2011年03月06日

「チェス盤をひっくり返す」とゲーム理論(その1)

『うみねこのく頃に』で有名な言葉、「チェス盤をひっくり返す」。

「相手の側から見てみると、相手の行動が読めてくる」というような意味で使われています。

この「チェス盤をひっくり返す」という思考法は、ゲーム理論を勉強し、生み出した思考法であるという設定になっています。

本日の記事では、ゲーム理論と「チェス盤をひっくり返す」がどのような関係にあるのかを見るために、ゲーム理論に登場する「チェス盤をひっくり返す」思考法を紹介させて頂きます。



微妙なネタばれがあるかもしれません。

少しのネタばれも許容できない方は、読まないことをお勧めします。






まずは、第二次世界大戦を舞台にした、あるゲームを考えてみたいと思います。

(ジーグフリード. (2010). 『もっとも美しい数学 ゲーム理論』, p.86-89を参考にしました。)


第二次大戦当時、連合軍の艦隊は日本軍の補給艦を攻撃する作戦を立てていました。

日本軍が通るルートとして、北と南の2つがあり得ます。

もし日本軍が北側のルートを通った場合、2日間攻撃が可能になります。

もし日本軍が南側のルートを通った場合、3日間攻撃が可能になります。


連合軍は日本軍がどちらのルートを通るかを予想し、進路を決めます。

もし予想が当たれば、すべての日数を攻撃に使うことができます。

しかし、もし予想が外れたら、進路の変更に時間がかかってしまい、攻撃できる日数が1日減ります。


以上のような、状況をまとめたのが、図1の利得行列です。

利得行列

左が連合軍の戦略、上が日本軍の戦略を表します。

そして、括弧内の数値は、(連合軍の利得, 日本軍の利得) となっています。

例えば、もし連合軍が北を選択し、日本軍も北を通った場合、北側のルートなので2日間攻撃が可能です。

そのため、連合軍の利得は2、日本軍の利得は-2となります。

もし連合軍が北を選択し、日本軍が南を選択した場合、攻撃できる日数が1日減り、南側のルートでも2日間の攻撃になります。

そのため、連合軍の利得は2、日本軍の利得は-2となります。


さて、連合軍はどのような戦略を取るべきなのでしょうか?
北を選択した場合、日本軍がどちらの戦略を選択しても、2日間攻撃が可能です。
南を選択した場合、予想が当たれば3日間攻撃できますが、予想が外れると1日しか攻撃できません。
安全に北を選択するのか、それとも、南に賭けてみるのか?

ここで、チェス盤をひっくり返します。
つまり、日本軍の側から見てみましょう。
日本軍は北を選ぶと最悪でも-2、運が良ければ-1です。
もし南を選ぶと最高でも-2、運が悪ければ-3です。
よって、日本軍は北を選択するはずです。

このように「チェス盤をひっくり返してみる」と、連合軍の取るべき戦略は北であると分かります。
「チェス盤をひっくり返す」と同じように、相手の側に立って考える方法は、ゲーム理論の基本です。
今回は弱支配戦略という方法ですが、ナッシュ均衡や部分ゲーム完全均衡など、あらゆるゲーム理論の分析方法に、「チェス盤をひっくり返す」という思考法は共通しています。


しかし、「チェス盤をひっくり返す」という思考法には大きな弱点があると言われています。
この弱点は当然ゲーム理論にも共通しており、大きな研究テーマになっています。
次回の記事は、その点を詳しく考えてみます(*・ω・)ノ


【参考文献】
ジーグフリード, トム.(2010). 『もっとも美しい数学 ゲーム理論』, 文春文庫, (冨永星 訳).



shunshun1222 at 01:37│Comments(0)TrackBack(0)経済学 | ゲーム・マンガ・アニメ

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