今朝の原油相場が下げた。
【1】「2024年5-6月のボトム形成のレンジ」を下抜け
今朝のブレント原油先物は「2024年5-6月のボトム形成のレンジ」を下に抜いた。
2024年5-6月のボトム形成のレンジ
限月 5月1日安値 6月4日安値 8月4日安値
ブレント原油2024年11月限 80.86 ~ 76.14 74.62
ブレント原油2024年12月限 80.30 ~ 75.85 74.25
ブレント原油2025年01月限 79.76 ~ 75.59 73.95
ブレント原油2025年02月限 79.23 ~ 75.36 73.71
ブレント原油2025年03月限 78.74 ~ 75.14 73.51
ブレント原油2025年04月限 78.74 ~ 74.93 73.33
ブレント原油先物(ICE)2024年9月3日(火)
限月 始値 高値 安値 帳入値 前日比
11月限 2024 77.16 77.55 73.51 73.75 -3.18
12月限 2024 76.35 76.78 73.07 73.30 -2.94
01月限 2025 75.80 76.21 72.68 72.91 -2.81
02月限 2025 75.42 75.82 72.39 72.61 -2.77
03月限 2025 75.16 75.55 72.18 72.40 -2.73
04月限 2025 74.92 75.29 72.01 72.21 -2.68
05月限 2025 74.69 75.05 71.84 72.03 -2.63
06月限 2025 74.47 74.82 71.69 71.88 -2.55
【2】サウジアラムコの10月「調整項」下げの思惑
今週の思惑要因として圧迫しているのは、サウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」のアジア向け10月積み「調整項」引き下げ。
サウジ原油のアジア向け「調整項」(official selling prices)が来月10月積み、指標油種のアラブ・ライトで1バレルあたり「50~70セント」下げと取り沙汰されている。市場の弱気はこれをネガティブな要素として、9月5日に向けて思惑している可能性がある。
【3】アジア市況のガソリン・クラックが改善(〇)
9月3日(火)のシンガポールは、ガソリン・クラックが大幅に改善した。
シンガポールの石油製品、ブレント原油を基準にしたクラック
ブレント ガソリン ジェット燃料/ ガスオイル
日付 原油期近 GL92-SINクラック ケロシンクラック 0.5% S クラック
9/03(24) 76.95 X 83.70 +6.75 89.66 +12.71 83.29 +6.34
9/02(24) 76.86 X 81.80 +4.93 89.17 +12.31 82.73 +5.87
8/30(24) 80.30 V 84.00 +3.70 91.54 +11.24 85.23 +4.93
8/29(24) 78.23 V 82.00 +3.77 88.87 +10.64 82.28 +4.05
8/28(24) 78.66 V 83.10 +4.44 89.77 +11.11 83.25 +4.59
8/27(24) 81.06 V 86.36 +5.30 93.23 +12.17 86.92 +5.86
8/26(24) 79.90 V 85.51 +5.61 92.44 +12.54 86.09 +6.19
【4】米国製油所の原油需要が旺盛
(ⅰ)米国製油所の原油処理量が増加し、稼働率90%以上が続いている。
(ⅱ)9月に入った今週も、米国製油所のサワー油種需要の旺盛さが伝えられた。
(ⅲ)今週発表される米国石油統計がネガティブという可能性は低い。
今週は米国石油統計「8/24-8/30」分が公表される。
単位:日量 バレル
期間 米国原油生産 原油処理量 稼働率 原油輸入 原油輸出 米国原油在庫
8/24-8/30
8/17-8/23 1330万 1686万4千 93.3% 656万0千 367万1千 4億2518万3千
8/10-8/16 1340万 1668万9千 92.3% 665万2千 404万5千 4億2602万9千
8/03-8/09 1330万 1646万7千 91.5% 628万5千 375万6千 4億3067万8千
7/27-8/02 1340万 1640万2千 90.5% 622万4千 363万8千 4億2932万1千
7/20-7/26 1330万 1615万0千 90.1% 695万3千 491万9千 4億3304万9千
7/13-7/19 1330万 1640万7千 91.6% 687万1千 418万6千 4億3648万5千
【5】当社の立場と意見
当社は、8月最終週から今週の9月入りに関して、「月末納会と月替わりの限月移行期のテクニカル」と分析してきた。
9月5日(木)に予定されているサウジアラムコのアジア向け10月「調整項」引き下げが思惑要因になっている可能性があるものの、その場合でも、旺盛な原油需要が続いていることから「2024年5-6月のボトム形成のレンジ」は維持すると考えてきた。とくに米国製油所の原油需要が旺盛で、稼働率も90%以上と高いので、通常であれば「レンジは維持する」はずであった。
しかし、今朝の原油相場は、これまで形成したボトムを下抜く下げになった。
大幅下げになり、テクニカルは悪化した。
原油や石油製品の需給で、今朝の下げを分析するのはむずかしい。
米国や中国について、マクロ経済と原油相場を直結させると恣意的になります。
今朝の下落は需給ではなく、何らかの取組要因が主導したように思います。
【6】9月4日(水)のプラッツドバイ原油の試算
今朝の価格で試算します。
東京為替「1ドル=145.90-145.20-144.50円」
(ⅰ)為替変動の重要な要因は内外金利差、先行きの金融政策スタンスの差です。
(ⅱ)8月27日以降のドル円の戻りは「米利下げの織り込み過ぎ」の調整です。
(ⅲ)ここから円安が始まるわけではない。「円安が始まる」という思惑はしない。
(ⅳ)米2年債と10年債の逆イールドが解消に向かっているので、米ドル高の戻りは「146円」あたりで抑えると考えています。
中東原油のアジア向け指標プラッツドバイ原油
9月4日(水)朝の試算 「1ドル=145.50円」で換算
09月限 73.10ドル 66,890円/KL -3,810円安
10月限 72.00ドル 65,890円/KL -3,340円安
11月限 71.20ドル 65,150円/KL -3,180円安
12月限 70.50ドル 64,510円/KL -3,110円安
01月限 70.00ドル 64,060円/KL -3,000円安
02月限 69.50ドル 63,600円/KL -3,000円安
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●ガソリン補助金(「燃料油価格激変緩和対策事業」)
経済産業省資源エネルギー庁によれば「燃料油価格激変緩和対策事業」は、コロナ禍における各種経済対策に引き続き「デフレ完全脱却のための総合経済対策」等に基づき実施する施策であり、原油価格高騰がコロナ下からの経済回復の重荷になる事態を防ぐため及び国際情勢の緊迫化による国民生活や経済活動への影響を最小化するための激変緩和措置として、燃料油の卸売価格の抑制のための手当てを行うことで小売価格の急騰抑制することにより、消費者の負担を低減することを目的としている。政府はガソリン補助金(燃料油価格激変緩和対策事業)を2022年1月に、そして電気・ガス代支援(電気・ガス価格激変緩和対策等事業費補助金)を2023年1月に始めた。これまでにガソリン補助金に計6兆3665億円、電気ガス代支援には計3兆7490億円をあててきた。これらの予算額は累計で10兆1155億円に達していた。
政府は9月3日(火)の閣議で、ガソリンや電気、都市ガスなどの料金を抑える補助金への追加経費などとして9891億円の予備費の支出を決定した。これら補助金に関する予算総額は累計で11兆円を上回ることになった。