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アップル驚異のエクスペリエンス』を読みました。

本作は、ベストセラーとなった『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』、『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』を書いた、カーマイン・ガロによる、驚異シリーズの最新作です。


本作の主役はジョブズ本人ではなくアップルストア。
小売業界でも世界最高の業績を叩きだすその秘密を、単にここがスゴイと紹介するだけでなく、なぜそうなるのか、どういう考え方をするからスゴイことができるのか、という観点で掘り下げていく、驚異シリーズおなじみの構成となっています。

アップルストアが与えてくれる顧客体験(エクスペリエンス)については、他のさまざまな書評や、サイト記事でも紹介されています。

  • アップルストアのビジョンは「暮らしを豊かにする」。それを従業員ひとりひとりがよくわかり、そして自らの判断で実践している
  • 「修復すべきは顧客とのつながりであってコンピューターではない」
本書の中を読んでも、その考え方を裏付ける印象的な言葉がたくさん見つかります。

一方で、自分を振り返ってみます。
私はメーカーの情報システム部門で働いていますので、アップルストアのように多くの一般のお客さんを相手にする小売業ではありません。でもこの本を読み進めていくうちに、アップルが実践してきたこと、その根底に流れている考え方は、小売業ではなくても、自分自身や自分の所属する組織や部門からみたときの、いわゆる「顧客」に相当するもの、それはすなわち「自分に関わる他の人」に対しても、なんら変わることなく有効な考え方であるというふうに考えました。

そこで、組織のある部門に属して日々仕事をしたり、小売業ではないにしても、人との関係性の中で仕事や生活をおくっている1人の人間として、この考え方をどのように読み解き、自分の考え方や行動に活かしていくことができるか、ということを考えてみたいと思います。


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(注)ここで出てくる「顧客」は、あなたにとっての「顧客」である、他部門の人々やお客様、取引先、家族、恋人に置き換えて考えてみてください。


1.修復すべきは顧客とのつながりであってコンピューターではない

<P140>
顧客から、メールで何か問い合わせがありました。
対応方法としては単純な内容だったので、Aさんは返信メールに対応方法を書いて返信しました。
Bさんは、お客さんのところに出かけて行って「どうしましたか?」と声をかけました。顧客自身の声を聞き、なにが起こっているのか?問い合わせをすることになった根本原因は他にあるのではないか?といったことを考えながら、しっかりと話を聞いてあげ、対応方法を教えてあげました。

「とにかく急いでいるから、早く対応方法だけわかればいい」という人もいるでしょう。
私はいつも、場所がそんなに離れていないのであれば、とりあえずメールの返信を書く前に、出かけて行って声をかけるようにします。離れた場所に顧客がいて、すぐに行けないようであれば、電話で状況を聞きます。場合によっては返信メールの文面をあれこれ考えているうちに、問題解決!となることもあります。メールはあとで情報共有とノウハウを残すという意味で、内容を簡単に送るということも行います。対応に時間と手間はかかりますが、メールだけでは絶対に得られないもの「信頼感」がここに生まれます。

あなたが顧客の立場だったとしたら?


2.顧客の体内時計をリセットする

<P194>
何かの対応で、顧客を待たせてしまうことは、よくあることです。
対応や調査に時間がかかることは仕方がないことです。これをなるべく短時間にするための努力はもちろん必要です。

しかし、どのようなときに顧客は「すごく待たされた」「対応が悪かった」というふうに考えるのでしょうか?物理的な時間の長さ?

この章を読むと、物理的な時間の長さよりも、顧客自身が感じた「精神的な時間」の長さが、相手に与える印象を大きく左右するということがよくわかります。同じ1週間待たせたとしても、1週間の間何の音沙汰もなしにほったらかしにされる場合と、2日おきに簡単に状況報告があり、予定どおりに進んでいることがちゃんと伝わる。どちらがよい印象を与えるかは明白です。物理的な時間の長さが問題なのではないと思います。

あと、顧客へのサービスで大事なことは3つあると述べられています。
  1. 有能
    もちろん、豊富な知識をもつことは大事なこと
  2. 好意的
    小売店であれば、顧客を笑顔で迎えて、顧客の名前を繰り返し呼び、笑顔で送り出す、ということができます。われわれの場合に置き換えると、1でも述べたように「話を聞く」という態度を見せるということにもなると思います
  3. すばやい
    100%準備ができてからやっと対応するのではなく、とにかくまずは第一報を早く入れる等、「顧客から見た」時にスピード感を感じることができるように工夫するべきだと思います。
すばやいサービスとは、来店した顧客がなるべく早く退店するようにすることではない。「すばやい」とは、顧客が体験したいと願うスピードにぴったり合ったスピードで、という意味だ。

3.顧客が本当に来にしていること メリットを売り込む

<P214>
アップルストアでは、お店のスタッフはお客さんに単なるスペックの売り込みはしません。
今日の仕事帰りに、とある家電量販店のパソコン売り場を歩いていたら、ちょっと気になる会話が聞こえて来ました。あまりPCのことに詳しくなさそうなサラリーマンの年配のお客さんに、店員さんが説明しています。
店員「こっちはグラフィックが◯◯◯を使っていて、ハイビジョン◯◯なので、非常に高いスペックです」
客「・・・」(沈黙)
仮に、お客さんが自分がやりたいことを具体的に質問したとしても、店員さんの返答が「スペックの説明」だけだったとしたら・・・ あえてこれ以上は書きませんが、これが家電量販店の実態だと思います。


4.トラブルシューティングを楽しむ

<P245>
これはわれわれの仕事でもよくあることですが、トラブルや不具合が起こったときは、ハッキリ言って「チャンス」です。私はトラブルが起こった時は、悪い言い方かもしれませんがワクワクしてきます(笑)トラブルを契機として、全体が良い方向に一歩進むということはよくあります。
また、トラブルが顧客に迷惑をかけてしまった場合も、それは顧客との信頼関係を深めるためのチャンスだととらえ、行動するべきだと考えます。


5.すっきりさせる 〜プロトタイプやプレゼン資料

<P312>
新しいシステムのプロトタイプができ、初めて顧客に紹介し、デモンストレーションをするとき。
ここが最大の勝負です。それまでのテストや検証をしっかりとやっておき、「あぁ、ここは本番までには直りますから」とか、「いまはこうなっていますが、本当はこうなりますので・・」ということは一切言わなくていいようにするべきです。

プレゼンテーションの資料についても同様です。何度も話している資料なのに、間違いを修正しない人がいますけど、もってのほかだと思います。明らかな間違い、誤字脱字が少しでもあると、本来伝えたい内容の信頼感もガタ落ちになります。少なくとも人の資料を見るとき、私はそういうふうに考えながらみてしまいます。


6.デザインの細部に気を配る

<P330>
5とも重なりますが、顧客・ユーザーが直接触れるところのデザインは非常に重要です。同じ機能を提供するのだとしても、細かいデザインの調整をみっちりやっておく場合とやらない場合では、印象がぜんぜん変わります。
また、あれこれいろんなものを詰め込みすぎるのは厳禁。何を見せて、何を見せないか、というのがシンプルにするためのポイントだと思います。システムの画面でもそうですし、資料も同様。


7.そして あなたのビジョンは? 

<P22>
 スティーブ・ジョブズは、実家のガレージで会社を興し、それを世界一の価値を持つ会社へと育てた。どうやったのだろうか。情熱は必要だったのだろうか。もちろんだ。一生懸命に働いた? 創造性? 才能? いずれも正解だ。だが、すべての出発点となったのは、ガレージに収まりきれないほどのビジョンだ。(中略)
スティーブ・ジョブズの「ビジョン」は、山のようにお金を稼ぎ、リタイアしてクルーザーを楽しむことではなかった。ジョブズのビジョンは、人々が創造性を発揮できるようにするツールをつくることだった。自分が死んだあとも続く会社をつくりたいーーそう思っていた。未来になにかを残したいと思っていた。



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