最近、近くの畑の農家さんとの話の中で「ウチの息子は全然無理しないんだよ。暗くなったらすぐやめちまう」というのがあった。「この仕事は無理しないと仕事になんないのわかってないんだよ」とも。確かに、その通りですねという趣旨の返答をしながら色々と思い出した。
去年の夏に倒れた際に家族やその周辺の人たちは決まって「無理するな」と声をかけてくれたけど、農家友達は「多少の無理はつきもの」と言ってくれた。倒れるほどやっちゃいけないけど、ある程度無理しないと仕事をこなせない。
それは実力のなさ、というのがもっともはっきりした理由になるけど、暑さ、寒さ、強風、乾燥、強い日差し、雨などなど、さまざまな気象条件にさらされながらの仕事なので、体力的にも結構キツイときがある。「今日は気持ちいいな」と思える日など一年にそう何日もない。しかしだからといって手を休めるわけにはいかず、しかも相手は生き物なのでできればタイムリーな作業をしていかなくてはならない。そして草とも戦っていかなくてはいけない。あとは栽培したとしても販売していかないといけないので収穫・出荷、それに加えて事務作業、作付計画、資材調達などもあるから改めて考えるとなかなかハードな仕事だと思う。
去年のことを指摘されながら、よく「限界までやるのはよくない」と言われてしまうのだが、そもそも自分の限界ってよくわからない。ヤバいなと思ったときはすでにヤバいので…。しかし変調をきたすこともなく、目の前の仕事を中途半端で投げ出すという選択肢もとりずらい。一つの作業に必要な道具類を一度片付けて翌日もう一度準備するというのがそもそも時間のロスにつながるので、10分で何ができるかを考えて行動しているくらい余裕がないときはやっぱり無理してつっこんでしまう。
とはいえ、色々と見直す余地はある。栽培方法、品目の多さにもこれらの問題の原因がある。また、草との戦い方にも決まった定義がなく、この辺も時間をロスする大きな原因になっている。今年は去年の二の舞にならないように色々と作戦をたてて挑まなくてはと思う。
と思っていたら、早速、子どもたちから風邪をもらってしまいフラフラ状態に。
熱の高さを見るとくじけるのであえて熱を測らず畑へ。なんとか収穫・出荷だけして帰宅。
今年はあんまり無理したくないとか思ってたら早速追い込まれてしまった。よし、今日はじっくり休もう!というわけにはいかず、なんとも過酷な仕事です。
それもこれもたぶん、代わりのいない一人自営業だからですよね。
これから農業を志す方はその辺考慮にいれて道を進むことをおすすめします。
はっきり言って、色々感じられて豊かだけど、過酷です。
その逆をとれなければやめた方がいい気もします。
そういえば昨年の今日、研修先のグリーンポート・アグリを卒業したのでした。
それから一年ですが、まだ一年しか経ってなかったのかというのが率直な感想。
一日は短いですが、濃いです。
2012年03月
緑いっぱい
踏み床温床のその後…
作ってから約1週間で無事に50℃近くまで達し、一旦30℃台まで落ち込んだのですが、3月の初旬頃、かなり冷え込んだときに一旦苗をどかして切り返しをし、再び40℃後半くらいまで盛り返しました。
1か月半たった今は30℃をキープしています。
ハウスの中とはいえ、毎日氷点下近くまで下がっているのでこの温床がなかったら苗たちはみな寒さに耐えられなかったのではないかと思います。
今が一番気候が読みづらく、温度管理が難しいですが、ここまできたのでなんとかいい苗に育てたいです。
結構いろんな人に「苗できたら少しちょうだい」って言われるんですが、いやはやどうして、苗作りは結構大変なんですよ(苦笑)
今はトマト、ナス、ピーマン、ズッキーニ、唐辛子、セロリなどの苗がすくすくと育っています。
トマトはそろそろ鉢上げです。
と思ったら、すでにスペースがない。どうしたものか…。
夜の畑は怖いのです
結局種いもが足りず、終了しなかったジャガイモの植えつけ。
翌日は雨予報ということで絶対にその前には終わらせないといけない状況。しかし別の大事な用事があって昼間は作業ができない。となれば、夜やるしかない…。
夕方に帰宅後、明るい場所で種イモを切り、植えつけ準備。ふつう、というか常識ではこの後に切り口をしっかり乾かすか灰を付けるなどするのだが、そんな時間はないのでそのままやっちゃおうと決めた。
雨が降ってより種いもが腐りやすい状況となるが、畝立てしたマルチの中を浸水させると中の土が締まり、深い植えつけが困難になるのではないかと判断し、この日の植えつけにこだわった。
この判断の背景には師匠の「種イモはその場で切りきりやって植えてもイッコも問題ねえ」という言葉があった。なぜかこれをはっきりと覚えていた。
軽トラのラジオでJ-waveを聴きながらの作業。2時間かかってトウヤの種いも41kg分の準備完了。
そのあとはヘッドランプを頭につけて畑作業。夜と早朝作業用にLEDヘッドランプを愛用しているが、手元は明るくても少し先となるとほとんど見えない。だから植えつけ忘れがないように端から慎重にやりきっていく。
夜の海はとても怖いが、実は夜の畑も結構怖い。
視界には東京の八王子より東の街並みや中央高速の明かりが入ってくるのだが、なにぶん周辺には外灯など全くなく、だいぶ暗い。もちろん自分以外に人はおらず、気配すらない。
「ああ、今いきなり背中をトントンとかされたら超怖いな」
とか
「あの畝の先に人影が見えたら泣けてくるな」
とか想像するともうダメで恐怖に怯える。疲れてきてそういうモードに一旦入ってしまうと「怖い怖い」と思いながらのネガティブな作業になってしまう。こういうときに人はお化けに出会うのではないだろうかとか思ったり、そういえば近くに墓地があるじゃないかと余計なことを思い出したり…。
途中、小休止をいれたりしながら23時半に完了。
そして逃げるように撤収。
なんとか雨の前に恐怖の作業を終えたのでした。。
※ジャガイモの植えつけ実績値 111kg/8畝 (3品種トータル)
ジャガイモの植えつけ開始
ジャガイモの品種は何十種類とあるけれど、今年は
収量性に優れた極早生の「ニシユタカ」、
早期肥大が期待できる「トウヤ」、
貯蔵性に優れ、(個人的に)食味良好な「シンシア」、
の以上、三本立て。この中でもトウヤがメインです。
ニシユタカとトウヤは栽培したことがないのでどんなになるのか期待半分、不安半分といったところ。
シンシアはおいしいし、扱いやすいしきっと喜んでもらえると思います。まともにできればの話ですが…。
作業としては昨日のうちに畝立てしておいた畝の穴にひたすら種芋をいれていくのですが、途中でふと疑問が。
芋を突っ込んだ穴に盛り土をするか否か。
去年の修行時代の日誌を読んで「盛り土はしない」と書いてあったからそのつもりでやっていたが、そういえば二年目は植えつけはやったけど、収穫しないで卒業していたことを思い出す…。あれははたして成功だったのだろうか。。
気にしても仕方ないので現在も研修を続けている仲間に電話で確認。
すると特に収量には影響がなかったとの回答。これで安心して作業を続けることができた。
こういうとき、農業って経験も大事だけど、記録ってもっと大事だなと思い知らされる。
些細なことも記録しておかないと次の作業のときにまた混乱してしまうのです。
このワンテクニックが重要だったり、そうでもなかったり、農家さんが100人いれば100通りのやり方があってそれぞれにこだわってやっています。
ものぐさな私の方針としては、やらなくていいことはやらない。これに尽きます。
ところでこの畝立てと植えつけ方、このあたりではあまりメジャーではないらしく、周りの農家さんが見にきたりしていました。いわく、平マルチ2条植えとかがメインらしいのです。確かに土地がたくさんある千葉県と違って、東京は狭いのでもっと集約的な栽培方法が選択されているのかもしれません。機械も研修時代のものよりそれぞれ小さいし。
地元の方々とことあるごとに違うやり方をしている私が言われるのが「千葉風だね」というコメント。
ということで今回も千葉風で広々と作付。
とりあえず終了と思いきや種イモが足りず。最後に痛恨のミス。
相変わらず詰めが甘いです。
彼岸までにジャガイモを
普段の生活をしている分には暦(こよみ)というのはあまり関係ないのですが、農民生活をしていると非常に意味のあるものということがわかってきます。その一つが春のお彼岸です。
彼岸までにはジャガイモを、というのがこの地域の植えつけ目安。一方で彼岸を過ぎたら葉物野菜のトンネルは防虫ネットに変えるなど、季節の変わり目を作物の植えつけやその栽培方法転換の節目などの基準にしています。
さて、ジャガイモ。種イモ切り、マルチ張り、植えつけの作業を逆算して日程を決めますが、今週は土曜が雨。ということは降り方にもよりますがまず日、月は畑作業ができるかわからない。となると今週中が作業の山場。しかし金曜は都内で相談会があり、木曜は妻の帰りが遅いため保育園のお迎え&夜飯作りで夕方が早い。そんな家庭の事情も組んでいくともう必然的に水曜にマルチ張り、木曜に植えつけと決まってしまいました。
午前中からマルチャーで9130黒マルチをかまぼこ型に。成田修行時代は9127黒だったのですが、近くの資材屋さんに売っておらず、仕方なく9130黒を使用することにしました。奥行60mを計13本張りましたが、目安となる線は最初の2本しか引かないのであとは勘だけが頼り。集中力が切れると曲がります。そして隣の畝を目安に歩くので、一度曲がると毎回同じ場所で曲がります。
結局、予想通り美しくない仕上がりとなってしまいました。本当に昔から造形が苦手です。こういうのを見られるのが一番恥ずかしいので早いところ葉で覆いつくされて欲しいです。
今年の冬は特に寒く、春になった今でも例年と比べると10日は遅れといるといいます。そう考えると彼岸ギリギリのタイミングで植えつけるのがよかったのかなとも思いますが、先に書いたように家庭の事情もあるしで例年どおりのスケジュールを踏襲しました。これが吉とでるか凶とでるか。
ともあれ、マルチ張り完了。
明日は一気に植えつけます。
春の気配
焦心苦慮の春
生産履歴、出荷物報告書などをまとめていて久しぶりの夜更かし。
三か月ごとの書類なのですが、この1〜3月はほとんど播種も出荷もしていなかったので前回(10〜12月)と比べたら格段にラクだった…。
最近はジャガイモの植えつけ、人参、大根、葉物の播種など、やることはとてもたくさんあるのですが、なかなか思うように進まなくて焦ってばかりいます。限られた時間の中、どうせやれることは限られているわけだし、焦っても仕方ないんですけどね。とはいえ、そこまで達観できていません。
今日はジャガイモの種イモ切り
明日はジャガイモのマルチ張り
明後日は植えつけ
明々後日は播種済みの人参にトンネルをかぶせて余裕があったらトウモロコシの種をまいて
土曜日は雨だからハウスでズッキーニの種まいて…
毎日こんなことばかり考えています。
有機農業と有機野菜
先の記事で有機野菜についての質問がありましたので、ここで書いてみます。
まず、この国で「有機」、「無農薬」、「オーガニック」という名称をつける場合、必ず「有機JAS認証」というものを受けなくてはなりません。これは畑ごとに過去数年までさかのぼって、農薬や化学肥料など、使用禁止されているものが使われていないことや、周囲の畑から農薬などが流入しないような措置が講じられているかなどを外部機関により審査してもらい、基準を満たした場合に認証を得ることができます。
この審査を受けるのには畑や作業場、機械類の管理だけでなく、農作物の流通についても審査されるため、それぞれ規定に沿った書類の作成が義務付けられています。
一般的にスーパーなどで売られている有機野菜はこの「有機JAS」マークのシールかマークのプリントがついていると思います。このマークなしに「有機」を謳うことは法的に禁じられています。
私の場合、この「有機JAS」の認証を受けていないため、上記のいわゆる有機野菜には当てはまりません。そのため、「栽培期間中、農薬および化学肥料不使用」と表示することで農薬・化学肥料を使用していないとお知らせしています。
無農薬ということは自分では証明できないことになっています。つまり、風で飛んでくるリスク、土中に残留しているリスク、その他に農薬と接触するリスクなどを第三者から証明してもらうことをしていないということです。
ただ、一般の方々にはややこしいことがあると思います。それはこのJAS法が制定される前から有機農業、有機栽培と呼ばれる農法で栽培している農家さんたちの中には、この有機JASの枠にとらわれずに農法を表現していることがあるという点です。この場合でももちろん「有機野菜」とは言えないのですが、「有機栽培」、「有機農業」という風に表現されている場合があるのです。
これは個人的な見解になりますが、「有機農業」と「有機野菜」は同義ではないと思います。私は有機農業をしていますが、有機野菜は作っていません。こういう野菜のことを「無無(むむ)」(無農薬・無化学肥料栽培を表現する言葉。実際には「無農薬」とは言ってはいけない)と呼んだりもしています。
また、有機農業という言葉はとてもあいまいで、農薬や化学肥料を使わないという点しか表現しておらず、中には肥料そのものを使わない、マルチやビニール系の資材を使わない、草を除去しない、耕さないなどなど、さまざまな農法が存在しています。これらを無肥料栽培、不耕起栽培、草生栽培、自然農法などの呼び名として使っている農家さんもいます。農家さんによってその思想やこだわりはさまざまですので、こういったところまで着目していくと、農家さんごとの個性、野菜の違いというのも見えてくるかもしれません。
話が逸れましたが、「有機野菜」で売っている人たちはまず審査を受けるのに大変な苦労をされています。それは書類作成の労力や、実際の管理面、さらに認証を受ける経費もかかります。なので頑張っていない人はいないのではないかというのが私の見解です。
また、多くの農家さんは栽培の現場をあまりオープンにしていないので、右往左往している私の様子が目立ってしまっているというだけという気がします。
農家のみなさんはすべからく、暑い日も寒い日も、太陽や風にさらされながら頑張っています。それは農法云々という以前に、農業という職業、農民という人間はみな自然を受け止めて生きていかなくてはならないからだと私は思います。有機であれ、慣行であれ、野菜の良し悪しはその次になります。スーパーのものがおいしいかどうかはその生産者ごとに食べてみるしかわからないというのが私の意見です(JASマークに生産者の名前が入っていますので食べ分けることは可能です。)
ぐりとぐらならいいものの…
2月中旬から育苗ハウスの苗床にていくつかの苗を育てています。
この時期に播くのはだいたい4月下旬くらいから6月上旬くらいまでに収穫する野菜たちです。
3月初旬になって発芽から双葉くらいまで育っていましたが、ある日、それらの苗が消えていました。
あるいは、消えたというのは適切ではないかもしれません。双葉がなくなって茎だけになっていました。
そしてまだ発芽をしていなかった部分にはほじくり返した跡が残っています。
周囲にはなにものかのフン。おそらくネズミの仕業ではないかと。
苗床は極寒の畑と違い、風もよけられる上に暖かく、野ネズミには絶好の隠れ場所だったようで、ついでに苗まで喰われてしまいました。これでキャベツ、セロリ、レタスなどがなくなってしまい、4月から5月上旬の収穫物がなくなってしまったことになります。かなり悔しいですね。これはもう死活問題になるのでネズミ取りをしかけました。無毒のエサをおいて、粘着テープの罠です。
そしたら翌日、3匹御用となりました。
あれやこれやとなかなかうまくいかないものですね。