やさいのいぶき〜有機農園 けのひの日常〜

脱サラ夫婦が神奈川県愛川町で新しく農業をはじめた日常を綴る。畑と食卓、畑と街、畑と社会を繋いでいきます。

2009年06月

完熟トマトたべたいミニトマトが毎日コンスタントに取れるようになりました。毎朝の収穫時、真っ赤に実ったトマトを山ほどもいで、というのを想像していたのですが現実はちょっと違いました。間違いなく毎朝、山ほどではあるのですが。

通常、収穫してから消費者の元に届くまでに最低でも中2日はかかってしまいます。それは収穫→出荷→配送→店頭到着→販売の過程を経る中でどうしても仕方のないことではあるのですが、そういった理由から流通過程で傷み始めてしまう完熟トマトはどうしても出荷できないのです。真っ赤なトマトを消費者に届けるためには、8割くらい色づいたものを収穫して出荷することになります。つまり未熟なものを出荷して、店頭に並ぶ頃にちょうどよい色になるように調整しているというわけです。 でもまあ結局みんな真っ赤になったいい状態で食べられてるんじゃないか、と思われるかと思います。ぼく自身も最近までそう思っていました。しかし、畑で真っ赤になったトマトと店頭で真っ赤になったトマトではその味に雲泥の差があるのです。前者、つまり木にぶらさがった状態で赤くなったトマトは栄養分を最後まで吸って、本物の完熟状態。甘さはピークで、濃厚なトマトの味がします。しかし後者は若干青みがかった状態から、時間を経て見た目は完成されるものの、味は成熟されず、完成一歩手前となってしまっています。こればかりは本当に仕方のないこととはいえ、トマトのポテンシャルを存分に発揮させてあげられず、なんだか残念なことです。

毎朝、暑くなったハウスの中で、8割くらい色づいたトマトを山ほどもぎます。たまに完熟している真っ赤に実ったものを発見しますが、残念ながら出荷できないため、やむなく自分の口に放り込みます。これが、何とも言えないくらいうまいんです。

晴天1今日は久しぶりの晴天。朝からテンションがあがりました。日照時間が少ないこの時期、本当に貴重な梅雨の晴れ間です。今まで畑に入れなかった分、外仕事があれこれたくさん残っています。そのため今日一日で畑仕事を目一杯やりとおそうということになり、畑に残っていたジャガイモ(シンシア、メークイン、インカパープル、キタアカリ)を一気に全部掘り、人参も少し掘りました。そして日没。これだけで一日が終了です。文字にしてみると何ともあっけないですが、暑い中みんなでがんばり充実感ありです。明日からは一転して雨予報。外仕事はまだまだ手つかずで残っています。

おとといの夏至を過ぎ、これからは少しずつ日が短くなっていきます。それを思うと毎年なんだか寂しい気持ちになりますが、夏本番はまだまだこれから。バテないようにしっかり食べてがんばりましょう!

20センチ人間が大地を耕すといっても、トラクターで耕せるのは表土のたかだか20cmくらいが限度、そこから下は人間の手では耕せない固い層になっているといいます。ジャガイモや里芋などは土中にできると思うのですが、あれは土を盛って畝を山にしていくため、実際に芋が出来るのは地面より上だったりするのです。そのため固い層はトラクターやクワではなく、イネ科などの直根茎の作物を植え、その根っこでもって耕してもらい、酸素を送りこみ土の状態をよくするなどの方法をとります。

昨日の豪雨で、畑の土が大量に流出してしまったのですが、その影響で珍しいものが姿を現しました。上の写真は表土がまるごと流出したあとに出てきた固い層です。日々のトラクターや大型機械の重みがこういう層を作り出しているらしいのですが、実際にこれを目にしてみると、日々の悪戦苦闘はこの地球の上の、たったの20cmの出来事でしかないのかと、自然の中における人間の小ささを思いました。

ところで、せっかく蒔いた丹波黒大粒大豆ですが、やはり昨日の豪雨の影響で発芽は絶望的な状況となってしまいました。というのも、水分保持のために畑を鎮圧したため、川のように流れ出した雨水がちょうど黒大豆のところにたまってしまい、その部分だけが水浸しになってしまったのです。ただでさえ腐り注意の状態だったのにこの状況は本当に期待薄です。農業は諦めが肝心と言われますが、種が高かったのでもうちょっと見守りたいと思います。

天気を読んで作業をする、農業をする上での最重要項目を身を持って学ぶこととなりました。

黒豆播種5時19分の始発列車に乗り込んで、黒豆まきに行きました。始発とはいってもいつもより1時間早いだけなのでそんなに早起きという感じはしませんでした。人も案外多かったし。そして7時ジャストに圃場に到着。雨が降りそうな空模様ではありますが、まだもちそう。急いで作業に移りました。

前日、水に浸しておいた種は水をすって3倍くらいに肥大していました。こうすることで発芽を促すことができます。畑をトラクターで耕し、ローラーのようなもので鎮圧。そこに10cm間隔で置いていきます。土をかけたら鳥に食べられないように防虫ネットで保護。あとは発芽を待つばかりです。ある程度大きくなったら今度は別の場所に植えなおし、のびのびと育てる予定です。

ところでこの農業研修が始まってから知ったのですが、枝豆をそのままにしておくと大豆になるって知っていましたか?これは農業を志さなくても知ってて当たり前のことのようでした…。依然としてかなり無知のため、人一倍覚えることが多く、すべてが勉強になります。この黒豆、種のパッケージによると、「正月の煮豆に最適、枝豆どりして食べても極上」とあります。うまくできたらみなさんにもプレゼントできたらなと思っております。

作業後の朝のミーティングで先輩たちに今日の作業手順を話したところ「豆は水に浸したら腐るぞ」と言われ青ざめました。普通、オクラなど、種子の皮が厚いものを水でふやかすときに浸すそうで、豆のように皮が薄いものはむしろ水分が多すぎて腐る恐れがあるというのです。なんでもかんでも水に浸せばいいと思い込んでいたのでこれまた勉強になりましたが、早くも発芽すら危うい状況になってしまいました。期待しないで秋を待ちましょう。

今日の成田は昼頃から豪雨となりました。梅雨だから雨が多いのは当たり前ですが、梅雨ってもっとシトシト雨が降り続くものだったような気がします。最近はくもり空が続いて時々雷を伴った豪雨。なんだか気候がおかしくなっているような気がします。

ズッキーニの花2いよいよ夏野菜ができ始めました。キュウリ、ズッキーニはもう毎日収穫、トマトもぼちぼちできています。そしてナス、ピーマン、ししとう、オクラも頑張って成長中。来月始め頃には採れ始めるのではないでしょうか。 これらのいわゆる成り物類は、大きくなった実を随時とってあげないと木が傷んでしまうので、長く収穫するためにも毎日見回り&収穫をしてやる必要があります。ほうっておくと木が子孫繁栄のために種を作り始め、それができると自分の成長が止まり、やがて枯れ始めてしまうのです。毎日の見回り担当も決まり、とりあえずぼくはズッキーニ係りとなりました。

ズッキーニは星形の黄色い花が咲き、それがしぼんだ頃に急に実が大きくなります。その間1〜2日くらいでしょうか。朝小さかったものも夕方には結構なサイズになっていたりします。大きすぎず、小さすぎずのベストのサイズは200gくらいなのですが、これが見た目ではなかなか難しく、せっかく採っても出荷できないサイズであることもしばしば。ズッキーニなんて今まで買ったこともないからどれくらいがベストサイズなのかよくわからず、ついつい太らせてしまいたくなります。キュウリくらいだと細すぎ、ヘチマくらいだと大きすぎるようですが、ぼくはついついヘチマサイズにしてしまいがち。うまく収穫できないぼくに先輩がくれたアドバイスは「目ではなく、手で覚える」ということ。手のひらを広げたときの親指の先から小指の先までの長さはみんなだいたい20cmになるのですが、だいたいそれくらいで200gくらいです。なんだか段々職人仕事みたいになってきました。

明日は個人の実験圃場にかの有名な丹波黒大豆をまく予定。始発列車にかけこんで朝一で作業します。自分のための野菜作り。今からとてもワクワクしています。

P6132139先月、某大手電機メーカーの里山保全事業の一環として行われた有機米作りの田んぼですが、一ヶ月経ったところで今度は除草イベントが開催されました。

担当の先輩はちょくちょく見に行っていたようですが、ぼく自身は一ヶ月ぶりとあって田んぼの様子を見たときにびっくりしてしまいました。田んぼなのに、草ぼうぼうなのです。普通、というか農薬を使う慣行農法の田んぼでは田植えの後に除草剤を入れるので草はでません。なので極端な話、田植えの次は稲刈りというくらい特にすることはないようなのです。しかしこの田んぼはあえて無農薬で行っているため、畑と同じように草は生え、除草作業が宿命となってくるのです。無農薬の田んぼなんてそうそうないので、草ぼうぼうの田んぼというのもまた珍しい光景でもあるのですが。

さて、除草イベントの方ですが、約20人の方が参加してくれました。前回田植えのときに40人集まったのと比べるとやや寂しいものの、十分な人数です。田んぼの場合、草を外に出せないので泥の下にもぐらせるのですが、これが意外と大変。途中で休憩を求める声や、こんな労働をするつもりじゃなかったのに、という弱気な発言もありました。そして1人、また1人と田んぼから上がり始めてしまったのです。これはやばいと思い、「有機農業の仕事の半分は除草なんです。だからこれは地味だけど、とても重要な作業なんですよ」と説明してなんとかモチベーションを維持してもらいました。そんなこんなで約3時間、たった1反歩の田んぼの除草なのにこんなに時間と労力を要してしまいました。イベントだからいいものの、ものすごい非効率です。

ところが、なんとか除草も終わり、一安心していたのですが、翌日見に行ってみると、なんと草がぼうぼうでした。とりきれてなかったのか、ただ浮いているだけなのか、とにかく田んぼの水面は草で覆われていたのです。がっくりきてもう今のところ放置してあります。

ちなみに、隣の田んぼも無農薬なのですが、そちらには草が全くといっていいほど生えていません。これは紙マルチといい、田んぼ一面に炭由来の紙を敷き、光を通さず、稲以外の草をはやさせない技術を使用しているためです。必ずしも「無農薬=手間がかかる」というわけではないのです。ただし、こちらの田んぼには労力の代わりに大変なコストがかかっています。この紙マルチ、100メートルあたり4,000円します。1反歩あたり5本使用したとして20,000円です。ところが無農薬の田んぼでは一般的に7俵できればよしとされ、1俵あたり13,000円で売買されるといいます。差額は71,000円ですが、これにさらに苗代、肥料代、機械の燃料代、労力がかかります。そうするといくらにもならないどころか赤字にすらなりそうな気配です。1俵あたり20,000円で売れればようやく儲けもでてきそうですが、無農薬米といえどもこの価格で消費者の方々が納得してくれるのかどうか疑問でもあります。この辺に理想と現実のギャップが見え隠れしているのです。安全なお米を食べたい、でも…。

もし街で値段の高い無農薬米を見つけたら、そんなところにも思いを馳せてみてください。もし安い無農薬米を見つけたら、どうなってるんだろうなって探ってみてください。

P6122102春が過ぎ、初夏の頃になったため、畑の生き物たちも活発に動き始めました。キャベツ畑にはモンシロチョウが飛び交い、鳥や昆虫たちの姿もそこいら中で目にします。虫に作物がやられるということもしばしばあるのですが、有機農業をやっているため、害虫であろうとも農薬で駆除するわけにはいきません。虫がついてしまったら手で捕殺する、この一手段のみです。

とはいうものの、理屈ではそうなっているのですが、普段から不殺生を心がけていたぼくにとって、虫を踏んだり潰したりして殺すことに抵抗があります。つまんで、「もうこっちにくんなよ」、と遠くに投げ捨てたりしてました。百姓見習いとしてはあまりよい振る舞いではないとはわかっているのですが…。

そんな折、同い年で独立営農されている先輩がこんなことを言ってくれました。「弱肉強食っていう言葉がありますけど、おれらもそうだと思うんです。こいつら(作物についた虫)はおれらの作った食べ物をダメにしようとしているわけですよね。だから殺すんです。ただこの勝負に勝つかどうかというだけの話で、むやみにたくさんの虫を殺すわけじゃないですから」。この話から、自然の中で生きようとしている以上、殺さなきゃいけないときもあるんだということを学びました。しばらくはいちいちためらってしまいそうですが、勝負に負ければ実際に自分の生活に跳ね返ってきます。かわいそう、ではないのです。

農業で食べていくということは、単に仕事の選択ということだけではなく、自然に対しての姿勢や生き方そのものを考えるということなのではないか、そう思い始めています。

ちびかぼちゃ18時からのミーティング。しかし時間が来ても誰一人として姿を見せません。18時半頃になってようやくぼちぼち集まりだす始末です。一般の会社だったらこんなのありえませんよね。時間に対してのだらしなさに少しイライラしてしまいました。農家はみんな時間にルーズなのでしょうか。

以前勤めていた会社でヨーロッパやアフリカの人たちとやり取りをすることがあったのですが、アフリカの人はヨーロッパの人に比べて納期に対しての考えがゆるく、日本サイドの即日回答の要求に対して1日や2日遅れるということが日常的にあり、そののんびりとした仕事ぶりにやきもきさせられることが多々ありました。ぼくらはこれを俗に「アフリカ時間」と揶揄していました。そしてここにも「アフリカ時間」が流れているのかなとちょっとウンザリしたのです。

最近トラクターに乗れるようになったり、仕事の幅が広がってくると時間いっぱい、日没まで仕事をしていることが増えてきました。畑仕事は大型機械の出し入れがあったり、天候を見ての作業だったり、作物に対して摘期を選んでの作業だったりするため、時間が来たからとあっさり止めるわけにはいきません。今日中に終わらせなければ、というときがほとんどなので、時間がきてもしばらく仕事をし続けます。それは朝夕関係なく、すべての作業において言えます。そんなある日、作業がおしてしまい集合時間を守れないことが決定したとき、ふとこの間の全員遅刻のミーティングのことを思い出しました。あぁ、そういうことだったのかと。

俗に言う「アフリカ時間」というのは仕事に対してのんびり構えるということを指していました。それに対し、「農家時間」は仕事の延長も当たり前、その時にしっかりとやりきるというところに本質があったのです。この二つの時間概念は仕事に対してのスタンスからして全く異なるものでした。

定刻どおりが難しいため、やはり農家は時間にルーズ、となるのかもしれませんが、この感覚は時間の大切を知っているからこそのものなのかも知れません。

P5312015収穫と言えば「秋」とくるのが常道ですが、約50品目の野菜を作付しているぼくらの研修先では年間を通して収穫があります。その中でも6月は特に収穫が多い季節。春の作付シーズンもいつの間にか過ぎ去り、初夏の収穫シーズンに突入しました。そして収穫のメインは今がまさに旬の新ジャガ、新人参です。 今日は午前にジャガイモ(ワセシロ)を、午後に人参を掘り上げました。ジャガイモは3日前から、人参は今日が初収穫です。半日で掘り上げたジャガイモは500?、運ぶのも一苦労です。しかし人参はさらに上を行き、コンテナにしてなんと52個分、なんと1?にものぼりました。目の前に積まれた人参の山は、一人の人間が食べる一生分より多いのでは、と思わずうなってしまうほどの量です。しかしこれだけあっても来週1週間くらいで全て出荷しつくしてしまうとのこと。やはり人参は人気者ですね。そんなわけで畑にまだまだ残っているジャガイモ、人参たちの収穫もこれからしばらく続きます。 ところで、これだけあると奇形や腐りなど、出荷できないものも大量にあると思うのですが、今回は人参56コンテナ中たったの4コンテナだけでした(ジャガイモは選別前のため不明)。しかも奇形は業務用として買い取ってくれるところがあるとのことで安心です。 農業の世界に入って2ヵ月。4月の除草から始まり、慣れない農作業によるダメージの蓄積があったのか、慢性的に腰が痛むようになってしまいました。そしてここにきて重量級の作物たちの収穫。ダウン寸前のため、整骨院行き決定です…。

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