2007年12月08日

『屍鬼』 樅(モミ)って辞書引かないと読めなかったよ

『屍鬼』小野不由美
屍鬼〈上〉

屍鬼〈下〉



ジャンプSQで藤崎竜の漫画版が始まる前に原作版を読了してました。
京極夏彦が書いたパロディ版の『脂鬼』は随分前に呼んだ覚えがあるんですが、忘却の彼方です。

ハードカバー版で読んだのですが、上巻では外場村の閉鎖性と、そこで連続する不可解な死を描き。
下巻では、事件の核心に行き当たりながらも、常識に縛られて何の手も打てずにずるずると事態を悪化させ、結局のところ序章で示されたように、外場村という集落の消滅までを描きます。

以下、ネタバレで。





フジリューは、桐敷沙子とか好きそうだなと思いました。
あと、下巻の始めで語られる不可解な死の真相の下り。
人は吸血されたら具体的にどうなるかを説明する下りがSF的で面白いです。
きっと、この二つに萌えて漫画版を描くことになったんでしょう。

村の閉鎖性の描写が上手いですね。
偏見とか思い込みや常識に縛られた田舎者な皆さんがリアリティ溢れている分、沙子が少し浮いています。
まあ、元から異物として描かれるので問題ないんですが、一人萌えキャラですよ。


この小説のホラーとして上手いところは、屍鬼に大きく依っていますね。
屍鬼とは所謂ヴァンパイアの一種なんですが、屍鬼に襲われて死亡した者の一部は屍鬼として”起き上がる”がメンタリティは生前とまったく同じ。
屍鬼は肉体的には動く死体ですが、人間の精神を持ったまま人間の生き血を食料にしないといけなくなった悲劇の存在です。

この設定が、小説の前半では、静かに進行する集落の消滅の恐怖だったのが、後半は屍鬼に殺された上に屍鬼となって、殺人をしなければ存在できなくなった悲劇の人間達を、恐怖と憤怒で暴徒と化した人間達が狩って行く話になります。
つまり、後半は屍鬼の身に降りかかる恐怖と悲劇的な末路を描いているんですよ。
ヴァンパイア小説なのに、恐怖を感じる主体はヴァンパイアの方で、恐怖をもたらす客体は人間の方になる訳です。
よく出来たホラー小説だと思います。特にドライブインの親子の末路は酷すぎる。

最後に一言。
大川篤ボンクラ過ぎwwwワラタwwwww

shotinashi at 23:40│Comments(0)TrackBack(0)clip!小説 | 妖怪

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