産経新聞夕刊 2007年10月29日(月)「感・彩・人コラム」掲載
薄井充裕

 関西の数ある白鳳仏のなかで、鶴林寺(兵庫県加古川市)の金銅聖観音像の清楚で流麗な立ち姿に魅せられる人は多い。
 鶴林寺は、「西の法隆寺」とも言われる、聖徳太子ゆかりの古刹。最近、国宝太子堂(法華堂)の壁画がサイバーショットデジタルカメラによる赤外写真で現代に甦ったことでも話題になった。

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 白鳳期の金銅仏では、本家・法隆寺には見事に整ったお顔の夢違観音がおわし、両者の比較も興味深い。他にも、新薬師寺には、かつて香薬師仏と呼ばれ、東京深大寺の釈迦如来倚像に似た古式の風貌の逸品があったが、昭和18年に盗難にあい現在行方がわからない。
 鶴林寺の聖観音像も、昔盗まれた。盗賊は金銅仏ということで溶かして一儲けを企み、鑿(のみ)を入れようと叩くと、「あいたた」という観音様の声が聞こえ、恐れ入って像を返したとの伝説がある。
 宝物館で鶴林寺の小中利恵さんとそんな話をしていたら、実は同寺は平成14年にも盗難にあい、聖観音像は幸い無事だったものの、「聖徳太子絵伝」など8幅の仏画が被害にあった。その後、7点は戻ったが「絹本著色阿弥陀三尊像」(重要文化財)は現在、韓国に所在が確認されながら、未だ帰国の目処がたっていないとのことだった。
 名刹の至宝である。外務省、文化庁など関係機関の「返還交渉」を是非、頑張っていただきたいと思う。

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