やさいのいぶき〜有機農園 けのひの日常〜

脱サラ夫婦が神奈川県愛川町で新しく農業をはじめた日常を綴る。畑と食卓、畑と街、畑と社会を繋いでいきます。

2009年08月

鷹のつめ今年の冷夏の影響で特に北海道の作物が大打撃を受けているといいます。実際に北海道に住んでいる方に伺ったところ、大雨の影響で畝に水がたまり、それが乾ききる前にまた次の雨がくるというような状態で、その結果ジャガイモなどの作物が土中で腐ってしまっているというのです。東京の市場価格を見てみると、ジャガイモの値段が通年の約3倍にまで跳ね上がっているというのも仕方のないような状況のようです。一般の方は野菜が高い!とお嘆きかもしれませんが、生産者は収穫ができない!と嘆いている状況なのです。

ところでこんなとき、ぼくらの出荷している有機野菜の値段はどうなのかというと、実を言うと値段の変動はほとんどありません。というのも、ぼくらの場合、収穫物は市場取引をせずに、契約栽培や特定の業者に出荷するという形をとっているため、年間契約として価格設定をしています。そのため通常期では一般の市場価格よりも割高な値段設定になっていますが、今夏のように野菜の価格が高騰するような状況になると一転してぼくらの有機野菜の方が安くなるということがでてくるのです。ぼくらが野菜を出荷している成田のカフェでは料理としての提供の他に、野菜の店頭販売も行っているのですが、お客さんが「スーパーよりも安いわ!」といって南瓜を買っていくところを目撃しました。確かに1/4カット100円という設定は、近所のスーパーの168円というのよりもかなりお買い得です。

じゃあ有機農業は儲かるのかというと、決してそんなことはなく、場長に言わせれば、「ボロ儲けすることもないけど、大きく損をすることもないようにできている」とのこと。ともあれ、オーガニック野菜、今はお買い得なのかもしれないのでまだ口にしたことがない人は試してみるのにいい機会なのかもしれません。

赤ピーマン写真のピーマン、赤いのが混じっていますが、パプリカではなく、一般的なピーマン(京みどり)です。ぼく自身はピーマンが完熟すると赤くなるということはこの夏まで知りませんでした。ちなみにシシトウもほうっておくと、最終的には同じように赤くなります。でも赤いからといって辛い、というわけではなく、むしろ完熟の甘さがでてきます。シシトウが辛かったりするのは唐辛子と交雑するからとのことで、やはりシシトウも本来は辛いものではありません。


倒れたパプリカところで色のついたピーマンのようなパプリカも最初は緑色をしています。大きく膨らんである程度のサイズになったあと、赤や黄色やオレンジなどが少しずつ色づいていきます。しかしこのパプリカ、実が大きくなってくると支えきれずに枝が倒れてしまうため支柱などで上に引っ張ってやらないと育てることができません。ハウスの中で支柱に支えられて育っていくパプリカ。いつまでたっても自立できない野菜というわけです。

8月ももう終わりますが、成田では8月10日に激しい雨が降って以来、めっきり雨がありません。畑は乾燥して砂煙が舞うような状態で、作物、特に葉物なんかは水が足りずに思うように育っていない状態です。今夜から台風11号が接近してくるようですが、この台風、果たして恵みの雨となるでしょうか。

幼い頃からお盆になると祖父や祖母のお墓参りに行く習慣がありましたが、以前勤めていた会社ではお盆休みというものがなく、随分とお墓参りを怠ってきました。しかし、ところ変わればなんとやらで、研修先では「農民は先祖を大事にするものだ」と当たり前のように言われ、この研修生活始まって以来の三連休をもらって実家に帰省してきました。ご先祖の供養、といっても父方の祖父と祖母の墓参りを個人的にしてきた程度のことですが。

そういえば、幼い頃に自分のルーツを親に尋ねたとき、曽祖父の時代は佐賀で農業を営んでいたと言っていたのを思い出しました。その話を聞いたときはありきたりでなんてつまらない話なんだとつっこんだことは聞いてこなかったのですが今となればとても気になるところ。一体佐賀のどこで、どんな風に、何をつくり、どんな生活を営んでいたのか…。今回、改めてこの話を聞いたところ、「わからない」と一言。祖父は東京の大田区で町工場を経営していたし、佐賀とのつながりはもうないに等しいらしく、なんの糸口も見つけられずじまいでした。もしかすると、「先祖は農民だった」という話は日本人の9割くらいの人たちに当てはまる平均的な話なのかもしれません。だからぼくの両親も対して先祖のことを知らないのに「農民だった」と一言で片付けたということなのかもしれません。苗字と九州地方ということから連想するに、もしかして先祖はかの有名な詩人だったのでは、という期待を込めた問いに対しては「それはない」と断言されてしまいました…。
それはさておき、実際50年前までは日本人のおよそ80%は何らかの形で農業に関わって生きてきたらしく、現状の3%という統計を見るとちょっと考えてしまいます。

ところで、皆さんはどんな風にお盆を過ごしましたか。親戚一同が本家に集まり、わいわいお酒を酌み交わす。そんな風景にあこがれているのですが、最近はあまりそんなこともしなくなっているようです。まず、「本家」という意識が非常に乏しい気がします。自分自身で言えば、両親の実家、もしくは長男の家に行くということもまずないですし、親戚一同が集まることもありません。昔は祖父の家に集まっていたのですが、今はもう全くないのです。研修先の場長が古くからの本家の人間らしく、多くの親戚を迎える立場にあるそうなのですが、古きよき(?)お盆のあり方をうらやんだところ一喝されてしまいました。「親戚はただ茶菓子をもって酒を飲みにくるだけだが、私たち本家の人間にとってみればお盆というものは苦痛以外の何ものでもない」と言うのです。しかし話を聞いてみれば、その準備を主に長男のヨメが中心となってやらなければならないことや、お酒や料理の準備費用という実際的なこと、酒宴の最中もコマコマと動き回り、そして片付けまで少ない人数でこなさなければならないというのです。これをわりとバタバタとした日常生活の中でやらなければならないという現実。本家だからという理由でやってはいるが、本来なら横暴な話となるようです。子どもの頃からあこがれていたお盆の話ですが、迎え入れる側の視点で考えたことがなかったので、これは結構ショックな話でした。そこまでしてやらなくてもいいのではないかとも思えてきます。

自分自身のことをもう一度見つめなおすと、本家とは一体どこを指すのかわからなくもあります。祖父の家はもうありません。父の兄の家には行ったことがありません。ぼく自身の実家はありますが、両親、兄弟が集まっても今のところ供養する対象は誰もいません。逆に妻の祖父の家が一番それらしいと思われるのですが、数十年先の両親の兄弟たちがいなくなった後も集まったりできるのだろうかと思えてきます。

今まで正しい(?)お盆のあり方というものを自分なりにイメージを持って生きてきましたが、もしかしたら今はこの国全体でターニングポイントにあるのではないかと思うのです。本家とのつながり、親戚とのつながり、兄弟とのつながり…。昔から続いてきた有形・無形のことが暮らしや価値観とともに、大きく変わっているところなのだと思えてならないのです。

かえるもどり梅雨なんて言われるくらい晴れ間の少ない今年の夏。新聞やテレビのニュースで日照不足による野菜の不作・高騰が報道されはじめました。実際のところ、8月に入ったというのに灰色の雲が広がる日が多く、トマトやナス、ピーマンなどの果菜類の出来がイマイチなような気がします。ただ、梅雨どきのように雨が降り続くのではなく、全体的に曇りときどき晴れ、という毎日です。

野菜を思えばもっと日差しが欲しいのですが、このときどき晴れの日差しでさえ、とても強く、ほんの少しの作業でも大量の汗をかき、正直いって結構シンドイです。体重もベストから3キロ落ちました。なので、ぼく自身にとっては本当の真夏の天候になったら6連勤できるか心配なところで、毎朝見る天気予報での「晴れ」マークが怖くて仕方ありません。

さて、8月に入り、秋作の播種(種まき)シーズンになりました。その筆頭が人参。甘くておいしいが発芽率が低く、育てるのが難しいと言われている「黒田五寸」という品種と、「ハマベニ」という品種の2種類を播種中。人参は播種のタイミングが非常に難しい作物の一つで、発芽時の気候一つで最終的な収穫物にまで影響がでてしまいます。もともと人参は冷涼な気候を好むため、まず播種時にある程度土に湿り気がある必要があり、播種後もまた発芽まで適度な水分を与え続けなければなりません。また、播種の際の天候もカンカン照りは避け、朝一番か夕方涼しくなってからが好ましいとされています。播種してから約1週間、発芽までは土砂降りにあったりするともうすべてがダメになるという繊細さで、播種前、播種時、播種後発芽まで、すべて一定の条件下で行わなくてはならないため毎日当たらない天気予報にやきもきしながらの作業となっています。雲りはいい、だけど適度な雨も欲しい…。本当に難しいところです。

人参以外の作物としては、キャベツ(金系201号)、ブロッコリー(アンフリー474)、スティックブロッコリー(スティックセニョール)、レタス(オリンピア)、サニーレタス(レッドファイヤー)を蒔きました。ここまで葉物5品種。まだまだ始まったばかりです。

作物の隣に聞きなれない品種名が書いてあると思いますが、ぼく自身この研修を始めて野菜は品種によって姿形も味も違うことを知りそれこそもっと皆さんに伝えていきたいことだと思っているため、今後もなるべく品種名まで伝えて行きたいと考えています。専門用語ばかりでわかりにくいかもしれませんが宜しくお付き合いください。

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