基礎問題より応用問題の比重が多すぎるのではないか。この数学の難易度なら現代文や英文で長文読解の問題を出さなければ、公平性が保てないのでは? また3つの試験を同時に配布し、受験者が配分したと言っています。しかし、別々の時間に配布し、同じ時間に試験管側が調整すれば時間不足などの問題は起きなかったのでは、と思います。杜撰なんですね。
 そして、このテスト結果を中心に以降の本論が展開されているため、砂の楼閣であるかのような印象を受けました。
 もちろんAO入試などは問題視されるべきですし、すぐに入ったらほぼ自動的に卒業できるようなシステムも問題です。そして採点は国家資格以外、教員に一任されているのでさじ加減一つというのも問題です。これは学力低下以外にもアカデミック・ハラスメントの温床にもなっています。

学力はテストで図れるか

 そもそもの問題としてテストで「学力」は図れるのでしょうか。これは河本さんだけでなく、教育の前提になる問題です。
 たとえば、計算のケアレスミスだろうと、全く解らないのとでは理解の度合いが違うでしょう。極論、マークシートで一個ずれていただけなのに全問不正解になることは皆さん経験があると思います。定期テストは人間が採点してくれるので、(もしかしたら)温情的な措置として通知表に加算されるかもしれませんが、大学入試は機械的に採点されます。
 これも学習意欲を奪う一因となっているのではないでしょうか。

勉強しないのか、勉強できないのか

 もちろん、勉強できないから勉強しなくなる構図はある程度、あっています。しかし、それは高校生まで。仮にも大学受験を受けている以上、それなりに学力はあるように思います。

救うべき人、落とすべき人

 経済的な事情などがあるなら、救うべきですが、単に「勉強しない」だけなら遠慮なく落第させていいかと思います。ここの点は著者に同意していますが、この二つは明確に区分できるものではありません。
 大学などに限らず勉強したいのにできない、これは何としてでも助けるべきです。昨今なら学習障碍、発達障碍児童の問題とも密接に絡んでくるでしょう。果たして知的障害者と同等の教育でいいのかなどとも絡んできそうです。

学習意欲を高めるには

 これは僕の経験論なのですが、創作活動に本気で取り組めばゆっくりですが着実に学習意欲は高まります。たとえば本気で小説をいいものに仕上げようと思えば、語彙の知識はもちろん、教養が要求されます。例えば小説を読まなくては小説を書くことができません。僕は趣味で小説を書いているので、小説を引き合いに出しましたが、スマホのゲームでも同じこと。
 例えば、スマホのサウンドノベルならjokerScriptなどで動作させているのですが、これはタグを打ち込まなければいけません。マニュアルは日本語で書かれていますが、その時点で文章読解力がなければ次には進めないのです。
 また当然ながら、コンピューターの知識も要求されます。たとえばjokerScriptの音楽はoggなどですが、拡張子という概念を知らなければ話になりません。
 それから著作権の知識も求められます。もちろん全て自前で行なうのなら話は別ですが、現実はそう甘くありません。公開寸前で著作権違反が発覚し、公開できなかったという話も耳にしたことがあります。
 スマホのゲームだけではありません。コップ、歯ブラシ、鉛筆、服など、身の回りには「創作」物で溢れていますし、駅に行けばポスターなどが貼ってあります。そしてこれらのデザインセンス、どのような経路でここにあるのかを考えることが自発的な学習の第一歩です。
 そしてこれらの制作に目を向けさせるには「どうやって作ってるんだろうね」「ここに来るまでどんな人が関わっているんだろうね」などと尋ねれば好奇心が湧くかもしれません。

SNSと学び

 さて、ツイッターなどのSNSと学びとは縁遠いように思うでしょう。しかし有効活用すれば、意外にも学習効果を高めることができます。以下は僕が実際に行なっている活用事例です。
 まずアウトプット効果。インプットと同じくらいアウトプットが重要なのは言うまでもありませんが、SNSはアウトプットの道具になります。特にツイッターなら140字と短く、勉強の初めには最適ではないでしょうか。他には今日の目標を宣言すれば、フォロワーの目もありますし、義務感に駆られる人もいるようです。
 他には大学院生などに質問したり、オンラインで勉強会を開いたりもできます。近いところなら、ご自宅に集まり、遠い場所ならLINEやスカイプなどで集まることもできます。