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先日のエントリー「20代の社員にアホといわれた出口社長から学ぶこと」で、ライフネット生命の出口社長の話に、『会社で仕事のことは学べない、仕事以外のところからしか、もはや仕事は学べない』という話がありました。
これに関連して、いろいろと調べたり考えたりしていて、興味深い考え方に出会いましたので、備忘的メモとともに、少し考えてみました。


前回のエントリーで、こんなことを書きました。
世の中、経済がどんどん右肩上がりの時代であれば、それまでの先輩がやってきたこと、『どんどん売ればどんどん儲かり、会社も成長』を真似していれば、成果をあげることができ、会社の収益も増えていく時代でした。

それでは、成長が望めず、人口も減少していく現代においては、なにを手本にすればよいのでしょう。
『仕事以外のところからしか、もはや仕事は学べない』と言い切っています。

これはどういうことかというと、これまでの常識を捨てる
では、常識を捨てるというのは、どういうことか。
これは、「常識にとらわれない発想でモノゴトを考える」と言い換えることができると思います。
これは非常に大事な考え方だと思いますが、じゃぁ、具体的に何をすれば、常識にとらわれない発想ができるようになるのか?という問いかけに対しては、いまいち説明不足になります。

これを補う、ひとつの考え方として「シングルループ学習とダブルループ学習」という考え方があります。


シングルループ学習とダブルループ学習

これは『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』の中で取り上げられているので、聞いたことがある方も多いかもしれません。

この本の中では、日本軍とアメリカ軍の組織能力の違いとして説明されています。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

 『失敗の本質』で描かれる日本軍には、「超人的な猛訓練・練磨」で養成された技能という独特の精強さを放っている。
 技術的な優位性ではなく、機械や兵器を扱う人の練成度を限りなく高めている。
 日本軍は「練磨」の文化と精神を持ち、独自の行動様式から、特定の分野ですばらしい強みを発揮できる民族である。
 しかし、兵員錬度の極限までの追求、精神主義と混在することで、のちに日本陸軍の軍事技術・戦略の軽視にもつながった。
 米軍はまったく逆の発想、「達人を不要とするシステム」で日本に対抗する。
 米軍側が「ゲームのルールを変えた」ことで勝利につながる要素も変化した。
 現代でも、ビジネスでルールを変えるのは常にアメリカ企業であり、日本企業がその「ルール変更」に翻弄されている姿は、名機零戦の苦戦とも重なる。
読書の章 〜 『「超」入門 失敗の本質』 鈴木博毅 ダイヤモンド社(第2章 なぜ、「日本的思考」は、変化に対応できないのか?) より


◆両者の組織の学習プロセスの違い
  • 日本軍:『シングルループ学習』
    目標と問題構造を変化しない一定のものであるという前提のうえで、最適解を選び出すという学習プロセス。
  • アメリカ軍:『ダブルループ学習』
    必要に応じて、目標や問題の基本構造そのものも再定義し、変革するという、よりダイナミックなプロセス
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自分の理解したことを、簡単に図にまとめてみました。
一番上に組織の目指す『目的』があります。戦争であれば、敵国に勝利すること。さらにブレークダウンすると、◯◯戦の戦いに勝利すること。
次にその目的を達成するために、いくつかの戦略があり、それぞれの戦略の達成目標があります。
そしてさらに目標を達成するために、さまざまな行動:部隊ごとの戦闘 があり、それぞれに結果が出てくる。

ここで、得られた結果に対してのフィードバックの考え方の違いが、シングルループ学習とダブルループ学習とで異なります。

シングルループ学習の学習プロセスは、結果を良くするため、例えば撃ち落とした敵機の数だとすると、射撃のウデを向上させようと、戦闘員をさらに厳しく鍛えあげて、達人を育てようとする。

一方、ダブルループ学習の学習プロセスは、結果を改善するために、その上にある戦略のマッピング、問題の構造そのものを見直すことを行い、行動目標を立てなおしたり、それぞれの目標に投入するリソース配分の見直しを行ったり、戦略を達成するための行動様式までを変えようとします。

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おもしろいたとえ話を見つけました。少し長くなりますがそのまま引用させてもらいます。


ブログ 組織変革論 :ダブルループ学習 http://desutai.exblog.jp/11071920
たとえば、奥さんが機嫌が悪いため、なんとか機嫌をなおそうと、会社帰りにケーキを買って帰ります。するといったん機嫌はよくなるのですが、また機嫌が悪い状態が起きます。
そうすると今度は花を買って帰ります。

また機嫌が悪くなる。
バッグを買って帰ります。

いったん喜ぶが機嫌の悪いのは回復しません。

指輪なんて買って帰ったりします。
しかし、なんか前より機嫌が悪いようです。

この人は「モノを与えれば機嫌がよくなる」という発想で同じ
パターンを繰り返しています。
問題に対して同じパターンで手を変え品を変え、行動を起こ
すことを「シングルループ学習」と言います。

本当はこの奥さんは自分が悩んでいることを聞いてほしかったのかもしれません。
自分の変化に気づいてほしかったのかもしれません。

いったん自分が過去に成功したパターンを手放し、あるがままの現実を見ることで、違うパターンの方法を見つけ出すことができるようになります。

これを「ダブルループ学習」と言います。

現場力の勘違い

この話を考えた時、「現場力」という言葉が浮かびました。
「現場力」と言えば『現場力を鍛える』や『見える化』で有名な遠藤功先生です。
何度かセミナーにも参加させていただいて、日本の企業を強くするための現場力の強化ということについていろいろ考えさせていただきました。

「現場力」、実際に会社の中でもこの言葉を使う人はよく見かけます。でも、ほとんどの場合、その意味を取り違えているのではないかと、違和感を持っていました。シングルループ学習とダブルループ学習の考え方と合わせて考えると、その違和感の意味が少しハッキリしてきました。

私が違和感を持っていた「現場力」、それは、いわゆるシングルループ学習の考え方で、現場で働く人たちのスキルを高めること という意味で用いられていました。技術の伝承ということも、現在の日本では多くの企業や組織で重要視されていて、数々の取り組みが行われています。

現場力の強化、技術の伝承、そして変化に対応できる強い組織、それらは全て、個人のスキルアップを図ることではなく、組織の学習プロセスを、ダブルループ学習へと変革させていくことが重要だと思います。

現場力の向上 = 課題解決の学習プロセスの向上

現場力の強い会社として紹介されている会社の事例を、こういった目で見直してみると、新たな発見がありました。


▼本文で紹介した本

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ

現場力を鍛える 「強い現場」をつくる7つの条件

見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み

ねばちっこい経営 粘り強い「人と組織」をつくる技術

現場力の教科書 (光文社新書)