メタモルフォーゼの条件は一つの境界からまた別の境界へのそれでなければいけない――ここまでは良いにしても、それをあからさまに自己言及的に行っても大して面白くあるまい。F0922-1は箱の内部の三面が衝突する頂点が外部の三面が衝突する頂点に変移する状況を表した概念図である。しかし、これを試行してもライティングの違いによってわずかに違って見える面分の明るさがかすかに変移するだけのメタモルフォーゼにしかならない。形状的には面から発する法ベクトルが180度異なる違いを持つにもかかわらず、その違いをほとんど感ずることはできない。少なくとも外形的なフォルムの変化は発生せず、カメラを大きく動かさない限りサイズの変移もない。
では、箱の内部に存する一つの頂点が到達すべきもう一つの頂点がまた別のオブジェクト上の頂点であれば良いのか。F0921-2は、左の箱が、右の箱だかキューブだかの外側面における一頂点に変移する状況を表している。左の箱と右のキューブは大きさが違っている。左の箱は立方体で右のキューブは直方体であるものとして、別のオブジェクトであることを分かりやすくしている。つまり頂点という共通性以外に異なっているのは、頂点を構成する三面の法線ベクトル、あるいは頂点上から出る法線ベクトルの向きの他は独立したオブジェクトの違いという二つである。しかし頂点を境界としている限り、メタモルフォーゼの結果はあまり期待できそうにない。
三面が衝突する頂点が境界なら、二面が衝突して形成される稜線も、まごうことなき境界である。この頂点から稜線へのメタモルフォーゼなる事態は考えられるだろうか(F0921-3)。