imageローマを発ち、フランスのパリを経由して目指したのはフランスの西の端にあるサンマロという港町。旅は7日目になりだんだんと日本での日常が遠いものに感じられるようになってきた。
当初、フランスではパリ近郊の農家さんを訪ねる予定だったが、日本でけのひの野菜を使って下さっているワイン食堂パパンのオーナーがこのサンマロでシェフとして活躍されている友人を紹介して下さり、予定を変更して訪ねることに決めたのだった。そのシェフの友人の有機農家を訪ねる、つまり自分からとってみれば、友人の友人の友人ということ。今回の旅はそんな風になりふり構わない感じでどうにかこうにか縁を手繰り寄せている。

image特急列車でパリから3時間、サンマロに着くと、早速その友人が駅まで迎えに来てくれた。このあたりは冬の間はいつもどんよりと曇っているけれど、今日は珍しく晴れているらしく、なんだか幸先のいいスタート。空気はキンと冷えているけれど、陽射しは暖かい。農家さんとの約束の時間までサンマロの旧市街や浜辺を歩きながらここブルターニュ地方のこと、サンマロの街のこと、彼女自身やシェフである旦那さんのこと、そして自分自身のことなどを話す。ブルターニュ地方はそば粉を原料にしたクレープであるガレットが有名で、街のいたるところにそのガレットを食べさせてくれるクレープリーがある。その中の一つ、東京の神楽坂にもあるクレープリーのサンマロのお店のメインシェフクレーピエを務めるのが彼女の旦那さんだった。一方で彼女自身はこのあたりのもう一つの名物であるリンゴの発泡酒、シードルに対しての造詣が深く、二人の話からこの地方の食文化に対しての理解が深まっていく。

サンマロの街はとても魅力的で、少しの時間では到底味わいきれなかったが、時間もあり後ろ髪を引かれつつ街を出る。そしてサンマロ郊外のTremereucという街で農業を営むla ferme du coinという農場を訪ねた。

2017-01-20-00-11-30この農場はレジスとクレールという夫婦が脱サラして立ち上げたそうで、新規就農してから6年目と、私たちと全く状況が同じだった。祥子とレジスは年齢まで同じで、いきなり親近感を覚える。彼らは5ha程の農地を借りて営農しているが、そのほとんどが水はけが極端に悪い土地のため1.5haをハウスと露地で栽培し、残りはヤギや羊を飼って管理していた。よくない土地をなぜあえて借りたんですか?という問いには、新参者だからノーチョイスだったんだ、と日本と全く同じような状況を話してくれた。




2017-01-20-01-00-46この地域は夏でも25°Cまでしか上がらないらしく、ハウスでの栽培は必須とのことでたくさんのハウスを建てていた。その中での技術は目新しいものもあり、とても勉強になったが、彼らの農場で一番感心させられたのはそのセルフビルド力(りょく)だった。ハウス、作業小屋、物置、動物の小屋を自作するのはもちろんのこと、本を見て真似をしたというサラダミックス製造機やオートメーションの育苗播種機、直売所、エンディーブ用の温度管理された暗室など、およそ必要だと思うもの、あったらいいなと思うものは全て自作していた。なんでこんな技術があるのですか?と驚く私に、やりながら勉強していっただけだよ、とさも当たり前のように答えてくれる。同じ6年間という歳月でこんなにも違うのかと己の未熟さを痛感する。

2017-01-20-00-30-56そして日没がせまり、冷え込んできたため彼の自宅へ。お茶を飲みながらも話は続く。探究心、好奇心旺盛な彼は私に次々と質問をしてくる。日本で人気の野菜って何ですか?あたなの農場の売れ筋は?生姜ってどうやったらうまく作れるの?などなど、彼からはほとばしる情熱を感じる。






2017-01-20-03-03-27そしてお互いの技術情報の交換だけにとどまらず、種の交換までして、これからもexchangeしていこう!と約束し、固く握手をして別れた。キラキラした目がとても印象的なナイスガイであるレジス。仲間であり、目標であり、ライバルであるような、そんな農家が地球の反対側に一人できたことがとても嬉しかった。




imageそしてサンマロに戻り、友人がシェフクレーピエを務めるBREIZ CAFEへ。トラディショナルなガレットに新しい解釈を加えた斬新なメニューと、ベースにあるトラディショナルなガレットに対する奥深さを追求したそのクオリティからひっきりなしにお客さんが入っていた。閑散とした夜のサンマロの旧市街にある中で、お店の中は熱気に溢れていた。ブルターニュを存分に味わった後、いつか一緒に仕事をしようと約束し別れる。

日本にいるときはブルターニュをブルゴーニュと取り違えるほど無知だった私たちだったが、すっかりブルターニュに対する愛着が湧き、この地で活躍するクレーピエやオーガニックファーマーとの出会いに感謝し、気持ちも新たにするのだった。