やさいのいぶき〜有機農園 けのひの日常〜

脱サラ夫婦が神奈川県愛川町で新しく農業をはじめた日常を綴る。畑と食卓、畑と街、畑と社会を繋いでいきます。


鶏を飼い始めて1年半が経ち、お別れについてもそろそろ視野に入れ始めています。とはいえ、自分で飼っている鶏の最後は一体どうしたらいいのか。時折、話題になっては結論が出ず、いつも先送りにしている問題でした。そんな折、同じ県内の大磯町で平飼い養鶏をしている、コッコパラダイスさんが鶏解体ワークショップをひらくとのことで、参加させていただきました。

昨日まで仲良くしていた鶏たちも、結局は殺すために飼っているということに疑いの余地はなく、その日が来れば殺めて命をいただかなくてはなりません。そうはわかっていても、それでも最後にその命を自らの手で淘汰することがどうしてもできず、業者に依頼するという手段もあるのですが、そこまでやってこその農業、私たちが選んだ生き方なのではないか、この命をいただく部分を他者に預けることは無責任というか、一番大事なことに眼を逸らしているのではないかと思い、決心しての参加でした。

今回いただいた命はけのひの鶏ではなく、コッコパラダイスさんが大切に育ててきた5歳の鶏でしたが、やはりその時は気持ちが定まらず、肚の底が揺れていました。まず、いつも抱っこするように腕の中に抱えている鶏を、今回は足を掴んで逆さに持ちます。その瞬間からひどく違和感を覚えずにはいられなかったのです。


そして鶏を気絶させ、命を絶つ。そのプロセスに挑むときはかなり動揺してしまいましたが、眼を見ず、意を決して粛々と行い、そこからは食べ物として部位ごとに解体していきました。
慣れないこともあって一羽解体するのに1時間半はかかったかと思います。身も心もクタクタになりましたが、農家として、人間として一線を越えたような感覚を得ることができた気がします。

命をいただいて生きていることに目を背けずにいかなくてはと強く思った経験となりました。生き物を食べてるという自覚も芽生えた気がします。


翌日、鶏たちが不思議といつもと違って見えました。なんだか愛おしく感じられたのです。その日が来るまでしっかり向き合っていきたいと思います。

8月の広報に夏野菜特集として記事と動画が公開されました。

もうすっかり秋っぽくなってしまっていてすでに夏が恋しいです。。

https://youtu.be/7ISUS5MV2Ec

2021年3月に実験的に始まった学校給食プロジェクトですが、今年度からは定期的に野菜を使っていただけるようになりました。

6月に児童・生徒向けの給食動画が公開されたのでお知らせします。

https://youtu.be/LS7tXQqllTI


【けのひ10周年】

2011年、震災の翌月から八王子で営農を始めてからこの4月で丸10年を迎えました。当時は荒地からの独り農業で、早朝から深夜までそれこそ駆けずり回って日々を過ごしていました。それから愛川町に移転し、妻も会社を辞めて一緒に働くようになり、共に駆けずり回る日々が始まりました。それから少しずつ地域の方々にも私たちのことを知ってもらえるようになり、畑もたくさん任せてもらえるようになりました。

新規就農してから10年、吹けば飛ぶような零細農家がここまで生き残ってこられたのも沢山の方々の支えがあったからこそです。手を差し伸べてくれた八王子・愛川の両地域の先輩方や仲間たち、東京都や愛川町の行政の方々、地域の方々、取引をしてくださったたくさんのお店や飲食店の方々、食べ支えてくださった方々、本当に多くの方たちに支えられた10年でした。

会社員を辞めるにあたって、尊敬する先輩からは40歳になったときのことを考えて決断しなさいと言われました。正直、そんな先のことはわからないし、有機農業で生きる人生は経済的には会社員時代には敵わないかもしれないけど、楽しく、豊かに暮らせそうだと直感的に思い、ほとんど迷うことなくこの道を選んだのでした。大変なことも沢山あったし、死んじゃうかもって思うような経験も何度かありましたが、充実した10年だったなと心から思えています。沢山の縁にも恵まれ、本当に運がよかったと思います。

10年やってみて、農業って単に食糧を生産するだけではなく、もっと社会全体に関わることなんだと実感しています。次の10年はもっと循環させていくことや、里を守っていく意識、地域の子どもたちに給食を通して様々なことを伝えていくことなど、もっと大きな視野で取り組んでいきたいと思っています。

とはいえ、やるべきことの根幹は変わらず、また引き続き皆様の支えも必要です。この10年に感謝しつつ、これからも私たち有機農園けのひをどうぞよろしくお願い致します。

今夜は温度のこととか、獣が入り込んでこないかとか心配が多いため、夕食も鶏小屋で食べて、寝袋で寝ました…。
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ついにひよこを迎えいれる日が来ました。

何ヶ月か前から岐阜県の孵卵場に予約をしていた5月7日生まれのメス50羽は、段ボール箱に入り、厚木のセンターまで送られてきます。

小屋づくりもまだ完了していないので、小屋づくりを続けるチームとひよこお迎えチームに分かれました。

厚木で受け取った箱からはピヨピヨ元気な声が絶えず聞こえてきます。蓋を開けて車の中で飛び出してしまうのが心配だったので助手席の長男の膝の上に大事に抱えてもらい家に帰りました。

鶏小屋の真ん中に置いた育雛箱の中に段ボールごと置きついに蓋を開けてご対面。
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ちいさくて、もふもふで、なんとも愛くるしい仲間たちが有機農園けのひの一員となりました。どうぞよろしくお願いします。


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朝一で材木屋さんがベニア板34枚を届けてくれて、2日目の作業日スタートしました。

大工さんが手際良くカットしたり、屋根に貼ったりするのをサポートしつつ、地面きわの、動物侵入防止部分を掘ります。


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屋根の断熱材用に12mのベニア板を挟んで、ルーフィングシートを貼りました

(上に波板を後日貼る予定)
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金網は1巻しか手に入らず、とりあえずある分だけ貼る。1枚目と2枚目をワイヤーで縫うようにして合わせたところで本日終了。

間に合うかなぁ…。

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ゴールデンウィーク明けから、ひよこを飼うと決めたものの、色々あり鶏小屋づくりが遅れに遅れました。

やっと、大きな一歩を踏み出したのは本日、5月3日。ひよこを迎え入れるXデーまであと5日!!!

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作業初日の今日は、水平の確認をしながら単管パイプを打っていきます。勾配のある庭に建てるので水平をとる作業に手間がかかりました。

ブロックに単管パイプをさして、上から叩いて深く埋め、まわりも腐食しないようにコンクリートで固めます。

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屋根の部分は垂木を渡して、本日は終了。

ノウハウも道具もない我々。見かねた近所のワザ持ちの方々が手伝ってくれています。本当にありがたい。みなさんの力をお借りしてなんとかXデーまでに、なくてはならない部分を完成させるべくがんばります。

キャベツの話。IMG_6395春作は5月上旬からの収穫を狙って逆算し、1月末か2月初旬から播き始め、最期の収穫が6月上旬〜中旬になるように調整している。

この5月上旬からの作型は比較的虫も少なく、うまくできるのだけど、6月の収穫が割合難しい。梅雨に入っていれば病気が出やすいし、晴れが続いていれば暑すぎて成長が早く、割れやすい。そして虫害がたくさんでるのもこの時期から。天候についてはこちらでは何もできないのでなるようになるとして、虫害に関しては極力減らしたいので今年からスーパーセル苗を導入してみた。

通常は播種から4週間ほどでこのサイズになり定植になるのだけど、このスーパーセル苗はそこからさらに倍くらいの期間、水だけで育て続け、全体が黄色くなった頃に定植するというもの。この状態になると病虫害に強くなるというので6月収穫のキャベツにはピッタリ、のはず。果たして。

今日は春分の日。昼と夜の長さが同じになり、明日からは昼の方が長くなる。幼い頃はなんで休みなのかもよくわかってなかったけれど、農業を始めてみるとこの日のめでたさが身に染みるというか、身が引き締まるというか、そんな日。休日に指定されているのは日本人がかつて農耕民族だった名残なのだろうか。

日照の長さは人間よりもむしろ植物の方が敏感に感じているような気がする。特に枝豆は夏至を境にして育てる品種も中生種と晩成種で変わってくるし、他にもみなそれぞれに何かを感じて生きている様子。

寒さ暑さも彼岸まで、という昔からの言い伝えがある。実際にはゴールデンウィークくらいまでは突然冷えて驚かされたりもするけれど、大きくみればだいたいそういう風に季節が巡っていると感じる。農繁期が本格的に始まったと言っても過言ではないと思う。

そんなわけで私たちの農園ではキャベツ、カリフラワー、枝豆、チンゲン菜、ズッキーニ、カボチャ、レタス、トウモロコシなどの苗が畑に出たくて順番待ちしている状況。

コロナのせいで相変わらず変ではあるけれど、やるべきことは変わらない。



ところで、今日は朝からJ-WAVE(81.3FM)でTOKYO GUITAR JAMBOREEという番組を聴きながら作業した。次から次へと出てくるアーティストたちが9時間ぶっとおしでギター弾き語りをするという前代未聞の番組だったけど、ラジオを通してJ-WAVEの局がお祭りの現場になっているような空気感も届いていたし、私たちの作業場までスピーカーを通してライブ会場の雰囲気をまとっていたし、最初から最後まで、すごくいい番組だった。こんなご時世だから大きな会場に集まることはできなかったけど、こうして特別番組編成で発信してくれることによって、かえってリスナーにも不思議な連帯感みたいなものを感じられて、ラジオの力を改めて感じることができた。個人的にはJ-WAVE史上に残る番組だったのではないか、とさえ思う。ラジオ、やっぱりいいなと改めて。そんな2020の春分の日だった。

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