先日、現代ヒンディー文学の重鎮、詩人クンワル・ナーラーヤン氏に、日本の大震災についての詩をお願いする機会がありました。
クンワル氏は1950年代からヒンディー文学の第一線で活躍し、執筆活動期間は半世紀に及びます。貴重な存在の方です。
クンワル氏については以前のブログに詳しく書きました。
クンワル氏は、話を持ちかけられてお困りの様子でした。詩はムリには書けないというのが理由です。確かにその通りと思いました。自分でもムリなお願いをしたものだと反省しました。
翌日、考えなおして、クンワル氏に再び連絡しました。
ぶしつけなお願いをしてしまったことをお詫びし、改めて、詩ではなく、日本へのメッセージか、短いエッセイをお願いしたところ、
「あれからいろいろ考えていて、詩が出来そうな気がしてきた。たぶん書けると思う。日本は歴史的に本当に沢山のことを乗り越えてきている。しかも、小さな国なのに、現在の発展ぶりは本当に素晴しい。私は詩人です。詩人の言葉は詩なんです。だから散文ではなく、詩を書きます。でも心配なのは、あなたや日本の皆さんが、私の詩を気に入ってくれるかどうかということです。」との謙虚なお答えが返ってきました。
人間主義の詩を書かれるクンワル氏は、穏やかで紳士的な方です。
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不死鳥
クンワル・ナーラーヤン
荒れ狂う海と
劫火を吐く山々の中に
私は見ている
何世紀も続く 厳しい地球との格闘
ほんのわずかな土地にある
たいへん大きな国を
その歴史を読んでいる
度重なる自然災害
壊滅的な戦争に満ちている。
思考の中によみがえる
瞑想する仏陀の像。
不屈の生命力の象徴 ――
不死の火の鳥のように
何度も己の灰からよみがえる 日本、
今再び 大空へ舞い上がる
2011年5月
サイン入りの原本「अमरपक्षी」